Junjo Shindo (May 2024)

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Published May 13, 2024
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Junjo Shindo Photo.jpg

An interview with the author of El Aleph, Junjo Shindo, published on Da Vinci Web on May 13, 2024. The interview and text was done by Mio Matsui (松井美緒).[1]

Interview

ジョジョは僕の“コモンセンス”です


――『ジョジョの奇妙な冒険 無限の王』、大変面白く拝読しました! こちらは「JOJO magazine」に連載されたものですね?

真藤順丈さん(以下、真藤): そうです。以前、『GANTZ』のオリジナルノベライズ『GANTZ/EXA』(平山夢明:原案・構成/集英社)を執筆させていただいて、その後、他のマンガのノベライズもいくつか編集者さんが提案してくださって。何が書きたいですかと問われるたびに僕はいつも「ジョジョ」と答えていたんです。それでちょうどムック連載のお話をいただいて、迷うことなくやらせてもらいました。

――ジョジョはいつからお好きだったんですか?

真藤: もう30年以上前か!すごいですね、中学生ぐらいのころから全巻揃えていました。ジョジョは僕ら世代の書き手にとってコモンセンスのようなものだと思います。

――第何部が一番お好きですか? お気に入りのキャラクターはいますか?

真藤: 挙げだしたらきりがありませんが……。東方仗助と虹村億泰、第5部のブチャラティのギャングチーム、各部のラスボスもみんないいし……。ジョジョのキャラクターはそれぞれに熱量と信条があって、かならずどこかエッジがきいていて、あれだけの大系になるとキャラクター類型として参照できる名鑑のような域に達していますよね。


リサリサを主人公にすることで、ジョジョの歴史の過去と現在をつなぐ


――『無限の王』は第2部と第3部の狭間を描いています。

真藤: 自前の作品では、近現代の歴史小説をけっこう書いてきました。ジョジョでもこのアプローチに落としこめないかと。たとえスピンオフでも、個人的にはあくまでも本編の一部、正史の隙間の〈語られざる物語〉にフォーカスを当てる形式を採りたいと思ったんです。

――主人公は、ジョセフ・ジョースターの〈波紋の師〉だったリサリサです。彼女の“その後”の物語、しかもスピードワゴン財団の顧問として活躍する冒険譚が読めるというのは、非常に嬉しかったです。

真藤: リサリサは、初めは映画「007」シリーズのM(MI6の部長)のような立ち位置で設定して、ジュディ・デンチが演じたバージョンの。彼女を据えることで本編の2部と3部の橋渡しとなる話が書けるのではないかと。後列の指揮官というポジションだったんだけど、はからずも物語の要請から、最前線にがんがん出ていくことになりました。

――なぜ女性を書きたいと?

真藤: 第二次世界大戦に従軍したソ連の女性兵士を題材とした『戦争は女の顔をしていない』が好例ですが、近年では歴史や戦史を書くにあたり、女性視点のものが傍流から主流になってきている。昭和的なマチズモやハードボイルドから離れて、あらためて史実の〈語り直し〉が可能になってくる。語られざる物語に着手するにあたって、現在においてはそちらのほうがよりアクチュアルな主題をあつかえると感じます。


〈スタンド〉発生のプロセスを忘我の境地で書く


――『無限の王』では〈スタンド〉が大きなテーマとなっています。〈スタンド〉の起源、そして〈スタンド〉とは何なのか。

真藤: 〈波紋〉から〈スタンド〉への変遷、このテーマには書きながら焦点が合っていった。物語のなかで僕なりに〈スタンド〉の本質の一端に触れたいと。言うまでもなくジョジョの最大の発明は〈スタンド〉ですから、ジョジョを書くなら〈スタンド〉は避けては通れない。だから最初にどれくらいオリジナルの〈スタンド〉を出していいのか編集サイドに確認したら、「いくらでもどうぞ」と太っ腹なお返事をいただきまして、嬉しかったので奮起しました。

――本作に登場するオリジナルの〈スタンド〉は、どれも独創的で素晴らしかったです。例えば、本体が〈スタンド〉を使いこなせず、体が傷付いて苦しんでいたり。

真藤: 〈スタンド〉発生のプロセスみたいなものを形にできればと思いました。そこには未知の能力への脅威、どう関わり合っていいのかわからない恐怖などもあるでしょう。リサリサは、そういった原初的な〈スタンド〉と向き合うことになります。

――スタンドバトルも大迫力でした。文字でその闘いを表現することに難しさはありましたか?

