Phantom Blood Movie Guide (February 2007)

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Published February 9, 2007
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Phantom Blood movie guide, February 9, 2007

Interviews provided in the Phantom Blood (Film) official movie guide.

Interview

TranslationTranscript
Interview with Hirohiko Araki

In Part 5: Vento Aureo, you did a great job illustrating the gang's pasts.

Of course, especially since Giorno and his friends have such unfortunate fates, I had to make sure their backstories were illustrated well. To tell you the truth, I wanted to draw even more pages for them.

I get the impression you may have also wanted to draw Kakyoin's past from Stardust Crusaders?

Yes! I wanted to draw Kakyoin's as well. However, I was on the fence about whether to do it at the time. I didn't think it'd be acceptable to recount his childhood in the middle of the last battle, so I just made it into a monologue. When I think about it now, I could have spent a chapter of the series (or about 19 pages) drawing just Kakyoin's childhood, but during that era of Shonen Jump, it felt wrong not to have a battle every week. It was like some kind of Shonen manga spell was cast on me.

Since you established Giorno as Dio's son, I was expecting the story to expand on that...

I never had any intention of doing that, actually. Even during "Diamond is Unbreakable", people were speculating if Kars would show up, but this is not the type of manga series that would go in that direction, and I'm not the type of person who would write that. If that happened to me, it'd be over. I am of the opinion that if readers ever think to themselves, "I expected that to happen!" then I've failed. There are many manga out there that would go in that direction, but if I did that, it's over.

It's a manga that doesn't go according to the reader's expectations, right?

Even as a kid, I never thought predictable manga was interesting. That's exactly it.

[Translated by MetallicKaiser (JoJo's Bizarre Encyclopedia)]

JOJOは少年マンガの掟破り

―― 今回は『JOJO』が20周年で劇場版映画にもなる、ということで『JOJO』の20年間について、幅広くお聞きしたいと思います。

荒木 『JOJO』は、映画になるのは初めてなんですよね、実は (笑)。OVAにはなってましたけどね。

―― やはり映画になるというのは先生にとって、嬉しいことですか?

荒木 それは嬉しいですよね。映画は好きですからね。

―― この間のJ-WAVEの放送に取材でお伺いしたとき (29ページ参照)、ゾンビ映画が大好きだとおっしゃってましたよね。

荒木 そうですね。ちょうど『ファントム ブラッド』が始まる頃って、ゾンビ映画とか、ホラー映画がすごかったんですよ。 特殊メイクもどんどんすごくなってたし。ホラー映画のルネッサンスだったんじゃないですか。

―― 『ファントム ブラッド』をはじめるきっかけは、そういうところにもあったんですかね?

荒木 『JOJO』をはじめたきっかけは、超能力を絵にしたかったと、よく言ってるんですけど、ホラー的なものをやりたかった、っていうのもありますね。でも、熱い人間ドラマを描きたいっていうのが一番ありました。その舞台として選んだのが、少年マンガに当時なかったホラーだったんですよ。少年マンガでは、掟破りのことばかりやってますね。主人公が外国人で舞台が外国だし。それも少年マンガの掟破りですよ。

―― 『JOJO』の前に描かれていた『魔少年ビーティー』と『バオー来訪者』はどういう割りかただったんですか。キャラクターからの発想という気がするんですが。

荒木 キャラクターではないですね。あの2作品は「 強いというのはなんなのか?」というところから始まってますね。ビーティーは知能で闘うし、バオーはその肉体、生命力、筋肉、いわゆる肉体性ですよね。いろいろなものを駆使して、悪と闘うというのが基本ですよね。だから僕のマンガは、キャラクターマンガじゃないんですよ。子供の頃から僕は、大河ドラマみたいなのが好きなんですよね。例えば『エデンの東』とか『ルーツ』とか! 『風と共に去りぬ』も好きでしたね。何世代に渡る先祖からの因縁って、子供の頃から不思議だなあと思っていたし、興味があった。運命に翻弄される主人公たち、みたいなものに。

