Tohoku University (11/2007)

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Event
Interview
Published August 7, 2007
Tohoku University (November 2007)
Interview Archive

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The following interview is a transcription of two lectures given by Hirohiko Araki at the Tohoku University and the Aoyama Gakuin University, on respectively November 2nd and November 3rd, 2007.

Interview

冒頭あいさつ(講演が苦手なのに引き受けた理由をジョークで)
東北大バージョン…「杜王町出身の僕としては、地元・東北大のこの依頼を断るわけにはいかない」(場内湧きまくり)
青学バージョン…「娘が来年ここを受験するらしくて、もし通うことになった時に“お前の父親去年断ったよなぁ”って嫌味言われないように引き受けました」(客席爆笑)

●子供時代の思い出
「僕は謎を追うのが好きな少年だったんです。UFOやお化けの謎と同じように、ピカソはなんであんな変な絵を描くんだろうって疑問に思っていました。好奇心が昂じ、 5歳の時に池で魚を見ているうちに滑って頭から落ち、親が言うには僕は一度死んでいるそうです。母親が見つけた時は池の底に沈んでて、足を掴んで逆さまにふって生き返らせたんです。
冬の仙台は朝になると雪の上に動物の足跡がついてたりして、子どもの頃はそれを追跡するのが好きでした。ある日、追ってるうちに雪の下にあった“肥(こえ)だめ”に落ちてしまったんです。落ちた瞬間とっさに反転して地面を掴んだから命を救われたけど、一歩先は死の領域でした。家に帰ると体が臭いので入れてもらえず、真冬なのに親からホースで水をぶっかけられ、そっちの方で死にそうでした(笑)。そんな酷い目にあって以来、用心深い性格になりました。新製品は誰かに食べさせて様子を見てから食べるようなり、プラズマ薄型テレビが出た時も、すぐに飛びつく他の漫画家の様子を見ながら、“2~3年で安くなり性能も良くなるだろう”と数年過ごし、いまだにブラウン管を見ています(笑)」。

●『損をしないマンガの描き方』
「講座の名前はちょっと生々しいんですが、『損をしないマンガの描き方』。要するに雑誌に載るにはどうしたらいいか、この基本を踏まえてないと大ヒットまでいかないということです。
最近の世の中を見ていると、政治家は権力や名誉を求めるあまり、接待とかでいつの間にか金まみれになっていたり、企業は売上げの数字だけを目指して環境破壊を起こしたり、労働者のことを考えなかったりとか暴走しがちです。マンガも同じで、売れるマンガばかり追求してると落とし穴に作家自身も出版社もハマッてしまいます。皆に読んで貰うためには売れなきゃならないけど、売れることだけ考えてると間違った方向に行っちゃうので、その為にも『地図』が必要なんです。
未開の山があったとして、山に登るための麓(ふもと)までの地図がないと、どこに未開の山があるかも分からないじゃないですか。麓までいく基本地図があれば、未開の山に登ってもヤバイと思ったら戻ってこられます。スランプになったらそこまで戻ればいい。こういう黄金の地図は絶対に必要なんです!」。

J-tohoku87.jpg

「男には地図が必要だ。荒野を渡り切る、心の中の『地図』がな」(SBR第4巻)
●絵について~まず読者が最初に出合うのは絵
「絵には古典的なものやクールなもの、ファンタジーやリアリティを追い求めた作品など色々ありますが、一番大切なのは15m先から見ても“あのキャラだ”と分かるのが良い絵だと思います。新人の時に、『リングにかけろ!』や、『キャプテン翼』、『北斗の拳』などを見てそう感じました。最近でも『ワンピース』なんかは(遠くから)分かりますね。
ピカソの絵は初見の作品でも「これピカソだな」って分かるし、ミッキーマウスは丸を3つ描けば影だけでミッキーマウスって分かります。ミケランジェロなど古典の画家だけでなく、最近では単に色を塗ってるだけのバーネット・ニューマンも、ただオレンジを塗ってるだけなのにバーネット・ニューマンなんですよ。
ウルトラマン、スパイダーマン、マイケル・ジャクソン、なんでも一目見て分かるのがスーパースター。ちっちゃな映像でもマイケルって分かりますよね。そんな風に、どこから見ても分かるデザインを追求するのが絵だと僕は思ってます。画力が高ければそれに越したことはないけれど、うまい下手はあまり重要じゃあない」。

