Otona Anime Vol.3 (February 2007)

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Published February 2007
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Otona Anime Vol.3 (February 2007)
Interview Archive
Magazine cover

Otona Anime was an anime-focused magazine that began publication in 2006. The magazine primarily contained interviews with staff members, voice actors, and creators behind popular anime airing at the time. Its publication has been in indefinite hiatus since 2015.[1] Volume 3 of the magazine, published February 2015, focused on the 2007 Phantom Blood film, featuring interviews with various cast and crew members of the film. The issue also included a section detailing the Phantom Blood PS2 game.

Interview

原作者 荒木飛呂彦 インタビュー

文・聞き手/多根清史 写真/四宮 義博


■profile
荒木飛呂彦(あらき ひろひこ)
手塚賞(集英社)で準入選した『武装ポーカー』で「週刊少年ジャンプ」デビュー。1986年末から長期にわたって連載を続けている『ジョジョの奇妙な冒険』。現在、Part7の『スティール・ボール・ラン』がウルトラジャンプで連載中。



「ポージング」はファンタジーとリアリティの境目

――第一部『ファントム ブラッド』がアニメ化が決まって、ご感想は?
荒木 第3部の後半がOVAになったとき(1993~1994年)、製作者の人が「(第一部の)ディオを描いてないので、脚本が作りにくい。これが完成したら、第一部も作ろうか」という話があったんです。で、(第一部の連載)当時のファンが支持してくれて実現して、ああ、描いてて良かったなって。

――「ここはこうしてください」というような要望は出されたんですか?
荒木 「こうじゃなきゃイヤだ」みたいなのは全くないです。訊かれたら、言いますけどね。基本的には「自分の娘を嫁にやるような気持ち」でして、任せたからには口は出さずに、ひたすら作品の幸せを願ってますね。

――第1部のアニメ化を見て、どうでした?
荒木 やはりアニメは、その製作者の作品ですから、その個性として見てます。

――第一部の絵柄は「筋肉」が強調されているようでしたね。
荒木 そうですね。今は陰影法や、ムードに力を入れてるのかな。それも、時代性だとは思いますね。あの頃はシュワルツェネッガーやスタローンが映画に出ていたから「やっぱ主人公はこういう感じなのか」って。で、だんだんスマートになって。特に(第五部の)ジョルノのときに「小さくなったね」ってみんなに言われたんですよね。

――やはり絵柄は意識して変えているのでしょうか?
荒木 絵を固定したくない、“そこ”にいたくないタイプなんですよ。昔の絵柄はけっこう捨てるのが早いですかね。だから、例えば「第一部のジョナサンを描いてください」ってお願いされるのが辛いんですよ。自分で模写している感じで、なんか似てないなぁ、と。

――先生独自の作風としてはポージング、いわゆる「ジョジョ立ち」がありますよね。あれは、「イタリア旅行」でミケランジェロの彫刻を見たのがきっかけ、と聞きましたが?
荒木 そうですね。向こうの彫刻や絵画って、ねじって立ってたりするんですよね。それがすごく新鮮な感じで、強調してみたんですよ。とにかく、あり得ないポーズで立たせるのが目的なんです。そこがファンタジーとリアリティの境目なので、みんなが実際にやろうとするのはおかしいんですよ(笑)。

――出来ないように描いていると(笑)。第二部や第五部の主な舞台がイタリアというのも、その旅行が原点ですか?
荒木 ええ、たまたま編集者が「イタリア行こう」とか、「エジプト行こう」というから行ったら「じゃあディオはここに住んでることにしよう」という感じになるんですよね。その当時の編集者の影響が、すごい大きいんですよ。

――特にイタリアへの思い入れが強かったように感じます。
荒木 なんかね、テーブルのセッティングひとつにしても面白いと思ったんですよ。飾ってる花や、オリーブオイルの瓶や、黒いスパゲッティとか、見たことないものばかりで、超カルチャーショックで。最初の刷り込み体験なんですよね。

