Ripples of Adventure - Hirohiko Araki x Ryosuke Kabashima (December 2022)

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Published December 19, 2022
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Ripples of Adventure - Hirohiko Araki x Ryosuke Kabashima (December 2022)
Interview Archive

Commentary between Hirohiko Araki and Ryosuke Kabashima during a visit to the Ripples of Adventure exhibition in Kanazawa. It was published in the Winter 2022 issue of JOJO magazine, released on December 19, 2022.

Interview

『JOJO』作者、初代担当と、原画展を観る

荒木飛呂彦×椛島良介(ジョジョ初代担当)

2022年5月の晴れた日の午後、荒木の携帯が鳴った。


荒木 あ、椛島さん? どうしたんですか?

椛島 あのさ、金沢で4月から貴方の原画展をやってるじゃないですか。

荒木 ああ、やってますよ。このあいだは内覧会に出たけど。

椛島 その原画展、私も見に行こうと思ってるんですよ。

荒木 え、そうなの? じゃあ、一緒に金沢に行きましょうよ。僕もあらためて会場を見たいし。それとほら、金沢はご飯も美味しいですもんね。

椛島 そうだね。では新幹線のチケットは私が取っておくよ。

荒木 じゃあお願いします。楽しみにしてます。

かくして、『ジョジョ』の作者である荒木飛呂彦と初代担当編集の椛島良介の二人が「荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋」金沢会場を訪れることに。二人の目に、金沢での原画展はどう映ったのだろうか?


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椛島 色の発色がいい絵ですね。

荒木 リキテックスとかのカラーインクで描いてますね。

椛島 連載初期の頃は何で塗っていたっけ?

荒木 あの当時は、その辺で買った普通の水彩絵の具(笑)。カラーインクは発色が綺麗だから好きなんですよね。
荒木 中央の「D4C」っていうスタンドは、デザイン的に気に入ってるんですよ。

椛島 こうやって何十点もカラーイラストを通して見ると、「ジョジョカラー」とでも言うような色使いがありますね。

荒木 エメラルドグリーンとか、その辺の色がそうかもしれないですね。

椛島 この絵の背景は、絵の具? カラーのスクリーントーン?

荒木 カラーインクで塗ってます。昔は背景にカラートーンをよく使ってたけど、時間がたつと縮んじゃうから今は使っていないですね。
椛島 (徐倫のイラストの前で立ち止まって)これももう20年前か。

荒木 だけど2022年になって、この第6部のアニメが作られたんですよ。『ジョジョ』って不思議な作品で、普通さ、20年も前の漫画をアニメにしないでしょ。

椛島 古くないんだよ。あるいは、当時は先に行きすぎていたというか。
荒木 これは写真っぽい構図にしてみました。「視線を読者に向けない」みたいなのを意識して。漫画のイラストはキャラの視線を読者側に向かせることが多いけど、でもこれはそれをあえて外して。だから絵画的というか。

椛島 面白いイラストになってるね。

荒木 こんな感じに「わざと視線を外した絵」っていうのは、時々描きますね。
荒木 雲の形はデザインのような感じで仕上げたんですよ。コミックスのカバー用に描いたので下半分は文字用のスペースという構図にしてあります。

椛島 中央に女性キャラがいるけど、昔は「女の子は描きにくい」って言ってましたよね。最近は苦労しなくなった?

荒木 しないですね、意識しちゃダメってわかったんで。男とか女って意識すると逆に途端に描きにくくなりますね。

椛島 人として描くってこと?

荒木 そう。女性だから色っぽく描こうとか、あまり考えないです。ユニセックスですね。
荒木 この露伴というキャラクターは不思議なんですよ。編集さんから「外伝ではない読切を描いてほしい」ってことで狂言回し的に復活したんだけど、その後もルーヴル美術館をテーマにした作品やGUCCIとのコラボでも復活したり。

椛島 ファンも『ジョジョ』ではない作品を読みたかったと思うよ。そういう意味でも、露伴のスピンオフは良かったですね。

荒木 まぁ、でも『ジョジョ』なんですけどね(笑)。何度も復活しているところに露伴には、「運命的なものがあるなぁ」と感じてます。
荒木 手旗信号でキャラクターに『JOJO』って言わせてるんですよ。この絵は割と気に入ってますね。

椛島 なるほど、これは趣があって可笑しいね。

荒木 こういうの好きかな。

椛島 洒落てるね。

 金沢会場となった金沢21世紀美術館は、石川県金沢市の中心部に位置する公立美術館だ。会場に到着した荒木は、まずは会場外の芝生で本企画メインカット用の写真撮影をすることに。もちろん初代担当の椛島も一緒だ。行きの新幹線の車内でも「二人でたくさん語ったよ(椛島)」とのことだが、撮影の合間も二人の会話は弾み続けた。

椛島 荒木さんは、この金沢21世紀美術館のどういうところに惹かれたんですか?

