Atsushi Watanabe's Building Exploration (October 2014)

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Published October 31, 2014
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Atsushi Watanabe's Building Exploration (October 2014)
Interview Archive
Atsushi Watanabe BOOK 2014.jpg

An essay from Hirohiko Araki discussing his enjoyment of the "Atsushi Watanabe's Building Exploration" TV program as well as talking about his own home. It was published in the "Atsushi Watanabe's Building Exploration BOOK 25th Anniversary Special Edition" mook on October 31, 2014.[1][2]

Interview

衝撃!人気漫画

「ジョジョの奇妙な冒険」の作者も「建もの探訪」ファンでした!

渡辺さん、どこまでもついていきますよ

係り下ろし 荒木飛呂彦さん

癒やし、の番組ですよね。

「おはようございます。渡辺篤史です」

毎回、このナレーションを聞くと、「さぁ、始まるぞ」とワクワクした気持ちになります。

僕が「渡辺篤史の建もの探訪」を観るのは、たいてい眠る直前。ナイトキャップのように、ベッドの中で、録画している番組を観てから眠るんです。渡辺さんの登場とともに家の外観が映し出され、玄関を入って、その家に住む家族と初めて対面する。まるで、渡辺さんと一緒にお宅訪問している気分になります。

そして、家の中を奥へ奥へとじっくりと進みながら、間取りや材質、こだわりのポイント、自慢の家具などを渡辺さんと家族が語り合う。椅子に座り、家の心地よさをゆったりと語ったり、2階に上がるときに一瞬、タメを作ってから、リビングを見渡して「おお」と感動する渡辺さんの姿も毎回のお約束。最後の締めとして、訪問の感想を語る渡辺さんの渋い声も心地よく響きます。

次回の予告がまた素晴らしい。予告に感動する番組って、あまりないと思うんですが、「来週はなんとかの木の家です」といったナレーションと映像を観るだけで、「どんな家なんだろう。行ってみたいな。また来週も観よう」という気にさせられます。30分弱という長さもちょうどよくて、見終わったあと、「今日もよかったなぁ」と、僕は幸せな気分に包まれながら眠りにつくのです。


番組に登場する方は、多くが30代。念願のマイホームを手に入れて、これからまた新たな家族の歴史を作っていくぞ、という世代ですよね。僕が「建もの探訪」を大好きなのは、ユニークな家が見られるだけでなく、結婚したり、子どもができて、「家を建てましたー!」っていう、希望に満ちた雰囲気があるからなんです。上っていく感覚っていうのかな。未来への希望が伝わってきて、観ているほうも幸せな気持ちになるんです。

「建もの探訪」を見始めたのは、覚えていないくらい昔です。以前は放送時間がもう少し遅くて、ちょうど起きる時間に放映されていました。朝ご飯を食べながら、のんびり観るのにぴったりの番組だったんですよね。その後、放送時間が変わったりして、タイミングよく観られなくなったので、今は毎週、録画予約して、余裕のある夜に観るという習慣になりました。

住まいをテーマにしたリアリティ番組はいろいろありますけど、長年、続いているだけあって、僕はやっぱり「建もの探訪」がいちばん面白いと思っています。理由は、なんといっても渡辺篤史さんのキャラクターじゃないでしょうか。

番組の構成に起承転結があって、毎回、同じような流れで家を紹介していく。渡辺さんのナレーションやコメントも様式美と呼びたいくらい型が決まっています。家は違っても、見せ方が同じなので、マンネリ化してもおかしくないのに、新鮮に感じるのは渡辺さんの案内が素晴らしいからでしょう。誠実で優しい人柄が、住んでいる人たちの魅力を引き出し、僕たちに安心感を与えてくれていると思うんですよね。

まるでマイホーム版の「水戸黄門」や「サザエさん」です。「水戸黄門」や「サザエさん」って、奇抜なストーリーでもないし、騒動が起きても最後は必ず丸く収まると視聴者も分かっている。安心できる範囲で、ちょっぴりドキドキしながら観られるところが長い間、人気を保ってきた理由だと思います。

「建もの探訪」も同じですよね。物語がないようであるし、渡辺さんは、家を旅して、住んでいる人と対話する黄門様のような存在なんです。「水戸黄門」が悪者を退治するだけの話ではなく、いろいろな場所を巡ることで全国の観光案内になっているように、渡辺さんは家を観光名所のように案内しながら、住む人のこだわりや哲学まで伝えてくれる名ガイドなんでしょうね。


家って不思議なもので、住む人の個性が表れますよね。とくに「建もの探訪」に出てくるような注文住宅は、住む人の好みや性格が色濃く出ます。たぶん僕たち視聴者は、渡辺さんを通して、住む人の好みとか生き方を〝プロファイリング〟的に観ているんじゃないでしょうか。

僕、子どもの頃から、人の家にすごく興味があったんですよ。子どもって、一人だとなかなか家の中まで上げてもらえませんよね。玄関で待ってても、友達が出てきたら、すぐに外に遊びに行っちゃう。だけど、「玄関から見える階段の上はどうなっているのかな」とか「音楽が聴こえるけど、どんな部屋にどんなオーディオが置いてあるのかな」とか、謎めいた奥の様子にずっと興味津々でした。

