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本編とはまた違った、それでいて本編の世界観が垣間見えるような素敵な物語になっていると思います。 映像化を待っていた方にも、ここで初めて触れる方にも、楽しんでいただけたら幸いです。<ref>http://jojo-animation.com/bddvd/ova.html</ref>
本編とはまた違った、それでいて本編の世界観が垣間見えるような素敵な物語になっていると思います。 映像化を待っていた方にも、ここで初めて触れる方にも、楽しんでいただけたら幸いです。<ref>http://jojo-animation.com/bddvd/ova.html</ref>
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Escape Interview=
「みんな脱出すればいい(笑)」承太郎一行になりきって、運命を乗り越えろ!

ディレクターに聞く『ジョジョの奇妙な館からの脱出』の見どころ

#リアル脱出ゲーム #中国・四国 #九州 #北海道 #北陸 #東北 #東海 #関東 #関西

――2017年11月2日から、「リアル脱出ゲーム × ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース『ジョジョの奇妙な館からの脱出』」が全国で順次開催されます。まず、本公演の内容について、お教えください。



コンテンツ・ディレクター 鹿野康二(以下、鹿野)
『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』(以下、『ジョジョ』第3部)が舞台となっていて、宿敵DIOの館へ向かう旅の途中での主人公・承太郎一行の話になります。
承太郎たちは、DIOの館に着く前に訪れたホテルでスタンド使いから襲撃をされ、ホテルの中に閉じ込められてしまいます。
そこから1時間以内に脱出をしないと、スタンド能力によって消滅…つまり、死んでしまう、という設定です。
プレイヤーの方々は、それぞれ5人と1匹の承太郎一行になりきってもらい、その館から脱出する方法を探っていくという大掛かりなゲームになっています。

――『ジョジョ』第3部のキャラクターになりきって楽しむんですね。犬のスタンド使いで、ボストンテリアのイギーになる人は難しそうですね(笑)。

鹿野 イギーをやる方は、ちょっと苦戦するかもしれません(笑)。

――今回のコラボが実現した経緯は?

鹿野 集英社さんとは『ワンピース』や『キングダム』など、これまでもさまざまな作品でコラボをやらせていただきましたが、今年が『ジョジョ』30周年ということで実現に至りました。
お客さんへの「どんな公演をプレイしてみたいですか?」というアンケートで、「『ジョジョ』とコラボしてほしい」というのはいつもめちゃくちゃ多かったので、ついに来た……!という感じでした(笑)。
リアル脱出ゲームのファンと『ジョジョ』のファンは、重なる部分もあるのかもしれません。

――『ジョジョ』の魅力のひとつには頭脳戦や心理的駆け引きのバトルがあるので、リアル脱出ゲームファンが『ジョジョ』を好きなのも納得です。先立って今年の夏には、『ジョジョ』第4部とコラボした遊園地公演『ジョジョの奇妙な遊園地からの脱出』(以下、『遊園地からの脱出』)も開催されていますね。

鹿野 私は『遊園地からの脱出』でも、ディレクターを担当しました。
もともとSCRAPのコンテンツチームでライターをやっていて、ディレクターをやったことはなかったんです。
でも、『ジョジョ』が大好きなので。コラボが決まった時に、僕が社内で一番最初に「えっ!!」って反応したんです。
そうしたら、「よし、お前がディレクターをやれ」って。
やっぱり、「好きこそものの上手なれ」じゃないですけど、作品への愛を尊重するところがあるので。
企画としては『ジョジョの奇妙な館からの脱出』が先に挙がったんですが、
今年の夏に第4部が原作の実写映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』が公開されるということと、
毎年夏に遊園地公演をやっていることもあって、『遊園地からの脱出』が先に開催されることになりました。

――どの部も人気がある『ジョジョ』ですが、今回第3部を題材にした理由は?

鹿野 やっぱり、「『ジョジョ』といえばスタンド」というところがあると思います。スタンドが初登場したのが第3部なので、第3部をやりたかったんです。



ジョジョのポーズになりきりグッズ…あなたも承太郎になれる!

――それでは、『ジョジョの奇妙な館からの脱出』の注目ポイントをお教えください。

鹿野 リアル脱出ゲームの公演に、どうスタンド能力を落とし込むのか?というところは議論を重ねてきたので、ぜひ注目していただきたいです。
今回、シルバーチャリオッツだったら「レイピアで突く」という風に、それぞれスタンド特有のアイテムを使ったアクションを謎解きに組み込んでいます。『ジョジョ』はバトルマンガなので、実際に体を動かしてもらって、バトル感や自分がスタンドを使ってる感じを体験してもらいたいです。
思いっきり「シルバーチャリオッツ!!」とか「スター・プラチナ!!」とか叫べます(笑)。

――SCRAPさんの公演で、作品の既存キャラクターになりきるスタイルはちょっと珍しいですよね。

鹿野 少ないですね。『遊園地からの脱出』も、自分がオリジナルのスタンド使いになるって感じでした。
なので、みなさんにはキャラクターになりきってもらって、ゲーム中に『ジョジョ』の名言をいっぱい言ってもらえると楽しいと思います。

――『遊園地からの脱出』でも、“ジョジョのポーズ”をする場面もありましたね。

鹿野 チェックポイントで“ジョジョのポーズ”をして進む、という感じ。
謎を解くには無駄な部分なんですけど、僕は絶対に必要だと思っているんです。
アクションで体を動かしたり、名言を言い合ったりするようなことが意外に楽しかったりするので。
ほかにも、公演中には『ジョジョ』ファンならニヤッとしてしまう小ネタもちょこちょこ入れているので、楽しんでもらいたいですね。

――承太郎一行として、「To Be Continued」の矢印と一緒に“ジョジョのポーズ”を決めて写真を撮りたいですね(笑)。

鹿野 承太郎やジョセフといったジョースター一族の「星型の痣」タトゥーシールといったなりきりグッズもあるので、ぜひ(笑)。

――ちなみに、『遊園地からの脱出』と『館からの脱出』はどういったところに違いが?

鹿野 遊園地公演は実際にアトラクションに乗って謎を解くほか、次の目的地までの道のり自体が謎になっていたりと、かなり謎の質が違います。
また、遊園地などのオープンフィールド型と、ホール型のリアル脱出ゲームでは世界観の作り込みも違うと思います。
『遊園地からの脱出』はフォトスポットのアンジェロ岩など、『ジョジョ』第4部の舞台・杜王町の世界観にうまくハマったのが良かったです。
今回はエジプトのホテルという館が舞台になっているので、館の装飾や館に閉じ込められるという設定など、『ジョジョ』で大事な世界観をトータルで作り込むことができました。
あと、これは『ジョジョ』に限らずですが、ホール型は1時間の時間制限があるので、その緊張感も全然違うと思います。



荒木先生のコメントで活き活きとしたオリジナルキャラ

――『ジョジョの奇妙な館からの脱出』で注目したいポイントとして、公演オリジナルキャラクターであるスタンド使いのディジャ・メイカーの存在が明かされていますね。

鹿野 敵キャラのスタンド使いなんですけど、特に第3部の『ジョジョ』っぽさを意識してキャラクターを作っていきました。
外見もそうですが、身長や体重、性格だったり、好きな映画や好きな音楽、またDIOの手下でもあるので、DIOとの関係性など、いろいろな方向から考えましたね。

――なぜオリジナルキャラクターを登場させることに?

鹿野 承太郎一行になりきってもらった時に、敵キャラはどうしよう? ということになったんです。
最初はDIOを敵として考えたんですが、『ジョジョ』を読んだことがある人はDIOの能力や倒し方などを知っているので、謎を作りにくいというのがありました。
一方で、オリジナルキャラクターであれば、よりダイナミックな謎のアイディアも出てくるだろうということもあり、謎解きとの相性を考えてオリジナルキャラクターを設定しました。
最初、こちらでディジャ・メイカーの性格や生い立ちといった資料を作って、荒木飛呂彦先生に監修をお願いしたんですが、先生からは「もっと設定を作ってほしい」という風に伺いました。
というのも、最初は身長や体重のほか、性格も「一見、物腰柔らかで丁寧だが内面は陰険で狡猾」といったぐらいだったんです。

――現在公開されている公式サイトのキャラクター情報よりも、情報量がかなり少なかったんですね。

鹿野 ですので、そこから好きな映画や音楽だったり、公開はしていない裏設定なども考えていきました。
そうすると、自分の中でキャラクターのイメージがすごく湧いてきて、勝手に動きはじめてくれる感じがありました。
公演のストーリー展開やシナリオを作る際にも、「このキャラだったら、こういうことはしない」「こいつは、ここで多分逃げ出すだろう」というのが見えてきました。
オリジナルのキャラクターを作ったことに加えて、改めて原作を読み込んで、「『ジョジョ』だったら、どうなるだろうか?」という、『ジョジョ』っぽい展開も意識して考えることができたんです。
そして、「これは『ジョジョ』とは違うな」という部分は排除して、制作してきました。

――好きな音楽の理由が「聞き終わる頃には1時間経過しているため」という設定も面白いです。

鹿野 好きな音楽の設定を考える時に、きっとディジャは1時間どこかに潜んでいるから、音楽でもその1時間を測っていたら面白いね、という話になったんです。
その曲を聞き終えたら、1時間経過して敵を始末したことがわかる、っていう。
コンテンツチームは妄想癖のある人が多いので(笑)、みんなでわいわいブレストした中から良いアイディアを採用していきましたね。

――一方、キャラクターづくりで苦労された点は?

鹿野 外見ですかね。なるべく『ジョジョ』第3部に出てきてもおかしくない、クセの強い外見にしたかった。
例えば、原作ではすごく変な小さなメガネをかけたアレッシーや、目からシマシマの線が出ているダービーだったりと、クセの強い外見のキャラが登場してきます。
その雰囲気をデザイナーさんにイメージとして伝えるのは難しかったです。
ただ、それもいきなり外見から考えるんじゃなくて、こういうキャラクターだからヒゲを生やしているのかとか、メガネをかけているのか、っていう風に考えていきました。
デザイナーさんが設定からビジュアルのアイディアをすごく膨らませてくれて、「カギのイヤリングはどうか?」とか「ルービックキューブ模様の柄はどうか」といった意見を出してくれて。
そうやって一緒に作り出していった感じです。



厳しい運命を乗り越える体験を

――ほかに、公演全体を制作する上で苦労した点はありますか?

鹿野 『ジョジョ』の公演を作るとなった時に「ほかのコラボと何が違うのか?」ということを考えました。
その時に、『ジョジョ』の“すごい強い敵に工夫して勝つ”とか“運命を乗り越える”といった感じを出したいな、と思ったんです。
それこそ、荒木先生は原作の単行本などで「人間賛歌をうたっていきたい」、つまり『ジョジョ』は人間と勇気の素晴らしさを描いているということを書いているので、そういった部分が出せたらな、と。
なので、ぜひ「運命を乗り越えて、絶対勝つぞ」という気持ちで来ていただけると嬉しいですね。
あとは、SCRAPの社長・加藤もジョジョ好きなので、打ち合わせをしていても『ジョジョ』談義が止まらなくなっちゃうんですよ(笑)。
「あのシーンはヤバい!」とか、「一番良いシーンは…」とか話し出して、ブレストが進まなくなる、みたいなのは本当にありましたね。

――『ジョジョ』ファンなら、かなり楽しめそうな公演になりそうですね。

鹿野 実は、原作から考えると承太郎一行が全員揃うのって、DIOの館に乗り込む直前の数時間しかないので、世界観的には少しifの世界になってしまうんですけど、ファンの方には5人と1匹が揃った感じを楽しんでもらいたいですね。

――反対に『ジョジョ』をそんなに知らない、というリアル脱出ゲームファンの方も楽しめますか?

鹿野 もちろん楽しめると思います。
今回は先ほど言ったレイピアなど、紙ものを含めてアイテム数が多くなっています。
なので、ただひたすらパズルを解くというのではなく、アイテムを使って立体的に謎を解くという方向性で制作をしています。
そういったギミックが好きな方は楽しめると思います。
それこそ、『館からの脱出』を体験した後にでも、原作・アニメに触れてもらって『ジョジョ』を好きになってもらえるとすごく嬉しいです。

――原作を先に読むか、後に読むか。オススメはやはり読んできてもらえるといい、という感じですかね。

鹿野 ぜひ原作を読んで、名言を覚えてきてもらえると。
『ジョジョ』の名言を使うポイントもきっとあると思うので、「絶対に『やれやれだぜ』を使うぞ」といった気持ちで来てもらって、キャラになりきっていただけたら、楽しさは何倍にもなると思います。
それと、今特設サイトでは謎を解くとアブドゥルがタロット占いをしてくれる「アブドゥル占い」もやっているので、それをやって気持ちを高めていただいても面白いかな、と。
アブドゥルからのコメントもちゃんと『ジョジョ』の原作に合ったものになっていますよ。

――それでは最後に、公演を期待している読者へメッセージをお願いします。

鹿野 『ジョジョの奇妙な館からの脱出』に来てもらって、その一時間はキャラクターになりきって、思いっきりスタンド名を叫んでもらえたらな、と。
それで、みんなで運命を乗り越えてもらいたいです。
……もうみんな、脱出すればいいですよね(笑)。

まぁ、運命を乗り越えるのはそんなに簡単じゃないと思うので、脱出率はいつも通り厳しいんですけど(笑)。



リアル脱出ゲーム×ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース「ジョジョの奇妙な館からの脱出」<ref>[http://www.scrapmagazine.com/column/directorinterview/ 「みんな脱出すればいい(笑)」承太郎一行になりきって、運命を乗り越えろ!]</ref>
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Revision as of 08:42, 3 December 2017

For more thoughts from Araki, see the Author's Note or JoJonium Interview pages.

1986-1993

——それでは、何でも聞いて下さい。

エ「写真と同じ顔の人なんですね♡ お店に入ってきた時、すぐわかりました」

荒「ああ、そうですか(笑)」

——でもコミックスの写真は白黒でしょう?