「ジョジョ」ファンの審美眼に耐えるアニメ化を

――第一部はディオが吸血鬼になってからガラッと方向が変わった印象ですが、最初から「波紋戦士」の構想はあったんですか?
荒木 そうですね。子供の頃、けっこう謎があったんですよ。ネス湖のネッシーや、UFOとか。その中で、超能力というのは、すごいロマンに満ち溢れていたんですよね。横山光輝先生が『バビル2世』という漫画で、その超能力をテーマにしたんですが、電気のような見えない力として描いていたわけですよ。じゃあ、「超能力を絵にするというのはどういうことなのか?」と、ずっと考えていて。それで「波のように伝わっていく」とイメージから始まったんですよ。そうすると、そこにルールも生まれてくるし、距離感も分かるし。

――科学的な説明によって、超能力を表現したらこうなるという。
荒木 うん、ちょっと理論的に何か欲しいんだよね。根性だけで勝つのがあんまり好きじゃない(笑)。

――ジョースター家の血統が受け継がれる、という構想も初めから?
荒木 うん。『エデンの東』という、親子何代かに渡って、お母さんが犯した罪を、子孫が償うような映画や小説があるんですよね。代を追うごとに、全部違う人間なんだけど、因縁や血統で繋がってるというのが描きたかったんですよね。だから「人気ない」って辞めさせらたらどうしようと思ったけど(笑)。

――じゃあ、ディオは200年ぐらい生きさせる予定だった?
荒木 ええ、1回沈んだりするけど、復活してくるという。「(ディオがジョナサンの)肉体を乗っ取る」のも考えていたと思うんです。第三部も、波紋で行くつもりだったけど、もっと(超能力を)絵にしたいなっていう願いから、「スタンド」になったんですね。

――そういう大河ドラマって、漫画ではあんまりなかったタイプですよね。
荒木 70年代や80年代って、同じような漫画を描いていると、むちゃくちゃに言われたんですよ。だから他の人とは違う分野を突き進まないといけない(笑)。でも、当時のセオリーとして「外人の主人公は絶対やめろよ」「舞台を外国にするなよ」って言われるんですよ。

――真っ向から逆らったんですか(笑)。編集部に構想を出したとき、ストップはかかりませんでしたか?
荒木 その前の『魔少年ビーティー』にはかかりましたね。まず『魔少年』というタイトルが駄目なだと。よこしまな雰囲気もあって、「これは絶対やめろ」って反対されて。でも、当時の担当編集者が味方してくれたんです。

――やはりディオのキャラクターも、『魔少年ビーティー』から?
荒木 ああ、延長線上にあると思います。

――今だったら、どちらも時代にフィットしますよね。
荒木 かもしれないですね。あの頃は、シリアルキラーの実録物も、本屋の奥の方にひっそりあった。ああいうのにすごく興味があったんですよ。なんで快楽のために人を殺すのか? そういう謎が、ロマンなんですよね。

――荒木先生にとっては、切り裂きジャックもロマンでしたか?
荒木 ロマンですね。大体、漫画でも音楽でも「なんでこうなるの?」というのがけっこうあって。プログレッシブロックに多いんですけど。チューブラ・ベルズとか、何の知識もなく聴くとね、すごいショックですよ。

――今の仕事場には、約3000枚ものCDがあるって話ですよね。
荒木 ああ、ありますよ。何でも、どの分野でも聴くんですよ。

――キャラクターの名前やスタンド名も、音楽にちなんでますよね?
荒木 そういうものもありますね。でも、名前の意味と、スタンドのイメージがオーバーラップするようにはしてますけど。

――「ズキューン!」や「ゴゴゴゴ……」などの擬音も、やはり音楽から?
荒木 うん。漫画を描くときのテンポも、ビートを刻んでいるように、トントントンと行って、ドンッ!とかね。こうめくったら、と計算してコマ割りをしてるんで、週刊でやるのは大変でしたよ。リズムが合わなくて、「あと1ページしかない!」みたいな。

――コマ割りもそうですし、セリフもビートを刻んでますよね。
荒木 そう、リズム感を重視してるんじゃないですかね。アニメも、そうなってるといいですね。声優さんたちも、休憩時間にも「ウワァー。ハアァー」とか発声練習しているらしくて。気合い入れてくれてるみたいです。ディオ役の緑川(光)さん、顔もディオにちょっと似てきてるんくらいなんで(笑)。

