Jump Novel (04/1993)
V Jump (February 1993)
An interview between Kenji Ohtsuki and Hirohiko Araki from the Jump Novel magazine, published on April 1, 1993.[1]
Interview
noveloken_00 この号はジョジョ特集号で、小説以外にも折込ポスターや、ジョースター家四代の歴史(年表)、空条承太郎大激闘MAP(第三部冒険地図)等が載っていました。その辺の紹介についてはまた別の機会に。
お相手は音石・・・ではなく大槻ケンヂ氏です。 (※時期的には音石明が登場する直前)
オーケン&飛呂彦の奇妙な世界 THE SHOCKING BIZARRE TALK【大槻ケンヂVS荒木飛呂彦】 仄かに広がる燭台の灯の中、二人の特異な才能を持つ者が出会った――。 一人は荒木飛呂彦、そしてもう一人は大槻ケンヂ。ショッキング・ビザール・トークが今始まる・・・。
ホラーっていうのは知性に訴える部分とハートに訴える部分と両方あるから僕、好きなんです。
オカルトやホラー、例えば幽霊なんかでも僕、信じてないんですよ。でも、好きでしょうがない。
大槻 実は僕は「ジョジョ」を読んで一番思った事はあれなんですよ。何かウオ~ッとやる気になるなという。俺もやらねば~。何かやらねば~みたいな。僕はミュージシャンというか、バンドをやっているんですけども、実は本も書いているんです。で、ある雑誌に書くんで、集中しなくちゃならんと思って、4日間位マンションにこもって執筆してたんですけど、もう~・・・!僕ね、バンドをやったり、映画に出たり、テレビに出たりとか色々やっているんですけど、バンドが一番楽。もう「物語」を作るというのは辛いですね。
荒木 でもね、その壁なんですよ。辛い、っていう壁を越えると楽しいんですよね。
大槻 それでその時にちょうど「ジョジョ」を読みまして、う~むと。
荒木 でもね、私もほんと、曲からとかいっぱいヒントを得たりしますよ。
大槻 僕思ったんですけど、ディオって言うのはロニー・ジェイムス・ディオで、ジョジョは『ゲットバック』に出てくるジョジョですよね。
荒木 そうです。いっぱいいますよ、もう。何かね、ロックとこういうホラー的なものっていうのは、子供の時からビビッと来まして。僕は70年代位から聞き始めたんですけど。昔はジャケットってその曲のアーティストを撮ってたんですよね。ところが、70年代に入ってから急に悪魔的なものをジャケットに押し出すんですよ。マーク・ボランとか、キング・クリムゾンとかね。タイトルも「地獄のハイウェイ」とか「悪魔の頭脳選択」とか、そういうのがあって、何でか知らないけど、本能的にバシバシッってきちゃって。音楽よりもジャケットで買ったと言う方がいいんじゃないかという。
大槻 僕もそうですね。ジャケットで買ってました。
荒木 ワルの魅力というか、悪魔の魅力みたいなね。そういうのが、僕、きましたね。
大槻 「ジョジョ」では、どっちに肩入れしてかいているっていうのはありますか? やっぱ悪の側?
荒木 いや、一応全員に思い入れして書くんですけど、悪の方が楽しい時もありますね。何か自分が変態みたいに思われると困るんですけども、異常性とかを追求したりするんですよ、殺人鬼とか。
大槻 ああ。前の方に切り裂きジャックも出ていますよね。
荒木 ええ、出てきましたけど・・・。もうちょっと現代サイコホラー的な、ああいう異常心理を書きたいんですよ。
大槻 そういえば、去年、これは僕はきたな~って言う凄い事件が、ありまして・・・。今時、祈祷師が、悪霊がついたとかいう人をお払いだとか言って、ポカポカ叩いて、殺しちゃった事件なんですよ。
荒木 知ってます。きてますよね。
大槻 こういうのが僕、好きなんですよね。幽霊とかオカルトとか、そういうものを僕、信じていないんですよ。もうほとんど信じていないんだけど好きでしょうがない。
荒木 一応、「ジョジョ」なんかではオカルトどっぷりではなく、境目みたいな所にいるように心がけてて、完璧にあっちの世界にはいかないようにしてるんですけどね。たとえば、あのドアの向こうに誰がいるのかなとか、そういう怖さを追求するような所ですよ。
大槻 あのドアの後ろですか?
荒木 そう。窓からカーテンがチラッと動いたりすると怖いじゃないですか、ああいう感じですね。
大槻 いかりや長介がいる。(笑) たとえば、僕がそこに何があるんだと思ってバーンと開けたら、長さんがいて「ウオ~」とか。(一同大笑) 荒木 でも、そういう意外性って、「物語」を作る上で必要ですよね。
「物語」は行きあたりばったりに考えてます。描く感じはライブ的とか日記的なんですよ。
乗ってきたらあの「無駄無駄無駄」とか喋りながら書いてません?
大槻 僕は宇宙人とか信じていなかったんですが、ある時、南山宏先生の本を読んでガ~ン、ときましてね。それ以来、僕、UFOオタクなんですよ。
荒木 あの写真ビックリしたなあ。火星表面のピラミッドの写真。
大槻 ああ、あれね。でも、あれ、笑っちゃいますよ。
荒木 トリックなんですか?
