Animage (March 2022)

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Published March 9, 2022
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An interview with the Kamikaze Douga director, Junpei Mizusaki, about the STONE OCEAN opening. It was published in the April 2022 issue of Animage, released on March 9, 2022. It was later published online on April 8, 2022.[1]

Interview

『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』こだわりのOP制作秘話

Netflixにて第1話~第12話まで 全世界独占先行配信中の『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』。その見どころのひとつとして注目したいのが、神風動画が手がけたOPアニメーション。代表取締役である水﨑淳平さん自らがディレクションを手掛けるのは、「ファントムブラッド」OP「ジョジョ ~その血の運命~」以来、実に10年ぶりとなる。 「ストーンオーシャン」OP映像の制作秘話を、水﨑さんにたっぷりとうかがった。

OPディレクター水﨑淳平【神風動画】インタビュー

――神風動画が『ジョジョの奇妙な冒険』に携わるのは久しぶりですが、どのような経緯で「ストーンオーシャン」のOPを手掛けることになったのでしょうか?

水﨑 プロデュース協力で入られている里見哲朗さんから「水﨑さん、『ストーンオーシャン』でまたOPどうですか?」と声をかけていただきまして。製作委員会では、「ファントムブラッド」のOPを神風動画が企画して始めた以上、ジョースター家の血統の総決算である「ストーンオーシャン」もやっぱり神風動画が締めるのがよいのではないか、という話があったそうです。

――今回は、どのようなコンセプトで作られたのですか?

水﨑 「ファントムブラッド」のOPの依頼をいただいたとき――もう10年前になるんですが、最初に僕ら自身のやりたいことを製作委員会にプレゼンしたんです。まず、一般的には『ジョジョ』=スタンドのイメージが強いだろうと。でも、「スターダストクルセイダース」以降の血筋のルーツになるのは「ファントムブラッド」「戦闘潮流」だから、そこに興味を向けてもらえるようなOPにしたい、というコンセプトを考えました。その流れで、「『ストーンオーシャン』の徐倫から順に各世代のジョジョたちを遡っていく」という演出プランができあがったわけです。

館の中で螺旋階段を上っていく展開は完成版と同じですが、このときは徐倫の糸がジョルノに繋がって、仗助から承太郎たちへ、そしてジョセフからハーミット・パープルになって「戦闘潮流」のシーザーへと繋がり、「ファントムブラッド」の宿命の戦いを経て、最後は馬車から飛び出してきたディオとジョナサンの出会いに行きつく……という構成を考えていました。でも、この案は結局NGになりまして(笑)。

――ある意味、壮大なネタバレですからね(笑)。

水﨑 「ファントムブラッド」OPのイントロ部分に、徐倫からジョナサンまでをマンガのコマのように一瞬で遡っていく演出が入っていたのは、その名残なんです。それを観たファンの方たちが「これは『ストーンオーシャン』までアニメでやるってことなのか!?」と大変な盛り上がりを見せまして。それで「『ストーンオーシャン』のOPは責任を持って水﨑さんにやってもらいます」ということになったようです。

このときボツになったプランを活かそうと考えて、「ストーンオーシャン」のOPは徐倫の糸をたどっていく構成になっているんです。糸を手繰りながら刑務所の中を通り、物語の中でこれから遭遇するキャラクターや出来事に繋がっていく――というコンセプトで、企画をスタートさせました。

――ところどころ、これまでのシリーズの要素が散りばめられているのは、「ストーンオーシャン」がジョースター家の総決算だからでしょうか?

水﨑 過去のシリーズの要素を持ってこようという意図は、実は僕自身にはそれほどなかったんです。「ファントムブラッド」のときと状況が違うのは、「ストーンオーシャン」のOPのスタッフには「『ジョジョ』のOPが好きで神風動画に入りました」と言ってくれるメンバーがけっこう多くて。ファンがそのままスタッフになっているので、僕の知らないところでメチャクチャ愛が詰め込まれているんです。

――今回、演出的に特に意識した部分は?

水﨑 意識したのは、リズムに合わせた色の変化ですね。今まであまりやってこなかった手法なんですが、「ストーンオーシャン」は『ジョジョ』初の女性主人公ですし、登場人物たちも女性が多いので、明るく華やかなトーンにしたいなと。あとは曲の印象もあって、監獄の中だけどポジティブに過ごしているイメージも含めています。それと同時に、荒木(飛呂彦)先生の描かれるイラストって、キャラクターの色味が固定されていなくて、例えば徐倫の髪の色もピンクだったり紫だったり緑だったり、本当にさまざまなんです。アニメ本編でも「シーン特色」として部分的に色を変えていますが、せっかくだからOPではあえて基準色を決めずに、いろいろな色の徐倫を出してしまおうと。なので、徐倫の髪の色はめまぐるしく変わっていきます。荒木先生のカラフルな画風と、女性らしくポップにかわいらしくという要素を詰めこんだところが、今回のウリなのかなと自分では思っています。