――ディオといえば、「ウリィィィ!」はどこから?
荒木 もう忘れたなあ。多分、巻き舌で「アルルル」ってやってるんです。「(血を)吸いてえ!」みたいな。「ウリリリィ」って。

――作者ご本人が実演!(笑)第一部はそういう超人だけでなく、特にジョジョやディオの生い立ちに重きが置かれていましたよね。
荒木 うん、あらゆる物語で、作家は主人公のお父さんを絶対知ってなきゃいけない、と思ってるんですよ。どんな性格の人物に、どういう育てられ方したのかな? って考えてから、主人公を描くんですよ。

――ディオのお父さんはディオより性格が悪そうですよね(笑)。
荒木 そうそう。こんな悪いヤツいないだろうって。お昼の1時半頃にやってるようなテレビドラマが大好きで、DVDも集めてますしね。ああいうドロドロした、人間の本能が完全に描かれているという感じがいいんです。

――では最後になりますが、今回の映画について、お客さんに期待してもらいたいポイントを教えていただけますか?
荒木 叫び声や台詞の言い回し、ポーズもありますが、やはり30歳を過ぎた人たちも見たりするわけだから、その方たちの審美眼に耐えられる作品になってれば、本当にうれしいですね。

――本日は有り難うございました。




エリナ役 水樹奈々 インタビュー
文/結城昌弘 写真/四宮 義博


――『ジョジョの奇妙な冒険』の第一印象はどうでしたか? 絵柄などかなり特徴的ですが。
水樹 すっごくかっこよくってワイルドだなって思ってました。

――全員ワイルドですね。
水樹 ワイルドな男祭(笑)。なんかポージングがすごく個性的で。

――ジョジョ立ちってやつですね。
水樹 そうです。周りにジョジョファンがたくさんいるので、アフレコ前に、いろいろ勉強してきてたんですけど、すごいかっこいいなあと思ってました。

――今回の映画のストーリーを知ってどうでしたか?
水樹 想像していた以上にディープだった感じはしますね(笑)。でも、先入観なく作品に携わることができ自然体で役に入ることができました。

――今回、水樹さんはエリナ役ということですが、『ジョジョ』は男ばかり出てくるのですが。
水樹 そうなんです。女性は私1人だけだったんです。

――そういう男どもに囲まれた中のエリナという役柄について第一印象はどうでしたか?
水樹 本当にけなげで可愛らしいし、素敵な女性だなと思っていました。日本人女性のあるべき姿というか、昔ならではの男性を立て、そして三歩後ろを下がって歩くっていう、古風なイメージがエリナにはありますね。本当に献身的で、自分の思った人に全てを捧げるつもりで愛を注ぐっていうのは、ある意味男らしいっていうか潔い!

――逆に。
水樹 逆に(笑)。すごくすてきでかっこいい女性だとと思います。

――ちなみにジョジョ派ですか? ディオ派ですか?
水樹 私ミステリアスな男性が好きなんですけど、でもディオはあまりにも行き過ぎ感があって…(笑)

――あまりにもミステリアス……
水樹 過ぎて、私にはちょっと容量を超えてしまって、ついて行けないかもしれません(笑)。やっぱりジョジョ派かな(笑)。でも、あんな男性に出会ったら、私のほうが緊張してかしこまちゃいそうです。お父さんみたいなすごく安心感のある男性だと思います。

――包容力のあるタイプですね。
水樹 そうですね。あったかくて素敵な感じがします。

――作中のエリナのポジションは水樹さんの中ではどうとらえられていますか?
水樹 とにかくジョジョのことを信じて自分の決めた道を生きる女性なんで「お家は私が守っておくからあなたは自分の道を貫いて」みたいな感じだなって。

――なるほど…良妻というか…。
水樹 そうですね。何もできなけど、後ろからずっと彼をもうとにかく見守るという立場で、どんな形になろうとも私の信じた人だから最後まで私は見届けるっていう……やっぱり良妻ですよね。

