Kyosuke Usuta (December 2024)

Published December 18, 2024
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Kyosuke Usuta (December 2024)
Interview Archive
JOJO magazine 2024 WINTER Cover

An interview with Kyosuke Usuta, creator of Toshikazu Hazamada's Questionable Adventure. It was published in the Winter 2024 issue of JOJO magazine, released on December 18, 2024.

Interview

Transcript

うすた京介JOJO語り

『間田敏和の微妙な冒険』を執筆し終えたばかりのうすた先生を直撃!うすた先生が考える荒木作品の魅力や、今回のスピンオフ制作の裏側をたっぷりと語ってもらった。


うすた先生が漫画家として一番理想とする存在

――『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』や『ピューと吹く!ジャガー』などの連載時、『JOJO』と共に週刊少年ジャンプ誌面を飾っていたうすた先生。荒木先生や荒木先生の描く作品にはもともとどんな印象をお持ちでしたか?

 荒木先生の作品は『魔少年ビーティー』の頃から読んでいて。僕は当時小学生だったんですが、独特な絵柄や世界観がすごいなと思っていました。今の緻密でアーティスティックな絵も大好きですけど、シンプルでデザイン的なあの頃の絵も大好きです。その後の『バオー来訪者』も読み、『JOJO』の連載が始まったのは小学校5年生くらいの頃だったかな。子どもの頃から荒木先生の漫画をずっと読んできたので、自分が漫画家になったあとも、「同じジャンプ作家」という気持ちはまったくありませんでした。僕の中で、自分よりも上の世代の人たちはみんな「昔読んでいた憧れのジャンプの作家」という感じで、自分が載っているジャンプはそれとはまた別、みたいな感覚なんです。荒木先生もまさにそういうレジェンドのお一人で、その中でも僕が一番憧れる存在ですね。

――荒木先生のどんなところに憧れるんですか?

 荒木先生の世界観ってめちゃくちゃ独特じゃないですか。それでこれだけメジャーになっているのはとんでもなくすごいことだと思うんです。自身の世界観を崩さずにちゃんとメジャーを意識したものを描いて、それがちゃんと商業的にも成功する。それって漫画家としての一番の理想だな、と。隠そうとしても滲み出るほどの個性が本当に羨ましいです。

――荒木先生と初めて直接会ったのはいつ頃だったんでしょう?

 初めてお見かけしたのは週刊少年ジャンプの新年号の写真撮影のときで、挨拶すらできてません (笑)。何年も本当に遠くから見てただけです。僕にとっては神みたいな存在だから、近寄りがたくて。それに荒木先生ってオーラがえぐいんです。かっこいいし気品にあふれていて、気軽には話しかけられないですね。

 ちゃんとお話できたのはそれからだいぶあとのことでした。編集者を通じて、『JOJO』と『ジャガーさん』好きのあるアーティストさんたちと食事することになって。そこに荒木先生もいらして、初めて一緒にご飯を食べたんですよ。でも、そのときのことは自分がめちゃくちゃ緊張していたことしか覚えていないですね (笑)。そのあと、別の機会に荒木先生の家にお伺いして、お土産に『JOJO』のグッズをいただきました。

――漫画家として、荒木先生の絵のどういうところに凄味を感じますか?

 色彩感覚とデザインセンス、あとは画面の作り方がすごいですよね。まずポーズが普通の人間には取れないポーズですし、人間をあんな形で置こうとは思いつかないですよ。僕だったら人間を普通に人間っぽく描こうとするけど、荒木先生はきっとデザインの一部として、「こういう形の何かが欲しいな」って思うからその形に人間を置く、というような感覚で描いているんじゃないでしょうか。色使いもどうやって描いているんだろうと、荒木先生の絵を見るたびに思います。なんでここにピンクを置けるのかな、とか。あとはやっぱり余白の素晴らしさ。見た瞬間に「かっこいい!」と思える、感性に訴える余白といいますか。あれはもうセンスでしかないですよね。

25 years JoJo 015.png

――うすた先生は『JOJO』25周年記念冊子でイラストを描いていらっしゃいましたね。

 懐かしいですね。これはQUEENの「シアー・ハート・アタック」というアルバムのジャケットのオマージュなんですよ。せっかくだから全部の部の主人公を描きたいなと思って、ぎゅうぎゅうに入れ込みました。

――ちなみに、うすた先生が『JOJO』で特に好きなキャラクターは?

