Aomaru Jump (February 2004)
Kahoku Shimpo (February 2004)
Interview Archive
Playboy (July 2004)
A long interview with Hirohiko Araki discussing Steel Ball Run from the special edition of Aomaru Jump released on February 26, 2004.[1]
Interview
- Your new serialization "SBR (Steel Ball Run)" is highly anticipated, but this isn't JoJo's Bizarre Adventure Part 7, is it?
Araki: Although I would think that people who read JoJo Part 6 would understand, the world reset and entered the next new world, and that's where the setting is now. But the theme of JoJo isn't about writing parallel worlds. It's just the starting point of the tale, and unrelated to the story.
- So that's why you removed JoJo from the title?
Araki: That's correct. However, people who were fans from the beginning are free to consider SBR as JoJo Part 7, and so SBR is a new work existing on the extension of JoJo.
- Is the story of SBR something you had thought up a while ago?
Araki: That's right. I already have a general outline of each story theme planned up to part 9.
- Huh? Are we allowed to leave this in?
Araki: Even though I say Part 9, it doesn't mean it'll be a continuation of SBR. This isn't a saga like Star Wars. The theme and narrative structure will be completely different.
[Translated by MetallicKaiser (JoJo's Bizarre Encyclopedia)]
Note: Missing full transcript.
『SBR 』連載スタートにあたり、時間にして200分以上にも及ぶロングインタビューを敢行。物語のなりたち、各キャラクター、 『JOJO』シリーズとの関連性など、気になる質問を一気にぶつけたッ!!
『SBR』 は 『ジョジョ』の延長線上の新作!!
―― 待望の新連載『SBR(スティール・ボール・ラン)』ですが、これは『ジョジョの奇妙な冒険』第7部ではないんですよね?
荒木『ジョジョ』第6部を読んでいた人ならわかると思うけど、世界が一周しちゃって次の新しい世界に入って、そこが舞台になってるんです。でも『ジョジョ』のパラレルワールドを描くのがテーマじゃないんですよ。物語の大前提っていうだけで、それはストーリーとは関係がないんです。
―― だから、タイトルから『ジョジョ』を外したんですね?
荒木 そうです。ただし、昔からのファンの人が『SBR』を『ジョジョ』第7部と思ってもらってもいいし、つまり『SBR』は『ジョジョ』の延長線上にある新作っていうことなんです。
―― スタンドは出てくるんですよね?
荒木 それっぽいのは出てくるかな?でも、あろ飛び抜けた能力として理論も最初から説明して、新しい視点でやっていくから「またが」という感じにはならないですよ。
―― ジャイロの鉄球の能力を見て「あれは波紋では!?」というファンもいるようですが…。
荒木 あー、ちょっと近いかも。その辺の理論も作品の中で説明しますよ、エセ科学が入るかもしれないけど(笑)。
―― 各キャラクターについてお聞きします。ジャイロのデザインのポイントは?
荒木 1890年頃の衣装ってリアルにやると古くさく見えるかもしれないので、近未来の戦闘服的っていうかSF的な魅力も加えたコスチュームにしてみました。
―― ジャイロの笑顔が衝撃的でしたね、金歯(笑)
荒木 アウトローの魅力が出したかったんですよ。「コイツは普通じゃないぞ!!」って一目でわかるように(笑)。だから10年前くらい前だと、ピアスやタトゥーがその役目をもっていたけど、今の時代だとピアスなんか普通になっちゃってるじゃないですか。だから金歯にしたんですよ。それにじつは歯のオシャレに関しては、ジャイロの過去に深く関係してるのがもしれないし…。読者も「どんな過去なのかな」という謎が深まると思ったんでやりました。
―― ジャイロの鉄球ですが、これがタイトルの「スティール・ボール」?
荒木 う〜ん、それでもいいのかもしれないけど、ふたつの意味がかかっているんですよね。まぁ、関係はありますね。
ーー 今はまだ言えない、と…。ではもうひとりの主人公、ジョニーのデザインのポイントは?
荒木 元天才ジョッキーって設定だから馬のマークが象徴です。ジョースター家の人なので首に「星のアザ」もあるんじゃないかな?(笑)ジョニーっていう名前もジョナサンがベースです。ただ血統がテーマじゃないんで、そこは誤解してほしくないんですよ。『ジョジョ』キャラクターの誰かの先祖だとかっていうのは単なる暗示で、深い意味はないんです。
予選不可能なレースをひたすら描きたい!!
―― 今回登場するディオは 『ジョジョ』第1部や第3部のディオと雰囲気が似ていますね。
荒木 そうですね。生い立ちとかも似てます。違う部分は、石仮面(注・つけると吸血鬼に変貌。『ジョジョ』第1部のアイテム)がなかった世界にいるってことかな(笑)。でも今回は最大の敵にはならないと思いますよ。そういう物語じゃないんで。ただジョニーとディオは戦うことになるかもしれない。
―― スティールは髪型が奇抜ですね。
荒木 あ、あれは帽子かな?普通の男性にはしたくなかったんですよ。やっぱりプロモーターの怪しさがほしかった(笑)。でも熱い情熱ももっている人で、ロマンチストなんですよ。やっばプロモーターの怪しさがほしかった(笑)。でも熱い情熱ももっている人で、ロマンチストなんですよ。ただレースには莫大な利益も絡んでくるので、そこで苦悩するかもしれないキャラですね。スティールの運命はレースの運命でもあり、「太陽にほえろ!」の石原裕次郎みたいな存在かな。ちなみに僕の初代担当編集からは「スティールを深く描け」と言われました(笑)。
ーー ポコロコは?
