Anime Production Notes (10/2020)

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Published March, 2021
Animation Series Production Note (March 2021)
Interview Archive

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In commemoration of "JOESTAR The Inherited Soul", the production notes of the successive "JoJo Anime" series have been released!

"How was" the Jojo Anime "made?" The answer will be delivered in a series of four times, with the testimony of the main staff, including Naokatsu Tsuda, who was the director in all seasons. The burning Jojo love of successive directors and producers explodes!

Interview

Vol. 1
荒木飛呂彦の才能にチーム戦で立ち向かう! 『ジョジョアニメ』を駆け抜けたクリエーターたち

アニメ化の幕開けは「これは難題だ」

ワーナー ブラザース ジャパンの大森啓幸プロデューサーは、とあるアニメ関連企業からTVアニメ化の話を持ちかけられた際、「これは難題だ」としばらく悩んだという。日本を代表するビッグコンテンツのひとつではあるが、なにしろ原作の発表は1987年である。とくに初期の荒木飛呂彦が描くキャラクターは劇画調でマッチョイズムに溢れており、少なくとも現代の流行の絵柄とはかけ離れていた。ジョジョを知らない層は、はたして受け入れられるのだろうかと。しかし大森は「絵柄をどうするかという問題はありましたが、作品そのものがもつパワーはけして色褪せてはいませんし、なにより僕自身が大のジョジョファンということもあって、困難を承知で挑戦させてもらうことにしました」と、アニメ化を決意。集英社からの快諾も得て、さっそくスタジオ選びに着手することになる。

ジョジョを描くことのできるスタジオとなると、当然「力強い筋肉の躍動が描けるスタジオ」ということになる。そこで大森は、かつて骨太な作品を数多く手がけていたGONZO(ゴンゾ)の流れを汲むdavid production(デイヴィッドプロダクション)に着目。当時のデイヴィッドはまだ設立したばかりの新興スタジオだったが、ジョジョと同じくジャンプ系列作品である『戦う司書』シリーズを力強い描線で丁寧にアニメ化していたことを受け、大森は「ここならば任せられるだろう」と確信し、打診に及んだという。

荒木飛呂彦の才能に、チーム戦で挑む

アニメ化の知らせを受けたデイヴィッドプロダクションの笠間寿高プロデューサーが考えた秘策は、複数監督体制だった。「たぐいまれなる荒木先生の才能を、ひとりの監督で引き受けるのは正直難しいと思ったんです。TVアニメの座組としては珍しいのですが、監督を複数体制にして、チーム戦で挑むことにしました」(笠間)。白羽の矢が立ったのは、津田尚克と鈴木健一のふたり。津田は「監督」、鈴木は「シリーズディレクター」とクレジットに多少の違いはあるものの、実質的にはすべての作業を協業する形で制作に取り掛かった。

笠間は津田と鈴木のふたりを起用した理由について「津田さんはコメディに強く、鈴木さんはアクションに強い演出家。このふたりが協力することで、原作の力強さと面白さのどちらの魅力もすくい取れるのではないかと思った」と話す。実際、津田も「僕自身もジョジョファンではありますが、僕ひとりで作れと言われていたら断っていたかもしれません。鈴木さんといっしょということで、それならできるかもと思ったんです。今思うと若気の至りというか、怖いもの知らずでしたね(笑)」と当時を振り返った。一方の鈴木は「プレッシャーはとくになくて、大好きなジョジョに携われるという喜びのほうが大きかったです。大きなタイトルですが、あまり周りの意見に惑わされることなく、僕と津田君のジョジョを作ろう」と意気込んだ。

こうしてプロデューサーの大森と笠間、ディレクターの津田と鈴木という中核メンバーが揃ったが、奇しくも4人全員が大のジョジョファン。フィルムの隅々から感じる原作へのリスペクトは、この布陣を考えればむしろ当然の結果なのかもしれない。また編集部の推薦により小林靖子がシリーズ構成として参加。さらにビジュアルディレクターとしてソエジマヤスフミが加わり、いよいよジョジョアニメは走り出す。