――今回は、これまで以上にカメラがめまぐるしく動き回っているのも特徴です。

水﨑 カメラが動く分、逆にキャラクターは動かさないという制約にしています。キャラクターが動きながらカメラも動くと、あまりかっこよくない絵面が生まれてしまうので。今回はキャラクターを固定させて、カメラがどの角度から撮ってもキャラクターの見映えがいいように――という部分に集中して作ることにしました。おかげで、カメラの自由度が少し上がったかなと思います。

――サビ前あたりで、徐倫の星のアザに合わせて糸が星形を作っていきながら、「ファントムブラッド」から「黄金の風」までの印象的なモチーフを一辺ごとに見せていく場面は、秀逸なアイディアだと思いました。各シリーズのモチーフはどういった感じでチョイスされたのですか?

水﨑 みんなでアイディアを出し合っていく中で、CGIディレクターの宇都宮隆文くんが「今回のタイトルは『ストーンオーシャン』だけど、今までの『ジョジョ』も全部石が絡んでいますよね」と提案してくれて、「なるほど、そうだな」と。

――すると、すべて石絡みのモチーフなのですか?

水﨑 実はそうなんです。「ファントムブラッド」は石仮面、「戦闘潮流」はエイジャの赤石、「スターダストクルセイダース」は一見分かりにくいですけど、ヴァニラ・アイスです。ヴァニラ・アイスが太陽の光を浴びて、石になって壊れていくシーンが好きだったのと、エジプトという街自体が石造りの建物が多い印象だったので。「ダイヤモンドは砕けない」は、シアーハートアタックや猫草などのラスボスモチーフが目立ちますが、これらはすべてダイヤモンドの面に反射して映っているという設定です。ダイヤモンドも石ですからね。「黄金の風」の矢も、矢じりは鉱物=石で、そして今回が「ストーンオーシャン」と。「『ジョジョ』って、本当に石との宿命があるんだな」と思ったので、ここに入れたシーンは全部「石縛り」にしてみました。

――「ファントムブラッド」のときは、ジョナサンとディオの対決シーンのイメージボードを何種類か作られていました。今回もそういったものが存在するのでしょうか?

水﨑 はい、「ストーンオーシャン」もやっぱりイメージボードを先行して描いています。護送車の中とか、キャッチボールしているところとか、「ストーンオーシャン」というと思い浮かぶシーンをポイントポイントでピックアップして、ボード化しています。

――(イメージボードを見ながら)今回のタッチは、ウルトラジャンプのCMに近い感じですね。

水﨑 そうなんです。今回のイメージボードを描いてくれたいっささんは、ウルトラジャンプのCMのときから参加してもらっていて、荒木先生ふうのタッチをしっかりと描ける方なんです。

――いっささんというのは、どんな方ですか?

水﨑 もともと広告系のマンガを描かれていた方で、神風動画のメイキングセミナーに来ていただいたのがきっかけで知り合いました。『ジョジョ』のOPを見て感動したとおっしゃっていたので、ウルジャンのCMに参加していただいたところ、すばらしい仕事をしてくださって。そこから、もう絶対的な信頼を置いています。今回、「ストーンオーシャン」のOPを作るにあたり、要になるビジュアルを一緒に考えてもらいたくて、真っ先にいっささんにお声がけしました。イメージボードは、僕からリクエストした場面にご自身のチョイスやアレンジも交えて、いっささんが描いてくれたものです。

――今回、かなり中心的な役割を果たしているんですね。

水﨑 OP本編の制作においても、作画監督みたいな役割も担ってもらっています。刑務所内の通路に出てくるモブキャラたちは、ほとんどいっささんの修正が元絵になっていて、それをもとにアニメーターのスタッフに原画を起こしてもらったんです。あとは、キャラクターのポーズを修正してもらったりとか。

――修正を拝見すると、かなり細かい指示が書き込まれていますね。

水﨑 いっささんは、一枚の絵にドラマを持ち込もうとするんです。例えば、サビのところで、徐倫が承太郎に背を向けて歩き出す場面では、修正指示に「風のなびく方向が違う」ことが書かれています。物語の初期段階では、二人の向いている方向や背負っているものが違うことを表現しようとしているんです。そして、歩き出した徐倫については「もう決して立ち止まらない」と、その決意を表情で表そうとしている。このあたりの徐倫の内面――父親に反発する気持ちや心理的な葛藤など――は、男性目線だとちょっとわからない心の襞なので、いっささんが噛み砕いて明文化してくれて、とてもありがたかったですね。『ジョジョ』ファンの僕にとっても、「ストーンオーシャン」の新しい魅力に触れたような感動がありました。

――初の女性主人公の「ストーンオーシャン」には、まさに適任だったと。

水﨑 そうですね。芝居をつける上でちゃんと流れも踏まえてくださって。徐倫とストーン・フリーがポーズを決める場面でも、いっささんのメモには「『スターダストクルセイダース』前期OPの承太郎が立ち上がる流れと動きがリンクする」と書いてあります。そうした具体的な指示を、宇都宮くんがちゃんと拾って現場に伝えてくれたことで、ファンの方の心に届くエモーショナルな映像になったと思っています。

