Interview Archive
An interview with Hirohiko Araki from the July 2003 issue of Shueisha's COSMOPOLITAN magazine.
Interview
僕にとってマンガは日記みたいなもの。次回作も今の作品の先にしかありません
僕のマンガを読んだことのない年配の方と、9歳の女の子から絵をほめられたことが、パリで個展を開く自信になった
『週刊少年ジャンプ』の数あるマンガの中で、'87年の連載開始以来、16年にわたって読者の圧倒的な支持を受け続けている作品がある。独特のタッチをもった美しい絵と、奇妙なまでに精緻な世界観に裏づけられた、スリリングなストーリーをもったその作品が『ジョジョの奇妙な冒険」。コミックスは通算で79巻を超え、最新のシリーズPart6『ストーンオーシャン』も、先月、無事終幕を迎えたばかりだが、その作者が彼、荒木飛呂彦だ。
「もちろん、連載開始当初は、こんなに長く続くとは思ってもいませんでした。でも『エデンの東』とか『ゴッドファーザー』みたいなアメリカ小説の伝統、というか、話ごとに主人公が変わっても、じつはストーリー全体は何世代にもわたって続いていくような物語を書きたい、ともずっと考えていたんです」
19世紀のイギリスに端を発する、誇り高き紳士ジョナサン・ジョースターと、古代遺跡から発掘された石仮面の力で吸血鬼となったディオ・ブランドーとの善と悪の闘いが、その後も延々、シリーズを重ねるごとに世代と国を超えて続いていく……一度読んだらやめられない、超ド級の冒険大河ドラマ、である。
「僕が小学生のころは、『少年ジャンプ』が創刊されたり、『巨人の星』『あしたのジョー』が大人気で、すごくハマったんです。自分の生き方までマンガに教えてもらったような気がしましたね。ジャンプはお守りというかバイブルでした。どんなに荷物が重くなっても、学校のキャンプには必ず持参。手もとにあるだけで安心するんです。もちろん、ホームシックになると取り出して読んでいたし。マンガには、すごく救われた気がしています」
そんな読者としてのマンガとのつき合いが、次第に、自分の思いをマンガで表現したいという気持ちに変わっていったのは高校時代。
「テレビの『刑事コロンボ』が大好きで、あれは犯人を最初に見せちゃうじゃないですか。見ていると、犯人に感情移入している自分がいるんですよ。コロンボが『ちょっと待ってください』と言うとイヤーな気持ちになったりして(笑)。そんなふだんの価値観と違うものを見せられたりすると、本当にみんなが言っていることは正しいのか、とか物事をすごく多面的に考えるようになりましたね。次第に人と違う考えが浮かぶと、それを何かで表現したいと思うようになったんです」
さまざまな表現手段がある中、彼が選んだのは、やはり「マンガ」だった。
「マンガって、いろいろな魅力があるんです。絵はうまいけど、ストーリーが書けない人でも、絵がすごくへ夕な人でも、マンガ家になっている人はいる。文章だけでも、映像だけでもない魅力がある。それに、学校の勉強ではほめられたことがないのに、授業中に描いたマンガとかでは、友達とかから、絵、うまいいね、とほめられたのも大きかったかな」
この4月に、パリで初めての個展を開いたのも、彼のマンガを読んだことのないかなり年配の人と、9歳の女の子から「いい絵だね」とほめられたことがきっかけだったという。
「フランス人が日本のマンガをアートとして興味をもったのにも驚いたけど、素直に評価してくれたのは自信になりましたね。僕にとってマンガは日記みたいなもの。昨日完結したからといって、まったく違う世界観は描けない。完結した作品の延長線上、連続していく先の部分にしか、興味がないんですよね」
『ジョジョ』の世界は、まだまだ続く! [1]