●キャラクターについて~絵の次に飛び込んでくるのはキャラクター
「ヒーローとは孤独に戦う人です。仲間はいても最後は自分一人で戦っていく人に泣けるんです。「お前頼むわ」というキャラはヒーローじゃない(笑)。変人と世の中から爪弾きにされても影ながら人の為に戦っていくのがヒーローの基本なんです。キャラは善と悪に分れていて、悪というのはDIOにしろ吉良にしろ描いてて楽しいですね。ストレスがとんでスカッと(笑)。悪いヤツにも理論があって、吉良はただ静かに暮らしたいだけで、そこには読者も共感できる部分があると思う。悪役は細かい設定を考えるのも楽しくて、吉良は爪を集めて体調を調べるとか、DIOは本当は女の子が好きだけど男でもOKだぜとか、そういうのを想像するのが面白いんです(笑)。
一方、善のジョースター側は描くのが難しいです。正義とか勇気とかは、描き方によっては読者が「何を良い子ぶってんだよ」と反感を持ちます。でも、互いを引き立てる為に、この難しいのを描かなきゃならないんです。白い原稿用紙に黒いインクで漫画を描くように、キャラも黒と白がないと互いが引き立ちませんから。

悪ばかり描いてるマンガっていうのは虚しいと思うんです。世の中には美しい心があるわけで、それを目標に何かしていかないと。正義とか善とか希望を貫いている主人公がいないと、悪だけを描いていると、一時的には人気が出て皆の話題になるかも知れないけど、時代を超越するには人間の普遍的なもの(善)が必要なんです。
NG設定はバカとマヌケのコンビで、武器やケータイを家に忘れるとか、そんなストーリーを作ってはダメです。持ってるのが当然だし、外に逃げずに2階に逃げるとか、そんなバカなキャラには読者が引きます。虫が怖いとかそういう欠点はいいけど。絶対に主人公は孤独に世の中の人の為に戦う人なんですよ」。

●ストーリーについて~絵とキャラクターが融合したものを動かしていくのがストーリー。ポイントは4つ(起承転結)
「漫画家によっては“キャラクターさえいればストーリーは自然に出来上がっていく”という人もいます。でも、ストーリーがないとキャラだけでは時代を超えないんです。確固としたストーリーの上でキャラが動かないとだめなんです。

(1)主人公がいきなり困難な状況に突き落とされる (2)その困難を主人公は乗り越えようと努力する (3)乗り越えようとするが、悪化してさらに絶体絶命になる (4)最後はハッピーエンド

これはバトルマンガに限らず恋愛モノにも言えて、好きな女の子に彼氏がいた→しかも彼氏は主人公の兄貴だった、みたいに状況を悪化させて最後にハッピーエンドを持ってくるのが鉄則です。この地図から外れたものは支持されません。ただし、この地図を知っている上で、わざと外して新しい芸術として出すのは良いです。
主人公が負けるというハッピーエンドもあります。負けても友達を助けるとか、子孫に何かを残す為に死ぬとか、美しい心の為に死んでいくのは、悲しいけどそれもハッピーエンドだと思ってます。
あと、 1頁目で読者を引きつけるのが僕の目標なんです。1頁目を読まれなかったら当然2頁にいきませんから(笑)。
※ジャンプSQに描き下ろした新作の露伴外伝について。「僕はよく鼻血を出すんです。春は花粉で鼻をかんで鼻血出して、夏は暑くて出して、秋は乾燥して出して、冬はチョコを食べ過ぎて出してという感じ。もしこれが止まんなかったら怖いなと思った時にメモしたものが今回の読み切りのネタになったんです」。


●テーマについて~すべてを統括しているのがテーマ(作者の哲学)

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by @JOJO(Thanks!) まずキャラ(主人公)とストーリーが結びつき、

それをひっくるめて表現する為に絵があり、 すべてを包んでいるのが作家の哲学・人生観 であるテーマ。ジョジョで言う“人間讃歌”!
「絶対にやっちゃいけないことは読者を説教すること。説教すると“お前なんかに言われたくない”と読者は引くと思う。テーマは背後にあるべきもの。キャラの行動を通じて描いたり、最後の台詞でちょっと描くとかその程度。新人の審査をするとテーマだけ描いてくる人が多く、そういうのは通らないですね。“俺は何々をするんだーッ!”とか言いながら戦っている主人公はスマートじゃない。テーマは背後に隠すのが創作の基本だと思ってます」。[1]


References

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