Otsuichi (March 2022)

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Published March 19, 2022
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JOJO magazine 2022 SPRING Cover

An interview with Otsuichi, author of Iggy the Stray Dog. It was originally published in the Spring 2022 issue of JOJO magazine, released on March 19, 2022.

Interview

Transcript

乙一先生
Interview


――改めて、今回ノベライズのオファーを受けられた際の心境を教えてください。

乙一:また『ジョジョ』に関わることができて、とても光栄でした。まだ、僕のことを覚えていてくださったんだなと(笑)。実は20代でノベライズ『The Book (※注1)』を書かせていただいた後に、別企画で「『ジョジョ』のノベライズに参加しませんか?」とお話をいただいていたんです。でも前作を執筆してスタンドバトルをしっかり書けていたのか自分の中で疑問に思うところがあり、お断りした経緯がありました。今回は、今の自分ならスタンドバトルを上手く表現できるかも…と考え、「やり残した仕事に挑戦するぞ!」という意気込みで『野良犬イギー』を書かせていただきました。

――主役にイギーを選んだ理由は?

乙一:まず、「子供たちに人気のキャラクターで書いてもらいたい」という編集部からのリクエストがありまして、その際にパッとイギーのことが浮かんだんです。あと『ジョジョ』の影響なのか、プライベートでボストンテリアを飼い始めたので、イギーをメインに据えるなら書きやすいんじゃないかと考えたんです。イギーもそうですが、うちの犬も本当によくオナラをするんですよ。そして静かな犬で1日一緒にいても、ほぼ吠えないんです。だから作中にもそういう描写をしっかりと入れておきました(笑)。

――実際、執筆作業に入られてみていかがでしたか?

乙一:原作やアニメで一瞬だけ登場したセリフや絵をどこまで忠実に取り入れるべきかという点は、とにかく悩みました。イギーがメス犬をはべらせている絵が原作やアニメにあったと思うのですが、今回はそういう描写を一切登場させていないので読者から解釈違いだと怒られなければいいな…と。愛されている作品だけに執筆中はプレッシャーを感じて、みなさんに怒られる夢ばかり見ていました(苦笑)。

――原作との整合性には特に気を配られていたのですね。

乙一:はい。アヴドゥルは好きな映画に『ミッドナイト・ラン(※注2)』を挙げているんですが、第3部の作中当時にニューヨークで封切られたばかりの映画だったので、時系列的にこの小説で見ていないと辻褄が合わなくなると気づいて、意図的に映画を見る描写を入れました。また、アヴドゥルとジョセフが知り合った場所も難題でした。ジョセフとアヴドゥルがエジプトで出会った設定にしてしまうと、1度来た場所に第3部で再び向かうことになってしまうので、あえてアヴドゥルを他国へ移動させて、二人が出会うエピソードを書きました。

――執筆にあたりどのような下調べを…?

乙一:スタンドバトルを練るため、とにかく「砂」について、ひたすら調べていた記憶があります。以前、荒木先生にお会いしたとき、科学的な知識を小説に入れて欲しいという要望をいただいたんです。それで今回は砂の定義や性質などを調べていくうちに、砂が摩擦により帯電するなどの知識を得て…突飛だけど一応、科学的根拠に基づいているトリックを入れようと思いつきました。砂と炎の闘いは意外とやれることも多く、イギーとアヴドゥルのスタンドバトルは書いていてとても楽しかったです。

――『ジョジョ』の世界を表現する上で大切にされていることはありますか?

乙一:まず、キャラクターたちが勝利を貪欲に欲するさまを書こうと意識していました。自分の小説だったら、この程度でいいかなと止めてしまうところを、みっともないぐらいまであがかせるよう心掛けました。これは『ジョジョ』ならではの部分だと思っています。

――読者へメッセージをお願いします。

乙一:まず、同じファンとして、僕が個人的に見てみたかったイギーとアヴドゥルのバトルを書いてしまってごめんなさい…という後ろめたい気持ちがあります。いろいろと解釈違いがあっても、温かい目で読んでいただけると嬉しいです。

※注1
『The Book jojo's bizarre adventure 4th another day』のこと。第4部の吉良吉影事件後の杜王町を描いた書き下ろし作品。

※注2
1988年公開、ロバート・デ・ニーロ主演のアクションコメディ映画。


PROFILE 乙一 おついち
『夏と花火と私の死体』でデビュー。『GOTH リストカット事件』(角川書店)で、第3回本格ミステリ大賞を受賞。『ジョジョ』の大ファンとして知られ、第4部のノベライズ『The Book jojo's bizarre adventure 4th another day』を担当。近年の著作には『サマーゴースト』がある。
★好きなキャラクター:透龍(第8部)
★好きなスタンド:「ハーヴェスト」(第4部)「ザ・グレイトフル・デッド」(第5部)


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