――エリナは物語のキーポイントとしてディオに唇を奪われたりとかしてズキューン(笑)みたいなこともありますが。
水樹 ひどいですね。もう(笑)。ディオはエリナに気があるわけではなく、「俺のジョジョを取りやがって」「俺以外のヤツと仲良くするなよ」という感じでだったんじゃないかとか思うんですけど、2人の男性に振り回されてしまうっていうシチュエーションは、女の子的に少し憧れてしまうところはあります……やっぱり。人生で一度は経験してみたいって思っちゃうかもです(笑)。

――なるほど(笑)あんな風に振り回されてみたいと?
水樹 「あー、私どうしたらいいの?」とかってドキドキ……普通はあまりないことですけど(笑)…でもそういうのちょっとあこがれはありますね(笑)。

――エリナのセリフやシーンで心に残っているところはありますか?
水樹 何年もの歳月を経てのジョジョとの再会ですね。傷ついたジョジョと再会したときに本当は絶対に飛びつきたいぐらいの気持ちのはずなんですけど、ぐっとこらえて「お久しぶりです」って対応するところが「なんて素適な女性なんだ」って。感情をぐっと抑えて……大人だなあって思いました。

――ちなみに演出として「こういうふうに演じてください」のようなものはありましたか?
水樹 少女時代はとにかく純粋無垢で大好きなジョジョと一緒にいられるのが楽しいっていうストレートな感情を表現して欲しいとのことだったんですが、大人になってからは全体的に落ち着いて、泣いいても声のトーンは落ち着いてあまり揺らがないようにご指示をいただきました。

――最後にジョジョファンに向けて一言メッセージをお願いします。
水樹 一瞬の気の緩みも許さないぐらい全編見どころ満載でほんとに緊張感のあるシーンの連続です! ものすごく内容の濃い作品になっています。ワイルドな男たちの戦いっぷりも激しくて、かっこいいので、ぜひ皆さん見ていただけるとうれしいです。

――そんな中で、また貞淑なエリナがいて?
水樹 そうですね。一所懸命なエリナの姿も見守ってくれるとうれしいです!

――ありがとうございました。




声優初挑戦‼ スピードワゴン インタビュー
聞き手・文/編集部 写真/四宮義博


■profile
スピードワゴン
1998年結成。井戸田潤と小沢一敬からなるホリプロコム所属のお笑いコンビ。今回はコンビ名の由来になった『ジョジョの奇妙な冒険』の声優に挑戦。


――声優初挑戦ですが、やってみた感想はいかがでしたか?
井戸田 はい。難しかったです。

――どのような点がむずかしかったですか?
井戸田 ほとんど奇声だったんですよ。「キャー」とか「ワー」とか「キキーッ」とか。アドリブで1回やったんですけども、「じゃあ次アドリブで。こんな感じで」って指定されたので。2回目からは、アドリブのような、アドリブじゃないような感じでしたね。できあがりが楽しみです。
小沢 ぼくはダリオ・ブランドーという、ディオのお父さんの役をやったんですけど。ダリオ・ブランドーというのはね、本当に悪いやつなんですよ。やっぱりね、自分と正反対の役を演じるのは本当難しくて。もう少しぼくに、ああいうところがあればいいんですけど、自分には全くああいうのがないんで、難しかったです。

――でも、声はかなり悪役っぽかったですよ(笑)
小沢 ねえ。そう。悪役のね。ええ(笑)。

――ちなみに、『ジョジョの奇妙な冒険』は、いつぐらいから読んでらっしゃいますか?
小沢 もう僕は中学校の……20年前の作品ですよね。20年前は13歳だから、中ーぐらいに連載が始まったのかな? その当時ね『ジャンプ」ってもう宝物ですからね。『ジョジョの奇妙な冒険』好きってね、正直そんなに多くなかったんですよ。好きでも、1位じゃなかったの。なぜかっていうと『ジョジョ』ってちょっとマニアックだから。『ジョジョ』を好きな人は、パ・リーグが好き、みたいな。うん。

――ちょっとマニアックっていうか。
小沢 っぽい作品ですよね。でも『ジョジョ』面白かったな。うん。

――井戸田さんは『ジョジョ』は、読まれました?
井戸田 僕は『ジャンプ』の連載のときは『ジョジョ』読んでないですね。はずしてたほうです。読んだのは、2年ぐらい前に。三部まで読みましたね。あとはもう、ちょっと疲れてしまいました。

