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=== Don't mind this thx ===
=== Don't mind this thx ===
顔にお日様の熱を感じる。
一から悪役を作る~キノコが好きな少年
重たいまぶたを押し上げると、 眩しい朝日が目に差し込んだ。
フェルンはべ ッドから起き上がり、ううんと背伸びをする。
宙を舞う埃が陽の光を反射してちらちらと輝いている。
今日はお洗湘日和だな、 と寝ぼけた頭で考える。
フェルンがこの家に住み始めて、 しぱらく経つ。
最初はべ ッドの硬さに慣れなくてなかなか寝っけなかったが、今では朝までぐっすり眠れるようになっていた。
廊下に出て、リビング、 そしてキッチンを覗く。
誰もいない。
ハイターは、 まだ寝ているようだ。
水を汲みに行こう、 と思った。
バケツを持って 外に出る。
柔らかい陽射しが、 肌をじんわりと暖めた。
小烏の鳴き声が耳に心地よい。
この辺りは膝物が出ることもほとんどなく、 平和そのものだ。
森の中を少し歩いて、 川に突き当たる。
川面を覗き込むと、 見慣れた顔が映った。
肩で切り揃えられた紫色の髪に、 眠たげなぽんやりとした目。
川面に揺らめく白分の顔をすくい上げるように、 フェ ルンはバケツで水を汲んだ。


「よぃしょ ...... 」
京香は、露伴というキャラクターや『岸辺露伴は動かない』の世界観が既に存在していた中から生まれてきたキャラクターです。「前回のおさらい」のところでも述べましたが、そんな風に、本来ならまず 「主人公」がいて、それと対比させながら「悪役」を作っていくのですが、 テーマやストーリー、世界観が何もないというときでも、そこから単独で悪役のキャラクターを考えることもできます。その場合のやり方を、一から身上調査書を書きながら、実況中継的に説明していきたいと思います。
バケッの取っ手が` 指に食い込む。 水の入ったバヶッは肩が抜けそうなほど重ぃ。 家まで運


か ら だ
最初のアイデアは単純な思いつきで、たまたま仕事部屋の本棚にキノコの本があったので、 「キノコが好きな少年なんてどうかな」というところから、キャラクターのイメージをふくらませていくことにしました。今回はキノコですが、目についたのがキノコでなく恐竜の本だったら「恐竜が好きな「少年」のキャラクターを作るかもしれません。そんなふうに、とっかかりは自分が今興味のあるものや関わっているものをヒントにすればいいと思います。


ぶのが釉一 杯だ。 ふらふらと身体が左右に揺れてヽ ぽちゃぽちゃとバケッから水がこぼれてぃ
さて、この悪役キャラクターの名前ですが、「菌二郎」と名付けました。名前を考えるのは最初でもいいし、他の項目を埋めていった後に決めても全然かまわないと思います。僕の場合、名前の付け方は感覚的な部分で、漫画的にはやっぱり「菌」という字が入った方が読者は興味を持つんじゃないかなという気がします。 もし何か素敵なキノコの名前があれば、そこから取るというのも、漫画のキャラクターっぽい名前にするひとつの方法でしょう。


〈。
この時点で決まっているのは、菌二郎が「キノコが好きな「悪役」だということだけです。ここから先、どの項目から埋めていくかはそれぞれのキャラクターによっても変わりますが、今回はやっぱり「特技」のところが、菌二郎というキャラクターの一番核心になる部分だと思います。そこで、「生まれたときからキノコに興味があって、自分が住んでいる場所に生えているキノコのことならなんでも知っている」、たとえば「おいしいか、まずいか」ということはもちろん、「そこに生えているキノコには、食べたら幻覚を見せたり、記憶を消したりするようなものがあることもわかっている」し、もしかしたら食べたら死んでしまうキノコや、いろいろな感覚をおかしくさせるキノコなんかもあると知っているかもしれない。 とにかくキノコについては素人だけど専門家というか、異常なくらいあらゆることを知っているという風にしておいて、漫画に描いていくとき、どういうキノコがあり得るかというところは、「調査必要」とメモしておきます。