荒木 強敵になっていく予定だけど、読者的には「憎い悪役」にはならないと思いますよ。善と悪の対決じゃないし、レースを描くマンガにはそういう敵もアリってことで。味わい深い人になると思います。
ーー 『SBR』には帽子をかぶったキャラが多い気がするんですが…。
荒木 基本的にみんなレースの参加者なんで、雨が降った時とかを考えてデザインしたんですよ。雨がザーッて降った時に帽子をかぶっていると、うしろ姿とかがカッコイイし。あと、砂漠地帯はムチャクチャ暑くて日射病になりそうだったからかな(笑)。それに帽子はキャラクターの特徴をつけやすいんですよ、ヘアスタイルと同じで。
ーー キャラの差別化に役立つ?
荒木 そうそう。『SBR』って馬に乗ったレースだから、キャラを背後から描くと馬のオシリばかりになって(笑)、誰だかわからなくなるんですよ。馬もデザインを変えたり、いろんなパーツをつけて差別化しているけど、やりすぎると鳳のマンガになっちゃうし(笑)。その辺の兼ね合いは麗しいですね。
ーー 『SBR』のタイトルは『ジョジョ』 第6部最終回のWJ巻末コメントで発表されましたが、その由来は?
荒木 自動車の大陸横断レースを描いた「キャノンボール」っていう映画があって、そこからもじってつけました。ストーリーは全然違いますけど。
ーー なるほど、『SBR』はレースのマンガだということですね。
荒木 そうです。とにかくレースをひたすら描きたい。ただ、そのレースも「主人公が勝つ」っていうのではなく「理が勝つかわからない」っていう感じがいいんですよね。メインのキャラでもリタイアすることがあるだろうし。
ーー その辺の先の展開は深く考えてはいない?
荒木 何が起こるのかわからないのは僕も同じで。僕自身がレースに参加している感じですね(笑)。
暑すぎて死ぬかと思ったアメリカへの取材旅行!!
ーー 『SBR』第1話ですが、主人公ではなく、砂男のエピソードから物語が始まるというのが斬新ですね。
荒木 そうですね、少年マンガの定石を少しはずしたかったんですよ。あと、砂男は時代背景を示す役割もあったんで。例えばレースの記者会見の場面から始めちゃったりすると、それが現代なのか過去なのか未来なのか、全くわからないじゃないですか。
ーー なるほど。砂男はネイティブ・アメリカンで、彼が最初に出ればなんとなく「西部劇の時代」だとわかる…。
荒木: そう!! それと砂男が最初に登増してから主人公のジャイロとジョニ―を出して、その後にパーンと再登場させると「砂男が最大のライバルか!?」っていう読者のストーリーに対する想像が動いたりすると思うんですよね。感情移入もしやすくなるだろうし。
ーー 『SBR』を描くにあたって、アメリカへ取材旅行に行かれたんですよね?
荒木 「SBRレース」のスタート地点となるサンディエゴとかグランドキャニオンなどを取材してきました。
ーー 取材の時期はいつ頃?
荒木 昨年の7月かな。この時期の暑さとか雰囲気が知りたかったんで、狙って行きましたね。サンディエゴとか砂漠地帯は湿気がないから、ものすごく暑いのに汗が出なくてグアーッて感じで、つらかったですね。
ーー 一番印象に残っている場所は?
荒木 デスバレーですね。本当に暑さで死ぬなと思った(笑)。
ーー 気温は何度くらいあったんですか?
荒木 何度だろう?でも「暑さでデジカメのデータが飛んじゃうよ」って言われたから45度くらいあったんじゃないのかな?直射日光がヤバイと思ったんで、写真を1枚撮影するたびにササッとデジカメを服の中に避難させてましたよ 〜(笑)。
ーー 取材の時はビデオではなく、写真が多いんですか?
荒木 そうですね、写真です。ビデオだとあとで見直せないんですよ。写真だったら机の上にバーッと広げて、すぐ見られるじゃないですか。
ーー 今回の取材で、写真はどのくらい撮りました?
荒木 9日間で、1000枚くらい撮ってきたかな。僕は、取材だとひとつの場所でも、必ず6枚ぐらい撮るんです。1枚撮影したらその右側と左側、あとはうしろとか空とか。
ーー つなげると360度のパノラマ写真になると(笑)。
荒木 そういうふうに撮らないと正面がわかっても「右側には何があったっけ?」って気になって「もう1回行かねば」っていう困った事態になるんだよね。
ーー そのわからない部分は、ウソでごまかしたくないんですね?