荒「あれは白黒って決まってるんですよ。スーパー・コミックスの方はカラーなんですけど」

エ「生年月日などを…?」

荒「35年6月7日です。双子座です。B型です」

エ「マンガ家になったきっかけは?」

荒「80年の冬ぐらいに、ジャンプに持ちこんだんです。原稿を——『武装ポーカー』という、手塚賞準入選に入ったやつです」

——ああ、今回の特集に集まったハガキで、名前だけ知っているけど読んだことがなくて残念ってのが多かったですよ。

荒「西部劇です。異色の……」

ふ「今とずいぶん感じが違いますね」

荒「そうですね。ポーカーゲームみたいなのしてガンマンが戦うって話で……31枚でした。それでデビューしました。その後

は、短編を3本ぐらいのっけて、『魔少年ビーティー』に入りました」

——そのころのものは、じゃあ今は読めないわけですね。

荒「ああ、短編集は出ていません。もうあのへんのやつは、闇にほうむりたいんです(笑)」

一同「え〜っ!?」

エ「その前に、投稿とか同人誌は?」

荒「高校のころ、けっこう投稿してた」

ふ「どういった雑誌に?」

荒「やっぱりジャンプ。好きだったから……」

——そのころの少年ジャンプというと、どんな作品がありました?

荒「…『ドーベルマン刑事』とか…あと忘れた(笑)。マガジンだと『愛と誠』なんかね」

エ「影響を受けた人とかはいました?」

荒「梶原一騎さんの原作の」

一同「え〜っ(笑)え〜っ(笑)(笑)」

荒「え〜って…何で!?(笑)」

ふ「梶原一騎さんってマンガ描いてるんですか?」

——『愛と誠』の原作とかやってるでしょ。

ふ「あ、そうか」

小「え〜っ!?」

荒「えっ!? そんな世代なの〜っ!? 今、読んでもあれはおもしろい!」

——小見山さんも、何かありません?

小「『ビーティー』のトリックなんか、いつも自分でお考えになるんですか?」

荒「アレンジするのもあるし、自分で考えるのもあります」

——それではそろそろ、『バオー』のお話を……。ファンロードの読者に人気がある原因のひとつは、短い連載だったにもかかわらず、中途はんぱな打ち切りラストではなく、ジャンプの作品の中でも理想的な完結をむかえた作品であるかららしいんですが……。

荒「ああ、あれはラストだけは考えてたの。こういう終わり方にするんじゃないかなって……」

——終わりの方で、やっと“来訪者”って意味がわかるのも、いいですね。最初は、逃げてばかりなのになぜ“来訪者”なんだろうかと……。

荒「ボクもそう思った(笑)」

エ「あれ、続編とかは……?」

荒「作りたいですけどー……」

ふ「17歳のスミレちゃんが見たいで〜す♡ どういうイメージですか?」

荒「そうですね、あんまり活発じゃなくて女らしい人」

エ「スミレちゃんのモデルは?」

荒「現実には、いませんね」

ふ「理想のタイプとか……」

——そういえば、コミックスの2巻目の描きたしページのスミレは、ずいぶん感じが変わっていましたね。

荒「絵はね、なるべく変化させるようにこころがけてます。修行中と思ってますから」

ふ「絵の方で影響受けた方は?」

荒「白土三平……最初はね」

——『バオー』でもいましたね。爆弾投げた2人組なんて、爆弾の代わりに手裏剣にしたら忍者モノのノリですもんね。

荒「その通りです。(笑)『サスケ』とか好きでしたから」

エ「なぜ、スミレちゃんとかマユ毛が太いんですか?」

荒「太すぎますか?(笑)」

ふ「慣れるとかわいいんだけど、パッと初めて見た時は……」

エ「最初、飾りかと思った」

荒「60年代のメーキャップみたいのが好きなので、あのへんをちょこっとやってみた。(笑)ファッション・デザインの学校に 行っていたことがあるので」

ふ「ツリ目の人が好きだとか……」

荒「そう、ツリ目でね、くちびるはちょっと厚めがいいな。描いてはいませんけどね」

——ツリ目じゃないの、あのおばあちゃんぐらいですね。(笑)

小「バオーをどうして、寄生虫にしたんですか?」

ふ「あたしも聞きたかった! 気持ち悪〜いの!(笑)」

荒「あのへん、ちょっと不評だったかも……(笑)」

——でも、ホラー映画では、軍の機密とかなんとかでそういうのって、よくあるんですよ。

荒「リアリティーがあると思ったし……変身する理由がちゃちいと、迫力の面で違ってくると思うんですよ。こいつなら変身しかねないぞと、思わせるためには……」

エ「読んだ時、『サイボーグ009』みたいな感じがした♡」

——女の子の感想ですねえ。たしかに、自分のからだに秘密の力があって組織に追われる孤独なヒーローっていうのは、『009』、『ウルフガイ』、『キマイラ』なんかも、みんな共通の悲劇的な魅力を持ってますからね。そうそう、ここで読者の質問をちょっと……。“バオー”をとじこめた時に、ネペンテス液なんて入れずに水を入れてしまえば、バオーは眠ってしまったんじゃないんですか? というんですが……。

荒「それは、アシスタントからも指摘がありました。(笑)それはね、水を入れている間に、バオーだと扉をとかして脱出しちゃうわけ!」

一同「あっ、なるほどー!」

荒「霞の目は、ちゃんとそこまで考えていたわけ!」

——ボケてたんじゃなかったんですね。

ふ「生物とかはお好きだったんですか?得意科目だったとか……」

荒「そうかもしれません(笑)」

エ「じゃあ英語も? あれだけいろんなことばが出てくるから……」

荒「英語は——(笑)、あれは不得意だから、わざとむずかしくしてる」

ふ「○○フェノメノンとかいろいろ出てくるから、『試験に役立つマンガ』とか(笑)」

荒「あれ書いたら絶対に落ちます!」

エ「子供のころは、どんな子でした?やっぱりマンガ家にあこがれていましたか?」

荒「あんまりあこがれてなかったね。けっこう外で遊んでて、年上のガキ大将の後ろとかチョコチョコついて歩いてた」

——そういえば、同じ宮城の学校の後輩の人からもハガキ来てましたよ。

荒「あっ、ボク、宮城出身です。仙台です」

——寒さに強いそうですよ。

荒「寒さ強いです。夏は——仙台に逃げて帰ります」

エ「マンガ家になろうと思ったのは、いつごろですか?」

荒「デザイン学校入ってからかなあ。高校卒業してからデザイン学校入って、職がないんで、えらいとこに入った〜っと思って、マンガ家になろうと思って持ちこみをやった……」

エ「じゃあ、努力の人なんですね」

荒「努力というよりは……泣きつきです。(笑)お願いしまーすって……」

一同(笑)

ふ「やさしかったですか、編集さんは?」

荒「恐いです!(笑)」

小「でもホントに思ったわ、私。どうしてこんなお坊っちゃまみたいな人がマンガ家になったんだろうって(笑)」

——そうですか?

小「ジャンプでよく、新年号なんかで表紙で先生方の顔が出るでしょ。あれ見て、あーって思って……」

——そうそう、荒木先生は、バレンタインのチョコを、大きな箱に2つだか3つだか、ファンからもらうそうですよ。

一同「わ〜っ、すごい〜!」

荒「どうも、ありがとうございます」

小「キャラクターじゃなくて先生あてに? それはすごい!」

ふ「そういうチョコレートは、みんなどうしていますか?」

荒「全部、食べてます。返事もいくつか書いてます!」

——ああ、これもハガキでありましたけど、お正月にマンガ家やミュージシャンに年賀状を出したら、荒木先生からはお返事を、しかも早くもらえたって。

荒「(笑)ボクはマメです!」

——ファンは細かいとこ見てますね。

荒「週、1通か2通は返事を書いてんじゃないかな?」

——公認のファンクラブみたいなものはあるんですか?

荒「あります……あったかな?」

一同「ええ〜!?」

荒「いいよって、言ったかもしれないけど……」

ふ「『バオー』は、アニメ化の話とかないんですか?」

——う〜ん、ビデオアニメの話とかは耳にしますけど、はっきり決定したものはないですね。

荒「レコードの話は……」

——イメージ・レコードの話はあったんだけど、これは流れちゃいました。

荒「ありゃ残念でした」

エ「自分の作品のアニメ化なんてのは、見てみたいとか思いますか?」

荒「……見てみたいですね。うれしいとかいうのとはちょっと違うけど」

——声優さん、たいへんでしょうね(笑)。

ふ「実写版とかいうのは——はやりのスプラッタで……」

荒「ピキピキピキって(笑)」

ふ「でも気持ちわるそう(笑)」

小「そうしたら先生が主役だ!」

一同「あっ、似合いそ〜ッ!」

荒「やだよ(笑)」

——あっ、荒木先生は苦手なんですって。こう、バルバルってポーズとかとったりするの。

ふ「ポーズは、ほらJACとかスタントの人にやらせて、育朗の時だけ」

エ「ああいうの、海外で受けそう」

——台湾では『魔界訪客』ってコミックスになってますよ。

エ「そうじゃなくて、アメリカとか、もっとメジャーに……」

荒「ことばのギャップがなきゃいいんですけどね」

ふ「こういう英語は使わないとか言われたりして(笑)」

——それは恐い。よくアメリカとかの映画で変な日本語が使われるのといっしょですね。

荒「バオーとかビーティーってのも造ったことばですね。どーゆー名前にしようかと思って……発音で決めるんですね」

——じゃあ何かの略ではない?

荒「ぜんぜんない。ティーってのがいい響きするなあと思って、頭文字でいこうと思って——AT、BT、あっ、ビーティーでいこうと」

——それではそろそろおしまいですよ。早くジャンプで新連載が見れるように、みんなヨイショしましょーね!

一同「がんばって下さーい♡」 [1]

1994-2001

インタビュー記事⑥-ユリイカ 97年4月号- リアル脱出ゲームにハマッて以来放置していたブログをきまぐれで更新。 気づいたら20万アクセス超えてました。

ユリイカ1997年4月号の「特集 J-コミック'97 マンガ家が語るマンガの現在」より。 この企画では、荒木先生の他に楳図かずお、吉田戦車、伊藤潤二、安野モヨコら15人の漫画家のインタビュー・対談が掲載されています。 荒木先生のインタビュアーは精神科医の斎藤環氏。

進化する『ジョジョ』

―― 私は本業は精神科医なんですが、精神病理的な視点から語りうる漫画は、『エヴァンゲリオン』や吉田戦車などを筆頭に近年たいへん多いのです。これに対して荒木さんの作品は一種「過剰な健康さ」が特徴と言えるのではないか。ふつう健全なコミックというのは、人畜無害のつまらないものと相場が決まっているのに、荒木さんのものは健全性と個人的な表現衝動が他に例を見ないバランスを維持しているように思います。今回は荒木ファンの一人として、そのあたりの謎に迫りたいと考えています。まあそれは後のお楽しみということで、まずはデビュー当時のお話をお聞かせください。

荒木 出身は仙台です。二〇歳の頃にデビューしました。『魔少年ビーティー』という連載を仙台で描いていて、次の『バオー来訪者』の時、一九八四年のロスアンゼルスオリンピックの時に上京しました。ジャンプの『ジョジョの奇妙な冒険』(以下『ジョジョ』)は一九八七年から連載がはじまったんです。

―― デビューされて一六年、ことしは『ジョジョ』一〇周年ということになります。代表作である『ジョジョ』サーガは単一の作品というよりは、いろんなものを詰め込むための物語装置というか、世代ごとに受け継がれて別の作品になってゆきますね。現在の第五部に至っては、シリーズで共通する登場人物は広瀬康一くらいですし。

荒木 そうですね。読者が気に入らなければ、いつでもやめなければいけないという宿命がありまして。それでも、三部くらいまではある程度テーマみたいなものがあって、現代まで来ようと。主人公も、それはあまりなかったことなんですが、変えてゆこうと。そういうことをおぼろげには考えていたんですよね。

―― 物語が「ジョジョ」という血筋=固有名の連鎖で繋がっていく形式は、非常に新鮮でした。第五部の主人公「ジョルノ・ジョバァーナ」が、「ジョジョ」一族の宿敵「ディオ」の息子であるという設定のように、血筋の流れの中で、敵味方が渾然としてますね。

荒木 人間というのは良い人でも悪い人でも認め、賛美しよう、読者に元気を与えよう、そういうテーマから始まっているんです。そうすると血とか、生き方とかが重要になってくる。主人公を描く時に必ず、親の代とか、どういう境遇で育ってきてこの主人公が今あるかたちで存在しているのかということを確立し、固めていくんですよ。そういうところからやっていこうと思ったんです。

―― 最初の設定としてはだいたい三代目まで、つまり「空条承太郎」までですか。

荒木 あの辺は結構ストーリーの進行を急いでいるんですよね。三部までいくことはもうわかっているから。だけど、三部は最後だったし、これで終わりなのかなみたいな感じでやっていたんですけれど・・・・・・。描くことがガンガン出てくるというか・・・・・・。

―― 荒木さんにはあんまりスランプってないんじゃないですか。

荒木 人によって違うと思いますが、僕は割合に波が短いんですね。

―― 漫画家というと締め切り前にドリンク剤をガンガン飲んで徹夜して、みたいなイメージがあるんですけれど、荒木さんは割とクールに昼間に仕事時間を決めて、淡々と職人的にこなしてる感じがします。

荒木 するどいですね。その通りです。

―― 以前インタヴューで話されてますよね(JoJo6251「荒木飛呂彦の世界」所収)。日曜日に構想を練って、月火水とかけて描いて金土が取材。それが一〇年続いているわけで、なおかつマンネリにならないというのがすごく不思議なんです。いまだに絵柄まで進化し続けるということが、どうして可能なんでしょうか?

荒木 多分、反省じゃないでしょうか。読み返した時にちょっと違うなとか、他の作家さんの方がいいなぁとか。そうすると、やはりその点をちょっと変えていこうかと思っている。特に意図はしてないんですが。

―― 荒木さんでも他の作家の絵柄がいいとか、羨ましいとかあるんですか?

