Animate Times (July 2019)

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Published July 27, 2019
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Interview with Yasuhiro Kimura and Hideya Takahashi, the directors of JoJo's Bizarre Adventure: Golden Wind. Article posted on animatetimes.com on July 27, 2019.

Interview

アニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』木村泰大監督&髙橋秀弥監督 クライマックス直前インタビューゥゥウッ!!!!!|“覚悟”を決めてジョルノたちと共に駆け抜けた怒涛の3クールを振り返るッ!! いよいよ明日、最終話を迎える『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』。ブチャラティの命を賭した機転により、王の中の王が手に入れるべき矢はジョルノの手に渡った。そして、矢の力でパワーアップしたジョルノのスタンド、ゴールド・エクスペリエンス・レクイエムの拳が遂にディアボロに叩き込まれる! 悲願のボス撃破となるのか……!?

ここに至るまでの道のりは長く険しく、失ったものも大きい。仏頂面の裏に正義の心を秘めていたアバッキオ。戦いののちに故郷に帰り、同年代の少年たちと同様の学生生活を夢見たナランチャ。そして、ギャングでありながら誰よりも熱い道義心を持っていたブチャラティ。ギャングという生き方から逃れられなかった彼らは運命に翻弄されるだけだったのだろうか?

ここまで番組を観てきたファンならば、その問いに素直に首を縦に振ることはしないだろう。サン・ジョルジョ・マジョーレ島で、組織を裏切りボスを討つと決断したアバッキオとナランチャ。そして、肉体が朽ちても執念で動き続け、ボスを追い詰めたブチャラティ。安らかながらもゆっくりと死んでゆく人生とは真反対の、苦難に満ちていながらも激しく脈打つ人間賛歌の生き様だった。\ そして、アニメスタッフもまた誇りを胸に作品制作に取り組み続けてきた。『ジョジョ』という大作を背負う名誉と引き換えの重圧は相当なものだったに違いない。だが、ブチャラティが最期に口にした「幸福というのはこういうことだ」と同様のことを言えるように3クール戦い続けてきたはずだ。

編集部は最終話を制作中の木村泰大監督と髙橋秀弥監督にインタビューを実施。『ジョジョの奇妙な冒険』のTVアニメーションシリーズ第1作から携わっているdavid productionの笠間寿高プロデューサーにもご同席いただき、制作背景について伺った。ディアボロとのバトルをはじめ、船上でのダンスや対チョコラータ戦での無駄無駄ラッシュといったファン注目のシーン、そして原作者・荒木飛呂彦先生からのアドバイスなど、これまでの3クールを振り返っていただいた。


【グッズ-ブロマイド】あんさんぶるスターズ! ぱしゃこれ/IDOL SHOT Ver.4【再々販】 『黄金の風』では「チーム対チーム」を意識した(高橋監督) ――遂にクライマックスです。3クールを戦ってきたご感想をお聞かせください。

髙橋秀弥(以下、髙橋):よくここまで来たなという感じです(苦笑)。

木村泰大(以下、木村):全くその通りです(苦笑)。今僕らにはそれしか言うことはなくて……どのくらい前からやっていましたっけ?

笠間寿高(以下、笠間):アニメ制作の依頼をいただいたのが2017年の1月で、その年の7月にイタリアにロケハンに行きました。

――2年以上『黄金の風』を作り続けてきたわけですね。では、今作を制作する上で意識したところは?

髙橋: 第5部特有のことでいうと「悲哀のドラマ」ということを意識しました。最終的に生死を賭けて戦う部分もそうですし、キャラクターたちが必ず幸せではない境遇から始まっていて、そこから抜け出そうとしているので。

――『ジョジョ』は敵キャラもポリシーを持っていて個性的で、敵と味方を単なる善悪で線引きできないところも魅力です。ましてや、第5部は主人公たちがギャングです。少年漫画/アニメの主人公として描く上で意識した点は?

