Quarterly S (June 2005)

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Published June 15, 2005
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Quarterly S July 2005 Issue

An interview with Hirohiko Araki about Steel Ball Run, published in the July issue of the Quarterly S (季刊エス) Vol. 11 magazine.[1]

Interview

Introduction

『ジョジョの奇妙な冒険Part6ストーンオーシャン』の終了より、待ちに待たれての新連載となった『SBR』。北米大陸を乗馬で横断する壮大なレースを舞台に、球体を探る謎めいた男、ジャイロ・ツェペリと今は半身不随となってしまった元天才ジョッキー、ジョニィ・ジョースターを中心に、レースの勝敗とその裏に隠された「史上最大の謎」を巡り、奇妙でスリリングな冒険が展開する。『ジョジョの奇妙な冒険』第一部のパラレルワールドとして描かれる本作では、妖しいスタンド使いや、『ジョジョ』ゆかりのキャラクターも多数登場。そして「ウルトラジャンプ」で開始した2nd.Stageからは、隠されていた謎が次第に暴かれ、物語はさらに大きく動き始める。そんななか、荒木飛呂彦先生へのインタビューをついに敢行!

Interview

――まず、乗馬による北米大陸横断レースという設定が、どのようにして生まれたのか教えてください。

荒木 『ジョジョの奇妙な冒険』の第一部が一八八八年に始まるのですが、第一部と同時代にしたい、と最初に考えました。深い意味はないんだけど、パラレルワールドみたいに、しようと思って。それと同時に、何かを競いながら旅をする、RPGのようにもしたかったんです。それで、この時代はまだ機関車などもできたばかりで馬が主流だったし、レースならRPGの要素もあるだろうと思って、アメリカ大陸を乗馬で横断するレースに、ジョジョのキャラクターが絡んでいく話にしました。

――なるほど。マウンテン・ティムのカウボーイ風のコスチュームや、砂漠を馬で走る描写など、物語全体にウェスタンのムードを感じますが、これも時代にあわせて?

荒木 それもありますが、ウェスタンは僕のルーツなんです。デビュー作(『武装ポーカー』)もウェスタンだし、少年時代は『スターウォーズ』よりもクリント・イーストウッドに夢中でしたから。ファッションも好きだしね。あとは「砂漠に一人立っている」という情景を思い浮かべるだけで、もう涙がでてくる。あのアウトローな感じが、すごく好きで。承太郎もそうだけど、バビル2世(『バビル2世』横山光輝)が学生服を着て砂漠の地平線に立っている姿とか、かっこいいんですよ。少年時代に心を燃やした、自分のルーツだからでしょうね。

――キャラクターのコスチュームも、ウェスタンのイメージから?

荒木 時代考証や細かいところは抜きにして、エスニックや自然の要素を取り入れたファッションにしています。あとはヒョウ柄やファーみたいなもの、ガンベルトやブーツとかね。好きなんですよ。

――『SBR』は『ジョジョ』のように「過去の因縁」や「戦い」が前面にくる感じではなくて、最初のうちは、あくまでレースメインという感じがしますよね。

荒木 そうなんだよね。最初は誰か勝つのか予測がつかないレースをやりながら、徐々に謎が暴かれていくという物語を目指しました。だけど、描いているうちにジャイロやジョニィ・ジョースターが主人公になるような展開になってきたのかな。そのへんはあまり計算してなかったんですけどね。

――ジャイロもジョニィもすごく魅力的ですよね!最初は、二人で協力して勝利を目指して、その過程の一つとして敵との戦いがあるのかと思っていましたが、実はレースの裏に何か大きな陰謀がある、というのが見えてきましたね。

荒木 ただのレースじゃない、というのを描きたくて。とくに「ウルトラジャンプ」では、物語やキャラクターが、さらに深く暴かれていきます。人類史上最大のすごい謎がある、という感じ(笑)。ただ、あまり謎で読者を引っ張るのはよくないので、答えは早い段階でバンと出しておいて、キャラクターの魅力で見せていきたいですね。

――ジャイロとジョニィのコンビは素敵ですよね。ジョニィは歴代ジョジョと違って、最初から力があるわけじゃないし足も動かないし、これまでの主人公像とは少し異質な感じがします。