なんとか家にたどり着いた。
それから、顔や体格をどうするか。「ちょっとぽっちゃり気味にすると、おもしろいかな」と「太り気味」という設定にして、菌二郎のビジュアルをだんだん頭の中で作っていきます。次に大事なのが、菌二郎の生育環境です。 家族関係はキャラクターのベースになりますから、 身上調査書には、親がどういう人でどんな家庭で育ったかということはある程度決めて、書くようにしています。 実際に漫画に描かないとしても、そこが自分でイメージできていると、キャラクターにちゃんと血が通うというか、そのキャラクターが「そこにいる」感じが出てくるんです。


キッチンに入ると、 ちょうどハイターが寝室から出てきた。 杖をっいて、 ゅっくりと歩いて
さて、菌二郎の父親の職業ですが、 実はなんでもいいというわけにはいきません。なぜなら、どうして菌二郎はそんなにキノコが好きになったのかと考えると、おそらくキノコになんらかの関連がある環境で生まれ育ったと考えるのが自然だからです。そこで思いついたのが、「三つ星レストランの料理長」、これならキノコは料理の材料として身近にあるわけですから、菌二郎が「キノコ好き」になるのも納得できます。このお父さんを「2年連続星を獲っている」とか、めちゃくちゃすごいシェフにすれば、「きっと菌二郎は父親に対してコンプレックスを持っているんだろうな」 「たぶん、かなり歪んだ親子関係なんじゃないかな」と、菌二郎の屈折したキャラクターがどんどん出来上がっていきます。
くる。 起きたばかりのょうで、 白髪に寝癖がっぃてぃる。


ハィターはフェルンに気づくと、 両頼に深ぃ胱を作って、 優しく微笑みかけた。
ストーリーが動き出すとき
「おはようございます、 フェルン 」


「おはようございます、 ハイター様」
お父さん以外の家族、お母さんや他の兄弟姉妹のことまで設定してもいいのですが、とりあえずお父さんがいれば菌二郎というキャラクターは成立するので、他の項目を考えることにします。名前、体型、特技、家族関係ときて、次に欠かせないのは「そのキャラクターは何をしたいのか」、つまり「動機」にあたる部分です。 漫画のストーリーは、「キノコが好きな菌二郎」がただそこにいるだけでは動き出しませんから、菌二郎がキノコの知識を使って何かしでかすとして、なんのためにそれをやるのかということを考えないといけません。「善」の主人公の場合、たとえば正義や友情など、読者に共感を持ってもらえてかつ読者の自然な倫理観に照らして好ましい動機にすることが必要になってきますが、菌二郎は悪役なので、人間の基本的な欲望をそのまま動機に反映させることができます。


フェルンは、 どすん、 とバケッを床に置ぃた。 その拍子に、 また水がこぼれてしまう。 だけ
菌二郎の動機を考えてみたときに、ふと「こいつは女の子にモテるのかな」と想像してみました。 普通、キノコ好きのぽっちゃり体型の男の子がモテるというのは考えにくいですが、「意外と女の子に人気がある」という設定にしても、おもしろいかもしれません。そんな菌二郎が「彼女にしたい」と狙うのはどんな女の子だろうか、たとえば、お父さんのレストランに毎日のように通ってきている、お金持ちそのあたなお嬢さんがいて、何かのきっかけでそのお嬢さ思います。が好意を持つようになるというのはどうかな……ふおもしろえて書いたのが「お金持ちのお嬢さんを彼女にしるでしょう。のお客さん」「欲望」 というメモ書きです。
どハイターは少しも嫌な顔をせず` 優しい笑みを浮かべたままヽ フェ ルンの頭を撫でた。 枯れ
枝のような骨ぱった手が、 髪を乱さなぃよう優しく動く。 フェルンは心がくすぐった〈なった。
「水を汲んできてくれてありがとうございます。 重かったでしょう 」


「これくらい、 なんてことありません」
ここまで決めておけば、あとは菌二郎が「お嬢さんを彼女にしたい」という目的を達成するための陰謀や策略のアイデアをどんどん出していくということになります。僕がちょっと調べたところでは、キノコには菌糸のネットワークというものがあって、キノコ同士がそのネットワークでつながっていたりするので、それを利用してお嬢さんを罠にかけていくとか、菌二郎がまだ誰も知らないキノコの秘密を発見して、それをお嬢さんが食べる料理に仕込んでいくとか、のきれいりは発想次第で、いくらでも無限に考えられるとんに菌二郎また、科学雑誌などでキノコについて調べて、何か、色々考そうなネタがあったら、採用していくこともできったい」「父この段階では、「こういうのはどうかな」「これも使えるかも」と、とにかくどんどんアイデアを入れていくのが大切です。一見関係ないように見えても、ストーリーが動き出していくと急に必要になったりするからです。