大槻 トリックというか、心霊写真といっしょで、何かこうクニャクニャした岩がただ顔に見えるっていうのがあるじゃないですか。Kさんていう自称科学ジャーナリストがいるんですけど、その人が、実は月はUFOの秘密基地だったと言って、月の写真をいっぱい出して、クレーターとかの上から字をなぞって、ここにUFOが何機置いてあるとか、ここに秘密基地があるとか、絵にかくんです。そういわれりゃそう見えなくもないけど、岩の写真とか、遠くからのしかもよくわかんない写真で、ここに人の顔があるかなあと思えばそう思えちゃうじゃないですか。そういう感じですよ、あれって。
荒木 やばいですよね。
大槻 そういうパラノイア的なというか、集中しまくっちゃって、その世界に完全に入っちゃって、何かもう逸脱しちゃってると言うのかな、そういう人っているじゃないですか。特に作家の方って。だから、実は僕はお会いするまでは荒木さんもそういう方だったらどうしようかと、ちょっと怖かったんですけども。
荒木 ご期待に添えませんで。(笑)
大槻 いえいえ。いやあ、安心しました。何か、いきなり「けさもディオが来てね」とか言い出されたりしたらどうしようかと。でも、あるじゃないですか。例えば、前にアニメ化もされた『幻○○○』を書かれたHさん。あの方もどんどん、うお~っていっちゃう人で、すごいんですよ。
荒木 実際の人がですか。
大槻 Hさんは「ウ○○ガイ」って作品を書いてらっしゃって、僕も大好きなんですけど、その作品の主人公がどこかで実在するような気がずっとしてたんだそうですよ。で、何とある日、家にその主人公だと名乗る人間が来ちゃったんですって。とても犬○○とは思えない普通のおじさんだったらしいんですけど。それでHさんは、最初はこいつはただのパラノイアだろうと思って、でも怖いから話してたんですって・・・。でも、Hさんは話してるうちにこいつは本物だと思っちゃったんですね。それで恐るべき事に、ある雑誌で編集者立会いの下、対談してるんです。(笑)
荒木 じゃ、今まではその・・・テレパシーみたいなものをその人から受けて書いていたと。
大槻 そう。それで僕、その話をUFO研究家の知人に話したんですよ。そしたら、そのSさんていう方が、「いや、僕も実はHさんのブレーンとして超能力とかの資料集めをしていたんだよ」とか言い出しまして、「だから、僕もその犬○○さんに会いましたよ。見て下さい。サインをもらったんですよ」と。(笑)見せてもらったら確かに『犬○○』とサインに書いてあるんですよ。どうします? ある日荒木さんのお宅にジョジョが訪ねてきたら!
荒木 今の話、すごいリアリティがありますね。
大槻 荒木さん、それはあともうちょっとですよ。ジョジョが訪ねてくるまで。
荒木 でも、犬○○は僕も好きだから、実際にいるような感じはしますよね。
大槻 そういうふうになってきちゃうんでしょうね。あと、凄いのが・・・。
[ここからは余りにも過激なため、掲載できません。あしからず。]
大槻 でも、僕も何年か「物語」を作って数年後に終わらせた時に主人公が訪ねてきたとか言う人になってるかも知れないですね。
荒木 でも、私の所にも、どうして波紋って知ってるんですかと言う人が来ますよ。私がやっているんだって。
大槻 ほ~ら。あと数年後、ジョジョが訪ねてきますよ。
荒木 その時は紹介しますよ。
大槻 「ジョジョ」はアニメ化というのは?
荒木 今やってます。
大槻 もう始まってるんですか?
荒木 ビデオです。けど、このシナリオの出来がいいんですよ。何か僕自身が書いた訳じゃないんだけど、自分が書いたような・・・。
大槻 あ、それは見てみよう。
荒木 面白いですよ。ガンガン来る話になってて。
大槻 声の印象とかはどうですか?
荒木 そういうのは全然気にしないです。男が女の声してたらちょっとあれですけど。
大槻 それはまずいですよね。
荒木 あと、ジョジョが「ルパン三世」の声してるとか、「サザエさん」の声してるとか。
大槻 でも、それ、いいなあ。すごくいいなあ。ディオがマスオさんのあの声で「無駄無駄無駄ーッ」とか。
荒木 「ドラえもん」の声とか・・・。
大槻 でも、そういう意外なキャスティングというのも・・・。
荒木 いいけど、それはカルト作品になっちゃうよ。
大槻 例えば「サザエさん」で波平の声が「ルパン三世」の声だったりする訳ですよ。それは見てみたいなあ。
荒木 あとものまねの人にやってもらうとかもいいですね。
大槻 あっ、すごい似てる人がいるんですよ。広川太一郎のまねをする人で。ほんと、例えば、ルパンの声が広川太一郎だったりしたら。それこそがまさに日常の中の異常ですよ。何よりも。例えば、ある日テレビをつけたら、ルパン三世の声が全然違う!
荒木 いいですねぇ。
大槻 星一徹の声だったりしたら気絶しますよ、一億人がテレビの前で。
荒木 電話が殺到するでしょうねぇ。
大槻 サザエさんの大山のぶ代も見たいな。僕もいつかそういう「物語」を書きたいなあと思っているんですけどね。
荒木 書けると思いますよ。
―では、最後にお二人から読者へのコメントを・・・。
大槻 4月に「UFOと恋人」というアルバムが出るんですよ。まあひとつよければ買っていただけたら・・・。そして僕は真剣に、あと十年二十年かかってもいいから「物語」を作りたいと。でもやっぱり小説か映画とかいう手段になるんだろうなあ。
荒木 そうですね。月並みですけど、頑張りますかな。「ジョジョ」もアニメの他にもファミコンや小説になってますけど、そのどれにも本家のマンガが負けないように書いていくつもりです。 ―本日はどうもありがとうございました。 (渋谷『タントラ』にて)
荒木先生からのビザールトーク後記!! 「マンガ家にしては普通の人すネ」とそーいーあんただってロッカーのくせにまじめな人のくせに 対談は一種の闘いだなと思った
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