―― それが『JOJO』になるんですね!過去のインタビューで、『ファントム ブラッド』を始めるときに、第3部の『スターダストクルセイダース』まで、考えていたとおっしゃられてましたよね。

荒木 考えていたというか、三世代に渡るという構想はありましたね。三世代は基本ですよ (笑)、そういう大河ドラマでは。まあ、『JOJO』の場合は孫の孫ですけどね。その三世代の、3人の主人公は、それぞれまったく違うキャラクターにしなきゃいけないってのも考えてましたね。だから、ジョナサンとジョセフは真逆のキャラクターですし、承太郎もまったく違うでしょ。その3人の血統が最終的に悪を倒すっていう図式をやりたかったんですよ。初代も二代目も、三代目もいなきゃタメだった。誰が欠けても、悪は倒せなかったという図式ですよ。そこがなんか、いいんだよね〜(笑)。それが描きたかったんだよね〜。

JOJOは数奇な運命

―― でも、最初は不安じゃなかったんですか?三世代に渡るまで続けられるのかとか、途中で連載が終わらないかとか……⁉

荒木 そんなことは考えない考えない!人気があるとかも、まったく興味ないんですよね。

―― 本当ですか?

荒木 本当ですよ!描きたいものを描く。やりたいことをやる。それが僕のスタンス。

―― それはマンガ家になられた時から変わらないんですか?

荒木 変わらないですね。人気があるとか無いとか考えてると、ストレスでやられますよ。マンガ家やってられないですよ!僕はマンガ描いていければ、アシスタント層っていければいいんです。人気を気にする人は、何を目的にしてるのか解らないですね。20年続くなんて、まったく考えてなかったですよ。本当に、描きたいことが描ければそれでいいと思って続けてきただけですから。

―― 『ファントム ブラッド』というのは、描きたいことを描けた作品ですか?

荒木 ほぼ出来ましたね。迷ったのは、ラストでジョナサンを殺すか殺さないか……くらいですかね。

―― 本当に好きにやられてたんですね。人気を考えたマンガだったら、第1話で石仮面をかぶって吸血鬼になる、くらいの展開だと思うんですけど。

荒木 ああ、そうかもしれないですね、人気だけを考えると。でも僕は、マンガ描く時にいつも、キャラクターの子供時代って、すごく気になるんですよ。親との関係とか、どんな環境で育ったとか。そういう生い立ちから、キャラクターは始まるんですよ。特に数奇な運命のキャラクターの場合は、絶対に描かないといけないんですよ。それを描かなくていいのは、幸せなごく普通の家庭で育ったキャラクターだけだと思うんです。

―― 第5部の『黄金の風』では、仲間たちの過去をちゃんと描いていましたね。

荒木 そうそう、特にジョルノたちはみんな数奇な運命だから、ちゃんと描かないといけなかった。ホントは、もっとページ数描きたかったんだよね。

―― 『スターダストクルセイダース』の花京院も、過去を描きたかったんじゃないかなと感じたんですが?

荒木 ああ!花京院は描きたかったよね。あのときはちょっと速ったんですよ。でもラストバトルの途中で、いきなり少年時代の話になるのは許されないかなと思って、モノローグだけにしちゃったんだよね。今考えてみると、連載1回分、19ページくらいは描けますよ、花京院の少年時代で。でも、あの時代のジャンプは、毎週バトルがないとダメみたいな感じだったしね。少年マンガの呪縛みたいなのが、なんかあったんだよね。そうそう、眉毛は太くなくちゃいけないみたいなのもあったんだよ。川崎のはる先生の主人公、星飛雄馬みたいに描かなきゃダメみたいなのがあって。だから、ジョナサンとか主人公は太いんだけど……花京院は苦労したなぁ。眉毛の太いキャラばかり描いていると、眉毛が細いキャラはうまく描けなくなっちゃうんですよ。それも呪縛みたいなもんです。星飛雄馬の呪縛ですよ (笑)。それを一歩踏み出すのに、すごく勇気がいったんだよね。花京院はそういうのもあって、思い出深いキャラクターですね。あのクライマックスのバトルで、花京院の過去やってたら、画期的だったかもしれないね。僕はキャラクターひとりひとりに、過去があると思っています。キャラクターの通去に関しては、もっともっとやりたかったよね。ジョセフとかも、あんまり過去は描いてないけど、エリナに育てられたおばあちゃんっ子ってことは、両親との関係はものすごく希薄……というかほとんど両親を知らないんですよ。表面的には明るくしてるけど、本当はすごくかわいそうで、不幸なヤツだと思うんですよね。ビーティーもおばあちゃんに育てられてるでしょ。ジョセフとビーティーは生い立ちがちょっと似てるんですよ。

