Futoko Shinbun (January 2011)
Interview
取材を受ける荒木飛呂彦さん(左・撮影/全国不登校新聞社) ――私は小学校2年生から不登校をしていました。いまはフリースクールにも楽しく通えていますが、将来への不安は拭えません。この先のことを、どう考えていったらよいのでしょうか。
私の話をすれば、私はマンガ家としてひとりでマンガを描いています。そうすると「孤独に耐えねばならないとき」が必ずあるんです。たとえば自信を持って描いたストーリーでも、読者に受けいれられないことがあります。そんなときは「なんでなのだろう、世の中の人は何を考えているんだろう」と自信を失い、「私はひとりだ」という孤独感がさらに強まることがあります。そういうときは、天才と呼ばれる先人たちの生き方や姿勢に勇気づけられることがあります。
ゴーギャンというフランス人画家が私は子どものころから好きでした。ゴーギャンのなかでとくに好きなエピソードといえば、絵を描くためだけにフランスからタヒチへまで行ったことです。地球の裏側と言ってもいいような場所へなぜ行ったのか。イメージで描いたっていいし、写真を見て描いたっていいわけです。しかも、そこまでこだわって描いたからといって、かならずしも絵が売れるという保証はありません。でも、そうした確固たる意志や自分の信念に沿った行動を見聞きすると、私はすごく励まされるんです。
マンガ家はかならず孤独を感じるものですが、だからこそ「自分を信じる」という気持ちが大切です。自分のアイデアが読者にウケるかどうかは描いているときにはまったくわかりません。たとえどんなに有名なマンガ家であっても絶対的な確信は持てないと思うんです。私もそうです。マンガ家としてデビューして30年以上が経ちましたが、今でも確信は持てません。それでも自分を信じてマンガを描き続けること、それが自分の使命だと思っています。
荒木飛呂彦さん(撮影・全国不登校新聞社) ――その「自信」を持つためには、どうしたらよいのでしょうか。
修業をするんです。自信を持つための修業です。私はいまでも何十、何百タッチと、毎日たくさん描いています。だからこそ、あまりペンを握ったことがない人では絶対に描けない線を引けます。これは野球の素振りにも通じるんじゃないかと思います。ホームランだって、急に打てるようになるものではないでしょう。表立っては出てこない努力の積み重ねが自信につながっていくんだと思います。
『ジョジョ』を描く前には、知能戦をテーマにした『魔少年ビーティー』や、究極の肉体をテーマにした『バオー来訪者』という作品を描いています。いま読み返してみると絵もストーリーも安定していませんが、この2作品がなければ、『ジョジョ』に行きつくことはなかったと思うんです。
――ありがとうございました。(2011年1月1日号『不登校新聞』掲載より一部編集) [1]
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