――まだ続いてますしね。
井戸田 長いので。で、あと四部からは、また機会をうかがって読もうと思ってますけども。

――訊かれすぎてると思うんですが、コンビ名のスピードワゴンというのは、どちらが?
小沢 ああ、僕くが。はい。

――その理由は?
小沢 ライブに出るときに、それまで小沢井戸田とか、井戸田小沢とか、そんなのでやってたんですけど。あるライブに出るとき「コンビ名を付けなきゃいけない」って言われて。「コンビ名どうすんだ?」って考えたときに鞄の中にちょうど『ジョジョ』があって。で『ジョジョ』をパラパラっと読んで「ああ、いいじゃん、スピードワゴンで」っていうノリです。

――じゃあもう本当に思いつきで、というか。
小沢 そうです。まぁ、好きだったから。例えばこれ、嫌いだったら絶対付けないですからね。

――やっぱり、それはキャラが好きだって思ったり?
小沢 うん。まぁ、キャラ好きですよ。

――何か演出的に、もっとテンション上げてくれとか、そういうのはあったんですか?
井戸田 テンション上げてくれ、はなかったですけど。もっと中国人っぽくやってくださいって言われました。

――中国人っぽく(笑)
井戸田 はい。どうも西洋人っぽかったみたいで。もっと中国でって。「○○アルね」みたいな感じでやってくれって言われました。
小沢 僕ね、このダリオ・ブランドーをやるときに「他人の不幸が、おれの幸せ…」ってとか、そういうようなセリフがあるんですけど。たぶん演出の方がやってくださったんですね。その方がとてもうまくて。その方の声のイメージがダリオ・ブランドーみたいな声だったの、もう。その人がやればいいじゃん、っていうぐらいうまかった。

――奇声のほうも、誰かにやってもらえるみたいなのは、なかったんですか?
井戸田 そのおじさんが、やってくれましたけど。「キー」とか「ケー」とか。こんな感じでって言って。上手だったんで。その人がやればいいのにって僕も思いました。

――ちなみに『ジョジョ』のこのお話がきたとき、どう思われました?
小沢 「ついに」と、思いましたよ。でもね、本当はね、正直尻込みというか。荒木先生に会いたくなかった。それは、会ってがっかりしたとかじゃないよ。会ってますます好きになったけど。好きな人に会いたくないの。僕は一方的に好きなんだけど。荒木先生はもう、空想上の生き物でいてほしかった。

――制作発表の記者会見のときお会いになったのですか?
小沢 そうです、そうです。

――何かお話されました?
小沢 あのね、荒木先生には「小沢さんみたいなタイプは苦手だ」って言われました。あのね、マニアックな人は「ここは、こうなってるんですよね。でも、僕はこう思うんです」みたいなことを言いそうだから、ちょっと「小沢さんはマニアすぎて……」って言われた(笑)

――これから見る人に対して、どこが見どころなのか、自分が出てらっしゃるシーンがどういうところなのかを教えていただけますか?
井戸田 はい。今回の映画の見どころは、いろんな奇声を発したんですが。その中にも、感情を込めて言ったところと、全く感情を込めずに言ったところがあります。ぜひ、見抜いてください。お願いします。
小沢 語りつくせませんね。見どころというのはね、誰かに言われて見つけるものじゃありませんから。みなさんが、一度その目で見て、確かめていただきたい。と言いつつ、スピードワゴンはクールに去るぜ。
井戸田 クールに去るぜ。
小沢 去るぜ。

――わかりました。今日はお忙しいところありがとうございました。




ディオ役 緑川光×ジョジョ役 小西克幸
聞き手・文/多根清史 写真/四宮 義博


■profile
小西克幸(こにし かつゆき)
『勇者王ガオガイガー』(ボルフォッグ/ビッグボルフォッグ役)でデビュー。温和で暖かみのある役柄を演じることが比較的多い。今回のジョジョ役ははまり役。


■profile
緑川 光(みどりかわ ひかる)
『キテレツ大百科』でデビュー。クールな役柄や冷酷なタイプの悪役を演じることが多い。ディオ役はまさにはまり役。


――お二人は、『ジョジョの奇妙な冒険』は読まれてました?
小西 第1部の最初からずっと読んでました。今も『スティール・ボール・ラン』を読ませて頂いているので、感慨深いですよね。 緑川 ぼくもそうですね。でも、かなり忘れている部分もあったので、また何度も読み直しました。

