Shinkenzemi (February 2012)
Asahi Shimbun (December 2011)
Interview Archive
An interview with Hirohiko Araki in the "Japanese Langauge" section of the February 2012 issue of "Shinkenzemi Junior High School Courses".[1]
Interview
マンガを描き続けた中学時代。
ヒロミ (以下、ヒ): いつからマンガを描いていたんですか?
荒木先生 (以下、荒): 小さいころから描いていましたね。中学生のときに友達に見せたら、「おもしろいね」と言ってくれて、ますます描くようになりました。
国美 (以下、国): 勉強や部活もあったと思うんですが、いつマンガを描かれていたんですか?
荒: 部活は剣道部に入っていました。宿題を終わらせて、映画を観て、それから描いていました。映画なんかを観ると描きたくなるんですよ。あとは、土日や夏休みに描いていました。
ヒ: 両立されていたんですね!
登場人物は細かく設定する。
国: マンガ家さんって絵を描くことがお仕事なのだとばかり思っていました。
荒: ストーリーを作って、絵を描くのが仕事ですね。
ヒ: どうやってストーリーは作られるのですか?
荒: はじめに、登場人物を作ります。僕の場合、マンガを描き始めたときは、「憧れ」を元に登場人物を作っていました。「こういう人になりたいな」とか「こういう人が友達にいたらいいな」と考えて作っていましたね。
ヒ: 先生の作品はほかのマンガと比べてもかなり細かく登場人物を設定されていますよね?
荒: どんな性格なのか、どんな癖を持っているのか、食べ物は何が好きか、などできるだけ細かく設定します。それだけではなく、地球上のどこにいるかというのも決めているんですよ。マンガに直接描いていませんが、太陽がどっちにあるか、キャラクターはどっち方角を向いて話しているか、まで意識して描いています。
国: そんなに細かく設定されているとは驚きです!
荒: そこまで想像しながら描いていますね。でないと、実感が湧かないんですよ。
ヒ: なるほど、だからこそ存在感のある登場人物が生み出せるんですね。ストーリー展開はどのようにして生まれるんですか?
荒: ちょっとずつ作っていくんですよ。一気にはできないです。が、何を描くかのアイディアは1個あればいいんですよ。基本的にアイディアはいつも1つなんです。2つ以上あると逆に話が複雑になってきますね。ただ、これはプロを目指す人用の話ですけどね(汗)
マンガにもBGMがほしい。
国: 先生のマンガは効果音が独特ですよね。
荒: マンガにもBGMがほしいと思ったんです。例えば、ホラー映画ならシャワーシーンで突然「ギャン!」という効果音が入ったりしますよね。そういうものがマンガにもほしいと思って取り入れています。
ヒ: 擬音語や擬態語は多様な表現ができますよね。何か意識されていることはあるんですか?
荒: 緩急が大切ですね。ずっと強い口調で描いても強く感じないんですよ。それよりもクラシックのようにゆるやかなところから「ギャン!」と強い表現をした方が強く感じるでしょう?
国: それらの表現はどうやって考えているんですか?
荒: 主に音楽や映画のBGMを参考にしていますが、歌舞伎のイメージもあります。歌舞伎で見得をきるときに「ダン!」など音が入りますよね? 日本文化の伝統的な表現なのかもしれないですね。
ヒ: なるほど! そこにルーツがあるのかもしれないですね!
「なぜ」を意識して読む。
ヒ: ストーリーを作る上では、多くの本や映画など様々なものを読んだり観たりされるかと思いますが、そのときに意識していることはなんですか?
荒: 「『なぜ』、この人はこのような行動を取ったのだろう?」という『なぜ』を意識して読んでいます。
ヒ: 登場人物の行動の理由を追う、ということですか?
荒: そうですね。小説に限らず、伝記などのノンフィクションでも同じような意識で読んでいます。「『なぜ』そのアイディアが生まれたのか?」など、「今までにない発想」をしている作品が好きです。
ヒ: 「今までにない発想」を発見することを楽しんでいるんですね。
荒: あとは、「自分だったらどうだろう」とか「なんでだろう」と考えながら読むようにしています。
国: 子どものときからそのような意識で読んでいたのですか?
荒: そうですね。それが「おもしろい!」と思って読んでいました。
ヒ: なるほど。作品の良さを引き出しながら読んでいらっしゃったんですね。
荒: マンガを描くときもこの『なぜ』を表現することを大切にしているんですよ。
「的を絞る」生き方をしてほしい。
ヒ: 最後に中学生に向けてメッセージをお願いします。
荒: 人生の「的を絞れ」ってことですかね。例えば、国語を勉強するのもそのためであってほしい。
国: 「的を絞る」ですか。将来の夢を一つに絞るのは不安があるのですが……。
荒: 絞るのは「人を癒したい」とか、漠然としたものでもいいんです。ただ、大人になると誰も守ってくれない瞬間が必ず来るので、そのときのために「信じられるもの」を見つけてほしいと思います。
ヒ: そのためにも国語は勉強するべきであると?
荒: 国語は人生の基本だと思います。言葉の正しい意味や相手を気遣う敬語などを知っているのと知らないのとでは、人間としての厚みが違いますよね。それにいろいろな情報を判断するときの基準にもなると思います。若いうちはよくわからないかもしれませんが、しっかり勉強してほしいですね。
ヒ・国: 本日は本当にありがとうございました!