荒木 ありますね。ですが、クセがあったりして、なかなか自分の思う通りにはいかないんですけれど。

―― クセというか個性が強烈ですよね。面白いのは荒木さんの亜流ってあんまり見かけませんよね。たとえばひところ大友克洋の亜流っていっぱい出ましたけれども、荒木流って見たことない。

荒木 変化するから真似のしようがないかもしれないですね。

―― 絵柄だけ真似てもしょうがないし、セリフ回しや、めまぐるしい視点の切り替え、極端な構図やパースなどの総合されたものが荒木流ですから。亜流が出てこないというのは、そういう技術的な問題でもあるでしょうね。

荒木 絵もそうですが、ストーリー展開でも登場人物の視点が、私は自分ではずいぶん切り替わるなぁと思っているんです。そういう描き方じゃないとストーリーが進行しないというのもあるし。多分一回一九ページという制約のせいで、目まぐるしくならざるを得ない時はあるかもしれないですね。

―― それと時間の流れが独特ですよね。単線的には流れて行かない。手品的なトリックを多用されていて、時間が後戻りして実はこんなことをしていた、とか。まあ「スタンド」も実際に時を止めたり、戻したりできるわけだし。

荒木 一秒のことを綿密に描いたりするんです。登場人物が落ちていく間のことを、延々と描いて、落ちている間にここまで考えるか(笑)みたいな。

―― 第四部ラストの「吉良吉影」が死ぬところは、時間にして十五分くらいの出来事を、ほぼ単行本一冊を使って描いていますもんね。このあたりは漫画ならではの時間性ですね。  荒木さんの作品は、理詰めで明快な娯楽性といいますか、それこそSF的な意味で常に説明がきちんと出来ているじゃないですか。「スタンド」にしてもトリックにしても原理がきちっとしていないと気がすまないみたいな・・・・・・。

荒木 それはあります。幽霊や超常現象にしても、目に見えないものを描いていく場合、それが科学的であろうが漫画的であろうが、ちゃんとした原理がないと満足出来ない。それで「スタンド」みたいなものが生まれたんですよね。

―― あれはすごく斬新な感じがしましたね。あれに似たアイデアって見たことないんですけれど、なにかヒントはあったんですか?

荒木 いえ、それも「願い」から出て来たことですから。つまり超能力というのはただ念じたらバーンって割れる感じを、まぁ、何か出てきて叩けば読者はわかりやすいなと。ただそれだけなんですけれど。『うしろの百太郎』を読んで、守護霊なんかが出てきても、ただ出てくるだけで何もしない(笑)。パンチでも繰り出して、悪霊をやっつけてくれればいいのにと思っていて、そういう発想で出て来たことだと思うんですね。

―― 八〇年代初頭には、一方で大友克洋ブームがあって『童夢』のような、それこそ目に見えない超常現象をみんな描きたがる傾向があったじゃないですか。あれに対するアンチというものを多少意識されたところはあるんですか?

荒木 そうですね。超能力のわかりにくさというのをなんとかしてやろうというのはありましたね。でも大友先生の空間の描き方にはすごい勉強させていただきましたよ。コップの割れ方とかね。よく見て描いていくとちゃんとわかるんですよ、理論的に描いていて。ちゃんとこう、パズルみたいに破片をきっちり描くんですよね。水の散り方も、写真に撮ったりしてスローモーションを見て描いているんじゃないかと思うような、そういうのがすごい緻密で。好きで読んでいましたが、ただ超能力の部分がちょっとわからない、納得いかないんですね。じゃあ、わしらは叩きに行くんだ!みたいなね。そのへんが願いとして出てきたということなんだと思うんですね。

―― 独特のセリフ回しというのはいろいろなところで指摘されていると思うんですけど、翻訳調というか、翻訳ものを読んでるような感じを持つことがあるんですが、それは意図してやっておられるんですか。

荒木 いや、本を読んだ影響が残っているんじゃないかと思うんです。そういうふうに喋っている時もありますね。なりきっちゃってね(笑)。

―― 海外の小説はやっぱりキングがいちばんお好きなんですか?

荒木 そうですね。他のサスペンス系の作家をあまり読んでいないだけかもしれないですけれど。

―― 擬音についてはどうでしょう。あの一部で有名になったキスシーンの背景音がありますね、「ズキュウゥーン」という(笑)。キメの場面では必ず「バーン」とか「ドドドド」とか、独特の効果音が出てきますが、あれも内面からほとばしってくるわけですか。

荒木 何かリズムみたいなもので「このシーンにちょっと欲しい」とか。映画の影響だと思いますよ、やっぱり。たとえば殺人鬼が後ろに立つと急に音楽が鳴るじゃないですか。「キュンキュンキュンキュン」とか、「ズンズンズンズン」とかさ(笑)。なんなんだろうね、あれは。あれが欲しいんですよ。

―― やはり映画的に展開しようというのはありますか?

荒木 ありますね。視点とか、カメラの目で想像しながら描いたりしますもん。カメラがモノに寄っていったりするのがちょっと恐いなとか。何の変哲もない水の入ったグラスでも、ゆっくりとカメラが寄っていくと、毒が入っているんじゃないかなと思うじゃないですか。もちろん漫画の画面という制約はありますけど。

―― 映画はかなりお好きのようですね。

荒木 だいたい話題作は観ていますね。監督ではクリント・イーストウッド、コッポラ、デ・パルマ、スピルバーグあたりが好きですね。リンチやキューブリックは、僕はちょっと駄目なんです。もちろんいいところはあるんですが、自分のものとして採り入れようという気にはならない。

―― キャラクターもですが、ともかくスタンドの造形が見事だと思うんですよ。ウルトラマンをデザインした成田享さんが書いてますが、化け物をきちんと描くのは難しくて、かなり技術のある作家でも、化け物だけは奇形やせいぜいキメラ的な造形になりがちなんです。 荒木さんの描く化け物は、デザイン的な整合性もさることながら、ちゃんと健康で自律した生命を持っていますね。だからぜんぜんグロテスクには感じられない。

荒木 グロテスクなものは、もしかしたら描けないかもしれない。まあ作品中でもあまり残酷なシーンは描いていないと思います。例え血まみれになるような場合でも、出血はあまりリアルじゃなくデザインするし。ただスタンドの造形にはそんなに苦労しないですね。民芸品や人形の使えそうな部分をちょっとずつ持ってきたりして。それにスタンドの能力を加味して考えます。

―― 「エコーズ(広瀬康一のスタンド)」なんかも無造作に出てきた感じですか?ちょっと工夫した感じもしますが。

荒木 「エコーズ」はちょっと考えたかもしれない。はじめて成長するタイプのキャラクターを試したので。スタンドも卵から孵って変化するという。

―― 広瀬康一は好きなキャラクターなんですよ。

荒木 まあ彼の運命いかんで再登場となるかもしれませんね。でも本当にあまり計算はしていないですね。一見計算しているように思われるみたいですが。ストーリーの計算も最初の頃はやっていたんですが、ある時ね、なんか日記みたいにして描いていてもいいんじゃないかなって、今日思ったことを綴っていこうかなという気になったことがあるんですよね。ただ、方向性をはっきりさせているんで。

―― 過去のキャラクターにはあまり思い入れはない?

荒木 考えもしませんね。別れた友達みたいな感じで、懐かしいなというだけで。次の週のことで頭がいっぱいで忘れるんですよ。この世界は振り返っている暇がないんじゃないかな。

―― 以前、寺沢武一さんが荒木さんのことを、最後までストーリーを練ってから描くタイプだと解説されていましたが。

荒木 いや、それはもうないです。もう来週のストーリーがわからないですから。『バオー』や『ジョジョ』の第一部の頃はそうでしたが、それをやっていると持たない。  ただキャラクターに対して明確なイメージがあれば、その人の「運命」で行くんです。人と同じで、動かざるを得ないというか。主人公の動機付けがはっきりしていれば、こういう気持ちだからこう行く、というのは必然的に決まってきます。

―― その辺がスランプのなさというものにつながるんでしょうかねぇ。

荒木 いや、スランプはありますよ(笑)。

―― ないと言い切ってしまうのも問題でしょうけれど、ほかの方との比較で。漫画家も絵が上達するにつれて、どんどんイラスト的な比重が高くなって、物語を動かせなくなってしまうというパターンもあると思うんですが、荒木さんの場合、全然それがないですね。絵柄の変化と物語の進行が相互に加速し合っている。このテンションで一〇年続いている漫画って他にありましたっけ? 『ジャンプ』でも『こち亀』が二〇年で、『ドラゴンボール』が一〇年ぐらいでしたか。ただ『ドラゴンボール』ですらパターンの反復は避けられなかった。トーナメント方式で、どんどん強い敵が現われていく。荒木さんは、こういうトーナメント方式に対して、疑問を持っているように思うんですが。

荒木 バブル的だなと思うんですよ。あの後どうするのかなと不安になるというか、自分がそれをやれと言われる時は、えーっと思うんですよ。トーナメントは完全に否定しているところはありますからね。

―― 『ジョジョ』に関しては、どうもトーナメント式に誤解されている方がずいぶんいるみたいなんです。批評家までがちゃんと読まないで、あれはトーナメントだと断言したりするのは本当に残念です。物語が何部かに分かれているところや、あとスタンドの能力が一つしかないということで、強さよりも質で差別していますよね。こういう設定によって強敵のインフレーションを防ぐという意図はあったわけですか。

荒木 トーナメント方式は読者には受けるので、編集者がやっぱりやろうか、と言う時もあるんです。でもその時は「うーん。でもこの敵が終わったら、その時僕はどうすればいいんですか?」みたいなね。実は、第四部の杜王町の時に、これで終わりかな、と思ったことがあったんです。また違う漫画を描かなきゃいけないのかなぁと。ところが、編集部が「休みは駄目だよ」と言うから(笑)。それで仕方なく、無理やりキャラクターを作って始めましたが、でも描いているとキャラクターに情が移ってきて。

―― 広瀬康一がうまくバトンタッチをしたという感じで、読んでいるほうは何も違和感というか、本当に作為が感じられなかったですよ。

荒木 あそこは結構作ったなと自分では思っています。でもだんだんキャラクターに入っていくところから、そういう感じがなくなるのかな。

少年漫画の王道

―― 荒木さんはいろんな意味で、漫画の王道を行っている感じがしますね。

荒木 でも勘違いされて、マイナー系の人だなと思われているところもあるんです。自分では昔からある少年漫画の精神を受け継いでいるつもりなんですが。

―― それは本当にそうですね。要するに漫画の批評が荒木さんの作品について語る言葉を持っていない。私は今日、それを力説したくて来たようなものなんですけれど。これはあきらかに不当な過小評価だと思います。初期のころは「セリフや擬音が面白い」とか、そういう些細なところで持ち上げておいて、いまやマンネリとか言ってますけど、私はテンションはかえって高まっていると思います。実験性が目につかないせいでしょうかね。わかり易い実験をしないというか。いまのところ、正当な評価と思われるのは宅八郎の批評(『イカす!おたく天国』所収)だけですね(笑)。

荒木 読者が『ジャンプ』の読者ですから。そういうのに鍛えられているせいなのかもしれないですね。でも何かそれも過大評価じゃないかという(笑)。

―― いや、この王道を行きながら実験的であるというのはすごく稀有なことで、現在のあまりにも不当な評価を多少なりとも逆転させようという使命感を持って、今日は来たようなものです。  荒木さんの作品は生命賛歌といいますか、健全というのともちょっと違いますが、すごく健康的なんですよね。私は一方では吉田戦車の漫画について語ったりもしているんですが、あれはいろんな意味で病理的に語れるところがあって、逆に語り易いんですよ。ああいう漫画はどう思われます?

荒木 好きですね。ああいう人間の病的な部分をえぐり出す感じも面白いですよね。ああいう漫画を読んでアイデアが浮かんだりするけれども、僕の漫画のテーマの根本は、人間を賛美しようというところにあるんで、ちょっとそこに視点を移しちゃうだけなんですよね。ただ、僕の漫画も裏返せばああいう漫画になるとは思いますが。  前の編集者には、「もっと人間の悲しさを描こうよ」とかいうことも言われたんですよ。そうすると、うーん、描けないなという時があるんですよね。「わしの資質が違うかもしれん」とかね。そういう時はやっばり悩みます。描いてみたいと思うんですよね。  小説でいうとS・キングのホラーとか、ああいう”生まれてきた悲しさ”みたいなのもやっばり「人間賛歌」だと思うんですよ。だけど、それはちょっとなかなか行けない。だから、そこを中心に語ってしまうとへボな作家だなみたいな感じだと思うんですよね。あまりそこに焦点がいくとね。映画でいうと『セブン』のように地獄に突き落として終わるようなみたいな、あのへんは行けないと思いますね。どこかで救ってしまうんですよね、わしは。でもああいうのもいいんですよね。いいと思うんですよ。いずれは挑戦しようかなと、テーマがビシッと合った時にトライしてみたいとは思うんですが。

―― 第四部というのは少し流れが変わってサイコパスものというか、『羊たちの沈黙』とか『セブン』とか、あの辺のテイス トがちょっとあるんですね。

荒木 そうですね。時代ですかね。『ジョジョ』の第三部あたりは神話的なストーリーの様相があったんですけれど、四部あたりで少し日常のものに移ってきたというので、主人公がそういうふうになったんですよね。

―― それは積極的に採り入れた感じですか。それとも日常を描こうとしたら、必然的にそうなったという感じですか?