―― そういわれるとジョセフは、不幸な生い立ちですよね。ビーティーも、両親がいない、かわいそうな子供ですもんね。

荒木 でも、それがいいんだよね!単純に、幸せな家庭で育ったんじゃない主人公ってのが。単純じゃないんだよ、ヤツらは!!

―― 表に出てくるキャラクターの顔だけじゃなく、その裏に隠れたキャラクターも考えているんですね。そう考えるとジョセフのあの明るさも、ビーティーのあのクールなところも、違って見えてきますね。

荒木 そういうところまで、キャラクターに関しては、深く考えなくちゃダメなんですよ。

JOJOはエスカレートしない

―― ジョセフが主人公の第2部『戦闘潮流』では、シーザーという友人であり仲間であり、ライバル的な存在が登場しますね。

荒木 ジョセフのパートナーが欲しかったんだよね。ジョナサンとツェペリさんっていうのは、パートナーでもありますけど、師弟関係のほうが強かったですからね。 第2部から、そういう複数のキャラの群像劇みたいな方向に進んでいきますね。

―― それが『スターダストクルセイダース』以降に繋がっていくんですね。

荒木 そうですね。だんだん仲間のキャラクターも増えていきますもんね。群像劇がどんどん描きたくなっていったんですよ。

―― それに、『戦闘潮流』からは、世界のいろんな場所で戦うようになっていきます。

荒木 ちょうど『戦闘潮流』のころから、すごく旅行に興味を持ち始めたんですよ!当時の編集の影響もありまして。世界のいろんな場所にすごく行きたかった。まだ、世界旅行というのに浪漫があった時代だよね。世界遺産とか、古代文明の浪漫みたいなのがね。TV番組でも、そういうのが大好きでしたね。でもその頃は、どこにも行ってないんですよ (笑)。

―― そして敵も、エスカレートしましたよね。

荒木 あの頃は、どこまで肉体的に強くなれるのか、みたいなことを考えてましたね。ディオもそうだし、カーズもそうだし。バブル期ですよ (笑)。時代的にもバブル経済と一致してるんですよ。週刊少年ジャンプもそういう時間だったでしょ?でも僕は、「きっとどこかで破縦するよなぁ」と思ってたんですよ。頂点を極めたらどうするんだろ、みたいな。それで考えたのが『スターダストクルセイダース』なんですよ。一見弱そうなヤツでも、戦いかたによっては強い、みたいなね。ただ肉体的な強さだけじゃない。精神的な強さみたいなのを、求めていって、単純にエスカレートさせないようにしました。それが“スタンド”という設定と、うまくかみ合ったんです。だから、『ファントムブラッド』、『戦闘潮流』がなければ、『スターダストクルセイダース』の“スタンド”っていう設定も、出てこなかったんですよ。

―― そう考えていくと、その後の『ダイヤモンドは砕けない』、『黄金の風』っていう流れも解りますね。『黄金の風』になると、ほんと研ぎ澄まされた精神同士のぶつかり合いって感じですもんね。でも、『ファントム ブラッド』から『黄金の風』までは、1週も休まずに描いてるんですよね!

荒木 だってそれまでは、1週でも休んだら、もうジャンブじゃ連載できないみたいな感じだったんですよ。 落としたら人間じゃないみたいな。いまとは、まったく違いますよ。『黄金の風』の前には、イタリアに取材に行きたかったんです!! でも休んじゃダメだって、行かせてもらえなかった!それが心残りですね。

―― いったいいつ、次の部の構想を考えてらっしゃるんですか?