荒木 ジャイロは完成されていて、背後に何か謎を持っている。それに対してジョニィはジャイロからどんどん学んでいく、というタイプ。ジョニィがレースを通じて成長していく魅力を描こうと思っています。二人を対比して描いてるんです。そしてジョニィの成長する過程がレースの謎を暴いていくことにもなります。

――なるほど。ジャイロが球体を使い、ジョニィのスタンドが肉体や物体を回転させる能力ですが、「回転」や「球体」はポイントでしょうか。

荒木 いつも主人公たちの能力には、テーマがあるんですよ。例えば「命を蘇らせる」とか、徐倫なら糸っぽい感じとか。今回の球体は無限のイメージがあるし、色々な応用が利くかと思って決めました。それにボールを見たら「SBRだな」と思ってもらえるような、集中したテーマが必要だと思うし。そして作品の本質的なテーマにも繋がります。

――『SBR』では馬がたくさん描かれてますが、躍動感や迫力がすごいですよね。描いていて、いかがですか。

荒木 楽しいですが、馬とのバランスで乗った人間が小さく見えるので、ちょっと大変ですね。顔を見せたいけど馬に乗っている感じも見せたいし。映画みたいな大画面だったらいいけど、原稿用紙の決められた面積だと、すごく大変です。ただ、描くのは本当に楽しいし、パワーがもらえる。ゲームで、「キャラクターが動物に乗ると強くなる」というシステムがありますが、そういう感じです。

――レオナルド・ダ・ヴィンチなど、古典画家も馬をモチーフにした作品を多数描いてますが、絵としても描き甲斐があるんでしょうね。

荒木 馬が歴史とすごく密接に関わっていたというのもあるでしょうね。勝利の象徴みたいな意味があるらしくて、敵に勝ったら銅像にして飾ったらしいですから。絵としても、もちろん面白いですよ。筋肉の付き方が美しいなぁ、とか。前足と後ろ足をどう動かして走るんだろう、とか。間接の曲がり方はどうで、ジャンプするときはまた違う、とかね。そういうのを考えながら描くのは面白いです。

――荒木さんは、『ジョジョ』でもそうですが、実際にはあり得ない、想像しがたい場面をすごくリアルに描かれますよね。ジョニィの爪の先がクルクル回ったりする場面(※P一六・図三参照)もすごく詳細に描写されてて。

荒木 それが漫画の魅力の一つですよね。以前に石が虫に変身するシーンを『ジョジョ』で描いたのですが、「『ジョジョ』の絵のほうがCGの映像でやるよりリアルですね」って言われたこともあります。それから肉体が変化する様を描くのが好きなんですよ。殴られて、顔が歪んでいく場面などを描いていると楽しくて。残酷描写と取る人もいますが、僕の場合は肉体をパズルのような感覚で描いてます。

――描くときに頭の中で想像してる映像は、どんなものですか。

荒木 あの通り。実写じゃなくて漫画の絵で想像しています。

――動いてる状態で、ですか。

荒木 そうなんですよ。まだ担当と打ち合わせをしているような、細かい展開などが決まってない段階で、頭の中で主人公を上空から見るんです。だんだん自分の描いた世界に入りこんでいくと、場所や状況が見えてくる。それで、この主人公の性格なら、どう行動するか、と考えます。例えば爆発が起きたら、どう逃げるだろう、とか。それを漫画の通りにイメージしていくんです。

――なるほど。モノクロの描写も素晴らしいですが、カラーイラストも本当にキレイですよね。色遣いも独特で。

荒木 僕はゴーギャンが好きなんです。あの人は色を面で塗るのですが、例えば地面をピンクで塗ったりする。当時は散々、批判や嘲笑を受けたようですが、それでも描くというところに、すごく感動して。それで「ピンクに塗ってもいいんだ」と思いましたね。だから、僕も唇をブルーににしたり、現実には考えられない色も載せます。色は人物に合わせて考えるので、その時々で合っていればいいんです。色の見本帳と照らして、合うと思えばピンクにする。「ピンク」と決めたら面全体を塗っていきます。そういう感じだから、アニメのスタッフにも「承太郎って何色ですか」と聞かれたりしました。画集を見ても、いつも色がパラパラだしね。そのときは「あ、何色でもいいです」と言うんですけど(笑)。僕の場合は、画面に合ってれば何色でもいいのですが、アニメで承太郎の制服を毎回違う色にするわけには、いかないですからね。