荒木 そうですね。宮崎の事件とか、ああいう感じで。敵の象徴が何かなと考えた時に、ディオもいろんなものの象徴として描いているんですけれど、やはり日常の、隣に住んでいる人が何をしているかわからないというのがいちばん恐いなと思ったので。で、いまの第五部の敵は内部にいる、自分の上司が敵ということになります。これは自分を守ってくれるはずの政治家や警官が敵かもしれないという意識に重なりますね。

―― 第四部の「杜王町」は例外として、あまり世界が箱庭的にならないようにということは考えますか?オタク的な閉じた空間のなかで敵が出てくると、それこそトーナメントみたいになってしまうということで。

荒木 必要とあればそれもやらないことはないと思います。でも一週間で描いている時は、本当にここだけなんですよ。一秒のあいだだけ、この空間だけでどういう攻防があるんだろうなということを考えています。そういう感じですので描いてる時は狭いですよね。あとから見るとその世界はでかくなっていますけれど。  それと毎週アイデアは一個しか出さないというのがあって、ニ個出すと読者はわからなくなるというのがあるんですよ。描くことは一個だという漫画の描き方があるんです。編集者がそういうことを言うんですよね。アイデアが二個あると、編集者は「そんなに考える必要はない」「ニ個あると駄目だよ、読者はどっちを読んでいいのかわからないだろ」と。一個でいい。

一個を照れずに描き切ると。「こういう照れたようなコマは駄目だよ」とか、あるんですよ(笑)。あえてやるんだと勇気づけられますね。こっちがちょっと不安になってくるところを「大丈夫だから」とかね。そういう編集者の言葉は大きいですね。

―― 血筋の話ですから家族が出てくるわけですが、だいたい父親が死んでしまったりとか、ヨボヨボになっちゃったりしますよね。女性を守るためといっても、それは母親を守るため、助けるために闘う場合が多いようですが、この辺も一種の健全さとして受け取ってしまうんですけれど。

荒木 うーん。読者がこれはちょっと変だなと思うようなことは避けようとすると、どうしてもそうなってしまうというか。恋人を守るためだったら、ちょっと気高くないかなという・・・・・・。もうちょっと欲望の部分、自分の損得の感じが入っていたりするけれど、それがちゃんと愛になるまでいろいろ描かなけりゃいけないですよね。だけどお母さんとか肉親だったら何の動機もいらないと思うんです。女性を守ったりすると違う話になってしまうんですよ。なぜその女性を守らなければいけないのかの話を描かなければいけなくなってしまう。話がずれていってしまうんですね。まあ女の子があまり描けないというのもありますが。何度か試してはみたんですけどね。  闘いの漫画を描きたいのに、読者はそれまでに我慢しなければいけないわけですよ。熱心な読者は読んでくれるかもしれないですけれど、『ジャンプ』の読者は闘いが見たいのに、そんなところを延々と描かれていたんじゃ……。だったらお母さんにして、そこのところはパーンと流すというやり方というのはあると思うんですよね、打ち合わせの時にまどろっこしいやり方は却下したりとかね。だからパズル的な作り方の時もありますね。ここにこうはまるとか、それは駄目だなぁとか。ここでちょっとあいつを助けようかとか、そんなのはかったるくないですかとか。ジェームズ・キャメロンのようにゴーンと行かなきゃ駄目だという時があるんですよ。キャメロンは骨太に行くところが好きですね。余計なところはあまり描きませんよね。でも背後に物語がある。

―― 実写映画が撮れたらなと思うことはありますか?

荒木 自分で撮れたらなという希望はありませんが、映画というのは芸術としてすぐれた伝達方法なんだなと思う時はありますね。映画は認めて尊敬してます。でも漫画が映画みたいな芸術になるのかなというところは疑問があったりもしますけれども。アニメはあんまり眼中にないし。

―― 加藤幹郎という評論家が、寺沢さんとか荒木さんなどの漫画を総称して、マニエリスム、つまりきわめて高度な技術で絢爛たる引用をちりばめた漫画だと指摘していますが、それは意図的になさっていることなんですか?

荒木 そうならざるを得ないというところですね。

―― 引用はされるけれどパロディはあまりされませんよね。シリアスなタッチでもアニメ的なおちゃらけがないといいますか。

荒木 あの、多少馬鹿馬鹿しいと思っても、照れずにやるというのは基本なんですよ。ちょっと照れはあるんだけれど、そこを突き破っていくんですよ。そういうテクニックってあるんですよ。あえてやる!みたいな(笑)。決心がいるんですよね、あれはね。

―― やっばりおちゃらけてしまいたいという誘惑はあるんですか。

荒木 ははは。あるんですよ。描いていてちょっと、なんかやばいんじゃないかなと思うこともあるけれど、それを見抜かれると読者がしらけるから。でもあれもジャンプの伝統なんですよね。車田正美先生とか、なんでここまでノレるかなという、すごい人がいますからね。

―― あれは『ジャンプ』ならではという感じですよねぇ。

荒木 よく考えると、なんで宇宙に飛んでいくみたいなね(笑)。だけど、完全に読者の上をいってしまうから、ああーってなると思うんですよね。

―― ちなみに技の名前を叫ぶのは車田正美先生ですね。

荒木 ですね(笑)。

―― 車田先生はパンチシーンの構図はだいたいいつも一緒でしたけれど、荒木さんはその辺は描き分けておられますよね。

荒木 だんだん時代も進化してくるわけですからね。うん。だから僕の漫画はやはり伝統に則っていると思います。

―― 最近こいつはいいと注目しておられる漫画家の方はいますか?

荒木 うーん。いっばいいるけれども認められないなという部分もあったりとか。オタク系の漫画家というのは、ちょっと理解できないけれども、うまいとは言わないけれども、やっばり独特の魅力があるのかなと思うんですよ。みんな熱狂的にその絵がいいといって支持しているわけでしょう。だけど自分にはわからない部分もあったりして。なんでこうペラペラに描いていいのかなとかね。同じ顔ばっかりでいいのかなとか。  望月峯太郎さんは好きですね。『ドラゴンへッド』は読んでます。『バタアシ金魚』はよく判らなかったけど、『座敷女』のころからいいなと思い始めて。『ジャンプ』では、うすた京介『すごいよ!マサルさん』。あとあの『カイジ』の福本伸行さん(『ヤングマガジン』連載)。『カイジ』はわし好みじゃないですか、そんな感じしませんか。絵はちばてつやを記号にしたみたいな感じで、そんなにうまくないけど。あれはいいんですよ。去年燃えたのはあれですね。本屋に走っていったのは久々ですね。

―― 今日のお話を聞いてますます確信しました。やっばり我々がすごいと思っている部分を全部軽い気持ちで出しておられるというのがわかりましたので(笑)。これはもう天才性の証ということで。

荒木 天才じゃないですけどね(笑)。でもあまり重要じゃないと思うんですけどね。

―― 我々の見方も間違っているのかもしれませんけれど、でも他の漫画と違うところに目がいってしまうんです。意図して違わせてるのかなと思うと、そうでもないわけですよね。自然に出てくるもので。

荒木 それしか行けないですね。

―― そのノリで今後も一〇年、二〇年と。

荒木 わかりました。頑張らせていただきます。つらいですけど(笑)。 [6]

2002-2009

エジプトを目指す旅にしたのはどうして?  当時の担当が、エジプトにものすごく詳しかったんですよ。エジプトの古文書とか遺跡とかの文字も読めるくらい。「これはいい!」と。それと、やっぱりエジプトって神秘的な感じがしたからですね。最終目的地はエジプトというのを先に決めて、それからルートを決めていきました。『スターダスト・クルセイダース』の後に、『電波少年』で猿岩石が旅したルートも大体同じでしたね。だから、間違ってはいなかったのかな?取材でエジプトやアジアの国なんかにも行ったけど、あまり好きじゃあないんです(笑)。マンガにも描きましたけど、エジプト人は見るからに怪しいし。ホントにスタンド使いみたいでした(笑)。  う~ん、好きな国はやっぱりイタリアなんですよ。イタリアにさえ行ければ、他の国にはもう金輪際、行けなくてもいいくらいです。イタリアは、やっぱり美術館にいけるのがいいんです。印刷物とは違って、有名な絵画の実物がある!これは何度でも足を運ぶ価値がありますね。他の人が、演劇とかに行くのと同じ感覚だと思います。でも演劇は、そのときどきに違ったりするけど、美術館はもう、絵画の究極の姿があるわけだから、何度でも行きたくなります。ダ・ヴィンチとか、ロダンとかが好きですね。  よく自分の絵柄は独特だといわれるんですけど、自分からすると基本に忠実な絵だと思っています。ルネッサンスが絵画のオリジナルですから、僕はそれに忠実に描いているだけです。自分からすると、他のマンガ家さんのほうが異端だなぁと思いますね。

どうして承太郎を学ランにしようと思ったのか?  何度も行ってますけど、やはり『バビル2世』のイメージが強い。学生服で砂漠に立っているというインパクト。今考えても、『バビル2世』のあのコマはすごい。もしあの絵をリトグラフとかで売ってるんだったら、ぜひとも部屋に飾りたいですね。日常と非日常が同時に存在している、というところがいいんですよ。  承太郎のは、普通の学生服だとつまらないんで、いろいろアクセサリーを付けたりしてみました。ホントはあんな学生服ありませんけどね。僕も中学高校は学ランでした。でも、承太郎みたいなあんな長ランは着てません(笑)。

ジョセフはどうして連続登場した?  ジョセフは第2部『戦闘潮流』との橋渡し役なんですよ。毎回、部が変わるごとに、橋渡し役と出すようにしています。『戦闘潮流』の頭にはスピードワゴン、そしてジョセフ、承太郎、康一・・・というようにね。それに、ジョースター家は短命で、一生涯一人の女性しか愛さないと言われてるけど、ジョセフだけは例外だという設定にもしたかったんですよ。性格的にもジョースター家の中では異端ですしね。

アブドゥルはいったいどんな役割?  アブドゥルは参謀役ですね。本当は、一番年のいったジョセフがそんな役回りをやるんだろうけど、ジョセフの性格じゃあできないだろうと思ったから登場させました。スタンドという新しい概念も登場させたので、スタンドの事について詳しい解説役でもあります。

花京院の死の直前に生い立ちが明らかになったのは?  花京院には戦う動機というのを、ちゃんと考えてあげたかった。花京院が仲間になってからずっと、それは考えていたんですよ。承太郎、ジョセフはホリィを助けるためだし、ポルナレフは妹の件があったりする。でも花京院には何もなかったから、その理由をつけてやりたかった。命を賭けてまで戦う理由を・・・死ぬ間際にそれを描く事が出来てよかったです。このことは、第5部『黄金の風』の仲間たちも同じなんですよ。ブチャラティやナランチャたちの戦う理由をちゃんとつけてあげたかった。だから、それぞれ過去の話、どうしてギャングになったのかをちゃんと考えたんです。

ポルナレフは『黄金の風』に登場すると思っていた?  まずポルナレフは、承太郎と対称的なキャラクターにしたかったんですよ。承太郎はクールでどっしり構えていて、あまり走らせたりもしないと決めていたので、走りまくる、直情的なキャラクターが欲しかった。静と動ですね。ポルナレフは、かなり描いてて楽しかったし、動かしやすかったですね。だから結果的に、かなり活躍してます。あと、髪形もよかった。他の仲間たちがぺしゃんこな頭ばかりだったので、コマの中にポルナレフがいるとメリハリも効いて絵になるんですよ。『スターダスト・クルセイダース』が終って、第4部『ダイヤモンドは砕けない』になってから、ポルナレフはどうしているのという読者からのはがきがとても多かったんです。だから『黄金の風』ではポルナレフが『スターダスト・クルセイダース』の後、どうしているかも描く意味で登場させました。承太郎と同じように、彼も戦っていたんだよ、というのを描いてあげたかった。

犬をどうしてスタンド使いに?  僕は、弱そうなヤツが実は強いというのが好きなんですね、基本的に。ちっちゃくてブサイクな犬が強いというのは面白いんじゃないか?と思って、イギーを登場させました。助っ人として現れて、人間だったら普通じゃないですか。それが犬だったら面白いな、とも思いましたね。『ダイヤモンドは砕けない』では、さらにそこにこだわりました。本体は弱そうでも、スタンドは強い。ドブネズミのスタンドとか、重ちーとかもそうですね。

ホル・ホースを仲間にする気はあった?  ホル・ホースは、仲間にしようかと思ったりもしました。でも、仲間になるヤツばっかりだと面白くないなと思い直して・・・仲間になりそうでならないヤツがいてもいいんじゃないかと。ホル・ホースの性格を考えると、仲間にはならないですよ。けっこういいかげんな性格で、あっちへふらふらこっちへふらふら。コウモリみたいなヤツ。でも、ホル・ホースはもっと登場させたかったですね。ポルナレフと同じくらい、動かしやすいキャラだったし、描いてて面白かった。あと何回か、登場させてあげたかったですね。

DIOはいったいどんな存在?  『ファントムブラッド』の頃から、3部構成で・・・ということは考えていて「3部の最後はDIOを倒すんだろう」とは漠然と思っていたんですよ。『警察署長』というTVドラマにもなった小説があって、代々警察署長の家系の話なんですよ。それでも、最初におきた事件を子孫が解決したりしている。それをやりたかったんです。善のジョースター家に対して、シリーズ全て通して悪の存在がDIO。圧倒的な悪。『スターダスト・クルセイダース』でDIOは倒されましたけど、その後の物語でも、DIOの悪の精神は残っていて・・・ジョースター家は代々、その邪悪な精神と戦っているんです。『ストーン・オーシャン』でも、DIOは出てきませんが、DIOが残した邪悪な精神と徐倫は戦っています。DIOを描く時は、いつも気合が入りましたね。DIOが出てくると、雰囲気もなんか変わるんですよね。マンガの中の空気がこう、張りつめるというか・・・。生き物本来の弱肉強食の世界からすると、DIOのやってることは正しいことなんです。人間が生き延びていきやすくするために作った 、社会の常識ということからは外れてますけどね。弱肉強食の世界から考えると、DIOは普通の行動をしている。DIOを描く時は、自分もDIOの気持ちになってます。・・・こんなこというと、反社会的だっていわれるかもしれないけど、ある意味DIOは自分の憧れの存在です(笑)。[9]

