Yasufumi Soejima (March 2022)

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Published March 19, 2022
Missing translation
JOJO magazine 2022 SPRING Cover

An interview with Yasufumi Soejima, an animation director and CGI artist from David Production. It was published in the Spring 2022 issue of JOJO magazine, released on March 19, 2022.

Interview

Transcript

『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』
エンディング 絵コンテ/演出/3DCGI

ソエジマヤスフミ
SOEJIMA YASUFUMI

アニメ『ジョジョ』シリーズで、各話のEDに流れる往年の名曲の数々。こうした楽曲を引き立たせるのが、スタイリッシュで『ジョジョ』らしさ溢れる映像だ。そこで今回は、第1部~第4部までのED映像のメインスタッフであるソエジマヤスフミ氏にED映像の製作についてお話を伺った。映像の「匠」の真髄、とくとご覧あれ。


ロケハン
第4部制作にあたって、杜王町のモデルとなった仙台市へ取材に行きました。すると、「ああ、先生はこの場所を参考にしたんだな」というところがいくつも見つかって面白かったですね。例えば吉良吉影がサンドイッチを食べていた場所の近くにある池とか。その池について調べてみると「ああ、だから吉良がここで食べていたのか」と納得しました(笑)。実際に足を運んで初めてわかる空気感もあるので、旅行が出来るときが来たらぜひその池にも足を運んでその理由を見つけ出してみてください。
エンディング映像のコンセプト

――ソエジマさんは第1部から第4部までのTVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズのEDで主要スタッフとして関わっていますが、シリーズを通して大切にしていたことは何でしょうか?

監督の津田尚克さんから言われたのは、「予感・予兆・期待」です。OPやEDを通して物語が全てわかってしまうのではなく「なんとなくこのキャラクターに死の匂いはするけど、希望の光も見える」と初見の視聴者に感じてもらえたら成功だね、と。そのために物語の終着点を絵的なメタファーで入れるようにしました。

――なるほど。今回は特に第4部に焦点を絞ってお聞きしたいと思います。というのも第4部のEDでは新しい試みが多く取り入れられていたと思うからなのですが、どのようなコンセプトで作られたのでしょうか?

王道のロードムービーだった第3部までと異なり、第4部は「町に潜む何かが自分を狙ってくる」サスペンスホラーの要素が強く、ある意味「町自体が主人公」という実験的な作品です。ですから視聴者が「次に誰が出てくるんだ?」と思ってもらえるように、次々とキャラクターが現れては消えていくという映像にしました。その中で、東方仗助をはじめとしたキャラクターたちが第4部でどのような存在なのかを視聴者が展望できるように描くことが狙いでした。いわば、人物自体がランドスケープ (風景) とでもいうような。

――ジョジョシリーズのEDでは初めて3Dが多く取り入れられましたが、これは実験的な意味合いが強かったのですか?

いえいえ。第1部と第2部はタテやヨコのスクロール、第3部はワイプアクションなどをやりながらワンカットを見せていましたから、今度は奥行きで行ってみようと考えました。縦横と来たら次は奥行きと、ひねりのない単純な発想で(笑)。ならば3Dでどんどん進んでいくような手法が最適だと思い、取り入れたのです。

――映像を作るにあたって、主題歌自体の影響もあったのでしょうか?

あったと思います。各部のED主題歌は、荒木飛呂彦先生がそれぞれの部を執筆していた当時よく聴いていた曲や、執筆時に作中のイメージに合うと思っていた曲の中から選ばれているとお聞きしています。ならば、漫画を読んでいた人に当時を思い起こさせる映像にしようと意識していましたね。ですから当時世界で流行していたミュージックビデオのニュアンスを取り入れたりもしたんです。

完成までの道のり

――映像制作はどのような過程で行われたのでしょうか?

最初に絵コンテを書きます。当時は僕も3Dの仕事を手掛けていたこともあり、通常ならスタッフにお任せするところも手間を省くために自分である程度作りましたね。大きい空間を作ったあとで、町に貼り付ける駅やヨットハーバーなど大きなものを作り、「こういう風にテクスチャを背景に描き込んで下さい」とグラフィックデザイナーさんに発注するんです。それをブラッシュアップするのですが、実際に3Dでアニメーションを動かすと、背景で次々とミスが見つかるので、一つ一つ直さなくてはいけないんです。ここまででおよそ1ゕ月ですね。本来なら3ゕ月くらいは欲しいのですが、そうも言っていられませんよね。

――映像の中で徐々に増えていくキャラクターたちも話題でしたが、ベースの映像が完成した後に作っていたのですか?