荒木 次の部の構想というか、その時やってる部に使えないアイデアってのが、どんどんでてくるんですよ。そこから次の部を考えていきます。家の中でじっと待ちかまえてるタイプの敵は、『スターダストクルセイダース』では使えなかったから、それを使えるような『ダイヤモンドは砕けない』を次にやったみたいなね。『ダイヤモンドは砕けない』の杜王町の話はね、まだまだいくらでも描けますよ!当時は最終的な敵がいなくちゃダメみたいな感じだったから、終わらざるを得なかったけど、ユルーいマンガにしていいなら、いくらでも描けますよ。いまも、描きたいですもん。杜王町に使えるアイデア、いっぱいありますし。『ダイヤモンドは砕けない』は、 使助と古良が大好きですね。仗助はねえ、日常的なところがいいんですよね。それまでのジョジョは、なんか神話の中の登場人物みたいな感じが、自分の中でもしてたんですよ。それが一気に、現実の話というか、日常になったんですよ。描いてて「ああ、両さんの城にやっと行けたな」と感じましたね。『ダイヤモンドは砕けない』は 『こち亀』ですから ね。いくらでも描けます。吉良が出てきてからは、読者もそっち方面を期待しちゃうから終わっちゃいましたけど (笑)。

JOJOは興味のあること

―― 続く『黄金の風』は、どういうきっかけで構想されたんですか?

荒木 『黄金の風』は、人間の哀しみを描くのがテーマなんですよ。生まれつき哀しみを背負った人間を描きたかったんです。

―― マフィアというのには、興味はおありだったんですか?

荒木 マフィアは興味ありましたね。マフィアも、シリアルキラーと同じように、1980年代からものすごく興味があったんですよ。同じ人間なのに、どうしてこんな殺人を犯さなくちゃいけないのか?快楽のために人を殺すってどういうことなんだ?というのと同じように、どうしてマフィアなんかやってるのか?なんでこ「んな人たちがいるのか?っていうことに興味があって、めちゃくちゃ本とかを読みましたね。マフィアなんかやってるより、普通の職業に就いたほうが、絶対に楽だと思うんですよ、ただ生きていくだけならね。長生きもできるだろうし。

―― シリアルキラーにしても、マフィアにしても、普通の人はただ「怖い人がいるもんだ」で終わるところを、何故なのか興味を持たれちゃうんですね。

荒木 だってマフィアって「あそこまで命がけのことをなんでするんだろう?」って、不思議じゃないですか?マフィアの人たちが、どこに価値観をおいているのかということを考えて、僕なりの答えが『黄金の風』みたいな部分はありますね。もちろん、殺人はいけないことですけど、それにはそれなりの理由があるんじゃないかって、気になっちゃうんですよね。殺人鬼についてその理由を考えていったのが吉良で、マフィアについてがブチャラティチームなんですよね。

―― ブチャラティチームは、女性人気が高いですよね。

荒木 過去を背負ってるとこがいいんだよね、彼らは。まああと、イタリア男だし、カッコいいしね。

JOJOは予想外

―― ジョルノはDIOの息子という設定なので、そっちに話が広がるのかと思いましたけど……? 荒木 ああ、そっちには行く気はなかったですね。あと『ダイヤモンドは砕けない』のときも「カーズが出てくるんじゃないか」って、言われてましたけどね。そういう方面には行かないマンガ、行かない人なんだよね。そっちにいったら終わりなんですよ。「やっぱりそうなった」と思われたら終わりだと思ってますから。よくそういうマンガありますけど、そうなったら僕は終わりだと思ってます。

―― 読者の期待通りにはいかないマンガですからね。

荒木 子供の頃から、予想できるマンガって、面白いと思わなかったからね。単純に、そういうことですよ。

―― 『ストーンオーシャン』では、主人公が女性のジョジョ というのも予想外でしたね。

荒木 『ゴージャス☆アイリン』で、女性の主人公ってのを途中で断念しちゃったんですよね。女の子でバトル物はできない、って固定観念があってさ。女の子がボコボコにされたり、腕吹っ飛んだりってのは描けないな、みたいなね。『ストーンオーシャン』では、そういうのも描ける時代になったのかなと思って、挑戦しましたね。

―― 刑務所が舞台という設定は、どこから考えられたんですか?

