Yoshikazu Iwanami (December 2022)

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Published December 19, 2022
Missing translation
JOJO magazine 2022 WINTER Cover

An interview with Yoshikazu Iwanami, Sound Director for the TV anime. It was published in the Winter 2022 issue of JOJO magazine, released on December 19, 2022.

Interview

Transcript

CREATOR’S VOICE
匠の声

岩波美和
IWANAMI YOSHIKAZU

音響監督

アニメには「音」の要素が3つある。声優のセリフ、音楽、そして効果音だ。音響監督は、監督のもとでこれら音響演出の手伝いをし、監督が望むもの、あるいはそれ以上の音を作り上げる役割を担う。TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ全てで音響監督を務める岩浪美和氏は、アニメ『ジョジョ』の音を作り上げた第一人者といっても過言ではない。『ジョジョ』の音はいかにして作られたのかをお聞きした。


良い音作りのための飽くなき進化

――岩浪さんは、なぜ「音」に関わるお仕事を選んだのですか?

振り返ってみると、小さい頃から音が好きだったんです。お年玉を貯めてラジカセを買ったり、海外の短波放送(BCL)を聞いたり。専門学校卒業後は録音スタジオに就職してアニメや外国映画の吹き替え、CMなどのミキシングをしていました。就職して5~6年で映像演出の仕事も始めたのですが、音響制作会社の方に音響監督のオファーをいただき、しばらく並行してやっていました。すると次第に音響監督の仕事が忙しくなり、気づいたら音響監督だけやるようになって30年。たまたま音が好きだったことから始まって、今に至ります。

――音響監督をやるうえで、大切にしていることは何でしょうか?

『ファントムブラッド』第1話のクライマックスシーン。『ジョジョ』ならではの、熱いアフレコ現場の原型は、すでにこの頃から形作られていた。

音は作品の最終的な仕上げで、ここでしくじると作品が台無しになってしまうんです。ですので、視聴者にどうすれば面白いと思ってもらえるかを妥協せずに考え抜くようにしています。『ストーンオーシャン』の場合は、『ファントムブラッド』の頃に比べると物語が非常に複雑になっていますので、ともすれば視聴者が置いてきぼりになってしまいます。それをなるべくわかりやすくするには、どういった「音」にすればよいかを重点的に考えていました。

――作業に入る前に、原作を読み返したりするのでしょうか。

もちろん読んでいますが、実作業に入る際に一度原作を忘れます。『ジョジョ』に限らず、原作に囚われすぎると「原作がこうだから、わかるでしょ」という態度に陥ってしまいかねないんです。だから一度原作を忘れて、与えられた映像に「音」で表現を乗せるにはどうしたらよいかを新たに考え直しています。

――音響技術は日々進化していると思いますが、『ジョジョ』の音響面でも新しいことを取り入れているのでしょうか?

音響技術以前に、視聴環境がどんどん変わっていますよね。昔だったらテレビを見ている人向けに作ればよかったのですが、スマートフォンやPCで視聴する方が増えたので、イヤホンやヘッドホンで聴く方の割合が大きくなっています。すると音作りの方法もだいぶ変わってくるんです。さらに、国内向けだけではなく、日本と異なる言語文化を持つ諸外国の方々にもわかる音作りも必要です。

――特に『ジョジョ』は海外からの反応も大きい作品ですね。

「昔ながらの日本のアニメってこうだよね」と思わせない、時代遅れにならない音作りを意識しています。それと、いま流行りの倍速で聞かせない対策も考えています。普通の速度で聞かせるために一番参考になるのは、世界的にヒットしている海外の実写ドラマです。音を終止形にもっていかない「引き」を作ることでシーンごとに終止形にせず、このシーンが終わったと思ったら次のシーンに入っていたというのがトレンドになっているので、こうした最新の技法は常に研究して取り入れています。

――常に妥協せず、より良い音を研究しているのですね。

エンターテインメントの仕事に関わる方はみなそうだと思いますが、視聴者に楽しんでもらうのが一番の喜びなので、少しでも面白い作品を作るということを肝に銘じています。

『ジョジョ』の音響制作効果音と音楽について

――それでは、次に『ジョジョ』アニメシリーズにおける音響制作の仕事について伺います。岩浪さんを一番傍で支えているのが、音響効果を担当する小山恭正さんとミキサーの山口貴之さんですね。

二人とは十年以上にわたって、いくつものタイトルでチームを組んで音響制作をしているので、打ち合わせらしい打ち合わせがなくても完成形をほぼ共有することができます。まずアフレコが終わるとダビング作業に入って、音響作業に入る際に僕が楽曲を選曲して「ここからここまではこの曲で」と演出的な指示を入れます。それを山口君が調整して、セリフの加工もしたうえで小山君に渡し、効果音を付けます。そうして音響チームが作った「音」をダビングの現場に持って行き、テストの時に監督に見てもらうんです。幸い、監督に音響演出プランの大幅な修正を求められることはほぼ無かったので、そのあとはもっぱら細かい修正作業だけで完成に至ることができました。『ジョジョ』のダビング作業はスムーズに終わることが多かったですね。

――効果音は岩浪さんから小山さんに指示出しなどはされるのですか?