――ご自身がその漫画のキャラクターを演じた感想は?
小西 まさか、20年前に読んでいた漫画の主人公になれると思ってませんでした。自分の期待を裏切らないように、そして皆さんのイメージに合えばいいなと思ってやらせて頂きましたね。
緑川 ほとんどの人が知ってる偉大な作品なので、プレッシャーでした。ものすごい悪役で、生物界の頂点ですからね。大変ですけど、とてもいい経験になりました。

――今回の映画では2人とも少年から青年に成長する役柄ですよね。
小西 そうですね。ジョジョは、最初は坊っちゃんじゃないですか。で、ディオが来ていろんなことをされて、それでも彼を信じようとして。きっと、ジョジョは精神的にも、人間的にも強くなっていったんだ、と思って役に入りましたね。

――緑川さんはゲーム版でも青年ディオを演じられましたが、アニメ版では少年時代もやっておられますよね。
緑川 ええ、今回はやらせて頂けてうれしかったですね。「よーし、やってやるぞ。おれの少年時代を聞けえ」みたいな(笑)。非常に珍しいケースなんですけど、アフレコの段階で(動画の)絵が入っていて、微妙に表情が変わるのに合わせて、こっちも芝居をするのがとても楽しくて、やりやすかったです。

――少年時代は「いじめる側」と「いじめられる側」ですが、やり取りに熱は入りました?
小西 僕はいじめられることに熱は入らないですけども(笑)エレナにも「あなたは本当に紳士だわ」っていわれますよね。部屋を荒らされて、犬もボコボコにされて。でも、大きな心を持っていられるジョジョは、やっていて楽しかったですね。

――一方、追い込むディオというか緑川さんは、いかがでした?
緑川 やっぱり悪役は楽しいんですけど、僕は犬を2匹飼ってるので、心が痛むセリフやシーンが出てくるんですよ。蹴り入れるわ、燃やすわ。家では、僕がコタツに入ってると、犬が上に乗っかってくるんですね。こうやってリラックスしてるところで、それを言うのが凄くきつい。でも、乗り越えなきゃディオになれないなって。

――お前のことじゃないよと(笑)。そして小西さんは、ジョジョが青年期になると、演技にどう変化を付けられました?
小西 このジョジョっていう人の生涯を考えて、自分なりに作っていった感じですかね。今までやってきた役の引き出しを開けつつ、ジョジョとして生きていくという。

――ディオは悪役の中でも頂点に立つ方だと思うんですが、緑川さんは高揚感がありましたか?
緑川 けっこうありましたね。ディオにもいろんな段階があって、少年時代から石仮面をかぶって、ちょっと変なふうになる(笑)。その節回しは、去年からやらせてもらってる外画(外国映画の吹き替え)の引き出しから流用してるところがあるんです。『ジョジョ』をやる前に経験できていてよかったな、と思いました。

――そしてお二人の対決へとなだれ込んでいくんですが、やはり戦いでの雄叫びは体力的にも大変でした?
小西 体力は使うんですけど、やっててすごく楽しいですね、自分がワクワクして読んでいた漫画の代表的なセリフじゃないですか。「震えるぞハート、燃え尽きるほどヒート、サンライトイエローオーバードライブ!」って、やっと本物として言えたという思いもありますし。

――やはり波紋呼吸の感じを出されようとしました?
小西 ええ。第2部かどこかに、波紋の呼吸法って、10秒吸って10秒吐くって書いてあったんですよ。それを子供の頃に実践していて。家やリハーサルでも、「10秒吸って」が頭をよぎったりしましたね。

――リサリサ先生の教えを守られたと(笑)。一方でディオについては、皆さんが注目するのは「ウリィィイ」だと思うんですが。
緑川 ゲームのときも「ウリィィィ」や「無駄無駄無駄ァ」とか、「どんな感じがいいですか?」とお伺いして、要望に沿っていろんなバージョンをやりましたね。今回も新たな注文が来て、頑張ったんですけど難しかったです(笑)。いや、すごくやりがいはありました。