荒木 建物の壁が少なくて、柱も細かったりとか。それが安っぽいとかではなくて、いい意味での敷居の低さというか軽い感じになっているんですよ。透明感があるというか。あと、建物の床と外の地面との間も段差がなくて一体化していたりして、気軽に入りやすい構造になってて。そういうのが特徴だと思うんですよね。

椛島 確かに。美術館という建物は重厚で重々しくなりがちなんだけどね。荒木さんはこのライトさを気に入ったってことか。

荒木 この歴史ある金沢に、この金沢21世紀美術館みたいな超最先端の現代感覚の美術館を建てるという心意気に感銘を受けましたね。そのギャップも面白かったし。この建物で美術館をやろうっていう街自体の哲学も感じられたというか。

椛島 金沢21世紀美術館は建物の四方どこからでも入ることができるし、そのまま中を通り抜けてしまうこともできる。権威主義的にはなっていないってことかな。美術と一般の人の垣根をできる限り取っ払った建物って言うわけですね。


椛島 連載開始のときは「ロマンホラー! -深紅の秘伝説-」っていうキャッチコピーを付けましたよね。

荒木 「どういう漫画なのかイメージできないから入れよう」って椛島さんが付けてくれたんですよね。

椛島 『ジョジョの奇妙な冒険』っていうタイトルは荒木さんだけどね。

荒木 そう。意味よりも音感。ノリでつけた感じでしたね。

椛島 第1部がスタートした頃、担当だった私はじつは頭を抱えてもいましたよ。だって頭脳戦の『ビーティー』、変身物の『バオー』と来て『ジョジョ』がイギリス貴族の話でしたから。日常からどんどん離れていってるし、第1話だけだと何の漫画か判らないし。

荒木 そうそう(笑)。しかも主人公が日本人じゃないし。

椛島 でも画期的な内容ではありましたね。

椛島 この絵は連載が始まった週刊少年ジャンプの表紙イラストだね。記念に写真を撮りましょうか。

荒木 おお、いいっすね。

荒木 青鉛筆で指定が書いてある。僕が作画スタッフ用に書いたメモとか、編集さんの指定だね。

椛島 私の字もあるね。スタンプは編集者が押したものだな。

荒木 時々さ、漫画の絵の上に青文字が書いてあったりするよ。

椛島 いや、それはやってない。あり得ないよ。

荒木 (別の絵を見て)だってほら、このコマだと絵の上に青鉛筆でメモとか線が引いてあるよ。

椛島 本当だ、これは俺の字だな。だけど青鉛筆は印刷に出ないからいいんですよ。

荒木 ええ――(笑)。

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金沢の街を散策。尾山神社へ参拝する二人。

 金沢は戦国時代に町が作られ城下町として発展、先の大戦の戦災も免れたため歴史的な建造物が今なお多く残っている。「先生の出身地の仙台も城下町ですよね?」と聞くと「うん、だけど仙台とは雰囲気が違いますね」と荒木。椛島の「伝統的なのかな」という言葉に「金沢は、仙台とも違った上品さがありますね」と荒木が応える。

椛島 こういう場所で原画展ができるのはいいね。金沢という街そのものの雰囲気もいい。さっきも二人で街を散策して、有名な尾山神社にも寄ったけど、あそこも面白かったですね。

荒木 大きな庭園や池があって、良かったですね。しかも誰にでも解放している庭でもあるっていう。ヨーロッパでは、貴族が庭を一般にも開放して社会貢献するというのがあるけど、それにも通じる気がする。

