Strung Fuzz (December 2022)
Interview Archive
An interview with Mr.320, from music equipment brand 320design, about the Stone Ocean themed "Strung Fuzz" guitar effector. It was published in the Winter 2022 issue of JOJO magazine, released on December 19, 2022.
Interview
エフェクターStrung Fuzz JOJO SF-1に迫る
Mr.320 interview
幾多のプロミュージシャンから信頼される音楽機材ブランド・320designからの熱烈なラブコールにより、かつてない『ジョジョ』×ギター用エフェクターのコラボが実現した。そして誕生した夢のアイテムが、「Strung Fuzz」だ。本製品の誕生の経緯から、込められた想い、製品の特性に至るまでをレポートする。
――最初に、Mr.320さんと『ジョジョの奇妙な冒険』との出会いについてお教えください。
はい。もともと私は、高校生の頃から『ジョジョ』を、第1部の「ファントムブラッド」からずっと読み続けていました。はじめて読んだときの印象は、「なんだこれは!?」というもの。ディオが馬車から飛び降りてくるところのインパクトが強烈で。映画的な構図と荒木先生独特の絵柄・演出が相まって、えもいわれぬ衝撃を受けましたね。
――特に好きな部やキャラクターはありますか?
それは…悩みますよね(笑)。でも人にはずっと第4部「ダイヤモンドは砕けない」が好きだと話しています。それまでやはりヒーローものの範疇にあるシリーズだったと思うんですが、デザインのモチーフがハート、主人公の能力が攻撃に類するものではなくて「治す」、そして主人公の仗助があのヤンキースタイルでしょう。いったいどんな展開になるんだろう? と、当時、ワクワク感が止まりませんでした。もちろん今でも『ジョジョ』にはずっと衝撃を受け続けていて、「荒木先生、ホント大好き!」ってなっています(笑)。
――この度、『ジョジョの奇妙な冒険』としては初の音楽機材商品化となる『Strung Fuzz』を発売されたわけですが、これはいつ頃から企画されていたのでしょう。
いつくらいだろう…『ジョジョ』と音楽との親和性の高さはつねづね感じていて、作品をフィーチャーしたエフェクターを作りたいと長い間考えていました。周囲に話すようになったのは、5年くらい前からでしょうか。そして、次第にその想いが熱を帯びてきて…。とはいっても、最初はどうしたらよいのかまったくわかりませんでした。ところがあるとき、商品化の問い合わせ先を見つけたんですね。おそるおそる連絡を取りまして…。窓口の方を通じて関係各所に企画説明をしていただいた後、さまざまなタイミングが重なって第6部をモチーフに制作することになりました。
――それでは、「Strung Fuzz」についてのお話をうかがっていきたいと思います。まず、エフェクターの種類をファズにした理由をお教えください。
それはもう、いわずもがなというか…徐倫のスタンド名が「ストーン・フリー」じゃないですか。これは、ロックのパイオニアのひとりである名ギタリスト、ジミ・ヘンドリックスの代表的な楽曲のタイトルでもあります。ですから、ジミが駆使したエフェクターのひとつであるファズを選んだのは、ごく自然な流れですね。また、音色の傾向や回路としては、やはりジミ愛用のファズである「ファズフェイス」を参考にして開発しました。製品名については、まずはストーン・フリーの欧文表記「STONE FREE」から、SとFを使ったネーミングをいくつか考えました。その上で、徐倫との関係性をより強くしたいと思い、「糸を張った」という意味の「Strung」という言葉を選んだんです。
――エフェクトのON/OFFを示すインジケーターを徐倫の肩の痣に仕込むアイデアは、どの時点で決められたのでしょうか。
イラストのセレクトを含むデザインと回路・基板の設計は並行しておこないましたので、わりと初期の段階から考えていました。デザインと設計のどちらか片方だけを決めてしまった後で齟齬が生じてはいけませんので。ただ…このアイデアを思いついたときには、正直なところ、かなり興奮しましたね。これは絶対にいける、と。のちに関係者から、「作品を理解しリスペクトしている人間が作ったものだと思える」との発言もあり、非常に嬉しかったです。
――この製品には、出力する音量を調整するボリュームしかつまみがありませんが、このシンプルな仕様を選んだ理由をお教えください。
歪み系エフェクターには多くの場合、ボリュームのほかに歪み具合を設定するゲインつまみがついています。また歪み系エフェクターの役割は、ギターの音を歪ませて迫力ある音色に加工することですが、ファズにはもっと多様な使い方があると考えています。ソフトに弾いたりギターについているボリュームを絞ったりしてファズに入力する信号レベルを弱くすると、歪みの深さをコントロールできるし、キラキラした透明感のあるクリーンな音を得ることもできるんです。つまりファズは本来、弾き手側の意識…感情次第で音色や音楽表現を自在に操ることが可能なエフェクターなんですね。近年、ファズは轟音を鳴らすためだけに使われていることが多いので、弾き方でもっと積極的に音色を変化させて欲しいと思い、こういった仕様にしました。
――今後、機会があったら『ジョジョ』をモチーフに作ってみたい製品はありますか?
そうですね…。やはり、作中に出てくる波紋疾走=オーバードライブ(ファズと同じく歪み系エフェクターの一種)です。それと、第4部に登場した音石明が愛用するギターにも惹かれます。実現させるのはとても大変だと思いますけど、音石明シグネイチャーギターなんて、弾いてみたいと思いませんか?
――夢は膨らみますね…。それでは最後に、「Strung Fuzz」を手にされた方へひとこといただければと思います。
「Strung Fuzz」は、私の『ジョジョ』への想いやこだわりを凝縮したエフェクターです。これを使って皆さんがそれぞれの『ジョジョ』愛を奏でてくださったら、とても嬉しく思います。
ロックミュージックの最大の特徴であるギター音の「歪み」を生み出すエフェクターの一種。1960年代初頭、つまりロックの黎明期に誕生しており、他の歪み系エフェクターのディストーション、オーバードライブなどよりも長い歴史を持つ。ファズフェイス系、トーンベンダー系、ビッグマフ系、オクターブファズ系…といったように、採用している回路によっていくつかのタイプに分類できる。ジミ・ヘンドリックスはファズフェイス、フェンダー社のストラトキャスターというギター、マーシャルのアンプを愛用。それらはジミのサウンドに不可欠な「三種の神器」と呼ばれた。
電気・電子楽器の出力信号(音)を加工し、さまざまな音色変化をもたらす。その効果と種類には、主に次のようなものがある。
歪み系 音を歪ませ、迫力を与える。オーバードライブ、ディストーション、ファズなど。
ダイナミクス系 音の大小と減衰の仕方を制御する。コンプレッサー、リミッターなど。
モジュレーション系 信号を変調させ音を揺らす。コーラス、フランジャー、フェイザー、トレモロなど。
空間系 残響を加え音に深みをつけたり、やまびこ効果をもたらしたりする。リバーブ、ディレイなど。
フィルター系 特定の高さの音を増幅、減衰させる。イコライザー、ワウ、オートワウなど。