「ジョジョっぽいもの」ではなく「ジョジョを作る」

1st Season第1話「侵略者ディオ」より 原作の構図やセリフを完全に再現しているのが『ジョジョアニメ』の特徴

制作チームに対し、大森プロデューサーが最初に相談した方向性は「ジョジョを作る」ことだった。「ジョジョっぽいもの」や「ジョジョらしいもの」ではなく、ジョジョそのものを作るということ。それを受けた津田たちは、再度原作をボロボロになるまで読み込み、ホワイトボードに思いつく限りジョジョの要素や特徴を書き出していった。「擬音」や「独特なポージング」といった分かりやすいものから、「読後感スッキリ」、「バトルが難解」といった印象に至るまであらゆるものを出し尽くす。そして最後にそれらを整理していくのだが、「一般的なアニメーションの作法に則って作る限りは、どうも"ジョジョの平凡な冒険"になってしまう。ジョジョはあくまで"奇妙な冒険"でなくてはなりません。そう考えると答えは最初からタイトルにあったんですよね」(笠間)との結論に至る。

こうして「擬音」をはじめとしたすべての要素の完全再現を追い求めることで全員が一致。この会議を通じて設けられたルールはのちにジョジョアニメに関わるすべてのスタッフに配布され、以降のシリーズを通じて「バイブル」として機能することになった。

冒頭3話で視聴者を惹きつける!

1st Season第3話「ディオとの青春」より 炎に包まれたジョースター邸でのジョナサンとディオの激闘は、長きに渡るジョジョバトルの幕開けにふさわしいクオリティ

ジョジョアニメは、最初から4thシーズンまでの制作が約束されていたわけではない。1stシーズンで一定の成果を得られなかった場合には2ndシーズンの制作は行われないという状況で、大森プロデューサーがとくに注力したのは冒頭3話だった。

そもそもジョジョと言えば「スタンドバトル」のイメージが強く、スタンドが登場した原作第3部「スターダストクルセイダース」で多くのファンを獲得した作品である。それだけに、ともすれば地味に思われがちな原作第1部「ファントムブラッド」をどう扱うかは大きな課題だった。そこで大森は、視聴者が冒頭3話でジョジョの世界観にどっぷりと浸かってくれるように心掛け、アニメスタッフは最初の山場となる原作17話までを冒頭3話で一気に描き切った。通常アニメの1話は漫画の3、4話分に相当するのが一般的だから、これがいかに思い切った構成かがよく分かるだろう。大森曰く「ジェットコースターのような展開にすることで、視聴者に夢中になってもらいたかったんです」とのこと。

この展開は功を奏し、多くのファンに好意的に受け止められた。リアルタイムでSNSの反応を追っていた大森は「これでひとまず大丈夫かもしれないと、心からホッとしました」と述懐する。

人気の「スターダストクルセイダース」は 最強布陣でクオリティアップ!

2nd Season第3話「ディオの呪縛」よりもっとも原作に近い絵柄で展開された2nd Season。多くのジョジョファンにとっておなじみのシルエットと言える

1stシーズンの好評を受け、放送終了後すぐに制作チームは2ndシーズン「スターダストクルセイダース」(原作第3部)の制作へ移行。2ndシーズンはスタンドによる激しいバトル描写が最大の魅力で、シリーズでも屈指の人気を誇る絶対に落とせない部。そのため1stシーズンと比べて作画枚数を増やし、新たにアクション監督を迎え入れるなど作画面での強化が図られた。また演出面でも、1stシーズンで中心的な役割を果たした加藤敏幸が新たにチーフ演出を務め、より安定した演出体制を確立。

こうして4シーズン中最長となった全48話を、終始安定したクオリティで駆け抜けることに成功した。1stシーズンから追い求めていた「筋肉の躍動美」は円熟味を増し、フィルムとしてひとつの完成形を迎えたと言える。

3rdシーズン「ダイヤモンドは砕けない」(原作第4部)は 異色作ゆえ、ガラリと方向転換

3rd Season第2話「東方仗助! アンジェロに会う」より 「街」そのものが主役とも言える3rd Season。杜王町の再現にもこだわりが強い

日本からはるばるエジプトを目指すロードムービーだった2ndシーズンから一転、3rdシーズンは杜王町という小さな街が舞台となる。別作品を監督するためジョジョを離れた鈴木に代わって監督に就任した加藤は、これまでとは毛色の違う作風を正確に把握するため、再びチームでブレストを開催。

「第3部までは物語の目的がはっきりしていたんですが、第4部はゴールがどこにあるのかわかりにくいんですよね。そういう意味ではかなり特殊なので、方向性については徹底的に議論しました」(加藤)。

