Issey Takahashi x GQ (May 2023)

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Published May 24, 2023
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Issey Takahashi x GQ (May 2023)
Interview Archive
Issey Takahashi GQ.png

An interview conducted with Issey Takahashi, actor for the "Thus Spoke Kishibe Rohan" TV Drama and film, published on GQ's website.[1]

Interview

Transcript

露伴とフランス ──2020年に始まったドラマ『岸辺露伴は動かない』が3期を数え、年に一度の楽しみとして定着してきました。そして今回、同作のキャストとスタッフが再集結した映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が公開されます。制作決定の知らせを受けたときは、率直にどう思われましたか? 「あぁ、そうですよね」という感じでした。

──自然なこととして受け止めた? はい。というのも、何よりずっと撮影の現場が盛り上がっていたんです。1期が撮り終わる頃には「じゃあ次は『ザ・ラン』ですね」なんて話していて、実際に2期で『ザ・ラン』を撮っているときには「今度はいよいよ『ジャンケン小僧』をやらないといけないんじゃないですか」と言っていたら本当にそれもやることになって。そんななか、映画の話も進んでいたんです。2期が終わる頃には脚本の初稿が出来上がっていたような進み方でした。

──その時点で、フランス・ルーヴル美術館での撮影も決まっていたのでしょうか? コロナ禍もあるので、そこはどこまでできるか、というところでした。「最悪、全部合成かもしれないですね」と話していたのですが、本当に行けることになりました。

──原作の『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は、2009年にルーヴル美術館の「バンド・デシネプロジェクト」のために制作されています。そうした経緯も含めて、フランスで撮影ができたことは大きな意味があったのではないでしょうか。 長い歴史を持つ建築物の中で撮影ができると、それだけで自分自身にある種のエフェクトがかかるんです。その昂りはとてもお芝居の助けになるので、スクリーンに映ったときに合成とは違う意味を持つものになるだろうと信じていました。

──本物を見てこそリアリティある作品が描ける、という露伴の信念と重なるところがありますね。

芸術における付加価値 ──ルーヴルではどんなことが印象に残っていますか? 2018年にルーヴル美術館展のオフィシャルサポーターを務めていて、そのときにもいろいろと見て回らせてもらったのですが、今回はやはり、どこか露伴の視点が入っているのか、「かつての館内はどういう状況だったんだろう」というところに目が向きました。

たとえば、昔と今とでは照明の設備がまったく違います。LEDなんて当然なくて、もしかしたらろうそくを持ちながら歩いて回る人もいたのだろうかと想像しました。そういう灯りの中で見ていたら、きっと宗教画がやけに目に入って、自分にとっての啓示になりうるぐらいの力を持っていたんだろうな、と。

今の明るい照明の下の絵画群を見ていると、なんとも言えない気持ちがする絵もありましたし、それでも強いものは強い。見せ方という意味で非常に勉強になりました。

──映画も「光と影の芸術」と言われることがあるように、芸術作品と光は密接な関係にありますね。 作品のいわゆる付加価値のようなものは、ロケーションによってつくられていくところがあると思うんです。芸術とは多分にそうなんじゃないか、と。掘っ立て小屋でお芝居をやっていたとして、それが芸術といえるか疑問に思う人もいるかもしれませんし、反対に大劇場で上演するほうが「メジャーすぎて芸術じゃない」と思う人もいるかもしれません。そういうふうに、本質的なものとは別に、付加される要素が存在していることをあらためて感じました。

──今作では、ルーヴル美術館という場所自体が持つ底知れない力のようなものがひとつのキーになっていると思います。これまでのドラマのエピソードでも数々の怪異が登場しましたが、人間が作り上げた場所にもまた怪異性は宿るのだと示されているように感じました。 ルーヴルはさまざまな歴史が積み重なっていますから、何かしら呪い的なものがあってもおかしくないなと。そういう歴史を持ったものにはどうしても何か宿ってしまうし、同時にそういう場所であるという付加価値によって芸術が芸術として成り立ってしまう、という面もあると思います。そうしたいろんな側面を持っているからこそ、おおよそ一世代の人間が請け負いきれる何かではないなとも思いました。

──今回はフランス語でのお芝居にも挑戦されています。他言語での演技はやはり苦労されましたか? もともとしゃべれるんですよ。

──そうだったのですね! 嘘です。

──え!? なぜ嘘を(笑)。 すみません(笑)。いや、なんだかあまり苦労がなかったんです。先生もいてくださいましたし、キャストにもフランス人の方がいたので。先生に正しい文法を習いながら、キャストの方にも演じる側の見地から、「もっと露伴っぽく言うんだったらこう話したほうがいいよ」とアドバイスを受けていました。

フランスに行く前からみっちり練習させてもらえていたので、現地ではどんどん耳が慣れていって聞き取りの能力は進化した気がします。そのぶん「もっと話せたら面白いのに」と悔しさも感じて、現地のスタッフの方にも質問をしながら言葉を覚えていきました。キャストもスタッフもみんながそれぞれの露伴像を持っていてくれたので、とても助かりました。

50歳の岸辺露伴!? ──今、「それぞれの露伴像」と仰いましたが、今作ではこれまでのドラマでは描かれてこなかった露伴自身の若い頃の出来事や、ルーツに関する部分も描かれます。そのあたりはどのように意識されていましたか? タイトルが表すとおり、「(岸辺露伴は)動かない」から「行く」という能動的な状態になっているんです。なぜ「行く」のかといえば、きっとそこには自分のルーツにつながる何かがあると予感しているから。過去を振り返ったとき、漫画家として立ち上がったばかりの頃に経験した出来事が、今の自分のあり方や今後の人生に対して何か暗示めいたものを持っているのかもしれないと感じた。そしてルーヴルへ行き、そのルーツと対面する。ですが、この作品が素敵なのは、それがパリで終わらないところなんです。

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つまり、パリ・ルーヴルという“外”を通って戻ってくることで、求めていたものがもともと自分の足元にあったことがわかる構図になっている。それは、ある意味哲学的というか、本質的な話だなと思います。どんな物事においてもそういうことはありますし、人生もそういうものだな、と。そこには荒木(飛呂彦)先生の哲学論のようなものも含まれていると思うんです。この脚本を書かれた小林(靖子)さんはすごいな、と思いながら台本を読んでいました。それを自分が演じさせてもらえるのは、なんだかとてもありがたかったです。

──露伴を演じるのは4度目です。同じキャラクターを繰り返し演じることは、俳優としてやはり得難い経験ですか? そうですね。そのうちきっと、寅さんや古畑(任三郎)さん、金田一(耕助)さんのような世界観になってくると思うんです(笑)。もともと僕は、ずっとそういうことをやってみたかったんです。なんならずっと岸辺露伴でもいいのですが、岸辺露伴は歳を重ねない存在として描写されているんですよね。

なのである時、「僕は寅さんみたいにはなれないと思うんですよね……」と漏らしたら、助監督の田中峰弥さんが「50歳の岸辺露伴も見たいですね」と言ってくださって。やっぱり、長年にわたってひとりの人間を立体にしていく作業はなかなかできることではないですし、自分の人生においてかなり稀なことなんじゃないかなと思っています。本当に光栄なことです。

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特に日本は、ひとつの作品が忘れられていくスピードがものすごく速いですから。どんどん消費されていく世界の中で、継続的にひとつの役を演じられるありがたみをこの作品に出会ったことで知ることができました。それがとても嬉しかったです。

By 斎藤岬


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