Tokohu Gakuin (August 2013)

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Published August 27, 2013
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The following interview is a report of a lecture given by Hirohiko Araki at the Tohoku University on August 27, 2007.[1][2][3]

Interview

東北大学・荒木先生講義レポ 全体公開 890views 5favs 2013-10-15 21:00:33 東北大学106周年記念 ホームカミングデー 仙台セミナー 荒木飛呂彦の世界に科学とユーモアはどこまで迫れるのか?~東北大学は扉を開き、道を切り拓くッ!~


H25年10月12日に東北大学で行われた荒木先生の講演会に行ってきました。 テーマはVR(仮想空間)AR(拡張現実)SR(代替現実)、それら仮想と現実の融合。 仮想のものであるスタンドのヴィジョンは果たして現実に可能となるのか?というテーマを元に荒木先生の講義とパネルディスカッションが行われました。


荒木先生は黒いスーツにチェックのネクタイ、アイボリーのズボンで壇上に登場。 相変わらず若々しいお肌つやつやな波紋の達人状態でした。 ご自身曰く「なんで呼ばれたのか分からない(笑)」 普段あまり携帯なども使用せず、ARやMRも分からないと話していました。

荒木先生のテーマは「ジョジョの、目に見えないものを絵にする概念」 目に見えないけれど「ある」ものを書く。 つまりスタンドとは「超能力」の表現であるということ。

【漫画家になるきっかけ】 お父さんは今で言うところのJT職員で、ご本人は物作りが好きな人だった。 例えば海に行き、5歳の頃無邪気に「ヨットを買って」とねだってみたら、ヨットの形に木を削りだして水に浮かべるような人。 お母さんは真面目な人で、荒木先生がレッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)を聞いていたりすると「モーツァルトとか聞きなさい!」と言うような人。 お母さんは荒木先生に古い画集や漫画を買ってくれて、それをきっかけに荒木少年は漫画に興味を持つようになる。

小学生の頃、友人と共に漫画を書き始める。 友人の一人は絵は描かないがまるで編集者のようにコメントをする人で、8歳の頃に煽りの構図で絵を描いてみると 「その構図、上手いじゃないか」 と褒めてくれて。荒木少年有頂天。 その友人は日本とアメリカのヒーローの違い、水木先生と楳図先生の描く「恐怖」の違いなども考察する子供で、荒木少年は傍らでそれを聞きながら考察力を伸ばしていったものと思われる。 ある日、友人は主人公よりも脇役を格好良く書いた荒木少年の漫画を「面白い!」と褒め、荒木少年は漫画家になることを決意した。

荒木少年は中学生になる。 台○中学校へ通う荒木少年。そこの通学路には必ず「怖い先輩」がたむろしていて、殴られたりカツアゲされたりする有名な道、いわゆる『カツアゲロード』が存在した。 荒木少年はその頃ちばてつや先生の「俺は鉄平」を読んで憧れ、剣道部に入っていた。 カツアゲロードにはいつものようにたむろする不良達が4~5人…。目を合わせないように通り抜けようとするが、不良達は弱希少な荒木少年に目を付ける。 脅される!カツアゲされる!このままではきっと無事ではいられない! 荒木少年が覚悟を決めた時、一人の不良が言った。 「あ、コイツ剣道部だ」 どうやら不良たちの知り合いが剣道部に居たようだ。荒木少年はその場で解放され殴られることは無かった。 少年は思う…

目に見えない何かに助けて貰った!目に見えない何かがそれでも「存在」するッ!


そして高校生になったっころに漫画家「ゆでたまご」が16歳でデビュー。 それに触発されるように投稿、持ち込みを開始する。 「自分独自の世界を切り拓かなくては…このままどんどん置いて行かれるッ…」


【デビュー・自分独自の世界と『可視化』】

ここで荒木先生はいくつかの漫画のカットや絵画の写しを持ち出して説明。

まず大友克洋先生の「童夢」からラジオの壊れるワンカット。 この描写における「部品」の書き込みの緻密さについて説明。物体は壊れる前に様々な物で組み立てられてる、それが壊れることによって小さな部品へと形を変えるという独特の表現に感銘を受けた。

自分自身が好きだった漫画として「バビル2世」や「サスケ」 巨人の星の消える魔球

フリップを出しながらこれらに共通する事柄は何か? それは火を出したり、ボールが消えたりする時に必ず「ルール」が存在するということだ、と説明。

自分独自の世界…それは超能力という「目に見えないもの」を形にすること その形にするには「ルール」が必要だと感じたとのこと

ここで荒木先生、日本画家の緒方光琳の「松島」とモネの「睡蓮」を紹介。 絵画は目で見たものをそのまま写実することか?画家は目で見た上で、自分の感じた「感情」を絵筆に乗せているのでは無いだろうか? 次にモーツァルトの譜面を紹介。 音楽家は目に見えない「音」を譜面に書くことによって表現している。 「僕の友達の音楽家(千住明さん?)が言っていたけれど、本当に美しい音楽は美しい譜面になるそうです」 画家が感情を絵筆に乗せるように、音楽家が目に見えない音を美しい譜面にするように