2010-2017

第1回 「杜王町」と仙台市との関係は? 2011.2.14 聞き手: この「私の広瀬川インタビュー」では、 仙台や広瀬川にゆかりのある著名人に出演いただくことで、 多くの方に広瀬川をはじめとする仙台の魅力を 知っていただきたいと考えています。 今日は、仙台市出身のマンガ家で 「ジョジョの奇妙な冒険」(以下「ジョジョ」)の 作者・荒木飛呂彦さんに出演いただきました。 どうぞよろしくお願いします。

荒木さん: こちらこそ、よろしくお願いします。

荒木さん 聞き手: 早速ですが、先生の作品にはデビュー当時から 仙台に縁のある地名や人名などが数多く登場しており、 私たち仙台市民は大変嬉しく思っています。 特に「ジョジョ」第四部「ダイヤモンドは砕けない」編では、 「杜王町」という日本の架空都市が舞台となっていますが、 実際に仙台にある地名やお店なども登場しており、 ファンの皆さんから、仙台市が「ジョジョ」作品の 「聖地」の一つとも思われているようです。 そこでまずは杜王町と仙台との関連について 教えていただけますか。

荒木さん: 仙台は自分が生まれ育った街なので、 なじみ深いというか、描きやすいんですね。 作品上の架空の街とはいえ、 自分の体験を下敷きにして作品に描くことは基本ですし、 何よりリアリティが出るので。

聞き手: 第四部の主要人物の一人として登場するマンガ家の 「岸辺露伴」は、読者から先生と 同一視されるむきもあるようですが、 やはり作品でもリアリティを重視していることが窺えます。

	「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第34巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第34巻>

荒木さん: 露伴は僕自身ではないですよ(笑)。 ただ、リアリティは欲しいですが、 あいにく第四部では殺人鬼が出てきますので、 仙台をその舞台とするのはさすがにどうかなと思い、 市民の皆さんになるべくご迷惑がかからないように 「杜王町」という架空の街を作らせていただいた、 という次第です。

	「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第36巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第36巻>

聞き手: 最近では、仙台市も物騒になりまして、 映画化もされた仙台市在住の作家・伊坂幸太郎さんの 「ゴールデンスランバー」の作中で、 仙台出身の首相が暗殺される時代です。 ちなみに暗殺シーン撮影時には、 エキストラとしてたくさんの市民の皆さんから 協力いただいたので、 今だったらそうしたご心配をされなくても 大丈夫かもしれませんが。

	せんだい旅日和「ゴールデンスランバーロケ地紹介」

(c)せんだい・宮城フィルムコミッション <参考 「せんだい旅日和『ゴールデンスランバーロケ地紹介』」>

荒木さん: 連載時(注:第四部の連載は1992年~1995年)は S市というのが仙台市で、 杜王町はその郊外の街という設定で、 仙台市そのものが舞台ではなかったんです。

聞き手: 近年では、その杜王町も人口が増えて、 S市「杜王区」に昇格したそうですね。

荒木さん: ええ、S市内に取り込まれる形で合併したようです(笑)。

聞き手: 杜王町の地形的なモデルとしては、 岩手県の宮古市ではないか、という話がファンの間で されているそうです。

荒木さん: 地理的にイメージしたのは、宮城県の松島の北、 東松島市のあたりです。 ただ、ベッドタウンとしての街のイメージは、 当時開発が進んでいた泉市(注:昭和63年より仙台市泉区) や宮城野区鶴ヶ谷ニュータウンなどを参考にしていました。

	「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第29巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第29巻>

聞き手: なるほど。 そうした当時のニュータウン開発の様子が 作品に反映されているんですね。

荒木さん: 当時は東北学院高校榴ヶ岡校舎に通学していましたが、 毎日のように風景が変わっていくんですよ。 もう道路が急にバーン!とできたりして、 その変化がショッキングでしたね。 そんな体験がいくらかは反映されているかもしれない。

聞き手: 先生が仙台にお住いだった頃の仙台は、 日本の経済成長に合わせて街も 大きく姿を変えていく時代の真っ只中だったと思いますが、 その一方で、まだ戦後の面影を残したような ミステリアスなところがあったと伺いました。

荒木さん: ありましたね。あの、広瀬川には関係ないですけど(笑)、 子供の頃に小松島や与平衛沼のあたりで よく遊んでいたんです。 そこには防空壕跡みたいな所があって、 住み付いていた方がいました。 その方は、実は浮浪者ではなく、 昔大金持ちで、その財産が隠されているという 埋蔵金の噂があったんですよ。

聞き手: 先生ご自身も探しに行かれたのですか?

荒木さん: 当然行きましたよ! まあ、噂話だったと思いますが(笑)、 それが妙なリアリティがあって、子供心に 実際に何かあるのではないかと感じさせられるんです、 本当に。 その方にも知的な雰囲気があって、 英語でしゃべったりして、一体何者なんだ?みたいな(笑)。

聞き手:「ジョジョ」の作中に出てきたりするような…

荒木さん: そうそう。世捨て人だけど、過去に何かあったんだろうな、 という雰囲気があって、埋蔵金の話も、 まんざら噂でもないって思わせられる…

第2回 初めて覚えた言葉は「どざえもん」!? 子供時代の思い出 2011.2.15 聞き手

そんなミステリアスな雰囲気が漂っていた一方で、 どんどん宅地開発が進むという ちょうど時代の変わり目だったのかもしれません。 子供の頃に広瀬川で遊ばれたことはありましたか。

荒木さん

父が若林の生まれで、幼少の頃は若林区に住んでいました。 宮城刑務所の傍で、 その刑務所がまたミステリアスなんですけど(笑)。 ずっと、塀の向こうはどうなっているんだろう? と思いながら育ちました。

聞き手

そうした生い立ちから「ジョジョ」は 生まれるべくして生まれたような気がします。 ちなみに宮城刑務所は、 政宗公が隠居後に過ごした若林城跡に建てられており、 堀には広瀬川から取水した水が流れています。


六郷堀七郷堀非潅がい期通水事業

<参考 六郷堀七郷堀非潅がい期通水事業>

荒木さん

広瀬川は当時住んでいたところからも近かったので、 よく遊びに行っていましたよ。 毎年7月1日にアユ釣りの解禁日には、 父に連れられて一緒に胴長をはいて釣りにいっていましたし。


広瀬川でのアユ釣り風景

<参考 広瀬川でのアユ釣り風景>

聞き手

先生が胴長をはいて川に入っているところは、 想像し難いですが、広瀬川は幼い頃から 身近な存在だったんですね。

荒木さん

実は子供の時に、最初に覚えた言葉が 「どざえもん」なんです(笑)。 今は広瀬川に対して、 皆さんきれいなイメージしかないと思いますが、 当時は犬の死体とか流れてくることもあって、 周りの大人たちから 「どざえもんになるから、川に行く時は気ぃつけなよ」 と言い聞かせられていたみたい。 昔はそうした危険に対して、 地域のお年寄りたちの目配りもあったんですね。

	荒木さん

聞き手

子供が初めて覚える言葉としては、 かなりショッキングな言葉ですが。

荒木さん

川でどうやって遊ぶかを教えてくれていたのだと思います。 川遊びは自己責任だから、自分自身で気を付けないと ダメなんだよ、ということで。

聞き手

当時はまだ水難事故で亡くなる方が少なくない時代ですよね。

荒木さん

何か事故があると今だとすぐ行政が責められがちですが、 当時の川遊びなどは自己責任でしたね。 あと、南蒲生浄化センターができる前には あの辺や河口の閖上のあたりで泳いだり、 キャンプをしたりしました。 それと秋にはもっと上流で芋煮会が定番でしたね。

聞き手

杜王町編には出てきませんが、 先生も芋煮会はよくされていましたか。

荒木さん

もちろんですよ!やはり父に連れられて二口渓谷や 奥新川などへ行ってやっていました。


広瀬川100選 奥新川ライン

<参考 広瀬川100選 奥新川ライン>


父はアユ釣りだけでなく、 雉撃ちやきのこ狩りなどもやっていましたので。


広瀬川宮沢緑地周辺の雉

<参考 広瀬川宮沢緑地周辺の雉>

聞き手

広瀬川の近くにお住まいの方は、 狩猟民族の血が流れているかもしれないですね。 この広瀬川ホームページで今年取材させていただいた 大年寺山のふもとでハチミツつくりをされている方も 冬になると狩りに行くそうですし、 以前奥新川で芋煮会の企画でお世話になった方も 渓流釣りやきのこに通暁されていましたし。


広瀬川ライフ入門vol.5

<参考 広瀬川ライフ入門vol.5>

荒木さん

きのこは難しいですよね。 同じ種類でも宮城県で食べられるのに、 お隣の福島県では毒を持っているものもあるそうですね。 あと、仙台の人は東京に行っても、 芋煮会の話題で盛り上がりますよね。 「芋煮会してた?」 「河原でやるんだよね」って。 でも、東京の人と話すと「それってバーベキューのこと?」 と聞かれますが、 「いや違う違う、芋煮会では煮るんだよ、 河原で肉は焼かないよね~」みたいな(笑)。

聞き手

仙台出身者同士だと芋煮会って言うだけで すぐ分かり合えたりしますよね。

荒木さん

そうなんですよ。いや~芋煮会はいいですよね。 いろんな人とコミュニケーションできたり、 河原で家族の輪とか確認できたりして。


牛越橋上流河川敷での芋煮会の様子

<参考 牛越橋上流河川敷での芋煮会の様子>

聞き手

「芋煮会」と聞くともうそれだけで仙台のことを 思い出したり、故郷に帰ってきたな、 と実感できたりしますよね。

荒木さん

そうそう。今頃もまだやっていますか。

聞き手

牛越橋の上流が広瀬川での芋煮会の聖地となっていて、 学生さんが中心ですが、天気の良い日は 朝から場所とりしたりしているそうです。 そろそろ寒くなってきたので、 もう下火になってきているようですが、 つい先日もここから見えるあの米ヶ袋の河原で やっていました。


米ヶ袋河川敷での芋煮会の様子

<参考 米ヶ袋河川敷での芋煮会の様子>

荒木さん

そうなんですか。今の学生さんはバーベキューですか?

聞き手

メインはやはり芋煮だと思います。

荒木さん

ですよね。よかった(笑)。

第3回 広瀬康一君の由来は? 2011.2.16 聞き手

「ジョジョ」第四部には、語り部として「広瀬康一」君 というキャラクターが重要人物として登場します。 こうしたキャラクターに「広瀬」と名付けられた 先生の意図は、広瀬川を仙台のシンボルとして 考えられてのことなのでしょうか?

	「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第32巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第32巻>

荒木さん

やっぱり「広瀬川」を出さないわけには いかないじゃないですか! 杜王町は仙台市ではないですが。 さとう宗幸さんの大ヒット曲もありますし、 広瀬康一君は仙台のシンボル・広瀬川から、 それしかないですよ。

聞き手

ありがとうございます。 仙台市に住む「ジョジョ」ファンにとって、 とても嬉しい話です。 以前広瀬川沿いに「河童」の銅像を市民の寄付で建立しよう という企画があったようですが、 「ジョジョ」ファンだったら広瀬康一君の銅像を 建てたいと思うでしょうね。 では、仙台を離れた今、懐かしく思う場所や、 今でもよく立ち寄る場所などはありますか?

荒木さん

少年時代に遊んだ小松島の方には今でも行きますよ。 昔からあんまり変わっていないですよね。 与兵衛沼周辺も公園区域として自然が残されていたりして、 いいですね。 あと台原森林公園や東北薬科大学側の瞑想の松とか。

	台原森林公園

<参考 杜の都緑の名所100選 台原森林公園>

	瞑想の松

<杜の都緑の名所100選 瞑想の松 撮影 高橋政吉>

聞き手

懐かしい場所を訪ねて足を運ばれるのでしょうか?

荒木さん

本当によくあの辺で遊んでいたので。 そうですね、いいことも悪いことも いろんな思い出があります。

聞き手

「動物の足跡を追っていろいろ訪ね歩くのが 好きな少年時代だった」というお話も伺いました。

	足跡

荒木さん

先程の埋蔵金探しではないのですが、 いろんなものを追跡するのが好きで、今でも動物の足跡とか、 すごく興味があります。

聞き手

今年は熊の餌となるナラの実が不作で、 人里までよく熊が降りてくるそうですが、熊の足跡なども…

荒木さん

仙台でも熊が降りて来るんですか? 水溜りのそばとかに爪で引っ掻いた跡があると、 背筋がぞっとしますよ。 「ほんとに、ここに居るんだ、通ったんだ」って。

聞き手

ところで、今年(注:2011年)でデビューから30周年と伺っています。 1987年の「ジョジョ」連載開始からは24年が経ち、 その間に日本を取り巻く社会情勢も 大きく変化したと思います。 連載で仙台を離れられてから、 昔と比べて現在の仙台をどうご覧になりますか。

荒木さん

そうですね、昔の御屋敷のような建物が 無くなっちゃいましたね。 それと、いい喫茶店も無くなってしまって ちょっと寂しいです。 街自体はきれいになって、住みやすくなったとは思いますが。

聞き手

戦後の面影を残したミステリアスな雰囲気は、 市街地整備が進んでなくなってしまったかもしれません。

荒木さん

でも、さっきタクシーの運転手さんが話されていましたが、 昨日雪が降る前に現れるというユキムシが 舞っていたそうですよ。 それも市内で出ていたそうですが、 そうした自然が身近に感じられることは 素晴らしいなと思います。

聞き手

子供の頃の「どざえもん」が流れて来ていた時代や 高度経済成長期の公害問題などを経て、 自然環境を大切にしなければという意識の高まりから、 自然との共生が回復しつつあるという感じでしょうか。

荒木さん

そう考えると仙台はこの街の規模がいいんですよね。

聞き手

コンパクトでちょうど良い街のサイズなのかもしれません。

荒木さん

そうですね。歩いて回るにしても、 電車やバスを使うにしても、ちょうど良い距離で どこへ行くにしても移動しやすい。

聞き手

車は運転なさらないのですか。

荒木さん

なぜか・・・しなかったですね。

聞き手

やはり、歩いて追跡したりするのがお好きということで。

荒木さん 荒木さん

追跡は楽しいですね~(笑) でも本当に仙台は住みやすい都市規模だと思いますよ。 東京だと広すぎて。

聞き手

コミックスの折り返しのコメントで拝見したのですが、 先生が仙台で連載を始めた頃は、 コピーが一枚40円するなど、仙台に住みながら 連載するには大変だということで 東京に引越しされたそうですが。

荒木さん

当時はまだ東北新幹線が開通していなくて、 東京まで電車で4時間はかかったんです。 宅配システムもやっとクロネコヤマトの宅急便が できたくらいの時期で 週刊誌で連載するのは大変だったんで、 もう行かざるをえない状況でした。

聞き手

今ではインターネットなど通信技術も普及し、 またこうした自然環境も身近にあり住みやすくなって、 逆に、今だったら仙台に住みながら連載してもいいな、 と思うこともありますか?