――神風動画の『ジョジョ』OPにとって、いっささんは重要なラストピースだったんですね。

水﨑 うちのスタッフが芝居をつける上での基準を作ってくれました。今回は特にカメラがグリグリ動き回るので、『ジョジョ』の世界観を崩さないためにも、基準になるキャラクターの絵はしっかり押さえておかなければいけません。スタッフごとに『ジョジョ』に対する思い入れや知識の量も違うから、それを整える意味でも、いっささんの貢献は大きかったです。信頼を超えて、僕はもう尊敬しています。

――今回のOPで水﨑さんご自身が一番やりたかったのは、どういう部分でしょうか?

水﨑 そうですね、徐倫の糸をたどってストーリーを見せていく演出自体が、今回一番やりたかったことなんですが……シーンという意味では、原作の中で一番やりたかったシーンは今回のアニメの範囲外でして(苦笑)。なので、このOPに限って言えば、刑務所内の通路を通過するときに、モブキャラたちが次々に登場して、みんなかわいらしくリアクションするくだり。「これが『ストーンオーシャン』らしさだな」と僕はちょっと思っているんです。

――それは、どういう意味ですか?

水﨑 僕が読者として、「ストーンオーシャン」で一番すごいなと感じたのは、冒頭から半分以上、監獄の中でストーリーを引っ張ったところです。たぶん、監獄の中にいるキャラクターの濃さなんでしょうけど。そういう意味でも、今回のOPでは、徐倫チームだけじゃなく、所長や配膳係みたいなモブキャラも推して描きたかったんです。

――たしかに、この場面でのモブキャラの存在感はすごいです。しかも、本編では考えられないくらい、かわいいイメージで(笑)。

水﨑 曲調がアメリカンポップス風だったので、明るいチアダンス的なイメージをちょっと連想しました。その雰囲気を盛り込んだシーンがどこかにほしいなと思った結果が、ここになりました。

――考えてみたら、監獄だけど女子房ですからね(笑)。

水﨑 そうなんです。女囚たちが指ハートを作っていたり、両手で下を指差したりしているポージングは、TikTokとかで最近の子たちが楽しんでいるようなカルチャーと、『ジョジョ』をコラボさせたいという意図もありました。このあたりは、社内の若いスタッフに資料を集めてもらって、ベテランアニメーターがそれを頑張って描いているという、不思議な図式でしたね(笑)。

――それでは最後に、ファンにひと言メッセージを。

水﨑 『ジョジョ』って、世代が変わり主人公が変わってもちゃんとブランドが生き続けている、日本でも珍しい作品だと思うんです。アニメのほうも、僕らが最初に携わってから10年が経ち、取り巻く環境がずいぶん変わりました。作品自体、メインプラットフォームがNetflixになったりしていますが、10年前のままではない「今」の演出で、ちゃんと新しいものとしてお届けできていると思います。原作を知らない世代の方でも、この「ストーンオーシャン」からでも観れば、きっと「20年前の原作とは思えない!」と驚きを感じるはずです。時代が変わっても『ジョジョ』はいつまでもかっこよくておしゃれだと、僕らがしっかり証明できていたら嬉しいですね。

「落ちてくるもの」

エンポリオの部屋のピアノにペンが落ちてきて、メロディを奏でる――というのは原作にもあるシーンだが、OPではペン以外にもさまざまなものが落ちてくる。ちなみに、ペン軸の文字は「Felt tip」で、フェルトペンを表している。

「ペンが落ちてきて、ピアノがポロンポロン鳴るという普通の演出を考えていたんですが、総監督の鈴木健一さんが『ここはペンだけじゃなく、過去の部のモチーフまで広げてもいいんじゃないか』と提案してくださいまして。各シリーズに出てきた象徴的なものを探して、落としてみたんです」(水﨑)

そのため、涙目のルカのスコップやDIOが使った標識、エリナの人形からジョセフのウォークマン、さらに露伴の鉛筆まであらゆる物体が時空を超えて落下してくることになった。

「シルエット」

 刑務所内のキャラクターたちは、最初はシルエットで登場し、徐々に姿を現してくる。そこはある程度、ストーリーの展開を意識しているようだ。よく見ると、シルエットにはオレンジと水色があり、さらに何かが描かれているのだが……。

「OPは第2話からつきましたが、グェスはその段階では正体不明だったので、冒頭の監房内ではシルエットにしています。その後の通路のシーンでは姿を見せていますが(笑)。人物のシルエットの色が2種類あるのは、看守側と囚人側で分けているからです。看守側は水色で、手錠や銃など『捕まえる側』のアイテムでデザインを。囚人側はオレンジで、アイテムは鎖や囚人番号など『捕まった側』のものを。配膳係がオレンジなのは、彼女も囚人だからです」(水﨑)


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