――漫画ならではの表現ですよね。荒木さんは構図も独特ですが、何か法則だとか、気持ちいい描き方があるのでしょうか。

荒木 一応あるけど、ストーリー優先です。このシーン(※P一七・下図参照)もスティールというキャラクターがストーリーの流れで必要だから、大きく描いているんす。ただ確かに、この絵のようにキャラクターが全員、別の方向を見てることは多いですね。これは「こいつら何を考えるんだろう」と謎めいた感じを出す意味でやっています。あとは、手前にモノを置くのが好きです。だからキャラクターも、でっかくガーンと置く。そうすると奥行きが出るんです。横並びでなく、縦に重ねて厚みを出して、前に出てくる人を大きくします。その手前にも、例えば、ちょっと指を入れてみたりね。そういうのが好きです。

――動きやポーズを描いていて気持ちいい絵があるんですか。

荒木 独特なポーズを描くのは印象に残るように、という願いです。普通に立ってるよりも、微妙にねじったり指を入れたり、足をクッと曲げたりするほうが、心に残るから。このジャイロ(※「ウルトラジャンプ」見開きカラー。P一二、三扉参照)も、ただ寝てるだけじゃなくて、ちょっと起きあがろうとしたら、何かあるような感じがするかな、とかね。

――ジョジョのポーズを真似する若者もいますよね。

荒木 確かにヨガの研究なども、しましたから(笑)。でも、「ねじり」が基本です。名画も、どこが良いのかわからないのに心に残るのは、きっと何かが変だからだと思うんです。そこに秘密があるんじゃないかな。だからポーズは、すごく研究しています。ヨガの他には、ブルース・リーの型集なども買いました。あと彫刻も研究したかな。ローマの彫刻には、必ず「ねじり」が入って、動きがロマンチックなんです。

――ポーズをそれだけ研究されてるから、キャラクターがただ立ってるだけでも、どこか普通とは違って絵になるし、完成された美があるんでしょうね。

荒木 ミロのヴィーナスもただ立ってるだけなのに何かが違うんですよ。その微妙なところが名作だし、奇跡ですよね。三mもあるような巨人な大理石を、どうやって彫ったのかと思いますけど、三六〇度、どこから見ても完璧なんです。だから、僕も顔をちょっと傾けたいな、とか色々とこだわりがあって、一回描いた絵を顔の部分だけ消して、傾けたりしてます。

――なるほど。フランスでの個展(取材記事をS三号に掲載)から二年経ちますが、あのときから、絵に対する気持ちも変わってきたのでしょうか。

荒木 絵に対する気持ちは変わらないですね。向こうの人は漫画と絵を区別してなくて、そういった反応は面白がったですけど。日本だと、絵が好きな人は漫画を区別するようなイメージがあるけど、向こうの人は僕の絵も絵画としてみるんです。違う感覚だなぁ、と思いました。

――また個展をされる気は?

荒木 やりたいですねぇ。展覧会は絵と描く人間には意味があると感じます。

――今度はイタリアとか?海外のほうが面白いですか?

荒木 面白いというか、日本だと僕を知っている漫画ファンが来てくれるけど、海外だと、客層が全然、違うんですよ。歳を召された方も、通行人も入ってくる。僕はブティックが建ち並ぶような場所でやったから、モデルみたいな人も来てね。パリも場所によって雰囲気も客層も様々だから、日本と感覚が違って、面白かったですね。

――最後に、来年、『ジョジョの奇妙な冒険』第一部のアニメが劇場公開されるそうですが、それについても教えてください。

荒木 脚本の完成までは僕もチェックしています。漫画そのままだと、長さとして無理があるし、まとまりが良くないですから。「テーマ」や「描きたいこと」から外れないよう、直していきました。絵コンテなどは、ほとんどタッチしていません。アニメとなると、例えば声優などに関しても、あまりイメージが湧かなくて。その辺りは、お任せです。でも良い脚本になってると思います。ちょっと『牡丹と薔薇』っぽい(笑)。『ジョジョとディオの因縁』みたいな。すごく面白いですよね。

――楽しみですね。『SBR』もじわじわと、謎が暴かれていき、今後の展開がますます気になります。今日は本当にありがとうございました。


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