荒木さん

ありますね。仙台に住みながら連載できたらいいですよね。

聞き手

先ほどの伊坂幸太郎さんを始め、仙台にお住まいの 人気作家の方も多いようです。

荒木さん

小説家の方はほぼ問題ないと思いますよ。 マンガもデジタルで描いていればインターネットがあれば 送れますけど、僕はそうではないので…。 誰かが生原稿を確実に編集部に届けないといけないんです。

	「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第34巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第34巻>

聞き手

「岸辺露伴」は杜王町で連載できても、先生が連載中に 仙台に住むことはやはり厳しいのでしょうか…

荒木さん

仕事関係や友人関係といった生活基盤が今は東京にあるので、 難しいでしょうね…。 アシスタントさんたちも、東京に住んでますから。

第4回 街と自然とが共存する仙台の魅力 2011.2.17 聞き手

先生は各地を旅されて、いろいろな街を ご覧になっていると思いますが、 今の仙台の街の魅力はどのように感じられますか。

荒木さん

こういう、街と自然が共存している感じはいいですよね。 建物と樹木とか。 実はそういう都市ってあんまりないと思いますよ。 関東だと箱根などにはそのような雰囲気が あるかもしれないですが、別荘地的な要素もあって また違います。 日常生活の中に溶け込んだ自然という意味では、 青葉通や定禅寺通のケヤキ並木の風景などは、 まさに仙台を象徴する魅力的なところだと思います。

	青葉通のケヤキ並木

<参考 杜の都緑の名所100選 青葉通のケヤキ並木>

聞き手

仙台駅に降り立って青葉通りのケヤキ並木を見ると、 仙台に帰ってきたなという感じがしたり。

荒木さん

そうそう。それと、仙台には、 オーディオや自転車、古本とか、趣味というより もっとマニアックにこだわっている人が実は結構いて、 すごいお店がありますよ。 オーディオだと「のだや」さんとか、 自転車だと「シクロヤマグチ」さんとか。 普通の街中に、すごくこだわった商品を扱っている お店があるんですよ。 一つの街に、そうしたいろいろなこだわりのお店が ある街というのは、東京でもあまり見かけないかもしれない。

聞き手

自転車の話がでましたが、 広瀬川は先生が遊んでいらした若林区からは、 川沿いを自転車で河口の閖上まで行けるようになっています。 以前その取材で「シクロヤマグチ」の山口さんに お世話になりました。

	広瀬川ライフ入門vol.4

<参考 広瀬川ライフ入門vol.4>

荒木さん

僕が仙台にいた時からずっとあるっていうのは、 すごいですね。 あと貞山運河沿いにもサイクリングロードがありますよね?

	貞山運河

<参考 杜の都緑の名所100選 貞山運河>

聞き手

ええ。2010年には、海岸公園にセンターハウスもできて、 そこで自転車の貸し出しも行っています。 周辺も整備され、多くの人たちが 楽しめるようになっています。

荒木さん

生活圏内にこうした海水浴場やスキー場がある街って、 すごいですよ、本当に。 東京だと、スキーに行くにしても一泊が前提だったりして、 もうそれだけで面倒で… 映画に行くにも、場所によっては 1~2時間かかったりしますから。

聞き手

仙台市内中心部から泉が岳のスキー場、 深沼の海水浴場、広瀬川上流の芋煮会や温泉、 だいたいどこへも30分圏内で行けますよね。

	泉ヶ岳スキー場

<参考 泉ヶ岳スキー場>

荒木さん

そうなんですよ。 あと、最近は街を歩いている人も ずいぶんファッショナブルになったような気が…。

荒木さん

聞き手

先生が仙台にいらした頃は、 あまりファッショナブルなイメージが…?

荒木さん

いやなんか、昔は女の子があんまかわいくないとか… 言われてましたよね(笑)。 今では全然そんなことないですが。

聞き手

先生の学生時代には、私服の学校が流行った時だったと 思いますが、当時はガクランを着られていましたか。

荒木さん

僕はガクラン派でしたね。高校では私服OKでしたが、 服を選ぶのがそのうち面倒になって みんなガクランになってくる(笑)。

聞き手

「ジョジョ」の登場人物は、みなさんガクランが ユニフォームみたいになっていて、先生のガクランに対する 思い入れが相当あるのではと思っていました。

	「ジョジョ」第三部 ジャンプコミックス第19巻

<「ジョジョ」第三部 ジャンプコミックス第19巻>

荒木さん

ガクラン、やっぱり格好いいですよ。 実は、マンガのファッションとして一番格好いいのは ガクランで、「クローズ」とかがヒットしたのは 絶対ガクランだったからですよ。 それでガクランにビニール傘をさす、っていうのがまた 格好いいんですよね。 もう、男の美学としてのマンガの黄金方程式というか。 多分、高倉健さんの影響からだと思いますけど。

	「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第47巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第47巻>

第5回 マンガと現実世界との関わり 2011.2.18 聞き手

近年では、「ジョジョ芸人」といわれるタレントさんや 熱心なファンによる「ジョジョ立ち」などのムーヴメントが 話題になっています。 マンガというフィクションから 今までと違った形で現実への影響が及んでいると思いますが、 そうしたファンが先生の作品を解釈して盛り上がっている 状況についてはどうご覧になっていますか?

荒木さん

「ジョジョ立ち」については、自分でもびっくりしていて、 世の中のほうが変わったんだなと思いました(笑)。 もともと「ジョジョ」の登場人物のポーズは、 ファンタジー性を出すためにあえて 現実にはありえないポーズを取り入れて演出しているんです。 実際の人間の関節の可動範囲はここまでというところを、 さらに限界を超えたところまで捻って表現していますが、 それを実際にやっているんですから… 写真でみると、ちゃんと再現しているんですよ! 人間の体が進化したのかな?

	荒木さん

聞き手

全くの予想外だったのでしょうか。

荒木さん

予想外というか真似して欲しくないというよりも、 そもそも真似しようがない表現にしているのに、 そこに現実に踏み込んでくるという… なんか、その発想からして驚きですよ。

聞き手

驚かれたとも思いますが、先生にとってはそれも 嬉しいことだったのでしょうか。

荒木さん

嬉しい…というか(笑)。 もう、好きなように楽しんでもらえれば… と思ってますね(笑)。

聞き手

最近では先生も巻き込まれて、一緒にポージングされる こともあるようですが。

荒木さん

だってやってくださいって言われるから(笑)。

聞き手

今日はわれわれもぜひ先生と一緒に 「ジョジョ立ち」をしたいと思っていました。

荒木さん

わかりました…って、現実にはできないんだから(笑)。

「ジョジョ」第二部 ジャンプコミックス第4巻 (c)荒木飛呂彦/集英社   <「ジョジョ」第二部 ジャンプコミックス第4巻> 

聞き手

私が中学生時代に先生の作品に触れたときは、 もっと直接的に、特徴的なセリフなどを 友達同士で真似したりとした記憶がありますが、 近年のこうした盛り上がりは、 インターネットによる影響も大きいのではとも思います。

荒木さん

確かにそうかもしれないですね。

聞き手

インターネットを通じて見知らぬ人同士が結びついて 共有される、共感されるという時代なのではと思いますが、 そうした変化を実際に感じられることはありますか?

荒木さん

昔は口コミといっても範囲は限定的でしたが、 現代だと、インターネットによる予想のできない 展開があると思います。だから逆に怖いですね… その、作品には人間の本心が無意識にでますから。 例えば卑怯な描き方をしていると、たぶん読者の方は 見抜くと思いますが、それがネットだと 増幅されたりするのかもしれないですよね。

聞き手

こうした時代だからこそ、より誠実さを求められる ということなのでしょうか。

荒木さん

そうですね。一見損かもしれないけど、誠実に描いてないと それがあとになって確実に効いてくる…

聞き手

以前先生が東北大学で「売れるマンガ」というテーマで 講演されたそうですが、そのときも、 「売れる」ためにそれだけを狙って描くというのではなくて、 どんなに良い作品でも結果的に売れないと、読者に 届かないからだめなんだという話をされていたそうですね。

荒木さん

そうですね。「売れる」ことだけを狙った作品と、 読者に届けるために結果的に「売れる」作品との違いは、 読者の方は見抜くでしょう。 また、それとは別に、ネットでの発言などでそういう精神は よりはっきりと見抜かれてしまうのではないでしょうか。 インターネットの書き込みの内容から、 「この人ずるいな」と感じたり。

聞き手

先生自身はよくインターネットでチェックされますか。

荒木さん 荒木さん

怖いから、なんかね、あまりやらないです(笑)。

聞き手

なるべく避けられたい、とか。

荒木さん

一線を画しておきたいというよりも、「岸辺露伴」 ではないですが、図に乗ったことを言いそうなので 自重のために(笑)。

聞き手

岸辺露伴は、マンガに関しては善悪の判断基準を 超えたものすごい執着心から、ちょっとやりすぎな面が 見受けられますが、やはりそうした面には 先生の想い入れが反映されているように感じてしまいます。

荒木さん

そういう部分もありますが、露伴は憧れですね。 スーパーマンガ家としての。 ただ少しだけ、作品とか芸術に対して 真摯でないことへの怒りなどを表現していますが。

	「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第36巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第36巻>

聞き手

あくまでも極端な形での表現だと思いますが、 短編「岸辺露伴は動かない」では、露伴が取材で イタリアに行き、教会の懺悔室に潜入してみて 体験の重要性を語るシーンもありました。 ファンとしては、そうしたところに実際の先生の姿を 重ねたくなると思います。


「岸辺露伴は動かない」(短編集「死刑執行中脱獄進行中」より

<「岸辺露伴は動かない」(短編集「死刑執行中脱獄進行中」より>

荒木さん

その辺は確かに実感を反映しているかもしれません。 今だとネットで調べればほとんど あらゆるものの情報は分かる時代だと思いますが、 僕自身はやはり実際に体験した上で描きたいですね。 例えばイタリア料理の絵を描く時、 別に食べなくても写真を見たりして描けますが、 でも、僕だったらその料理の匂いを嗅いだり、 実際に味わいを確かめた上で描きたいです。 その辺は、露伴にも反映されているかな。

	「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第33巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第33巻>

第6回 海外のマンガ事情 2011.2.19 聞き手

京都国際マンガミュージアムでは、「マンガ・ミーツ・ ルーヴル―美術館に迷い込んだ5人の作家たち―」 という特別展で、「岸辺露伴 ルーヴルに行く」という 展示が公開されていました。 (注:2010年11月5日~12月3日まで開催) また、2009年にルーヴル美術館の企画展で、 日本のマンガ家としてルーヴル史上初となる 作品展示がされたと伺っています。 ちなみに今回同行しているスタッフでそれを 鑑賞するためにルーヴル美術館に行った者もおります。

荒木さん

本当ですか?ありがとうございます。

	荒木さん

聞き手

その時はフランスでも大変好評であったと 伺っていますが、今やマンガが日本の誇る 現代アートとして海外で評価される時代だと思います。 私たちが学生時代は、どちらかというと マンガに対するイメージは良くなくて、 学校の先生や両親などからは 「マンガばかり見ていないで勉強しなさい」 というような時代だったと思いますが、 その時代に先生がマンガ家を志そうと思われた 動機は何だったのでしょうか?

荒木さん

70年代という「時代の風」でしょうか。もう、本当に いろんなマンガが出てきた時代だったんです。 SFもあれば時代劇もあるし、 「ゲゲゲの鬼太郎」みたいな妖怪マンガや 楳図かずお先生のような怪奇マンガとか、 とにかくいろいろな作品が一気に出てきた時期で、 そのエネルギーがとにかくすごかった。

聞き手

一つのメディアとしてのエネルギーが マックスだったのでしょうか。

荒木さん

というよりも、新しい時代の始まりという感じ かもしれない。芸術でいうとルネサンスというか、 一つの黄金時代の始まりというか、 今から思えばそんな感じがします。

聞き手

そこに当てられてしまって。

荒木さん

そう、当てられて、もう…ほんと、 マンガ家になりたくてしょうがなかったですよ。

	荒木さん

聞き手

マンガ家になられただけでなく、今ではアーティスト としてルーヴル美術館に展示されるまでになられました。

荒木さん

いや、まだまだですけど(笑)…でもね、 当時は「キン肉マン」を描いたゆでたまご先生が、 僕と同い年なのに高校生でもうプロになっているという 時代でした。僕なんか普通に学校通っていた時で、 「えっ、同い年でもうプロのマンガ家なんだ!」って。 その時は焦りましたね、 「もう学校に行っている場合じゃあない!」と(笑)。 それから僕もマンガ描いて、早く投稿とかしないと プロになれない、と思いました。

聞き手

そこから独学でスタートされて…

荒木さん

そうですね。本当はアシスタントとかきちっと やりたかったですが、その前に独り立ちしてしまって… 二十歳のときにデビューさせていただいたんです。

聞き手

先ほど申し上げましたように、今ではマンガが海外でも 評価される時代ですが、デビューされてから これまでのマンガを取り巻く環境の変化は どのように感じられますか?