髙橋:最終的に「ジョルノたちってジャンプ漫画の主人公だな」って僕の中で落ち着いたんですよね。一応ギャングを職業にしていて、前半では一般人をボコボコにする描写もありましたが(苦笑)、気持ちや覚悟の部分は少年漫画の王道をしっかりと拾っているので、僕らも少年漫画を描くつもりで作っています。暗殺者チームに関してもそことは違った意味で覚悟がある面白いキャラクターだったので、そこを掘り下げてアニメでは「チーム対チーム」を意識しました。

――そういった要素は特にどのシーンで表れていると思われますか?

髙橋:一番意識したのは暗殺者チームが出てきた第9話~第11話のホルマジオ戦です。僕の担当回で、まずきちんとセットアップをしないといけないので、シナリオの時から津田尚克総監督と話して、初めからリゾットチームを見せるというふうにしました。チーム対チームという図式を作って、鉄砲玉のホルマジオが最終的に倒された時に「これから大変になるぞ!」というバトル感を強く出そうと考えました。

木村:チーム対チームにするのは、この作品の開発で最初に決まったことで、第4部までとは違うところだと思います。ジョルノたちは少年漫画の主人公的な原理で行動していますが、そうではない敵キャラのことも理解できる部分がある。アバッキオの先輩警官のセリフで「わたしは『結果』だけを求めてはいない」「大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている」などは良い言葉なんですけど、実際問題、仕事や日常生活で僕らは結果だけを求めてる時も結構あると思うんですよ。だからディアボロを一概に否定できないっていう(苦笑)。そういったところが『ジョジョ』の魅力だし、少年漫画の枠に収まらない、懐の深い作品だと思いますね。

敵キャラクターの行動原理にも共感できるようにしている(木村監督) ――『ジョジョ』は大人が読んでも共感できる部分の多い作品ですよね。

木村:ディアボロについては原作に描いてあることをそのままシナリオに起こして、そのままアフレコしてもらっているんですけど、相当コソコソ・ビクビクしながら戦っているので、アニメだと小物な感じが増していますよね。でも、実際に自分がディアボロの立場になるとこうなるだろうなと分かるし、むしろジョルノたちの方がちょっと怖いなって思っちゃうところもあるし。僕らは全然正義の主人公ではないので(苦笑)。

――確かに彼はギャングとはいえ、組織のトップで多くの部下を管理しなければならない社長・社会人としての立場でもありますよね。

木村:あんな服装ですけどね(笑)。だから、敵キャラの地盤を固めるのは大事なことで、敵の行動原理もちゃんと共感できるようにする。主人公はジョルノたちでもう設定されているので最終的にそちらの筋を選びますけれど、それまではむしろ主人公が悪役みたく見えてもいい話数があってもいいと思っています。

――他のキャラクターで憎めないやつとかはいますか?

髙橋:津田さんはフーゴに共感していて、「俺も裏切る」って言っていました(笑)。

木村:普通はブチャラティたちについて行かないよね(笑)。

髙橋:ブチャラティチームに共感できる人ってなかなかいないんですよね。

木村:ジョルノが一番スーパーマンですからね。やはり共感しづらいところがある。

髙橋:ファンのあいだで暗殺者チームの人気があるのは、共感できる部分が多いからでしょうね。僕も暗殺者チームは演出していてより楽しかったし。主人公たちってやはり正論というか、その正義がデカすぎて超人的なんですよね。スクアーロ&ティッツァーノ戦でナランチャが自ら舌を切って迫っていくのもすごく覚悟が決まっていますけど、あんなの絶対できないなと思いますし。

木村:でも、僕は基本的にスーパーマンなのはジョルノだけだと思いますよ。彼に引っ張られて、みんなああいった行動をしていますが。だから、ジョルノが一番強いんだろうなって思いますね。

――ブチャラティチームの中ではアバッキオの心の揺らぎが特に印象的に描かれていて、『ジョジョ』なりに人間の弱さを表現されていたと思います。

木村:アバッキオはすごく勘が良いと思っていて。最初にジョルノのことを排除しようとするじゃないですか。あれはやはりジョルノが危険な存在だと最初から見抜いていたんだろうなと、ここまでくると思います。ジョルノさえいなければ、ブチャラティたちとそれなりに楽しく過ごせていたのかもしれないのに(苦笑)。新入りが来たせいで大変なことをやらなきゃいけなくなっちゃって、チームが全滅の危機にも陥るし、自分も死んでしまうし。