『目に見えないなにかは確かに『かたち』にすることが出来るッ』

それこそが『可視化』という表現に繋がるのでは無いか………


【荒木飛呂彦のイマジネーションをかき立てる『可視化』なものたち】

荒木先生曰く、目に見えないものを形にする「可視化」には様々なドラマが詰まっているとのこと。 例えば原子記号表、楽譜。 あるいはアメリカ大統領選挙の勢力図 それらはとてもサスペンス的で惹かれるものがある。(荒木先生はたびたびサスペンス的という表現を使っていました) 太陽の黒点観測で、黒点の大きさによって人間の欲望や犯罪増加率に繋がるところがとてもサスペンス的

はたまた人間のバイオリズムを表にした物。 結婚式場の慶事表はそれだけで全く赤の他人な二人の、今までの人生が垣間見れる『可視化』 そういった物にとても興味がある


【波紋…そしてスタンドの誕生秘話】

20歳で漫画家としてデビューし、自分の作風が確立しないまま5年ほど経過。 そこで自分自身が思っていた「超能力に独自のルール」を作り出そうと思い立つ。 磁力や波、旗の揺らめきからヒントを得て表現したのが【波紋】の形だった。

ここで荒木先生は有名なメメタァからのツェペリさん波紋シーンを紹介 「僕はここで超能力の『可視化』をすることが出来たんです」 ついに独自の世界と見えない「超能力」の可視化を表現することが出来た荒木先生。 しかし連載2年が過ぎ編集から一言

「波紋あきた」 (ここで波紋あきたと書かれたフリップを2枚見せる荒木先生)

「3部の主人公は新しいのよろしく」

荒木先生は困った。独自の表現「波紋」は超能力の可視化であったはず。 それを新しい形にするにはどうしたらいいんだろう………

そこで思いついたのが波紋の「擬人化」「デザイン化」つまりスタンドとしての表現だった。 編集は「ぱっとしないなぁ…」と愚痴をこぼす。連載の時期は迫っていた。 3部は意外なことに反応の薄い状態で連載が開始されたのでした。


【スタンドのルール】と【例外】

ここで一面に書かれたフリップの登場。 スタンドのルールが詳細に書かれていた。ルールは以下の通り

1.スタンドはひとり1体(1能力) 2.スタンドが傷つけば本人も傷つく 3.スタンドはエネルギーでありパワーである(心のパワー) 4.スタンドはエネルギーなので物質に宿ったりする 5.スタンドは物理の法則に従って動く 6.スタンドパワーは距離の二乗に反比例する(等価交換) 7.スタンドは物理の法則をちょっとだけ超える

以上が荒木先生の考えた「スタンドルール」であり、基本はこれに則っている。 ただ連載をしていく上で例外が発生することもあるとのこと。

まず3部の「呪いのデーボ」 これは本体と距離が離れても良い、本体に影響が無い、いわゆる遠距離自立型スタンド

そしてダニエル・テレンスのダービー兄弟の「魂を奪う」表現

ここの何が例外かというと、ジョジョ世界の中には基本的に「幽霊」と言うものが存在しないと説明。 魂があるということは、幽霊の存在を認めてしまうことに繋がる…

荒木先生、4部の「杉本鈴美」が描かれたフリップを出す。 「幽霊は居ない、と言いましたが鈴美ちゃんはいますよね。彼女は、はい、ルール違反なんです。だから彼女は自由に動けない『地縛霊』という形になっています。」 「魂…幽霊が自由に力を持ってしまったら、それはなんでも出来てしまう。ルールが無くなってしまう。だからちょっとルール違反で出てきた彼女には制約を与えた。いわゆる【例外】としての存在なんです」

ジョジョの世界の幽霊(魂)という物は他者に干渉する力を持たない存在のみ許される。 鈴美や(憶測ですが5部の亀に入ったポルナレフ)は話をするだけしか許されない【例外】 彼らが何を持ったり、倒したり、物質に干渉することはない、という説明でした。


もうひとつ、スタンドルールの「スタンドは物理の法則をちょっとだけ超える」について説明。 ジョジョのボス達は「時間操作系」で時を超えます。 物理の最も早いものを「光の速さ」であり、それを超えるのが「時を超える」 だから「スタンドは物理の法則をちょっとだけ超える」という説明でした。


もっとたくさんのフリップを用意していたのですが、時間が無くまとめに入る荒木先生 「世の中には目に見えないものがたくさんあって、それをスタンドとして描きたい」 とのことでした。

拍手の中退場する荒木先生。 最後に出入り口が一瞬分からずオロオロするシーンがあったりしてお茶目で可愛らしい素敵な講義でした。

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