「ご立派です。 では、 顔を洗ぃましょうか」
ジョジョ的に考えると、たとえば次のような展開もできそ


ハイターは靡法でバケッを浮かせると` そのままフェルンと二人で洗面所へ向かった。
うです。あるとき、菌二郎は、お父さんの店の客が食べ残した皿のソースから、キノコの幻覚作用を起こさせることができる特殊能力を自分が持っていることに気づいて、お嬢さんを彼女にするために、その特殊能力を使おうとする……菌二郎、どんどんやばいやつになっていきますね(笑)。

身上調査書をどんどん煮詰める

その場の思いつきで「キノコが好き」という設定を決めて、身上調査書の要点となる項目を埋めていくだけでも、こんな風に菌二郎のキャラクターはけっこう出来上がっていくわけですが、ここまで要する時間はせいぜい30分ぐらいです。 といってもこれで終わりではなく、この段階が中途半端だと、漫画を描いていくうちに行き詰まってしまうので、ここから何回も煮詰めていきます。

編集者との打ち合わせでは、僕が書いてきた身上調査書やアイデアに「これはちょっとわからないですね」「こういうのを入れるといいんじゃないですか?」などと指摘が入りますから、「じゃあ、こうするのはどうかな」 「いや、そこは違うと思う」と、やりとりを重ねながら自分の中で考えを固めていきます。もし菌二郎の身上調査書を編集者に見せたら、おそらく「菌二郎の目的はこのお嬢さんを彼女にしたいということですけど、 この女の子のどこが好きなんですか?」「この子のどこがどういうふうに素敵なんですか?」というツッコミが入ると思いますので、 「お嬢さんのキャラクターも考えないといけないな」とまた身上調査書を作っていきます。このお嬢さんは「お金持ち」という設定にしましたから、ファッションや学歴は大事な要素ですし、 あとは、菌二郎がなぜ彼女を好きになったのかというエピソードをしっかり考えます。普通に「何か優しいことをされて好きになった」でもいいのですが、菌二郎の父親の職業を決めたときと同じで、「キノコが好きな菌二郎」というテーマに合致するよう、できるだけキノコに関連するアイデアを出していくことが必要です。そのお嬢さんがキノコのソースの味をものすごくよくわかるとか、菌二郎がキノコが生えているところを散歩していたらたまたまお嬢さんがやってきて、何かの仕草がすごく気に入ったとか、色々考えられますね。あとは、要となるお父さんのキャラクターを作れば、もうどんどんストーリーが作れてしまいます。

菌二郎は悪役ですから、ストーリーの自然な流れとしては「トラブルに向かっていく」 ということになりますし、菌二郎を「悪役」の「主人公」にするのであれば、彼を阻むキャラクターと対峙させなければなりません。敵役は単純に刑事でもいいですが、彼の家族の中の誰かということにすると、サスペンスが盛り上がりそうです。 菌二郎がやっていることをいつも見張っていて、「ん?何かおかしいぞ」と感じていおばあちゃんとか、あるいは、お父さんが菌二郎の行動を怪しんでいるということにすると、三つ星レストランの天才的な味覚を持っている料理長が敵になるわけですから、菌二郎にとってはけっこう大きな障害になるんじゃないかなと思います。

このとき忘れてはいけないのは、主人公でも悪役でも、少年漫画のキャラクターの基本パターンは「成長させていく」というものです。 だからキャラクターはいつも前向きで、『ジョジョ』の悪役たち、ディオも吉良吉影もヴァレンタイン大統領も皆、自分の「悪」を肯定し、悩むことなく、ひたすら自分の道を進んでいきます。互いにそうやって成長していくキャラクターが激突する、だからバトルがおもしろくなるのです。