荒木さん

マンガには、例えばストーリーが面白いとか、 画がうまいとか、デザインが素晴らしいといった、 いろいろな要素から成り立つ総合芸術的な魅力も あると思います。 でも、そのうちのどれか一つだけでも成立すると 思うんです。話が面白くなくても、画がうまいと それでプロとして成り立ったりするんですね。 普通だったらこのストーリーだと幼稚だな、 というものでも売れちゃうんです。 売れるというか、芸術として成り立つんですね。 逆に、画がこれは子供が描いたの?という作品でも、 とにかくストーリーが面白かったり。 いろんな魅力があるんですよ。 でも、僕には理解できないものもありますが(笑)。

聞き手

これはすごいと感銘を受けるものは今でもありますか?

荒木さん

それはもうたくさんあります。 若い人たちはすごいですよ。 でも逆に、画もうまくないし、ストーリーも面白さが わからないけど売れる、という作品もありますね。

聞き手

東北大学での講演時にもストーリーは 起承転結が非常に大事という話もされていたそうですね。

荒木さん

そこから完全に外れているマンガでも、 かなりファンがいたりとか… それはそれで、すごいですけどね。

聞き手

そうした懐の広さというのもマンガの持つ 魅力かもしれませんね。一方で、海外では マンガはどのように受け止められているのでしょうか。

荒木さん

フランスのマンガは「バンド・デシネ」というのですが、 その描き方はこちらとは明らかに違います。 例えば、日本ではまず表紙に主人公を描くんですよ。 メインのキャラクターをバーン!と。 それを、ルーヴルのスタッフは表紙にキャラクターを 描いてくれるなというんです。 ルーヴル美術館は人物の背景として描いているのに、 背景のルーヴルをメインで描いてくれって。 確かにフランスのバンド・デシネを見ていると、 表紙のメインが背景なんですよ。


聞き手

主人公はどうなってしまうのですか?

荒木さん

主人公は背景のどこかに、 よ~く見ると小さく写っていたりとか、 建物の上を飛んでいる飛行機に ちょっと乗っていたりとか、 運転している車の操縦席からちらっと 見えていたりとか(笑)。 そういう画を描いてくれって言われました。 逆に、日本の場合は絶対にファッション雑誌の 表紙の様に主人公が前にガーン!と出ている。 そこはまるで違いますね。

聞き手

正反対の価値観なのですね。

荒木さん

ええ。だから、「日本はこういうやり方なんです」って 説明して描いたんですよ(笑)。 なかなか分かってもらえなかったですが、 「日本人のマンガ家に依頼したんだから、 日本のマンガの方法論でやらせて下さい」と 説得しました。

聞き手

先生がデビューされた当時の週刊少年ジャンプでは、 10m離れても見ても誰が作者なのか分かる画を描く、 というのが基本だったそうですね。

荒木さん

ええ、そうです。

聞き手

でもそれとは逆で、向うの人は一目で誰が描いたのか 分からなくても、いいと。

荒木さん

まず全体的なムードを描いてくれ、という感じですね。 あなたならルーヴル美術館をどう描きますか、みたいな。 あくまでもルーヴルがメインという考え方ですね。

聞き手

「ジョジョ」の作者というよりも、アーティストという 位置づけだったのかもしれませんね。

第7回 今後の仙台市とジョジョ作品との関わりは? 2011.2.20 聞き手

確かに欧米では、マンガやアニメは子供のもので、 大人が見るものではないという区分けが はっきりなされているようですね。 我々ファンは、荒木先生が遂に世界に認められて ルーヴル美術館に展示された、ということで 嬉しく思っていますが、先生にとっては、 マンガ家の立場とアーティストの立場で 葛藤があったのでしょうか。

荒木さん

葛藤というか、そうした違いをはっきりと感じましたね。

聞き手

京都の展覧会では、ヨーロッパの作家さんと 一緒に展示されていますが、その作家さんたちとの 交流はありますか?

荒木さん

その時来日されていた、ニコラ・ド・グレシーさんには お会いしました。

聞き手

日本語訳が出版された際に推薦の帯を 書かれたそうですね。 先生の作品と相通じるところはあるのでしょうか?

荒木さん

いや、違いますね。読み味とか全然違うんですよ。

聞き手

ファンの方が運営されているサイトで 紹介されていましたが、先生のファンならば、 これはこれでひとつの完成された奇妙な世界のように みえるそうですが。

荒木さん

そうですね。画がものすごく上手いです。

聞き手

それはマンガというよりも絵画として。

荒木さん

ええ、なんかねこう、大人がお茶とか お酒を飲みながらゆっくり鑑賞するようなイメージで、 日本のマンガみたいに電車の中とかでバーッと読む 感じではないですね。

聞き手

アートとして鑑賞するようなイメージですか。

荒木さん

ワイン片手に鑑賞しながら、「ンー」みたいな(笑)。 あるいは週末の午後はこれを観ながら ゆっくり過ごそうかな、みたいな感じで。

	「ジョジョ」第五部 ジャンプコミックス第48巻

<「ジョジョ」第五部 ジャンプコミックス第48巻>

聞き手

日本でもそんなマンガ文化があれば面白いですね。 先生の画集などは、おそらくそういう楽しみ方も できると思います。

画集等 荒木さん

そうした要素も少しずつ取り入れたいとは思いますが、 でも、電車の中で読むっていうシチュエーションも また大切なんだよね。

聞き手

家に帰るまで待ちきれない楽しみというのも ありますから。

荒木さん

そうそう。「来週どうなるんだろなあ~」って。 僕が子供のときは、少年ジャンプは本当は 火曜日発売なのに、仙台駅だけは月曜の夕方に 買えたんですよ!もう一刻も早く読みたくて 駅まで買いに行ってました。 そういうのは必要ですよね。

聞き手

ワクワク感といいますか、続きがどうなるんだろう、 という楽しみが生活の中にあるのは大事ですよね。 その意味でマンガの役割は、大きいと思います。

荒木さん

そうだと嬉しいですけどね。

聞き手

こうして話を伺っていると、先生のアイデンティティは かなり仙台で生まれ育ったことに起因する部分も かなりあるように感じますが、そのご活躍や 「ジョジョ」作品を知っている仙台市民は多くても、 実際にご出身が仙台だということは、あまり 知られていないような気がします。

荒木さん

そうかもしれないですね、僕自身あまり仙台を アピールしていなかったかも(笑)。

聞き手

たまたまあまりその機会が無かったからでしょうか。

荒木さん

主人公が旅をするストーリーが多いので、 僕自身がどこかに定住しているイメージが ないのかもしれない… 「ジョジョ」で日本を舞台としているのは、 第四部の杜王町シリーズだけだし。

聞き手

ですが第四部で大きくファン層が広がったと思います。

荒木さん

今度はもっとその辺をアピールしますか、 杜王町を舞台にしているのは、「ジョジョ」の作者が 仙台市出身だからだよ!って(笑)。

	荒木さん

聞き手

ぜひお願いします。

荒木さん

でもね、殺人鬼とか出てくる話ですから、 仙台市民の方が怒るのではないかという心配が 強いんです。本当に仙台の人たちに ご迷惑をおかけしたくないから。

聞き手

今年(※注2010年)は市内でも事件があり、 仙台が全国的に注目された時期もありましたが、 裁判員制度も始まり自分の住んでいるところでも、 そうした事件が身近に感じる時代に残念ながら なりつつあるかもしれません。

荒木さん

「こちら葛飾区亀有公園前派出所」のように 街にとって良いイメージがあるような作品であれば 良いのでしょうが、僕の作品のイメージだと、 ちょっと…(笑)。 あんまり大々的に仙台をそうした舞台とするのは 気が引けます。

聞き手

ところで、以前先生にエコバッグのデザインを お願いしたことがありましたが、先生に描いて いただいたものは大人気で あっという間になくなってしまいまして。

エコバッグ 荒木さん

嬉しいですね、エコバッグで少しは仙台市に 貢献できたのかな。

聞き手

大変話題となったのですが、エコバックの制作枚数 自体がそれほど多くはなくて、あっという間に コレクターアイテムになってしまったみたいです。

荒木さん

市民の皆さんに喜んでいただけるなら、 今後も頑張ります。

聞き手

「ジョジョ」ファンの皆さんは、仙台を 聖地巡礼として訪れる方がいらっしゃるようですし、 また仙台市での「ジョジョ立ち」も大変盛り上がったと 伺っておりますので、ぜひ、仙台で「ジョジョ」を リアルに感じてもらえたらと思います。 ちなみに仙台市では「彫刻のあるまちづくり事業」を 行っていて、市のシンボルである定禅寺通りの ケヤキ並木の下などにも、ファンには「ジョジョ」の 世界観を感じさせる彫刻もありますし。

	定禅寺通の彫刻の写真

<参考 定禅寺通の彫刻 エミリオ・グレコ作「夏の思い出」>

荒木さん

ああ、ありますね(笑)。

聞き手

熱心なファンの方でしたら、「ジョジョ」とは 全く関係がなくても「捻り」が入った彫刻を見て 喜ばれると思いますが、実際に「ジョジョ」を モチーフとした作品を仙台市で鑑賞できたら、全国から ファンの方がたくさん仙台市を訪れてくれると思います。 ちなみに、仙台市役所にも「ジョジョ」の熱心な ファンがいて、 作品に登場するエピソードや 名所などを巡るルートを設定して、仙台市としても セールスポイントをつくろうという企画がありました。

荒木さん

いやそんな、恐れ多い(笑)。でも夢のような話としては、 なんだか、楽しそうですね。

聞き手

実際に青葉区花京院にある郵便局などをファンの方が 訪れて、「郵便局なのにやっぱり緑色だ!」という話も あったそうです。普通の郵便局だけでなく、 街のいろんなところに「ジョジョ」ワールドを 見出す熱心なファンの方がいるようです。

第8回 仙台出身者はいつまでも若い?! 2011.2.21 聞き手

「ジョジョ立ち」もそうですが、フィクションの世界に とどまらず、作品の魅力が現実世界に侵食してきて いるということだと思います。 また、2010年のNHK朝のテレビドラマ小説で 「ゲゲゲの女房」が大ヒットして、 モデルとなった水木しげる先生の故郷に たくさんの観光客が押し寄せるようになったそうです。 テレビ放映前は、ファンの方が訪れるくらいだったのが、 放映後には人口の数倍の一般の観光客が訪れるように なったそうで、経済効果としても大きな効果があったと。

荒木さん

水木先生ご自身がもう素晴らしいですからね。

聞き手

せっかくですから、今後は何か仙台市でも、 「『ジョジョ』の作者・荒木飛呂彦のルーツはここにあり」 みたいな企画などできたらと思います。

荒木さん

いや、非常に光栄なんですが…恐縮してしまいます。

聞き手

ご存じかと思いますが、仙台市は自然環境に恵まれて いるものの、正直なところ全国からどっと人が 押し寄せる観光地というよりも、どちらかといえば 実際に暮らしてみて、 いいなぁと思う土地柄だと思います。

荒木さん 荒木さん

そうですね。

聞き手

ですから、仙台の良さをPRする上でやはり 「人」がカギになると思います。 仙台の良さを知っていただき、 実際に住んでみていただいて、 ああ、本当に素晴らしいですね、 と思っていただくためには、そこで暮らす人たち自身が いいところだと実感していることは前提ですが、 その上で人と人とのつながりによって 魅力を発信していくことが大切だと思います。 「ジョジョ」ファン同士には非常に固い絆があると 思いますから、仙台市の地域振興、魅力の発信という 観点からもぜひ先生のご協力をいただければ、 と思っております。 「水木しげるロード」ならぬ 「荒木飛呂彦『ジョジョ』ロード」ですとか。

荒木さん

本当に夢みたいな話ですね。 仙台市のために協力できることがあったら これからも何かできればと思っています。

聞き手

ありがとうございます。 生命科学研究者の瀬藤光利さんが、 アメリカの医学生物学誌「cell」の表紙用イラストを 先生にリクエストされたように、 リアルタイムで「ジョジョ」を読んで育った世代が、 作品から受けた影響をマンガ以外のフィールドでも どんどん現す時代になってきたと感じます。 また、新たな若い読者も増えているようですし。

荒木さん

すごく嬉しいですね。 これからも幅広い世代に渡って読んでいただけたら いいですね・・・水木先生のように。

聞き手

やはり長く連載されているからこそ、 そうした意味でも広くアピールできると思いますので 今後も末永いご活躍を願っております。

荒木さん

水木先生はもうすぐ90歳になられますが、 それでもなお素晴らしいですよね。

聞き手

以前先生は、週刊誌連載では非常に体力を消耗するので、 連載は50歳くらいが限界、というようなことを おっしゃっていました。現在は月刊誌での連載となり、 週刊誌よりはいくらかご負担が減ったと思いますが、 今後はどのくらいまででしたら大丈夫と 感じられていますか。

荒木さん

いや…こればっかりは、本当に分からないですね。 でも、あと10年は最低でもやりたいですね。

聞き手

先生は1960年生まれと伺っていますが、 こうしてお話を伺っていながら、 正直に申し上げますがとてもそうは見えません。 噂では「ジョジョ」の登場人物たちと同じく 「波紋使い」ですとか、 奥様が波紋の使い手で、ご自宅で「波紋」を 浴びているとか…

	「ジョジョ」第二部 ジャンプコミックス第11巻

<「ジョジョ」第二部 ジャンプコミックス第11巻>

荒木さん

いや歳相応ですよ(笑)。 「波紋」じゃなくて…仙台の人は、 皆さん若いからだと思いますよ(笑)。

聞き手

先生に限らず仙台出身者は若く見える人が多いと。

荒木さん

こうした自然環境や気候とか、お米や食べ物とか… そうした要素があるかも。

荒木さん 聞き手

では先生もこのまま変わらず、あと私たち仙台市民も、 いつまでも若々しく「ジョジョ」を楽しむことが できますね。

荒木さん

でも、この仕事は本当に危ないんですよ。 油断できませんから。 手塚先生は60歳で亡くなられていますし。

聞き手

創作にエネルギーを注ぎ込んでしまうから なのでしょうか。

荒木さん

どうしても無理してしまうのかもしれないですね。 若い時とは違ってもう徹夜できないのに、 描いているとやれると思ってしまうとか。

聞き手

描いているとアドレナリンが出て 疲れを感じられなくなってしまったりするのでしょうか。

荒木さん

集中していたら、あっという間に時間が飛びますから。 気づいたら何時間も同じ姿勢で描き続けていて、 腰がもう…(苦笑)。

聞き手

まるでディアボロのスタンド「キングクリムゾン」 の攻撃にあったみたいに、時間が消し飛び、 腰の痛みだけが残る。 私たちも「波紋」が使えるのでしたら、 先生に生命エネルギーを送りたいですが(笑)。