髙橋:そうですね。まぁ、戦闘向きのスタンド使いではないので、用心深いのでしょうけど。意外とチームのことを良く考えていて、要所要所で全体を見ている動きをしていましたし。ブチャラティと同い年なので、チームのお兄さん的存在なのかなと。社会人経験もありますし。

木村:アバッキオは元警官ですから人一倍正義感が強いのだろうと思います。

――アバッキオがお兄さん的とのことですが、個人的にはブチャラティがチームのお父さんだとしたら、アバッキオはお母さん的な存在かもと思ったのですが、いかがでしょうか? 年下のメンバーのことを細かく見ていて、結構小言を言っているので。

髙橋:そうかもしれないですね。ミスタも意外と明るいお母さんな感じがするかも。

木村:なるほど。ミスタとアバッキオの立ち位置は人によって見方が違うかもしれないですね。僕はブチャラティが母でもあり父でもあると思っていて、その下に他のやつらがいて全員同列、同じ学年っていう感じですね(笑)。

「無駄無駄原画」のラッシュはもっと長くするつもりだった(木村監督) ――作画や撮影処理などの映像面で特に工夫・苦労されたところは?

木村:そもそも、キング・クリムゾンがどうなっているのかを理解するところから始まったので、最初の開発コンセプトとして「分かりやすくしよう」というのがありました。第3部までは火が出るとか凄いパワーで殴るとかで分かりやすいんですけけど、第5部になると観念的というか複雑になっていて、原作をサッと読む程度だと理解できないところが多くて。この仕事を受ける前から「一番難解なのはキング・クリムゾンだ」と言われているのは知っていたんですけど、まさか自分が映像化することになるとは(苦笑)。

髙橋:監督3人の中で誰がやるんだとなった時に、木村さんにやっていただいたんでホッとしました(笑)。

木村:しかも、レクイエムになってさらに分かりづらくなるという(苦笑)。

――キング・クリムゾンが発現すると周囲が宇宙のようになりますね。

木村:あの状態だと地面などの動いてないものが全部割れて、その後は宇宙っぽくなって、アニメ用語で「イメ背(イメージ背景)」というのですが、どこか分からないけど空間を歩いている感じになる。それと、キング・クリムゾンの射程距離も全世界が止まっているのか、それともディアボロを中心に半径何メートルと範囲が決まっているのか分からなかった。第21話の教会でブチャラティにサービスで自分の姿を見せるのもよく分からないし。いくつか整理できないところがあったのですが、そこはもう割り切ってやるしかないな、と。映像として見た時に違和感がないようにする組み立てが難しかったです。

――ファンの間で特に話題になったのが、第31話で「無駄無駄原画」とクレジットされたチョコラータを倒す時のラッシュです。

木村:実はカッティングの時は40秒ほど尺を取っていたんですけど、最終的には確か30秒弱になって少し短くなったんです。あれだけのスピードだと(ジョルノ役の)小野賢章さんが相当早口で言わないといけないらしくて。まぁ、それでも長かったですね(笑)。

髙橋:充分気持ち良かったですよ!

木村:

第31話の無駄無駄ラッシュ

船上でのマイケル・ジャクソン風ダンスを描くために1ヵ月研究した(木村監督) ――第7話の、船上でズッケェロを拷問する時にラジカセで音楽を聞きながら踊る場面も力が入っていました。原作ではたった数コマですが、とても印象に残る場面です。

木村:何であんなに凝ったことをやったんですかね。覚えてないんですけど。第7話だったからまだ元気があったけど、仮にあのダンスが第35話だったら絶対やってないですよね。そもそも、あれ何で踊ったのかすら分からないし。

笠間:イタリアのロケハン中に、木村さんが「専用楽曲を作ろう」って言って、曲を作っちゃったからですよ。

木村:あれ? 僕が言ったんですか!?