作者も逆らえない漫画の運命とは

ここまで書いてきたような作業は、僕が漫画家生活の中でずっと繰り返しやってきたことで、『岸辺露伴は動かない』のシリーズの敵キャラはいつもこんな感じで作っています。僕がこのまま菌二郎の話を漫画にするとしたら、冒頭部分は、やはり菌二郎がどれだけキノコが好きかをしっかり描いていくことになるでしょう。そこをさっとすませて次の話に移っていったりすると、読者は「キノコが好きな少年の話なんだから、もっとキノコのことを描けよ!」と思ってしまうはずです。つまり、この菌二郎の漫画はとにかく「キノコが好き」というところに集約されていくのです。

前回、「すべての要素は『同時進行』で作られる」と話したように、「キャラクター」「ストーリー」「世界観」「テーマ」という漫画の「基本四大構造」は、キャラクターを作っていく中で自然と決まっていきます。 菌二郎の例で言えば、彼はとにかくキノコにまつわる因果関係の中で生きているキャラクターなので、ストーリーや世界観もそれに合わせる形で融合されていかないと、何か変な漫画になってしまいます。たとえば、突然「菌二郎は実はサッカーもすごくうまい」となって、スポーツ漫画が始まったりはしないし、その意味では、作者といえども「やっぱりサッカーの話も入れたいな」と思っても、勝手なことはできません。 つまり菌二郎を「キノコが「好き」なキャラクターとしたことで、菌二郎が登場する漫画は「キノコの漫画になる」という運命が決定されているのです。それを逆手にとって、舞台をどこか架空の世界に設定し、とことんキノコの世界観をファンタジーで描いていくというやり方もありだと思います。

漫画を描くときには、こういう、いわばその漫画の「ルー「ル」とも呼ぶべきものから逸脱しないように気をつけなければいけません。描きながら、「なんかズレてる気がするな」と感じるのであれば、きっとルールから外れた何か余計なものを描いているのだと思います。 「売れるためには、世間でヒットしている○○みたいなキャラクターを入れなきゃ」という誘惑に駆られたり、編集者から「もっと売れ線を狙え」と言われたりしたら、「それは今描こうとしている漫画にハマるのかな」と検討してみることをお勧めします。 だいたいの場合、「ハマらない」ことの方が多いんじゃないかと思いますが、そういうときは、自信をもって自分が描こうとしている漫画の運命をきちんと描き切るべきなのです。「こんな地味で不細工なキャラクターが世の中に受け入れられるんだろうか?」と不安に思っても、その漫画の「基本四大構造」がちゃんと融合していれば、意外と大丈夫なものです。だいたい、ヒットするかしないかなんて、売れている漫画家が本当にわかって描いているかといえば、そんなことないんじゃないかな......と、僕は思っています。

基本からオリジナルへ~漫画の王道を目指せ!

これは前回も話したことですが、不利益を承知で僕の創作術を公開しているのは、才能がある漫画家志望者の人たちが、こういうことを知らないでつぶれていくのはもったいないと思うからです。ただ、「僕の創作術」といっても、別に僕独自のノウハウということではなくて、色々な小説や映画や漫画の「名作」に通じる普遍的な「王道」について説明しているつもりです。

『漫画術』やこの「続・漫画術」で書いている内容は、言ってみれば、「王道」を歩むための「地図」のようなものと言えます。目的地に行くためには、必ずしも地図の通りに歩けばいいということではなくて、むしろ自分なりの道を探し、誰も行ったことがない場所へとたどりつくことが大事なのだと思います。あえて脇道にそれて違う景色を見たり、「こんな行き方もあった」と発見したりする。もし迷ったら地図を見返して、自分が今いる場所を確認し、どうすれば正しい道を行けるかを見極める。 『漫画術」や「続・漫画術」はそのためにあるもので、ここに書いてあることをマニュアルのように使っても、素晴らしい漫画を描くことはできないでしょう。

地図を片手に自分なりの道を歩いていくためのヒントをもうひとつだけ、最後に伝えておきましょう。たぶん1作目は自分がこれまで経験してきたことやよく知っている世界を描けば、けっこう簡単に漫画にできるのではないかと思います。しかし、その次からは、そういうわけにはいきません。だから自分の知らないこと、特に今の世の中でどういうことが考えられているのか、いわば時代の空気のようなものを取り込んでいくことが大事になってきますし、漫画には直接関係ないことでも、ニュースなどを日々読んで、時代や社会を知ろうとする姿勢を持つことが必要だと思います。というのは、意外とキャラクターの行動にはそういう世の中の仕組みのようなものが関わっていて、そういうことを何も知らないまま描いていると「あれ、なんかしっくりしないな」となってしまうことがよくあるのです。 「悪役には『哲学』が必要」のところで書いたように、悪役の「悪」をきちんと描くためにも、自分が生きている時代や社会を知ることは欠かせませんし、これは僕自身も漫画を描きながら勉強している部分です。