荒木 それも杜王町と同じ発想ですね。刑務所という限定空間で、その中の生活観とか描けたらなと。巨大刑務所の中も、街みたいなもんじゃないかという発想ですよね。でもあのころから、週刊の19ページじゃ、1回のページ数が足りなくなってきたんですよ。

―― それは感じますよね。19ページじゃ、荒木先生が考えていることが、説明しきれてないんじゃないかと思ってました。

荒木 そうなんですよ!それはあったんだよね〜。だから現在連載中の、『スティール・ボール・ラン』はすごくやりやすいです。

―― 『ストーンオーシャン』のラスト、時間を早めていくと別の地球になるっていうのは、構想はあったんですか?

荒木 ありました、というか、ずっと考えてたんですよ。時間の流れがどんどん早くなっていったらどうなるんだろうって。“無限”ということについて、考えたりしないですか?頭痛くなってくるけど、面白いんですよ。

―― ああ、宇宙をずっと飛んでいったらどこに着くんだろうみたいな。

荒木 そうそう。そういう概念について、考えるのが好きなんですよ。時間に関してずっと考えてて、『ストーンオーシャン』でのその答えが、あれだったんです。

―― それが、『スティール・ボール・ラン』に続いたわけですね。

荒木 そうですね。というか、『ストーンオーシャン』で、ジョースターの血統の物語は終わったんですよね。あそこで、ひと区切りって感じがしてますね、今は。

JOJOはリアリティ

―― 『スティール・ボール・ラン』は、ページ数が増えて描きやすいとのことですが、ほかに変わったことはありますか?

荒木 ウルトラジャンプに移ってからは変わりましたかね。週刊少年ジャンプだと、リアリティを追究するっていうのは、難しいんですよね。やっぱり、週刊少年ジャンプはファンタジーじゃないですか。人間描写とか、リアルに描けないんですよ。『黄金の風』のフーゴが裏切るってのも、描けなかったんだよね。ちゃんと描こうと思えば、描けたかもしれないですけど、やっちゃいけないんじゃないか、読者の反発があるんじゃないか、って考えちゃってね。週刊少年ジャンプでは、やっぱりそういう鉄の壁みたいなのがありましたね。まあ、いろいろ鉄の壁を越えてきてますけどね (笑)。

―― ジョナサンが死んだ時も、読者としては終わりなのかなと思いましたもんね。

荒木 そうだよね、主人公が死ぬなんてありえないからね。でも、まだ次号予告が載ってるみたいな (笑)。

―― そして、現在連載中の『スティール・ボール・ラン』ですけど、ウルトラジャンプは青年誌だということで、意識することはありますか?

荒木 特にないですかね。荒木飛呂彦であることを忘れずに、というだけですね。月刊誌ですけど、毎週打ち合わせして、毎週ネームを切ってるんで、週刊時代と基本は変わらないですしね。

―― そうなんですか!毎週打ち合わせをして、毎週ネームを切っているんですね。

荒木 週刊マンガを描くのと同じように、月刊マンガを描いてますね。そのほうがやりやすいというか……ちゃんと完成しますね(笑)。1か月分まとめてだと、なんかまだ時間あるからって……最後にツケが回ってきそうで(笑)。

―― 夏休みの宿題、みたいな感じですか(笑)。ネームという話が出たのでお伺いしますけど、荒木先生は1回分のネームを考える時に、どこから考えられるんですか?

荒木 前のラストを受けて、主人公が、なにをするか?っていうことから考えますね。それが基本ですよ。それ以上のことは考えてないです。おぼろげに「だいたいこの敵にはこうやって勝つんだろうな〜」ってのは最初からありますけどね。でも週刊のときから、その翌週のことはまったく考えずにその回を描くんですよ。それは現在も変わってないですね。

―― 素人からすると、次どうなるのか考えてないと、不安じゃないかなと思うんですけどね……?