真藤: 小説とはそもそもすべてにおいてそういうものですから。文字にならないものを文字に起こす。かつて実在しえなかった、想像を超えた現象や情景を書こうとするときほど、僕は熱狂します。忘我の境地というとかっこよすぎだけど、没頭して、書き終わったら1~2週間は使いものにならなくなったり(笑)。


作劇はジョナサンとディオの構造に学びました


――オリジナルの〈スタンド〉に加え、作中では真藤さんの独創性の数々が光っています。まず、リサリサが〈スタンド〉の起源を求めて旅する中南米という舞台。そのむせかえるような熱気と超現実的な世界観は、真藤さんでなければ描けないと思いました。

真藤: ジョジョはアメリカ、イタリア、エジプトと世界各地を巡っていますから、まだ本編に出ていない土地で書きたいというのはありました。そしてジョジョを小説で書くならある程度はかならずマジックリアリズム的になるという予感もあった。そこでマジックリアリズムの本家本元というか名産地、ラテンアメリカを舞台に選んだという感じです。

――オリジナルキャラクターのオクタビオとホアキンも、とても魅力的でした。彼らがリサリサとともに勇躍する様は、『宝島』のグスクとレイを彷彿とさせました。

真藤: オクタビオとホアキン、この二人の関係性は僕の作劇の基礎のひとつみたいなところがあって、それは考えてみればジョジョからも享受している。相対するライバル関係、つまりジョナサン・ジョースターとディオの構造です。争うとともに惹かれあい、たがいの合わせ鏡でもある。一方は王を目指し、もう一方はさらに超越的な存在になっていく。

――それは、『無限の王』に限らず、真藤さんの小説のキャラクター造形は、ジョジョの影響を受けているということでしょうか?

真藤: 先ほど〈コモンセンス〉と言いましたけど、ジョジョを初めとする多くの漫画作品から創作のノウハウを血肉にしていると思います。筋書きもキャラクター造形も、大学で専攻する日本文学より先に接している原初的なエンタメ体験ですから。たとえばジョジョのような作品には、血統や運命、神話に類する構造をはらんだある種のシェイクスピア的な創作の理想形があると思います。

――『無限の王』、さらに『宝島』や近著『ものがたりの賊』など真藤さんの作品には、確かにシェイクスピア的エッセンスがありますね。『リア王』のようなある種の悲劇性が感じられます。

真藤: ちょっとオールドスクールすぎるのかなぁ。だけど神話やシェイクスピアの戯曲に描かれる人間の物語は、どの時代にも通底するものだと信じたい。ここ数年の僕の上梓した小説は、とりわけ自分のルーツに立ち返るようなものだったのかもしれません。

Junjo Shindo Photo2.jpg


クライマックスは3日間寝ずに熱狂して書きました


――『無限の王』の後半、ホアキンがスタンド能力を身に付けます。禍々しくも幻想的。彼のスタンドの圧倒的迫力には震えました。

真藤: 実は本作は、あのホアキンのスタンドを起点としているんです。あのアイディアをもとにホアキンとオクタビオの造形を固めていって。さらに作品のタイトルの着想を、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの小説『エル・アレフ』から得たときに物語の大まかな全体像が決まりました。なるほどこれは〈0〉と〈1〉の物語なんだと。

――クライマックスは、ジャングル最深部でのスタンドバトルから、ある〈奇跡〉の結末へと一気に雪崩れ込みます。怒涛の展開に心をわしづかみにされ、大袈裟ではなく読後はちょっとぼーっとしてしまいました。

真藤: 最終盤は、僕自身も本当に熱狂して書きました。歳をとってもう徹夜とかできなくなってきているんだけど、本作のラストパートは久しぶりに3日ぐらい寝ないで書き続けられて、物語の源流にガーッとさかのぼる猛烈な滝登りみたいに、止めたら流されちゃう!みたいな。そういうエキサイティングな執筆体験ができたのも、ジョジョの魔術ですね。

――『無限の王』を書き終えて、あらためてジョジョや荒木飛呂彦さんのすごさについて感じるところはありましたか?

真藤: もちろんです。荒木先生が確立されたもの、能力バトルとか攻守の反転とか、価値観の逆転とか、展開のひねりとか、そういう要素はマンガや小説を問わずあらゆるエンタメにおいて極めて重要なレギュレーションになっている。本作を書くにあたってはジョジョらしさを追求しながらも、既存のロジックからは外れていく必要がありました。

――外れる、というのは?

真藤: 難しいんだけど、不即不離と言いますか。ジョジョ的でありつつもジョジョと同じ流れを踏襲してはいけない。第1部~現在のすべてのパターンから離れる。これが難しい。荒木さんはあらゆる物語の形を具現化されていますから。だけどそれを正史ととらえて、なんとかしてその隙間を見つけるというのは、歴史小説のアプローチとおなじなんですね。歴史と歴史のはざまの、大きなサーガに描かれていない小さな物語を拾ってくる。そういう意味でも、この作品がジョジョのひとつの外典たりえればと思っています。


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