荒木 そうですね。僕は、作品にはリアリティが欲しいんですよ。だって、キャラクターは架空の人間ですから、せめて舞台設定は現実の場所がほしいんです。だから、そういう意味もあって、僕にとって 取材は大切ですね。
毎週31ページの連載は想像以上に大変だ!!
―― 今回の『SBR』は毎週の連載が31ページという驚異的な形式ですね。
荒木 WJ(ウィークリー・ジャンプ)って基本的に連載枠が1作品19ページなんです。でも、それだと僕の場合、ストーリーの兼ね合いとかでページがどうしても足りないんですよ。で、編集部と相談した結果、1回のページ数を増やしてみようという話になったんです。ただ、肉体的に1週間に31ページも描けるわけではないから充電期間が必要になるんですけどね。
ーー ページ数が増えるとどうですか?仕事のリズムとか。 荒木 うーん、ちょっとつらいですかね(笑)。リズム的には週刊連載で19ページを描いていくほうが合っているんですよ。19ページくらいなら「あと3日くらいで終わるかな」ってわかるんだけど。「今までより12ページ多いから、あと1日増やせばいい」といった単なる数字の問題ではないですね。
ーー 『SBR』で描きたいことはなんでしょうか ? やはりレース、それから主人公の成長ですね。レースに関しては『ジョジョ』のディオとか吉良みたいな悪の強敵は出ないんじゃないかな。『SBR』はそういうバトルものとは「ちょっと違うぞ」って思ってますし。だからレースなんですよ、レースなら正義同士でも戦えるし、そこに悪役も絡ませられるし。
ーー 作品全体のテーマは?
荒木 自分の作品の中には常にあるのは「運命」、それがテーマじゃないかな。『SBR』レースに参加する人は全員、レースに勝つしか行き場がないんですよ。で、マンガを描いていて主人公の 動機とかを突きめていくと「運命は 絶対にある」とわかってくるんですよ。
『SBR』と『ジョジョ』、その違いとは?
ーー 『SBR』と『ジョジョ』、作品を描く上での違いは、どこですか?
荒木 『SBR』はストーリーが直線的なんですよ。『ジョジョ』はね、網の目のような感じでやってたんですけど、 『SBR』はストレートポールですね。
ーー 直線的…ですか?
荒木 麗しい?描いている人じゃないとわからないかも(笑)。とにかく『ジョジョ』の第6部とか複雑になりすぎたところもあるので、わかりやすさを大切にしてます。
ーー 『ジョジョ』第1部の頃と比べて、作品に対する姿勢が変わったりした部分はありますか?
荒木 「人間賛歌」っていう大きなテーマは変わっていないけど、キャラク ターの悲しい部分とかも描きたいっていう気持ちが出てきましたね。「善対悪」の図式も昔ほどこだわらないし、そういう意味では少年誌の王道とは、少し違っているのかもしれないけど、でもそれがマンガ家の成長として仕方ないことだったら「特にこだわらなくてもいいのかな」と思いますし。
――『SBR』の物語は、かなり以前から考えていたものなんですか?
荒木 そうですね。だいたい『ジョジョ』第9部くらいまではテーマを決めているんですよ。
―― えっ。それは載せちゃって大丈夫なんですか?
荒木 第9部って言っても「続く」と言うことじゃないんで。『スターウォーズ』みたいなサーガではないんですよ。テーマも物語の形態もまるで違うし。
[...]
『SBR』は今回から始まる物語!!
ーー このインタビューが掲載される「青マルジャンプ」は、クセのある新人作家を集めた増刊なんですよ。
荒木 「この人の作品だ」って見ただけでわかるのって、すごく感じがいいと思うんですよ。個性が強い作家さんの作品を読みたいと思うし、本を買いたいと思うんだよね。いくら読みやすくて面白くても、作家性のない作品は個人的にはあまり好きじゃないです。最初のうちは欠点とかあるとは思いますけど、描き続けていくうちに長所になっていきますので、頑張ってそこを押し出してほしいと思いますね。
ーー それは体験上のアドバイス?
荒木 そういうわけでもないんですけど異色の作家っているじゃないですか。そういう人がもっと増えてほしいですね。『変人個屈列伝』じゃないですけど希望をもって「やり続けてほしい」ですね。絵画の世界でも「上手だけどクセがない絵」というのは結果的には評価されないんですよ。最初は嫌われていても、ゴッホみたいに強烈な個性が あると後になって評価されるし、ピカソみたいに誰が見てもすぐに「ピカソだ」とわかるっていうのは大切だなと。 そういうクセのある作品がいいと思いますよ、僕は。最初から誰かの真似をして売れることだけを考えるってのは良くないんじゃないかと思います、マンガに対する姿勢として。
―― それでは最後に、『SBR』ファンへのメッセージをお願いします。
荒木 古くからの読者には、深読みはしないでほしいって思います。新しい世界に突入しているんだし、純粋に「今回から始まる物語」として読んで欲しい。でもテーマは変わっていなくて「人間讃歌」や「運命の悲しさ」で、『SBR』でもそこを追求していきたいですね。
(2003年10月22日及び2004年1月21日、荒木先生のご自宅にて収録)