	「ジョジョ」第五部 ジャンプコミックス第59巻

<「ジョジョ」第五部 ジャンプコミックス第59巻>

荒木さん

ありがとうございます。 いつでもエネルギーは欲しいですので(笑)。 でも今日は、皆さんから元気のエネルギーを たくさんいただいた気がしますよ。

第9回 荒木先生からのメッセージ 2011.2.22 聞き手

では最新作の話をお伺いします。 先日(2010年11月)、第7部「SBR」の第22巻が 発売されました。その中で、 我々行政機関で働く職員にとって 非常に印象的なエピソードがありました。 この世の不幸をどこか自分たちの住む地域とは 別の世界へ追いやるという絶大な能力を得た アメリカ大統領が、世界中のすべての人間が 幸せになることはありえないので、 自分は愛国心に基づいて、この能力を使って 正しい行いをしていると主張するシーンがあります。 行政職員としては、より多くの市民が幸せを 感じられるような施策を行うことを考えながら、 一方ですべての市民にとって満足のいく施策は 難しいというジレンマがあり、 やはりこの大統領の主張にも 肯かされるところもあるように感じてしまいました。

	「ジョジョ」第七部「SBR」 ジャンプコミックス第22巻

<「ジョジョ」第七部「SBR」 ジャンプコミックス第22巻>

荒木さん

予め断っておいた方がいいと思いますけど、 このヴァレンタイン大統領は、悪役ですからね(笑)。 参考にしないで(笑)。でも、実はある意味では その主張が正しいという悪役にしたかったんです。

聞き手

そうですよね、実際、ストーリー上では主人公が そのシーンで「あれ?間違っていたのは僕?」 みたいな感じで…

荒木さん

そうそう、揺れています。

	「ジョジョ」第七部「SBR」 ジャンプコミックス第22巻

<「ジョジョ」第七部「SBR」 ジャンプコミックス第22巻>

聞き手

先生が「悪役」と言われるのでそのセリフを 真に受けてしまってはダメなんでしょうが、 リーダーシップとしてはありなのかな、とも思えますが。

荒木さん

いや、現実世界ではありだと思いますよ。 僕自身もこの大統領のようなリーダーシップの方が、 本当は好きです。

聞き手

上に立つものとしては、やはりそうした覚悟を 背負う必要があると。

	荒木さん

荒木さん

そう。全員にとっての幸せが無理なら、やはりどこかに 視点を置いて考えなければいけないでしょうから。 結局物事において絶対的に正しいとか悪いことって そんなにないと思います。だからこそ、 もうここだという線引きが重要だし、 政治はそのための仕事でしょうから。 それで、覚悟を持って決めたからにはもう、 突き進んでいくべきだと思います。 ちょっと何か言われたくらいで心が折れたり、 前言撤回したりすることは良くないなと思います。

聞き手

そういう意味では、ヴァレンタイン大統領は、 政治家としてはOKですよね。 もうこのまま行くしかない。

荒木さん

悪役ですけどね(笑)。

聞き手

一方で現実世界は、いろいろな価値観がぶつかり合う 本当に難しい時代です。 今の政治にヴァレンタイン大統領のような精神を 求めることも厳しいかもしれませんが、 それでも寄って立つべき信念は必要ではないか と思います。大統領は「愛国心だ」と言っていますが、 私たち一市民として持っておくべき信念としては、 先生の作品のテーマにつながる話かと思いますが、 改めてお聞かせいただけませんか。

荒木さん

愛国心とまではいかなくても、 やはり家族を守ろうという感情や、 あるいは自分が生まれた故郷や今暮らしている地域 への想いなどに繋がる部分だと思います。

	「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第 巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第29巻>

聞き手

「ジョジョ」が「人間賛歌」をテーマとしている といわれる由縁ですね。やはり先生の仙台への想いも そこから来ているんですね。

荒木さん

そこの辺を…自分としては、おろそかにして 欲しくないですし、おろそかにするような人には 上に立って欲しくないと思いますね。

聞き手

仙台市役所職員は自分の住む街を思う気持ちは もちろん持っていると思いますが、その上でさらに 覚悟を持って仕事に臨まなければいけませんね。

荒木さん

そうですね。厳しい時代ですから、 風当たりは強くなるかもしれませんが。

聞き手

そこはやはり、「ジョジョ」を愛する市職員としては、 作品で描かれているような「『正義』の輝きの中にある 『黄金の精神』」を参考にしたいと思います。

	「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第47巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第47巻>

荒木さん

「ジョジョ」作品の中での戦いだと、 最後まで勝ち残るのは、 多分一人二人くらいしかいない世界ですし、 また現実も相当厳しい時代ですが、頑張ってください。

聞き手

ありがとうございます。

聞き手

さて、広瀬川ではNPO団体が約20年振りに 貸しボートを復活させたり、 市民団体が中心となって企業や大学などと 流域一斉清掃活動などを行ったりと、 市民の皆さんがいろいろな活動を行っています。 最後に、先生から広瀬川に関わる活動を行っている 皆さんへ応援のメッセージをいただけますか。

	NPO法人広瀬川ボートくらぶによる貸しボート事業の様子

<参考 NPO法人広瀬川ボートくらぶによる貸しボート事業の様子>

荒木さん

広瀬川だけでなく、こうした自然環境を守っていく上で、 これからの時代は行政だけで何もかもやっていくことは 不可能だと思います。 昔は、例えば神社の落ち葉掃除などを 近隣に住む人たちが自然にやっていましたよね。 先ほど愛国心の話もありましたが、 そこまでいかなくても 市民が自分の住む街を大切に思う気持ちから、 ボランティア活動などを行うことは とても大切なことだと思います。 そうした活動をされている方が広瀬川に たくさんいらっしゃることは、 素晴らしいことだと思います。

聞き手

市民一人ひとりがそうした地域を愛する気持ちを持って、 連携していければ広瀬川だけでなく仙台市も さらに素晴らしい街になりますよね。

荒木さん

そうですね。 誰か一人の力で何とかなるものではないと思いますから。 そのためにも、みんなで芋煮会をしたりして 仲良くなったり、付き合いが広がっていけば いいですよね。何よりも楽しいし(笑)。

聞き手

芋煮会はコミュニケーションを深められるだけでなく、 広瀬川をこれからも守っていくことにつながりますね。

荒木さん

そういった活動がさらに広がっていくことを 願っています。僕もそのために何かできることが ありましたら協力したいと思います。

聞き手

ありがとうございます。 先生の広瀬康一君にこめられた想いに負けないように、 私たちもこれから頑張りたいと思います。 今日はお忙しいところ本当にありがとうございました。

第10回 こぼれ話 2011.2.23 聞き手

今回は、ここイタリアンレストラン「アル フィオーレ」 をインタビュー会場としてお借りしました。 こちらのお店からは、ご覧いただいているように、 広瀬川と仙台市街地を見下ろす 素晴らしい景色が望めます。

	広瀬川と仙台の街を鹿落坂付近から望む

<参考 広瀬川と仙台の街を鹿落坂付近から望む>

荒木さん

そうですね。 この場所にこんな素敵なイタリアンレストランが あるなんて、僕が仙台にいた頃には 考えられなかったことすね。

	荒木さん

聞き手

このロケーションも素晴らしいのですが、 こちらのお店に伺った理由はもう一つあります。 「ジョジョ」第四部、「杜王町」という日本の架空都市を 舞台とした「ダイヤモンドは砕けない」編で、 主人公「東方仗助」と親友の「虹村億泰」が、 イタリア料理店「トラサルディー」を訪れるという エピソードがあります。

	「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第33巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第33巻>

荒木さん

スタンド使いのシェフ・トニオさんが、スタンドで 料理を食べた人を健康な状態に直してしまうというお店。

	「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第33巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第33巻>

聞き手

私も大好きなエピソードで、「ジョジョ」ファンならば そんなお店が現実にあった絶対行きたい、 というお店ですが、実はこのお店のシェフ目黒さんも、 スタンド使いではありませんが、様々な食材も 手づくりされていて、こちらに吊るされている ハムなどもシェフ自らが作られているんです。

荒木さん

トニオさんみたいに料理にスタンド「パール・ジャム」 が入っているかも。

聞き手

先生、肩こりや眼精疲労などの症状はありませんか。 でも今日は、食事を召し上がっていただく時間がなくて 大変残念ですが・・・ ところで、「ジョジョ」第五部「黄金の風」編で イタリアを舞台とした作品を描かれていることもあり、 先生はイタリアが大変お好きなのではないかと 思っておりました。

荒木さん 荒木さん

実は東京に行っていちばん衝撃を受けたのは、 パスタなんです。 こんなに美味しい食べ物があったのかー!って、 本当に圧倒的な衝撃でした。 僕が仙台にいた頃は、 今のようなイタリアンレストランはなかったんですよ。 こんな素敵なイタリアンレストランがあるというのは、 当時から考えたら夢みたいです。

聞き手

こちらの目黒シェフは先日TBS「情熱大陸」に出演され、 仙台のイタリア料理界では注目のお店で、わざわざ 東京から足を運ばれるお客さんもいるくらいです。 ちなみに、お店のメニューも、お客さんの好みに応じて シェフと相談して決めるというのが基本です。

荒木さん

同じじゃないですか。 まさか、「ジョジョ」の方が後からだったりして…

聞き手

お店は開店して間もなく6周年、 現在の場所に移転されてからは、4年周年とのことです。

荒木さん

よかった、「トラサルディー」のオープンが先ですね(笑)。 ところでこのタルト、香りが素晴らしいですね。 僕は食材の香りを活かしている料理が好きなんですよ。

洋ナシのタルト 目黒シェフ

紅イモのアイスクリームピュレを添えた 洋ナシのタルトです。 その上にパルミジャーノ・レッジャーノを 振りかけています。

荒木さん

本当にパルミジャーノ・レッジャーノの香が・・・すごい。 あとこの紅イモの甘みが・・・美味しいですね~。

荒木さん 聞き手

ぜひ今度仙台にお越しになる際にはこちらで食事を 召し上がっていただければと思います。 シーズンになったらジビエ(野獣)料理もお勧めです。

荒木さん

ジビエといっても、例えば海側でとれる雉と野山で 獲れる雉とでは、潮風とか食べる餌の違いらしいですが、 味が違うらしいですよ。 そんな話を聞くと、その違いを探ってみたいですね。

聞き手

では今度、こちらのお店のシェフに 海側の雉と山側の雉を取り寄せていただいて…

荒木さん

二種類出していただいて、今度ぜひ 食べ比べしたいですね(笑)。 でもこちらのデザートをいただいたら 何だか元気が出てきましたよ!

	「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第33巻

<「ジョジョ」第四部 ジャンプコミックス第33巻>

聞き手

シェフ、先生がデザートを召し上がって 元気が出たそうです! やっぱりスタンド使いだったんですね(笑)。

目黒シェフ

ありがとうございます(笑)。

目黒シェフと荒木さん 取材協力 AL FIORE(アル フィオーレ) http://blog.livedoor.jp/al_fiore/ [22]

References

  1. http://blog.livedoor.jp/jojolab/archives/38665393.html
  2. http://blog.livedoor.jp/jojolab/archives/38791098.html
  3. http://blog.livedoor.jp/jojolab/archives/39165377.html
  4. http://blog.livedoor.jp/jojolab/archives/39516276.html
  5. http://blog.livedoor.jp/jojolab/archives/39762265.html
  6. http://blog.livedoor.jp/jojolab/archives/44263539.html
  7. http://raikaroom.blogspot.fr/2015/04/feelin-jojo-final-episode-araki.html
  8. http://dijeh.tumblr.com/post/56081922481/remember-that-one-araki-x-kaneko-interview-its
  9. http://blog.livedoor.jp/jojolab/archives/49569633.html
  10. http://www.edit.ne.jp/~condor/arakitv1.html
  11. http://www.animeland.com/dossier/araki-hirohiko-exposed/
  12. https://docs.google.com/document/d/1pgcnMshVrs7ZqvtACT3PWweRpmJOXSNyu7O9qf4M21g/edit
  13. https://twitter.com/macchalion/status/821059209185939456
  14. https://twitter.com/macchalion/status/834153287771422720
  15. http://ls57tiger.freepgs.com/jojo/phpBB3/viewtopic.php?f=2&t=616
  16. http://comipress.com/article/2006/06/30/387
  17. http://www.dailymotion.com/video/xnzt4x_araki-hirohiko-interview-english-sub_creation
  18. https://www.youtube.com/watch?v=dTh1woTmDqs
  19. http://petronia.livejournal.com/493401.html
  20. http://ls57tiger.freepgs.com/jojo/phpBB3/viewtopic.php?f=2&t=6796
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  22. http://www.hirosegawa-net.com/interview/new/18_01.html
  23. http://web.archive.org/web/20130110030214/http://www.ganganonline.com/special/hagane/index.html
  24. http://www.houyhnhnm.jp/culture/feature/gucci-araki-hirohiko.html
  25. http://www.gamefaqs.com/boards/676176-jojos-bizarre-adventure-all-star-battle/67151860
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  27. http://ls57tiger.freepgs.com/jojo/phpBB3/viewtopic.php?f=28&t=6459&hilit=interview
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  33. Naokatsu Tsuda Q&A at Anime Boston
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  35. https://twitter.com/macchalion/status/842308005270044672
  36. http://jojo-animation.com/bddvd/ova.html
  37. 「みんな脱出すればいい(笑)」承太郎一行になりきって、運命を乗り越えろ!