荒木 キャラクターがちゃんといてくれれば、不安はまったくないですよ!現実でも、明日どうなるかなんて誰も判らないけど、自分がいて、いろんな人がいるから不安じゃないと思うんですよ。キャラクターがいないと……というか。自分のキャラクターがどうでもよくなったら、ヤバいと思いますけどね。作者がキャラクターに興味がないっていうの?描ききったというの?それでも、続けなきゃいけないマンガ家さんは不幸だと思いますけどね。

―― 話を戻しますけど、『スティール・ボール・ラン』は、『ファントム ブラッド』がその元にあるという感じですよね。

荒木 ああ、ジョナサンとツェペリさんの師弟関係が、ジョニィとジャイロの師弟関係みたいなね。

―― それがより進んだ形になっていますよね。逆にジャイロがジョニィに教えられたりみたいな。

荒木 そうですね。それがリアルな人間関係じゃないですか? より深く、リアルに描きたいんですよね。自分自身も、歳をとって解ってきたものもあるしね。『ファントム ブラッド』描いてたころは、まだ若かった、みたいな。20代とは、ものの見かたが違うよ、みたいな。

―― 絵柄に関しても、よりリアルになっていますよね。

荒木 そうですね。今は陰影法を使って描くようになっていますね。

―― 絵柄を突き詰めていくと、やはりそうなっちゃうんですかね?

荒木 それか、まったく逆に行くかしかないですよね。より線を増やしていくか、線を減らしていくか。どっちかだと思うんですよ。『JOJO』で描きたいことを考えると、線を増やして、よりリアルになるしかないんです。指をちょっと切って血が出てる絵を見て「痛てぇ~!!」って、感じるのを描きたいんですよ!瞳に針みたいなのが刺さって「うわ~!!」みたいな感じとか!簡略化された絵だとそれは伝わらないでしょ。

―― なるほど!納得です。

荒木 最近はねえ、ページ数はちょうどいいんだけど、原稿の面積が狭い〜と思い始めてますね。もっと広い面積に描きたいですよ(笑)。それはもう、雑誌のサイズが決まってますからどうしようもないですけどね。

JOJOはやはり少年マンガ

―― 『スティール・ボール・ラン』では、絵柄もどんどんリアルに変わってますけど、内容というか精神論的な部分でも、『男の世界』以降、特に変わったと感じました。

荒木 あれはもう、女ばかりが強い時代ってのはどうよ、ってのがあったんですよね。

―― 荒木先生の、現代の日本社会への憤りを、ものすごく感じました。コミックスの8~9巻の作者コメントもそうですよね。それまでは、現実の社会とはさほどリンクしていなかったと思うんですけど……?

荒木 ちょっと、そういう面も出てきたかもね。そこが週刊少年ジャンプ時代とは、変わってきたところかなぁ?アメリカ大統領が敵ってのも、そうかもしれないですよ。アメリカ人ってどうしようもないなって、最近は常々思ってますからね!最近そういうのは、ちらちらとあるかもしれないですね。まあ、『男の世界』に関しては、成長物語として突き詰めたらああなった、という感じですかね。青年誌ですけど、基本は少年マンガ、成長ストーリーだと思ってますから。

―― 青年誌でも、基本は少年マンガなんですね。

荒木 青年誌の主人公って、もう完成されたキャラクタ―が多いじゃないですか?もう人格が出来てたりしますからね。『JOJO』は、やっぱり青年マンガとは違うんですよ。やっぱり少年マンガだと思ってますね。20年経って、月刊になってページ数が変わったくらいで、基本は変わってないですしね。

―― 20年間基本は変わっていないという『JOJO』ですが、この先、どうなっていきますか?

荒木 『スティール・ボール・ラン』は、レースのゴールはもうすぐ、みたいな位置まで来てますけど……きっとちとまだこれからじゃないですか(笑)。まあ、『スティール・ボール・ラン』の後も、『JOJO』またきっと、新たなテーマに向かっていくでしょうね。第8部、第9部までは、きっとありますよ。まあまだ、いつになるかは、判らないですけどね!


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