笠間:それで大森啓幸プロデューサーが「よしきた!」って専用楽曲を発注したという。

木村:みんな浮かれていたんですね(笑)。楽曲を最初の段階で発注しちゃっていて、忘れた頃に曲が上がったと連絡がきて、そういえば発注したっけみたいな感じってことか(苦笑)。

髙橋:木村さんが描くということだったので、僕と津田さんは他人事として普通に「おぉ、良い曲だな」っていう感じでした(笑)。

木村:そうそう。完全に僕がやることになっちゃってて「えぇっ、マジすか!?」って(苦笑)。

――曲はどんなイメージで発注したのですか?

木村:「ギャングっぽい曲」みたいな漠然とした感じで発注した気がします。いざ曲を渡されてコンテを描く時に、4コマしかないから原作のポーズだけだと繋がらないし、尺も10秒ももたないと思うんで、何か新しく作らないといけなくなって。それからYouTubeを1か月ぐらい見続けて、あのポーズにはまるダンスの曲を探したんです。結果的に、マイケル・ジャクソンが一番近かったので、ミュージックビデオやライブを全部見て、参考できそうなところをピックアップして、原作に沿うように変えて1分にしました。だから、ものすごく時間がかかっています。描くのは2日でしたけど、調べるのに1か月くらいかかりました(苦笑)。

第7話のダンスシーン

――第6話の船上でムーディー・ブルースが最初に登場した時もこだわりを感じました。

髙橋:あれは僕が担当しました。ムーディー・ブルースの数少ない活躍回なので(笑)、花を添えてあげようと思いました。過去を遡るスタンドなので、過去の集合体みたいな感じで軌道を残して、それが集まったような表現にしました。上手くいって良かったなと思います。

――他に作画面で特に力を入れたところはありますか?

木村:それで言ったら、第34話のシルバー・チャリオッツ・レクイエムの能力で身体と精神が入れ替わって戸惑うところは完全にギャグでした。あれ相当遊んでるんじゃないですか? 原作よりかなり盛られていますよ。

髙橋:ここは表情で遊べるんじゃないかと思って色々攻めた結果、意外と面白くできたので良かったです。

――ボスと直面してめちゃくちゃシリアスな状況なのに、いきなりギャグパートが結構長く入るっていう(笑)。

髙橋:BGMは奇妙さを残しながら本編が始まるんですよね。途中からギャグのパートになったらガラッと変えてもらっている。

木村:オープニングで結構カッコよくしたのに、急に間抜けになってね(笑)。

第34話の身体と精神が入れ替わるシーン

――『ジョジョ』のアニメはこれまでのシリーズでもクライマックスが近付くにつれて、オープニングで違うことやって視聴者を楽しませてきましたが、今作でも見せてくれましたね。

笠間:第34話でキング・クリムゾンの演出が入って、分かりやすくなっていますよね。

木村:そうですね。ノーマルOPがキンクリに飛ばされた状態で、ディアボロOPになるとキンクリに飛ばされたところが見えるっていうのは誰が考えたんですか?

髙橋:それも木村さんですよ(笑)。発注の時にそのアイデアが出て。

木村:僕でしたっけ? 大体忘れちゃうんですよ(苦笑)。そう、そういう感じにしました。

――他にアニメオリジナル描写でこだわったところは?

髙橋:暗殺者チームの登場シーンを追加したり、過去編をナレーションベースではなくキャラクター目線で描いているっていうところとかですかね。それと、フーゴを第35話でナランチャが死亡したあとにチラッと出しました。

――原作では、フーゴは離脱した後に全く描写がないから、生死も不明でした。

笠間:ボスの手下に始末されているかもしれないですからね。

木村:親衛隊に戦力が残ってなさそうですけどね(笑)。

髙橋:ブチャラティたちをやっつけないといけないから(笑)。

デザイン面は荒木飛呂彦先生からのアドバイスが活かされている(木村監督) ――荒木先生からどんなアドバイスがありましたか?

