SPUR Magazine (August 2018)
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Jump Square (December 2007)
Interview with Hirohiko Araki in Volume 75 of "Quick Japan" magazine, published on December 10, 2007.[1][2]
Interview
荒木飛呂彦三〇〇〇字インタビュー
人間讃歌は変わらないッ!!
閑静な住宅街に建つマンションの一室に、荒木飛呂彦の仕事場はあった。笑顔で取材班を迎え入れてくれた荒木の上着の色は、紫。『ジョジョ』という作品を色で表現するなら紫かなと思っていたので、勝手に驚き、本人に訊ねてしまった。「絵の具を混ぜ合わせた時に、一番楽しいのが紫なんですよ。赤に青を混ぜるといきなり紫に変わる、その、ふあーっと爆発する感じが好きなんですよね」日本が世界に誇る稀代のストーリーテラーは、絵の快楽を誰よりも知る画家であるという事実を、今さらながら再認識した〈すぐれた画家や彫刻家は自分の 『魂』を目に見える形にできる(中略)まるで時空を越えた「スタンド」だ…そう思わないか?〉(「ジョジョの奇妙な冒険PART6ストーンオーシャン』第二巻より)
『ジョジョ』以外描けない
―― 今年は 『ジョジョの奇妙な冒険』(以下、『ジョジョ」)の連載開始ニ〇周年、現在連載中の第七部が絶好調ということもあり、 『ジョジョ』絡みの話題が目白押しでした。荒木先生一自身もブームを実感されているのではないかと思うのですが、いかがですか。
荒木 最初は「ジョジョ立ち」という、『ジョジョ』のキャラクターと同じポージングをやってる人達がいるよという話を人から聞いて、パソコンでサイトを見たんです。で、あぁ、なんかこれ」fすげぇって(笑)。現代アートだと思いましたね。それから、『ジョジョ」を好きだと言ってくれる芸人さん達が、テレビ番組などで作品を紹介してくれるようにもなって。ちょっと考えたのは、その人達ってみんな三〇代なんですよね。二〇代を終えて、発言力も増すというんですか(笑)。 『ジョジョ」の連載が始まった頃、小学生や中学生だった人達が、才能を発揮し出してきているのかなと。
――上の世代の顔色を伺わずに素直に自分の意見が表明できて、『ジョジョ 』で一時間の番組を作れてしまうという(笑)。
荒木 そうそう(笑)。あともうひとつは、『少年ジャンプ 』って、作家をすごく大切に育てる雑誌なんですね。週刊連載に集中するために、作家取材はあまり受けないみたいな雰囲気があったのかもしれないんだけど、僕は普通に受けたりしてたんですよ。そのせいなのかな『ジョジョ』周辺の環境の変化は少しずつ感じました。ただ声を掛けられたから僕も出ていくだけで、ちょっと前までは依頼自体がなかったんですよ。自分から何か仕掛けているってことは全然ないんです。
――『ジョジョ』を二〇年描き継いできたという事実は、今どうお感じになられていますか。
荒木 「新作を描け」って編集者はよく言うんですよ。そのほうが、「 『ジョジョ』の荒木が新作を!」と話題になって、編集部的にはいいんじゃないですかね。で、僕は「えーっ!『ジョジョ』以外描けないんです」と言って「とにかく主人公は変えますから」とそういう感じで二〇年続けてきた。主人公が変わった時は、自分では新連載と同じ感覚なんです。大変なんですよ一からキャラクターを作って、設定も作ってくので。だから、二〇年間、同じ作品を描いてきたという感覚はあまりないですね。
――「『ジョジョ』以外描けない」というのは?
荒木 キャラクターを作る時に、お父さんが誰かを知りたいんですよね。両一親がどんな人で、どんなふうに育てられてきたかを僕はちゃんと知りたい。その部分の情報が入ると、キャラクターが、確かにそこに生まれてくる感じがするんですよね。描いていて、”いる。って感じがするんですよ。そうすると、血統が続いていたほうが父親がはっきりするし、そこが 『ジョジョ』にこだわっている理由ですね。「スタンド」というアイデア(超能力をビジュアル化したキャラクター)にこだわっているんじゃないんですよ。血統でこだわっているんです。
――親への興味、血統への興味は、どんな初期衝動から始まったものなんでしょうか。
荒木 やっぱりどうしても、恐怖マンガを描きたかったんですね。恐怖というか、サスペンスが軸の漫画を描きたかった。そうすると一番強い人は誰かとか一番この世で恐いものはなんだろうとか、究極まで考えるんですよ。本当に強い人間はただ筋肉が強くてパンチが強い人間なのか?どんなに力が強〜ても、弱点を一点集中で攻めてこられたらひとたまりもないよな、とか。……そう考えていった時に、本当に恐いのは、先祖の因縁で、自分には全く罪がないのに襲われることじゃないか伏助とか承太郎って、本人達はなんにも知らないうちに、何代か前の怨念に襲われるじゃないですか。あれが、とにかくこの世で一番恐いんじゃないかなって思ったんですよ。ひょっとしたら、死ぬことよりも怖い。逃れようがない運命の世界というんですか。それもあって、血統というか、血筋みたいなことにこだわってるんですよね。
――改めて荒木さんの言葉で語り直していただくと、それは究極的に恐いことですね。
荒木 そこを追求していくと、哲学の部分も自然に生まれるんですよ。自分でむりやり生み出そうとしなくても勝手に作品に出てくるんですよね。その辺がやっぱり、新連載はできないなぁと思う理由ですね。だからまぁ血統だけ受け継いで、親の遺産だけ受け継いで自分が何かするかなって、そういう感じですよ。スネをかじるだけにならないようにしたいと思います(笑)。