僕は時々修正するくらいです。小山君はすべての漫画の中で『ジョジョの奇妙な冒険』が一番好きと公言するほど情熱があるので、毎回楽しみながら音を考えてくれます。

徐倫のキャストについてスタッフ間で議論した結果、最終的にはファイルーズさんの情熱とポテンシャルにかけてみよう、ということになりました。結果的に正解だったと思います。期待通り収録期間中に成長しながら、普通の女の子だった徐倫が、強く成長していく様子をうまく表現してくれたと思うからです。(岩浪)

――続いて音楽についてお聞きします。『ストーンオーシャン』では菅野祐悟氏(※作曲家、編曲家。『スターダストクルセイダース』以降のシリーズで音楽を担当)が音楽を担当されましたが、どのように仕事を進められたのでしょうか。

劇伴(作中で流れるBGM)はまずリストを作って、作曲家に「この音楽はこの場面で使います」という形でいくつか楽曲を発注します。リストの作り方ですが、一度シナリオを受け取って原作を読み、全話数の中で必要と思われる楽曲をリストアップします。菅野さんは日本の劇伴作曲家の中ではナンバーワンだと思っているので、楽曲自体に細かいリクエストは出さずに、ほぼお任せしています。

――完成した楽曲を聞いて、どう思われましたか?

この曲はどういう使い方をすればよいかを想定して毎回作曲してくださいますので、曲を聞けば「これが肝だから盛り上がる場面で使ってね」「ここは編集しやすいようにしたから尺を調整してね」というのがわかるのはさすがです。実際、オンエアで楽曲がハマっているとゾクゾクします。「菅野さん、こう来たか!」と良い意味で予想を外してくれる楽曲もあります。

――『ストーンオーシャン』で特にお気に入りの曲はなんでしょうか。

恐らく皆さんが「『ジョジョ』のBGM」と聞いて連想する、徐倫が敵を倒すシーンで流れる楽曲です。実は、発注する音楽の半分がこの曲のアレンジでして。それには理由があって、メロディーを視聴者の心に残すためには、何回も繰り返し聞いていただいて「あ、これが『ストーンオーシャン』のメロディーなんだ!」と思ってもらう必要があるんです。そのうえで、いざこのメインテーマの戦闘曲が流れると大きなカタルシスが生まれます。これは映画音楽の基本の構築方法ですが、そうしないとせっかくの曲が生きないんです。

キャスティングやアフレコで大切にしていること
岩浪氏の音響チームが、『ジョジョ』独自の擬音をどう解釈してアニメで再現したかを楽しむファンも多いはず。

――声の収録についてお聞きします。『ジョジョ』シリーズの新作が発表されるたび話題となる声優のキャスティングですが、声優を選ぶ際はどのような点を重視されたのでしょうか?

予測不能なストーリー展開、個性的な言動が特徴の作品ですから、普通の生活の延長線上にあるリアリズムを求められるお芝居とは演技の方向性が全然違います。ですので、非現実的な役も演じきるキャパシティがあるかどうかを重視しました。私の一存で選ぶわけではなく、みんなが納得して決めたキャスティングですので、心配はまったくしませんでした。

――アフレコでは、どのようなことに気を付けているのですか?

事前に「このシーンは、こういう芝居でしょ」と自分の中で構築しすぎないことです。以前、声優を自分の演技プランにはめ込みすぎた結果、逆につまらなくなってしまったことがありまして。声優の考えた演技のほうがよかったんじゃないかと反省したことがあったんです。ですので、アフレコに関しては出たとこ勝負というか、声優の演技の幅を狭めすぎないようその場その場でバランスを考えてジャッジするようにしています。

――アフレコでは一発勝負の緊張感も大事にされていると伺いました。

一発勝負で声優が情熱をぶつけ合うと、凄まじいエネルギーやシナジーが生まれるので、それを上手くすくい取れるように心がけています。特に『ジョジョ』は作品自体が圧倒的な熱量を持っているので、練りに練った舞台のお芝居のような演技より、ライブ感ある演技の方が合うんです。

――かつて岩浪さんは「『ジョジョ』に小声はないです!!」とおっしゃったと伺いました。(※JOJO magazine 2022 SPRING 「親子キャストスペシャルトーク」)

(笑)。同じ空間にいるのに内緒話をするとか、アニメのお約束じゃないですか。なら、形ばかり小声にするよりも…というだけのことで、当然、小声にしなきゃいけない場面もありますよ。エネルギーが必要なシークエンスなら小声じゃなくてもいいよと言った記憶はありますが、「『ジョジョ』に【全ての】小声はいりません」とは言っていないはずです(苦笑)。ただ、情熱を込めすぎてマズいということはありません。

石塚氏の熱演も『スターダストクルセイダース』の見所だ。

――『ジョジョ』の収録は特に体力を消耗すると聞いています。

一度、コントロールルームの中でお芝居を聞いたことがありますが、皆さん驚くほどでっかい声を出していて、声優の大変さがわかりました。『スターダストクルセイダース』でジョセフ役を演じた石塚運昇さんが「すっげえ頑張って大声出しているのに、テレビじゃ全然そう聞こえないんだよなぁ(笑)」とぼやいていたのをよく憶えています。

――ありがとうございます。それでは最後に、読者へメッセージをお願いします。

『ジョジョ』というタイトルはいくらでも掘り下げられる作品で、本書にも目から鱗が落ちるような情報があると思います。一度アニメをご覧になった方でも、見返してみると新たな発見があるはずです。世界中の人を魅了する素晴らしい作品ですので、ここで得た知識を活かして原作やアニメを見返して、新しい何かを見つけてください。この記事が『ジョジョ』という素晴らしいタイトルを活かすための一助になればよいなと思います。


岩浪美和 いわなみよしかず
IWANAMI YOSHIKAZU
音響監督。『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズは『ファントムブラッド』から音響監督を担当。音響監督としてほかに『ガールズ&パンツァー』シリーズ、『ソードアート・オンライン』シリーズなどを担当している。


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