『漫画術』は「企業秘密を明らかにする、僕にとっては正直、不利な本」なのですが、今回の「続・漫画術」でも不利益を承知でかなり企業秘密を公開しました。 特に菌二郎の作り方は、僕がいつも編集者と打ち合わせしながらやっている作業そのものです。それでもこうやってノウハウを伝えるのは、これを読んだ人の中から世の中をガラッと変えるような作品を描く漫画家が出てきてほしい、そう強く願っているからです。いつか「やっぱり、これも言っておきたいな」ということが出てきたら、またどこかで続きを語ることがあるかもしれないですね。

Revision as of 17:10, 21 September 2024

Hello. I'm Flan, an aspiring artist, Pucci shrine girl and a big collector of merch. I also made a Pucci memorial page where you can submit art that will be archived and added to the page.

I'm not good at editing wikis, but I wish to contribute. I have a college degree in japanese, so I will try to provide translations. I also love to look for pose references, and add them, especially for Part 6. I hope I don't mess up too much formatting and things like that! Feel free to message me if you have any question about my contributions.

My Favorite characters


Don't mind this thx

顔にお日様の熱を感じる。 重たいまぶたを押し上げると、 眩しい朝日が目に差し込んだ。 フェルンはべ ッドから起き上がり、ううんと背伸びをする。 宙を舞う埃が陽の光を反射してちらちらと輝いている。 今日はお洗湘日和だな、 と寝ぼけた頭で考える。 フェルンがこの家に住み始めて、 しぱらく経つ。 最初はべ ッドの硬さに慣れなくてなかなか寝っけなかったが、今では朝までぐっすり眠れるようになっていた。 廊下に出て、リビング、 そしてキッチンを覗く。 誰もいない。 ハイターは、 まだ寝ているようだ。 水を汲みに行こう、 と思った。 バケツを持って 外に出る。 柔らかい陽射しが、 肌をじんわりと暖めた。 小烏の鳴き声が耳に心地よい。 この辺りは膝物が出ることもほとんどなく、 平和そのものだ。 森の中を少し歩いて、 川に突き当たる。 川面を覗き込むと、 見慣れた顔が映った。 肩で切り揃えられた紫色の髪に、 眠たげなぽんやりとした目。 川面に揺らめく白分の顔をすくい上げるように、 フェ ルンはバケツで水を汲んだ。

「よぃしょ ...... 」 バケッの取っ手が` 指に食い込む。 水の入ったバヶッは肩が抜けそうなほど重ぃ。 家まで運

か ら だ

ぶのが釉一 杯だ。 ふらふらと身体が左右に揺れてヽ ぽちゃぽちゃとバケッから水がこぼれてぃ

〈。

なんとか家にたどり着いた。

キッチンに入ると、 ちょうどハイターが寝室から出てきた。 杖をっいて、 ゅっくりと歩いて くる。 起きたばかりのょうで、 白髪に寝癖がっぃてぃる。

ハィターはフェルンに気づくと、 両頼に深ぃ胱を作って、 優しく微笑みかけた。 「おはようございます、 フェルン 」

「おはようございます、 ハイター様」

フェルンは、 どすん、 とバケッを床に置ぃた。 その拍子に、 また水がこぼれてしまう。 だけ どハイターは少しも嫌な顔をせず` 優しい笑みを浮かべたままヽ フェ ルンの頭を撫でた。 枯れ 枝のような骨ぱった手が、 髪を乱さなぃよう優しく動く。 フェルンは心がくすぐった〈なった。 「水を汲んできてくれてありがとうございます。 重かったでしょう 」

「これくらい、 なんてことありません」

「ご立派です。 では、 顔を洗ぃましょうか」

ハイターは靡法でバケッを浮かせると` そのままフェルンと二人で洗面所へ向かった。