椛島 実際に行って歩いてみないと感じられないことも多いよね。私が担当していた当時も、こんなふうに二人で取材旅行をして国内外の街をブラブラしたよね。

荒木 しましたね。街それぞれの歴史があったり、わけわかんない立像が建ってたり、怪しい何かが奉られていたり(笑)、そういうのは行かないと出会えなかった。尾山神社にしても奉られている魂や建っている像には、そこに存在している理由が必ずあるわけで、そこに興味がある。

椛島 そして、それが荒木さんの描く物語に繋がるというわけですね。


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荒木 第2部の連載途中で「波紋はそろそろ飽きられているよな」って言ってましたよね。

椛島 ああ、それは言いましたね。

荒木 そう。さらに「トーナメントバトルをやろう」って言われたから、僕は明快に拒否した(笑)。

椛島 荒木さんは「エスカレーションは嫌」「根性で勝つ話も嫌」だと言ってましたね。

荒木 どんどん強くしていくのは辛いんじゃないかって思ってたからね。

椛島 各部に「戦闘潮流」といったサブタイトルが付いてるけど、これは荒木さんが付けたものですよね。

荒木 そう。第6部のときに「ストーンオーシャン」っていうサブタイトルを付けたので、他の部も付けようと思って。ダイヤモンドや黄金とかの鉱物、星や水の流れといった自然界に存在するものをイメージして付けました。第1部の「ファントムブラッド」はジョースター家の血のほかにディオの血もイメージしてますね。


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荒木 第5部の頃に2冊目の画集の「JOJO A-GO!GO!」を出したんですよ。

椛島 「JOJO A-GO!GO!」の箱は面白かったね、グルグル回る紙の円盤がついてて。あの円盤にさ、私が飼っていた猫の写真が載ってるんですよね。ちゃんと「アキヨ」ってクレジットも書いてある。載っちゃっててビックリした(笑)。

荒木 『スティール・ボール・ラン』と『ジョジョリオン』は月刊誌で描いていたせいか長期連載になりましたね。

椛島 一番短い部は何でしたっけ。第1部?

荒木 そうですね。コミックスで5巻くらいかな。1年も描いてなかったですね。


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荒木 尾形光琳の「燕子花図」に倣って描いてるんですよ。あの絵からリズムが感じられて、それを意識して描いたのがこれで。

椛島 金沢なんだし、背景は金箔にしないんですか?

荒木 え? うん、少し思ったけど、金箔は印刷に出ないから意味ないかなーって思ったんで。


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椛島 この12枚の大型原画は何回観ても圧巻ですね…。

荒木 無茶したよね(笑)。この原画展用に大きいのが欲しいなって思って描いたけど、1キャラより数が多いほうがいいかなと思って。絵が大きいと観る角度によって見え方も変わるから、そこも注意しました。ただ、大きすぎて数も多すぎるから保管方法に悩んでる(笑)。

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 荒木によれば「10年以上前、『ジョジョ』の最初の原画展を開こうとなった際の候補地のひとつが、じつはこの金沢21世紀美術館だったんですよ」とのこと。このときは結局、最初の原画展は荒木の故郷である仙台での開催が決定し、次いで東京で開催されている。

荒木 金沢21世紀美術館は、現代美術の最高峰の美術館のひとつだと思ってるんですよ。だからこそ、ここでやれたら名誉なことだなと思ってました。ただ、漫画の原画展をやれるのかな? とも思ってましたけど。

椛島 どうして?

荒木 当時は、まだ美術館で漫画の原画展を開くっていうのが一般的じゃなかったんです。ただ、その前後あたりから漫画のようなサブカルチャーを現代美術が取り入れ始めてて、それが表に出てきてるっていう感覚もあったんですけどね。

椛島 「冒険の波紋」展は、この金沢がとりあえずは最後ですよね。

荒木 そう。各地で開催したけど、建物が変わると雰囲気も変わるね。天井の高さも照明の考え方も、どれも会場によって違う。空間が全然違いますね。金沢は新型コロナウイルスの影響で開催が2年くらい延びちゃったけど、やっとここで開催できて感慨深いですね。

椛島 『ジョジョ』の連載が始まった当時、「内容は面白いけどイギリス貴族の話だし、アンケートは苦戦するかも」って正直思ってた。それが30年を経て、ここまで続いたんだからすごいですよね。とにかく長い間、お疲れ様でした。

荒木 いやいや、まだ終わってないよ! 新作の準備もしてますから!

椛島 ああ、そうだね(笑)。新作も頑張ってください。楽しみにしてます。


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