――お互いがからむと、テンションって上がります?
小西 やっぱり一人でやるのよりは、どんどん上がっていく一方で。温度も上がって。冷房入れなきゃいけないや、みたいな。

――緑川さんがディオの顔に近づいていく、とかありました?
緑川 どんどんやつれていくような気がしましね。
小西 そうそう。こう、生気が吸い取られていくような。不思議なもので、マイクから離れたときは「ああ、緑川さんだな」と思うんですけど、2人で立っているときは、ジョジョやディオというキャラクターになりきって、モニターの中の世界を見てるんですよね。で、それを冷静に分析してる自分もいるっていう。
緑川 あんまり余計なこと気にしてたら絵と合わなくなるから、画面に集中してますね。横を見ている余裕がないといいますか。

――もう全部の声を入れ終わったんですか?
小西 はい、やりました。今は海の底に二人で(笑)。

――その段階において、彼らは生死を超越してますよね。ジョジョは最期の波紋を練っているし、ディオのほうは首だけだし。『ファントムブラッド』の大団円だということで、お2人とも胸に去来するものはありましたか?
小西 そうですね。第1部っていろんなエピソードが入ってるじゃないですか。それを限られた時間の中に上手く凝縮してっていう。なので、あっという間に終わったっていうのが正直な感想なんですよ。すごく駆け抜けていった、やりきった感じがあるにはあります。

――ディオのほうは、しぶとく「首だけ」という人類がやったことがない境地に至りますが、いかがでした?
緑川 もう無茶しまくりですからね、僕ら。自分で首を切り落としたり、血管を伸ばして天井に貼り付いたり、目から何かを飛ばしたり。素晴らしいですよ。これがきっと、役者をやっていく上で肥やしになるんでしょうね。

――緑川さんが別作品で演じられる悪役は、違う次元の宇宙に行ったりしますしね(笑)。
緑川 ねえ。いや、楽しいですよ。

――最後に、お二人とも、今後『ジョジョ』のシリーズがアニメ化されるとしたら、次はどういう演技をやりたいですか?
小西 とりあえず、(ジョナサンは)死んでしまったので(笑)。もし何かやらせていただける機会があるならば、今回やったことを糧にして、何かこう……一歩進んだジョジョじゃないですけど、また役に入り込めればいいかな、とは思います。

――ディオのほうは、第二部以外は絶対に出てくると思うんですけど、いかがですか。
緑川 もちろん機会があったら、ぜひ。それと、あまりにも(ディオの)アクが強すぎるので、さりげないキャラで登場させて頂くのも面白いかな。自己主張MAXのキャラクターじゃなくて、「え? 緑川さん出てたの?」っていう関わり方もいいですね。どんなキャラクターでも、べストを尽くしてやります。




羽山淳一監督 インタビュー
文・聞き手/編集部 写真/四宮 義博


■profile
羽山淳一
1984年『Gu-Guガンモ』で動画デビュー。原作の第三部のOVA版『ジョジョの奇妙な冒険「愚者」のイギーと「ゲブ神」のンドゥール』でキャラクターデザイン・作画監督を務め、劇場版『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』で監督に初挑戦。


――『ジョジョ』を監督するにあたって、原作を読み直しましたか?
羽山 特に読み直したりはしてないですね。というか、好きで読んでたりしたのもあったので、もう完全に頭の中へ入ってたというか。

――ビデオ作品の第3部のほうでは作画監督をされていましたが、監督として苦労した点はありますか?
羽山 苦労ですか。そうですね。僕は演出経験が全然なく、言ってしまえば今回初めてそういうことをやることになったんで。苦労って言えばもう何もかもが初めてのことで、本当苦労づくしって感じですね。

――いきなり劇場版ですよね。
羽山 本当は今回も作監とキャラデザインっていう話で。僕がやるはずじゃなかったんですが、なんだかんだといろいろありまして(笑)。

――やはり監督ならではのプレッシャーはありましたか?
羽山 それはもちろん。コアなファンが多い作品ですから。これはちょっとやそっとじゃ納得してもらえないだろうな、というのがありました。そんなファンの気持ちも分かりますしね。なんとかなるんだろうか? なんとかなってほしいな、と思いながらやってました。