その結果、ラスボスである吉良吉影の猟奇シーンを冒頭に挿入するといったさまざまな工夫を凝らし、ストーリーの魅力を損なうことなく原作を大胆に再構成してみせた。

新監督を迎え、さらに進化した 4thシーズン「黄金の風」(原作第5部)

4th Season第4話「ギャング入門」よりイタリアの美しい風景とデザイン性の高い絵柄が融合した4th Season

3rdシーズンで監督を務めた加藤が別作品の監督を務めることとなり、ジョジョアニメから離脱。1stシーズンから作品の中核をになってきた鈴木・加藤という両翼を失ったことにより、津田は新戦力を求めて自らのツテを駆使し、木村泰大と髙橋秀弥を口説き落として新監督に就任させる。津田は「第5部における僕のいちばんの功績と言えば、木村さんと高橋さんを監督に、岸田隆宏さんをキャラクターデザインに引き入れたことです」と言い切るほど。

こうしてジョジョアニメ未経験ながら新監督となったふたりは「最初こそ僕にジョジョのコンテが描けるのか不安でしたが、思っていた以上に自由度が高いことがわかり、ノビノビとやれました」(木村)、「僕と木村さんは個性がまったく違っていて、結果的にお互いの個性がよく出たシリーズになったと思います」(高橋)と、それぞれの才能を存分に発揮する。津田が4thシーズンで掲げたテーマは、物語の舞台であるイタリアにちなんで「ルネッサンス(原点回帰)」。両監督がゼロからジョジョアニメの原点に立ち返ることで津田の狙いは見事に達成され、さらに綿密なイタリアロケハンの成果もあって、シリーズに新しい風を吹かせることとなった。津田が手がけてきたジョジョアニメの集大成であり、現時点での最高到達点である。

ジョジョアニメ、その「受け継がれる黄金の魂」とは?

単行本63巻に及ぶ壮大な大河ドラマを、約7年間をかけ計152話で描いたジョジョアニメ。監督の津田尚克やシリーズ構成の小林靖子、音響監督の岩浪美和をはじめ、全ての部に携わっているスタッフもいる一方で、途中退場したスタッフや新たに途中参加したスタッフも少なくない。「バイブル」をベースにしつつも、シーズンごとにビジュアルコンセプトが一新されていくジョジョアニメ。新陳代謝を繰り返しながらも前進し続ける制作チームは、まるで「受け継がれる黄金の魂」そのもの。これからもさらなる進化を遂げながら、新しい世代へと受け継がれていくことに期待したい。

取材・文/岡本大介


Vol. 2
「『ジョジョ』とは何か?」を徹底的に分析アニメでの完全再現に込められた想いとは?

「ジョジョを科学する」という発想で原作を再現

1st Season第4話「波紋疾走(オーバードライブ)」より顔の半分が影で覆われるなか、妖しく光るディオの目が印象的なカット

ジョジョアニメを制作するにあたり、ワーナー ブラザース ジャパンの大森啓幸プロデューサーからの要求は「ジョジョを作る」というごくシンプルなもの。それを受け、監督の津田尚克が掲げたスローガンは「ジョジョを科学する」だった。

原作の特徴であり、ジョジョをジョジョたらしめる要素を全て拾い上げ、アニメーションで再現する方法を模索。「メメタァ」や「ゴゴゴゴゴ」といった独特な擬音、個性的なポージング、「そこにシビれる! あこがれるゥ!」といった舞台的な台詞回しなど、誰もがイメージするものはもちろんのこと、集中線の使用や画面内のコマ割り演出などもアニメで徹底的に再現した。

1stシーズンから演出を務める加藤敏幸は「不気味さを演出するために、原作では霧や煙のような名状しがたい気体が渦を巻いている描写がけっこうあるんです。通常であればこれらはCGで処理してしまうんですが、そこは原作そっくりに手書きで再現しています。ほかにもキャラクターの不穏さを表現したい場合に、顔全体にトーンを貼って暗くして、目だけに光を当てるといったサスペンス的手法も原作通りに取り入れています」と語っており、スタッフ陣のこだわりが随所に見て取れる。

