Junjo Shindo (March 2022)
Yasufumi Soejima (March 2022)
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An interview with Junjo Shindo, author of rey infinito. It was originally published in the Spring 2022 issue of JOJO magazine, released on March 19, 2022.
Interview
真藤順丈先生
Interview
――本作のオファーを受けられた当初のお気持ちを教えてください。
真藤:依頼をいただいたのは2年ほど前なんですが、即座に「断る理由がない」と思った記憶があります。連載が立てこんでいたのですが、オファーをいただいたその場で「やります」と飛びつきました。こんな機会は、作家生活のなかでもそうは巡ってこないだろうって。ぼくは1977年生まれで直撃世代なんで『ジョジョ』はエンタメを作るうえでの骨格であり、血肉になっています。そうした作品に関われてこんなに光栄なことはないと思うのと同時に、自分のオリジナルの小説以上に、うまくやれるのか? という不安はありました。
――本作「無限の王 rey infinito」は第2部から第3部にかけてのスピンオフですね。
真藤:歴史小説のアプローチで『ジョジョ』を書いてみたいと思いました。次々と時代や舞台を横断する『ジョジョ』のサーガ的な面白さを、歴史もののアプローチで再構築できないかと。こうしたスピンオフをやる場合、原作に忠実にアダプテーションするか、自分の得意分野に寄せてキャラクターに暴れてもらうか、まずその二つの分岐があると思うのですが、今回はその折衷をめざしたという感じです。
――舞台は中米、グアテマラですね。
真藤:本編とは別の「弓と矢」にまつわるものを書きたいと最初に構想しました。第1部から登場する石仮面はアステカ文明がルーツになっていますし、『ジョジョ』はラテンアメリカ文学とも親和性が高い。ぼくはラテンアメリカ文学が好きなんですが、「波紋」や「スタンド」というマジカルな要素と、一族の血やライバルとの相克といった人間ドラマが違和感なく共存する世界観、アクチュアルとフィクショナルが相互に交差する物語性というのは、中南米のマジックリアリズムとも通じるものがたくさんあると思ったんです。
――リサリサを登場させた理由は?
真藤:第3部が開幕する前の「スタンド」という言葉がない時代に「スタンド」を書く。聖書なら旧約(※注)にあたる部分を書こうと決めて、リサリサ先生にご登場を願いました。激動の時代にも揺るがない存在感があって、なおかつ変化や革命といったものにも手を伸ばすことができそうで。北条政子とか巴御前とか、ジャンヌ・ダルクなどの歴史上の人物を描くようなつもりで原作から考証を固めていきました。
――本作であらたなスタンドも登場しました。
真藤:『ジョジョ』という巨大なフランチャイズの偉大さを痛感しましたね。最初に「スタンドはどのぐらい出していいんですか?」と編集部に確認したら「いくらでもどうぞ」と太っ腹な答えをいただきました。それで意気込んでいろいろ考えたんですが、それこそまあ、荒木先生がだいたい描きつくしている。だけど小説を書くのは、無謀であるほうが楽しいので。とにかく『ジョジョ』を書いている、読んでいるという場面を多く生んでいきたいので、今は波紋やスタンドのあらたな切り口を考えつづける毎日です。
――『ジョジョ』の世界を表現する上で、心掛けたことはありますか。
真藤:普段の執筆とは別の回路を開いてやっていますね。あらたな敵が襲ってきたときのあの圧倒的なホラー感だとか、能力バトルの突き抜けたエンタメ度の高さとか、人間讃歌の刺さるところとか……『ジョジョ』にまつわるアイディアは出つくした、もう出がらしでも出ないというところまでやりたいと思っています。
――読者へメッセージをお願いします。
真藤:書き手は「『ジョジョ』を書いている」と体感できるものを夢中で書きましたが、おなじように読み手にも没入してもらえたら何より嬉しい。なおかつ文章世界でしか表現できない『ジョジョ』世界というものも追究していくつもりです。ぜひご一読を。
※注 旧約聖書のこと。イエス・キリスト誕生以前に書かれた。ユダヤ教およびキリスト教の聖典。
PROFILE 真藤順丈 しんどう・じゅんじょう
第3回ダ・ヴィンチ文学大賞を受賞した『地図男』(メディアファクトリー)でデビュー。『宝島』(講談社)で、第9回山田風太郎賞、第160回直木賞を受賞。かねてより『ジョジョ』好きを公言しており、「無限の王」で同作ノベライズに初参加。近年の著書に『われらの世紀』(光文社)、『ものがたりの賊』(文藝春秋)がある。
★好きなキャラクター:東方仗助(第4部)
★好きなスタンド:「クリーム」(第3部)