木村:基本的な色についてですね。スタンドとかの色パターンを何種類か作って、そのチェックをしていただきました。一番大きいところでは、ジョルノの服装や髪の色と服の色を5パターンぐらい作ったんですけど、髪はこれ、服はこれみたいに選んでいただきました。ジョルノの服は紺と赤系で分かれていたんですが、荒木先生がピンク系を選ばれました。フーゴも服は黄緑になっていますけど、オレンジ色の案も出していて、髪の毛も金と銀の案がありました。アバッキオは緑と紺の2つ出しました。ナランチャはパッと決まっちゃいましたね。

髙橋:僕はエアロスミスの本体色が赤になったので驚きました。単行本51巻の表紙の青いイメージが強かったので。

――色以外では?

木村:スタンドのデザインでラフをお見せして、プロポーションをもう少しこういう風にしてほしいとかはありましたね。キング・クリムゾンは肩幅をしっかりしてほしいとか。それと、ブチャラティはピンマークみたいな模様の上下のスーツを着ていますが、あれって初登場の話数だと手書きなんですよ。手書きだと手間がかかりすぎて毎週納品ができない感じになっちゃって、次から貼り込みしました。貼り込みでも大変なんだけど。現場が崩壊する一番の危機ですよ(苦笑)。

髙橋:こんなこと言ったらファンに怒られるかもしれませんが、第33話以降ブチャラティの出番が減ってくれて助かりましたね。でも、すぐに線がとても多いディアボロとして復活してきたっていう(苦笑)。

――第5部のキャラはみんなオシャレで装飾が多いから大変ですね。

木村:アニメで動かす上で装飾を多くしたいのは山々なんですけれど、そもそも作れなくなるので減らさないといけないんですよね。でも、やはりデザインは荒木先生のこだわりがあるものなので、どこまで落としていいのかという点は結構チェックしていただきました。

――原作関連のことでいうと、二つめのEDアニメーションを担当されている滝れーきさんは荒木先生の元アシスタントさんだと伺っています。滝さんは漫画家で、アニメーターではないんですよね?

笠間:漫画家さんです。第2部の後半と第3部の前半の時期にアシスタントやってらっしゃったそうです。

髙橋:今作では美術設定で入ってもらっているのですが、アイキャッチも滝さんに描いてもらっている部分が多くて、その流れでEDアニメーション2を石像のスタンドが並ぶという形で構成しました。

木村:滝さんはアニメーターではないので、OPアニメーション1の最初の彫刻と最後のジョルノのエンブレムのカットなど、一枚絵的なものを手伝ってもらっています。アニメーターではないから動きは描けないんですけれど、その分アニメーターより密度がある絵が描けるというか。アニメーターってあそこまで密度のある絵が描けない人も多いし、そもそもコスト計算しながら描くのでなかなか描きづらいところがあるので、そういうところで滝さんにはとても助けていただきました。

漫画家の人ってやはり絵が生きた感じがすると思いました。別にアニメーターが死んでいるわけじゃないですけど、色々な人の絵柄が描けないといけないので、ある程度自分を殺さないとダメなんです。絵を合わせることに特化しつつ、自分の絵を描ける人って本当に少ないので。滝さんは荒木先生のアシスタントもしてらしたので線質も似てるところもありますし、パワーがあってとても良かったです。

イタリアへロケハンに行った経験がフィルムに表れている(木村監督) ――イタリアにロケハンに行かれたということでしたね。

木村:ロードムービーなので色々な場所に行って、原作のコミックスを見ながら、「こんな感じかぁ~。実際始まったら思いのほか大変だぞ。どうすりゃいいんだろう(苦笑)」って話していたところから一年間苦しんでようやくここまできました。

髙橋:取材中はまだ本当に自分たちが作るという実感がなく、やることは決まっているけれど覚悟が決まってないというか。とりあえず写真を撮ってゆっくり考えるかって感じで始まりました。

木村:空気感を味わうのが大事なので、ロケハンは本当に行って良かったです。「本当か?」と思われるかもしれませんが(苦笑)。それがフィルムには良く出ていると感じています。今放送している話数の舞台がローマですが、僕らが最初に行った場所なんです。ロケハンから2年くらい経ってようやく今につながっているので、感慨深いものがあります。

――ロケハンの成果は具体的にどのように画に出ているのでしょうか?