――アニメ化をする上で難しいところはどこですか?
羽山 もうこれは3部のときからずっとそうなんですけれど『ジョジョ』を原作から好きな人っていうのは、やっぱりあの独特の絵柄とかポージングとか擬音とかに惹かれているところがあると思うんです。ただ、1本の映像作品として作っていくときに取り入れるのは難しい。全体のバランスをとりながらいくと実現できない部分があったりして。例えばオープニングやエンディング、そういったものがあれば、原作のポージングやらテイストっていうのを取り入れていくことがなんとか可能かもしれないと思うんですけれど。常々思っているんですが、そのへんは原作ファンの人にはちょっと納得してもらえないところなんだろうな、というふうに思ったりはしてます。

――監督として「これは気をつけてやろう」と思った点は?
羽山:例えばこの1部とかでツェペリが初めて出てきたときにカエルをつぶさずに岩を砕く場面があったりするんですけど、そういうようなところって原作の好きな人っていうのが見たかったところだと思うんですよ。危うくなくなるところだったんですけど阻止したりとか。ボリュームを抑えて原作のムードを壊さずに、と大事なとこだけ拾っていくと、べつにカエル潰さなくてもお話は成立するんです。でも、やっぱりその絵は入れとこうよと。その他にも、本当に泣く泣くカットした原作のエピソードとかもあったりします。

――ちなみにこの作品をやるにあたって、荒木先生から「こうしてほしい」など注文などはありましたか?
羽山 特に大きなものはなかったですね。作監をやってたときにもお会いしたことがあって。うれしいことに覚えてていただいて「なに? 今度は監督なの?」みたいなことを言われたりしました。ちょっと「初めてづくしで大変です」みたいな話をしたら「それでも、楽しくやればいいんだよ」みたいな感じで励まされました。また、最初のころの構成を決めるっていう時に荒木さんのほうから「少年時代のところをちゃんとやってほしい」みたいなことは言われました。

――ジョジョとディオの出会い
羽山 そうですね。ディオが来て、それまで多分幸せだったろうジョジョがつらい思いをしていく……というところをちゃんとやってほしい、みたいなことは言われました。

――ジョジョとディオの関係、ディオの内心を監督としてはどう解釈されてるのでしょう。
羽山 基本的には、ディオは悪人……悪人と言っていいんでしょうね。人を押しのけてでものし上がっていくタイプの人間だな、と思ってます。もともと貧しい家の出じゃないですか。だから、成り上がりたいという気持ちがものすごく強い男なんじゃないかな、って思ってましたね。

――最終的にディオは地上最強生物みたいな状態になっていくじゃないですか。最初のほうとの落差が相当激しいと思うんですけど。
羽山 ディオは結局、石仮面を被るじゃないですか。あそこの段階で石仮面を被るとどうなるかっていうことをディオは知ってるわけで、なんで被ることになっちゃったかっていうと、それまで社会的に彼は成功したかったはずだと思うんですね。ところがジョースター卿を毒殺しようとしたこととか、かつて自分の父親を毒殺したこととか、いろいろな悪さが明るみに出てしまったというところで「もういいや」と。言ってしまえば捨て鉢になっちゃったんだと思うんです。その上で、やっぱりナンバー1が好きな男なので「こんな社会的なみみっちいところで1番になってもしょうがないから」っていうふうな感じで石仮面を被っちゃう。そこからガラリと目的が変わったと思うんです。

――つき抜けちゃったっていうか。それからの生への執着もなかなかすごいですよね。
羽山 そうですね。あれは生への執着なんですかね? 吸血鬼になっちゃったところで、生きてるのか死んでるのかもよく分からないですけど。

――最後に監督として、この作品の見所は?
羽山 うわ、出た(笑)

――やっぱり一応お約束で。監督的に「ここが観てほしいな」っていうところがあれば。
羽山 作る側からしても、観る側からしても、なんですけれど、見所ってよく分かんないんですよ、正直。全体的な仕上がりのバランスが一番大事だ、っていうふうに考えているんで。全部観てください、見所って訊かれれば「全部ですよ」と。「よく言うよ」とか言われたりしますが。そういう感じですよね。


References

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