今も人の家を見たい気持ちが強くて、友達が家を建てたり、マンションを買うと、必ずと言っていいくらい見に行きます。それも、できるだけ全部の部屋を見せてもらうんです。僕が自宅を建てたときも、友達が望めば、あちこちの部屋を案内しました。

「建もの探訪」も、女性が一人で登場したりすると「旦那さんや他の家族はどうしたのかな」と思ったり、変わった置物があると、「こんな置物を買うんだ」「階段の途中にこんな飾りを置くんだ」と気にしたり、いろんな見方で楽しんでいます。

人によって音楽だったり、地下室だったり、重きを置いている部分が違うのも面白いですよね。あと、家族の食事シーンで最近多くなったと感じるのがパスタ。前はもう少しカレーライスの比率が高かった気がします。さすがにカツ丼はないですよね、昔も今も(笑)。

印象に残っているのが、双子だったか、どちらもご夫婦で住んでいて、長屋のように隣り合わせに建っている家です。作りはそっくりだけど、よく見ると、ちょっとずつ置いてあるものやデザインが違うんです。その微妙な違いがSF的でした。

野原のような家もよく覚えています。屋上が原っぱになっていて、家なのに、外にいるみたいなんですよ。ほかにも回転して上っていくような、階段自体が部屋になっているような家も、「すげーなぁ」と感動しましたね。

「おっ」と思ったところは一時停止して観ますし、リビングまで映像が進んでから、「玄関はどうだったっけ?」と気になって、戻すこともあります。気に入った回は録画を消さずに保存しているくらいです。


自宅を建てたのは十数年前ですが、「建もの探訪」でいろいろな家を見ていたことが役に立ちました。

僕がこだわったのは、住みやすくて快適な家にすること。とくに衣食住の中でも食べること』を家の中心にしたかったので、キッチンを一番、日当たりのいい場所にしました。渡辺さんも「いいなぁ、くつろげるなぁ」ってよく言いますよね。家って面白さやデザインを追求するのもいいんですが、やっぱり大切なのは心地よさだと思ったんです。

今、連載中の「ジョジョリオン」(「ジョジョの奇妙な冒険」第8部)には、主人公が住む東方家の図面を載せていますが、同じように、僕も理想の家の図面を描いて設計士さんに渡したりしました。

「建もの探訪」を参考に選んだ家具もあります。たとえば、支柱がアーチ型のフロアスタンドランプ。いろいろなお宅によく出てくるんですよね。番組に登場した家具をインテリアショップで見かけたりすると、「おお、これがあの椅子か。やっぱり有名デザイナーの家具は違うなぁ」なんて感激してたんですけど、その経験が自宅を作るときの参考になりました。とはいえ、僕が決めたのは、主に構造や機能の部分。インテリアのデザインや色は妻に任せました。妻のほうが家にいる時間が長いですし、彼女にとって心地よい空間であってほしかったんです。


「建もの探訪」って最後に見取り図と建築費が出ますよね。あのデータもチェックします。とくに図面はじっくり見ます。建物の構造や方角が気になるんですよ。人間がどっちを向いて、どう動くか、動線を考えるのが好きなんですね。

実生活でも漫画でも方向や動線は気にします。東京は斜めの道が多いから、つねに方角を気にしてないと迷ってしまうし、漫画も主人公がどの方角を向いているかとか、窓が南向きかどうか、敵がどの方向から攻め込んでくるのか、など、絵を描くときにとても重要なんです。

とくに「ジョジョの奇妙な冒険」は、年代や国がストーリーの背景になっていることもあって、建物がどんな様式なのか、どう作られているか、連載が始まる前に図面を作っておきます。家のデザインや構造は、キャラクターの性格を細かく決めておくのと同じように、連載が長くなっても、ストーリーや絵がぶれないための大切な要素なんです。

漫画づくりの参考に、建築の写真集や専門書を見ることも多いです。「ジョジョリオン」の主人公が住む家も、参考にしたのはフランク・ロイド・ライトの家。実在の建物をそのまま真似するのではなく、弟子になった気持ちで描いています。石を柱にして木を組んでいくんだなとか、ガラスをはめるんだなとか、デザインの特徴を取り入れたりしています。

「ジョジョ」が始まってから、今年で27年。「建もの探訪」が25年と、2年違いなのも親しみを感じます。これまでたくさんの家を紹介してくれた渡辺さんには「ありがとうございます」と言いたいですね。

もし、スペシャル番組が作られるなら、ぜひ海外の家を訪問してもらいたい。アジアでもヨーロッパでも地域にはこだわりません。日本と住宅事情が違うので、じっくり見てみたいんですよ。国内なら、船の中とか、ものすごい山奥とか、何か場所や土地の制約があるところに住んでいる人を訪問してもらいたいなぁ。

趣味的な部分もどんどんマニアックに深めてもらって大丈夫です。ファンはどこまでも渡辺さんについていきますので。


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