そうですね。各話ごとに新キャラクターが登場すれば付け足し、退場すれば省いていくを繰り返していたので、そこも大変でした。普通に3Dで制作すると恐ろしく手間がかかるんです。言葉で説明するのは難しいのですが、3Dカメラに工夫を加えて、キャラクター自体は透明なシートに描いたものを差し引きするだけで調整できるようにはしました。

――最終話まで作業が続くのですね。

しかも頻繁にキャラクターが登場したり、退場したりするので、その管理だけでも大変でした。予めリストを制作して、差し替えを行っていましたね。

――映像が駅から始まった理由とは?

第1話で空条承太郎が杜王駅に降り立つところからこの物語がスタートして、最終話で港から旅立っていくので、EDも本編とリンクさせたんです。

――途中で仗助が曲に合わせて歌詞を口ずさむ場面が入りますよね。非常に印象に残るカットです。

あのシーンは津田さんのアイディアを取り入れました。僕は世界観押しで行きたかったんですが、津田さんがどうしても歌わせたかったみたいで(笑)。

――ほかにもたくさんのキャラクターが登場していますが、中にはエニグマの少年のように初見ではわかりづらい場所にいるキャラクターもいますね。

視聴者に「探す楽しさ」を感じてもらいたいと思っての試みです。岸辺露伴の部屋の本棚に『魔少年ビーティー』を入れてみたり。そういえば、第4部は『ビーティー』を思わせる描写も随所に出てきていますね。

――第4部のEDは色彩も独特です。

EDのキャラクターの色は、荒木先生の画集をベースに津田さんと話し合って決めました。さすがに本編では派手すぎて使えなかった色も、EDでなら…と思いきりました。

――色の面でも第3部までとはアプローチが異なると感じますが?

荒木先生が部によって選んでいる色合い、バランスを使い分けられているので、アニメもそれに影響を受けたところはあると思います。第3部まではリアリティ重視な色彩が多かったのですが、第4部はサイケデリックなショッキングピンクなども使っていますよね。光って目に飛び込んでくるような色合いをあえて取り入れることで、杜王町の不気味さを視覚的に表現されていたのかもしれません。

――全体を通してみると、日本のアニメにはあまりない雰囲気の映像になっている気がします。

先述したように、当時から見て一昔前に流行したアーティストのミュージックビデオを参考にしている部分もあります。デスメタルっぽくスピーディー且つ手加減しない映像表現とか…日本では放送できないものばかりなんですけど(笑)、そのへんのエッセンスは取り入れたいなと考えていました。

TVアニメ『ジョジョ』の制作を経て

――ご自身にとって、TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』はどのような作品でしょうか?

僕にとっての新しいベンチマーク的な作品ですね。というのも、第2部くらいまでは原作の描写を忠実に再現することを第一に考えて作っていたのですが、第3部くらいからかな? 原作をリスペクトしつつも「この時代を描写するならコレだ!」と自分なりに感じたことをコンテに書いていくようになったんです。せっかく学生時代に読んでいた大好きな作品に携わるのですから、踏み込んだ表現をしたいじゃないですか。

――『ダイヤモンドは砕けない』が放送された後で、ソエジマさんの周囲からはどのような反応があったのでしょうか?

幸いなことに高い評価をいただけて「『ジョジョ』のような映像をお願いします」というオファーをいただくようにもなりました。相手が指定した着地点に、スマートに降りるのではなく墜落気味に着地する、とでもいいますか…。オーダーやニーズに合わせると答え合わせにしかならないですし、そうした冒険をしないと実現しない映像があると思っています。私にとって、新しい映像を作れるきっかけになったのが『ジョジョ』という作品です。第5部以降の作品には今のところ携わっておりませんが、機会があれば是非またお手伝いさせていただきたいですね。

――その機会がいつか来ることを楽しみにしております。本日はお忙しいところありがとうございました!


ソエジマヤスフミ
SOEJIMA YASUFUMI
CGIクリエイター。david production所属。TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』では第1部から第4部まで主にEDの絵コンテや演出を担当。OVA『岸辺露伴は動かない』では副監督を務めている。


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