髙橋:まず第2話のジョルノがギャングスターになることを宣言するシーンは、原作だと教会の前になっていますが、場所的にあまりイメージが沸かなかったんです。そこで、ロケハンで行ったナポリ(ネアポリス)を眺望できる高台がとてもロケーション的に綺麗だったので、第2話~3話と舞台が繋がるのですが、ここにしようと決めました。

木村:原作だと、電車でのぼっていって途中駅で降りてそのまま宣言するんですけど、宣言する場所が一番下の海岸沿いなんです。だから、いつの間にか下りているってことになるんです。しかし、映像でそうしてしまうと「あれ? さっきまで山の中腹にいたはずなのに」となるので、新しく、ナポリの街や海が一望できる展望台のようなところを設定しました。ジョルノたちと同じ電車ではないのですが、僕らも似たような路面電車に乗って彼らの足跡を追体験をすることで肌で感じたものや行ったからこそ分かることがありました。

僕らがイタリアに行ったのは夏だったので、原作とちょっと時期が違うのですが、空の色だったり、建物や地面の色や材質といった細かい部分も現地に行くと触ることができる。屋内も靴で歩くことや埃っぽさなどの行ったからこそ分かったことをスタッフに伝えられるので、目に見えてるところ以上に大事なことだと思います。

――原作マンガはモノクロなので、アニメにする上で色を付ける作業が特に大きいと思うのですが。

髙橋:『ジョジョ』はカラーイラストがたくさんありますし、原画展も開催されていましたから、キャラクターはそれらを参考にしていますが、美術に関しては実在の場所を参考に作ってます。

木村:最初、空の色を変えるかどうかでかなり悩んだんです。結果、今のものにしたんですけど、最初にちょっと緑色にしてみてはちょっと違うなとか言いながら試行錯誤しました。アニメ作品だと、ナポリの街の俯瞰や海から見た絵といった美術ボードを最初に作り、それを基準に他のものにどんどん広げていくのですが、それを作るのが一番大変でした。

――日本とイタリアでは気候の違いもありますよね。

木村:雲が少ないほど光が強いために影が濃くなるといったコントラスト比の部分がナポリでの話数に出ています。また、カプリ島専用の処理のフィルターを作って、暑くて日差しが強い感じを表現するために彩度を高くしたりしています。

――建築物についてですが、例えばコロッセオも当然立体的に考えて、この時は誰がどこで戦っているということを計算してらっしゃると。

髙橋:そうですね。ただ、実はコロッセオの中ってそんなに移動しないで戦ってるんです。全体の1/4くらいのところで物事が起こってるので、その部分を3Dで作って、美術発注はしました。でも、原作と実物の間取りを付き合わせていくと、全く同じではないんです。ですから、アニメでは実物にちょっと合わせていくという作業をしています。

木村:ポルナレフと対峙してドッピオからディアボロに変わる時の柱はいくら探してもなかったのですが、やはりあれは必要なので付け足しています。

髙橋:実は結構違いますよね。外壁が欠けている位置も原作は実物の逆側なんですよね。ですから、アニメではぐるっと回しています。

木村:全てを現実に合わせようという訳ではなく、あくまでも原作の補強として現実を使っているだけなので。原作で描かれているものがないといけないって時は作るし、作るにしてもディティールなどは現実に合わせて新しく作り直すという作業をしています。

――最後に、最終回となる第38話と最終話の放送への意気込みをお願いします。

木村:一時間でまとまっているのが一番すごいところですよ。『ジョジョ』って自分でも観ていてあっという間に終わる印象があって、もうちょっと観たいなと思う時があるんですけど、最終回は倍の尺で観られますから(笑)。

髙橋:シナリオ打ち合わせの時にも話したのですが、そのエピソードを別けて一週分空けてしまうと理解が難しい内容なので。それが1時間にまとめて放送できるのは良かったと思います。

――最終話の「眠れる奴隷」は『ジョジョ』シリーズの中でも屈指の奇妙な話だと子どもの時に原作を読んでいて思いました。

木村:津田さんは乱丁(書籍のページの順序が乱れていること)だと思ったらしいです(笑)。

髙橋:時間が飛んだみたいな感じですかね(笑)。最終回の放送を楽しみにしていただければと思います。[1]


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