「シーン特色」はアニメならではの醍醐味

2nd Season第2話「裁くのは誰だ!?」より「特色」のシーンでは制服の色や髪の色などが変化。シーズンごとに表現の仕方は異なる

映像演出で特筆すべきは、「シーン特色」や「カット特色」と言われるカラー表現だ。ジョジョファンならご存知の通り、ジョジョのカラーリングには決まった色が存在しない。荒木飛呂彦が描くカラー原稿は、同じキャラクターでもそのときどきによって色がガラリと変化することはよくあることで、むしろ決まった色に捕らわれないことがひとつの個性となっている。

とは言え、基本的にモノクロで描かれる漫画原稿とは違い、アニメーションはつねにフルカラー。シーンごとに色がコロコロ変化するわけにはいかない。そこで津田たちは、全体のベースとなる基本色を決めたうえで、展開に応じて色を変化させる「シーン特色」や「カット特色」を採用。キャラクターの心情が大きく揺さぶられたり展開の山場などで使用され、アクセントとして効果的に機能している。アニメーションの特性を存分に生かした発想で、大きな強みとして4thシーズンまで踏襲された。

キャラデザはファンがイメージする中央値を模索

1st Season第6話「あしたの勇気」より筋肉美はしっかりと強調しつつも、フォルムはややスリムになっている

1stシーズンのビジュアル構築において、とりわけ試行錯誤したのがキャラクターデザインだ。というのも、初期の荒木飛呂彦が描くキャラクターはみな筋肉隆々で画風も劇画に近い。現代の流行とは言い難く、このギャップをどう埋めるかが課題となった。そこで制作チームは、多くのジョジョファンがイメージするキャラクター造形が原作第3部から第5部であることから、その中央値を1stシーズンに還元することで、よりファンの心象イメージに近いキャラクターデザインを作り上げていった。こうして出来上がったキャラクターたちは、初期の荒木キャラならではの濃い雰囲気も残しつつ、全体的にマイルドでカジュアルな造形に落ち着いている。

19世紀から現代まで! 美術の変遷

2nd Season第16話「恋人(ラバーズ)その1」より2ndシーズンでは世界中のさまざまな国や民族、文化が描かれた

部ごとに時代や舞台がガラリと変化するのもジョジョシリーズの特徴だけに、美術や設定作業も大変な苦労を伴った。1stシーズン「ファントムブラッド」は19世紀末のイギリス、「戦闘潮流」は第二次世界大戦前のアメリカやヨーロッパが舞台となるが、これらは原作でも現実に即した形では描かれていないため、アニメにおいてもある意味ファンタジーとして描かれた。しかし続く2ndシーズン「スターダストクルセイダース」となると、時代は1980年代で、日本からエジプトに至るさまざまな国と地域が舞台となる。建築物だけでなく、行き交う人々の民族や服装も多岐にわたるため、美術班だけなくサブキャラクターデザインの負担は相当なものになったという。

またプロップ(小物設定)についてもこだわっており、例えば第37-38話の「地獄の門番ペット・ショップ」の脚本と絵コンテを担当した鈴木は、原作に登場するポルシェの車種について、通称・イエローバードと呼ばれる限定生産モデルなのではないかと推測し、設定に取り入れている。「この時の敵スタンドが鳥で、そこにポルシェが突っ込んでくるので、おそらく当時の荒木先生もイエローバードを想定していたんじゃないかと思ったんです。まあ完全に想像なんですが(笑)」(鈴木)。正直なところ、原作に数コマ登場しただけの車についてここまで考察を広げる必要はないのだが、それこそがジョジョ愛がなせるこだわりだろう。

3rdシーズン「ダイヤモンドは砕けない」はこれまでとは一変して、最初から最後まで架空の街・杜王町が舞台となる。監督を務めた加藤は原作をもとに精密な杜王町の地図を作り、各キャラクターの家や学校までの通学路、所要時間など、作中で行われる移動のルートを細かく計算。「杜王町は第4部のもうひとつの主役だと思っているので、できるだけ実在感を出したかったんです。誰もが馴染みのある日本の片田舎の風景と、その裏で起こっている凶悪な殺人事件という対比を強調するためにも、町の作り込みには時間をかけました」(加藤)。

4thシーズン「黄金の風」の舞台は2001年のイタリア。総監督の津田、監督の木村泰大、髙橋秀弥らは2017年7月にロケハンのためイタリアへ渡航。「聖地巡礼をしやすくしようというのは最初から目標にしていた」という木村の言葉とおり、作中に登場するほとんどの場所を突き止めた。この綿密なロケハン作業の成果はフィルムに空気感としてしっかりと閉じ込められており、視聴者はジョルノたちとともにイタリア全土を旅行したような気分になれる。