 康一くんが好きです。スタンドの「エコーズACT3」も好きだし、康一くん自身もシンプルにかっこよくて。僕は吉良とのラストバトルが大好きなんです。最後に吉良が押す瞬間に康一くんがドンッ!とやって、承太郎が「康一くん…君は本当に頼もしいヤツだ」と言うあの流れ! もう、めちゃくちゃシビれますよね。

うすた作品にも通ずる悲哀を持ったキャラクター

――今回、『JOJO』のスピンオフ執筆の依頼をもらったときの心境はいかがでしたか?

 いやー、怖かったですよ (笑)。断るのも怖いし、描くのも怖い。とはいえ、こんな名誉なことはないし、断るなんて絶対にありえない。怖いけど、覚悟を決めるしかないなと思いました。

――第4部『ダイヤモンドは砕けない』を題材にした理由は?

 やっぱり日本が舞台なので描きやすいのかな、と。イタリアを舞台にしたギャングの話なんて、僕には絶対描けないですから (笑)。

――その中でも、主人公に間田を選んだのはどうしてだったのでしょう?

 むしろ間田しかいないなと思いましたね。『JOJO』のキャラクターって、基本的にみんなかっこいいじゃないですか。でも僕は、かっこいい人間って描けないんです。最初は重ちーや玉美も候補に考えたんだけど、重ちーもやるときはやるヤツですし、玉美もけっこうヤンキー的な気合の入り方をしている。でも、間田は一個もかっこいいところがないんです。そういう意味で、間田以外は思い浮かびませんでした。

――間田が一番うすたワールドのキャラに近かった?

 近かったです。今回の漫画もいつものテイストでまったく違和感なく描けて、間田をこっちの世界にスカウトしたいくらいでした (笑)。たとえ敵でも誇りを持って戦う『JOJO』のキャラクターたちの中で、彼だけは終始情けなくて。だけど、その悲哀こそが彼の魅力だと僕は思っています。

 漫画を描くにあたって改めて間田の登場エピソードを読み込んだんですが、間田の制服って首のところに「間」って描いてあるんですよね。今回初めてそれに気がつきました。あと、第4部は、男子はみんな学ランを着ているのに、女子はずっと夏服なんだというのも発見でしたね。冬服の資料はないか調べたんだけど、一個もなくて。そうか、『JOJO』ではそんなところはどうでもいいんだ!と気づいて、いかに自分の頭が硬かったか思い知りました。「男子が学ランだったら女子は冬服にしなきゃ」と当たり前に思っちゃうでしょ? でも、そんなことよりも、デザインを重視するのが『JOJO』なんですよ。

――間田は、最初は身長が高かったけど、話が進むにつれて小さくなっていくのも特徴的ですよね。

 そこはね、いじれなかった (笑)。荒木先生も意図的に、仲間に近づくにつれてデフォルメされてかわいくなっていくというふうにしていると思いますけど、あれも最近の漫画ではなかなか見ない表現ですよね。後半はかわいくなっちゃうから、どの顔、どの頭身の間田を描くかはけっこう悩みました。

――ストーリーはどうやって考えたんですか?

 それもめちゃくちゃ悩みましたよ。最初は仗助と戦ったあとの話をやろうかとも考えたんですけど、スタンドが壊れて能力がなくなった可能性もあると思って、仗助たちと出会う前の話を描くことにしました。あとは露伴のシーンをオチに使いたかったから。原作の物語の裏側を掘り下げる裏エピソード的なつもりで描いたので、第4部の間田に関するエピソードと合わせて読んでもらえれば、リンクするところがたくさんあると思います。

――スマホなどは第4部の舞台である1999年にはまだなかったと思いますが、物語を現代風にしたのには何か理由があったんですか?

 現代に落とし込もうとする感覚はまったくなかったです。でもたしかに、そう言われるとそうだな……。1999年だとPHSとかを使っていた頃か。……まぁ、時代考証がどうのこうのという漫画ではないですから (笑)。

――また『JOJO』のスピンオフを描きたいと思いますか?

 いや、マジで無理です (笑)。名誉なことでめちゃくちゃ嬉しかったけど、こんなに緊張する仕事は無いので今回だけで終わらせてください……。

――ありがとうございました。最後に、読者へメッセージを!

 『JOJO』の世界観をなるべく崩さないよう、世界観を掘り下げる気持ちで描いたので、どうか粗探しや批判はせず、温かい目で楽しんでいただければうれしいです (笑)。『JOJO』ではないですが、来年には僕の新しい連載も始まる予定なので、そちらもよろしくお願いします!


うすた・きょうすけ
1974年5月25日生まれ。熊本県出身。1991年に『ザ★手ぬきくん対物酢御くん パート2』でデビュー。代表作に『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』、『ピューと吹く!ジャガー』などがある。現在、少年ジャンプ+にて新作の連載準備中。


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