作画における「ジョジョイズム」の確立

2nd Season第48話「遥かなる旅路 さらば友よ」より2ndシーズンの最終決戦は、『ジョジョアニメ』史上最高峰の「濃い作画」

デイヴィッドプロダクションの笠間寿高プロデューサーは、最初にジョジョのアニメ化を聞いた際、「この絵柄を動かせるアニメーターがどれだけいるだろうか?」と不安を覚えたという。たしかにデイヴィッドプロダクションは濃い絵柄を動かすことが得意なスタジオではあるが、それでもここまではっきりと筋肉や骨格が強調された作品はこれまでに経験がなく、スタジオとしても大きな挑戦だった。1stシーズンでシリーズディレクターを務めた鈴木健一は「作画に関しては最初から明確な完成イメージはありましたが、実際には描きながらこなれていくしかありませんでした」と当時の状況を振り返る。

また加藤は序盤の作画作業はとくに重量感にこだわったと語る。「第2話のラグビーシーンで、ジョナサンが3人の選手を引きずりながらも前進をやめないというシーンがあるんですが、ここは力強い青年に成長したジョナサンの姿を印象づける狙いがあるんです。とは言えジョナサンはあくまで人間であり、のちに吸血鬼となって人間を超越するディオとは根本的に肉体の強度が違います。つまりここでは人間としての限界も同時に示す必要があり、そのためには3人の男を背負ったときの重みをしっかりと表現しないといけない。身体のあちこちに高い荷重がかかることで生まれる「うねり」が大切で、そこはかなり細かく修正指示を出した記憶があります」(加藤)。

このように、カットごとにコンセプトを丁寧に伝えていくことでじょじょにノウハウが蓄積していき、しだいに作画は安定していった。1stシーズンから作画を担当しているアニメーター・石本峻一は「ジョジョシリーズは基本的に濃い作画が特徴で、最初は手探りでしたが、作画班のあいだではしだいに「濃さ合戦」が繰り広げられていました」と当時の作画状況を語る。

キャラクター芝居は「舞台」に近い!?

4th Season第1話「黄金体験(ゴールド・エクスペリエンス)」より ふつうならば考えられない言動によって異常性を演出するのもジョジョバトルの醍醐味

ジョジョにおけるキャラクターの芝居は、必ずしも常識に縛られない。我々は日常生活のなかで作中のような独特なポージングをすることはないし、「おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?」といったセリフを言う機会もないのだ。ではジョジョにおけるキャラクター芝居とはなにかと言えば、それはむしろ演劇に近いという。鈴木は「舞台上のキャラクター配置や光源といったルールはありつつ、荒木先生の決めゴマの魅力を最大限に発揮するためには、ときには大きく逸脱させることもあります。突然照明を変えたりキャラクターにズバッとピンスポットを当てたり。歌舞伎でいうところの"見得"のイメージですね」と話す。このことを加藤は「舞台芝居」と表現しており、言葉は違えど同じイメージを共有していることがうかがえる。

一方で、ジョジョのバトル描写について、津田は「プロレス」と言い表している。「じつはジョジョのキャラってほとんど悩まないんです。そこはひとつのポイントで、リングに上がったプロレスラーは、なぜ自分が戦っているのかを悩んだりはしないですよね。マイクパフォーマンスや大げさなジェスチャーで、お客さんに気持ちよく分かりやすく楽しんでもらうために全力を尽くすじゃないですか。ジョジョのバトルもそれと同じで、これから自分が何をするつもりなのか、結果どうなったのかをちゃんと提示しながら戦うことで、むしろそれが旨味になるんです。アニメ的なケレン味やスピード感を優先してそこをスポイルしてしまうと、それはジョジョのバトルではなくなってしまうし、魅力も失われてしまう。プロレスに例えたのは、それが理由です」(津田)。

ジョジョにおけるバトル描写とは、長セリフのテンポや韻、アクション、キャラクター性のすべてが渾然一体となって生まれるグルーヴ感こそが醍醐味だと津田は分析しており、アニメはそれをベースに作られている。

取材・文/岡本大介


Vol. 3


Vol. 4 TBA

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References

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