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Keiji Tanaka Interview

Interview

Transcript
田中刑事の奇妙な冒険――『ジョジョ』が支えてくれた“自分との闘い” - 2019年6月28日
始まりは「ジョジョ芸人」。すべてが変わった

――まず、田中さんが『ジョジョの奇妙な冒険』(以下『ジョジョ』)に興味を持ったきっかけを教えてください。

『アメトーーク!』の「ジョジョの奇妙な芸人」(以下、「ジョジョ芸人」)がきっかけでした。番組もマンガも、「なんだか、すごく不思議なことをしているなあ」と気になって。たまたま2回目の放送(2012年7月)を観て、そのあと初回(2007年8月)もさかのぼって観ました。

――ファーストコンタクトは「ジョジョ芸人」だったのですね。

そこがスタートで、すべて変わりました。でも、そこからすぐに作品を読んだわけではなくて、直接のきっかけになったのは、3部「スターダストクルセイダース」のアニメがスタートしたことですね(2014年4月~)。いい機会だと思ってアニメを観始めたら、しっかりハマりました(笑)。

――そこからマンガも読むようになったのでしょうか?

いえ、しばらくアニメだけ観ていました。3部は48話あって、すごく見応えがありました。最終回のあと、ちょっと間をあけて4部「ダイヤモンドは砕けない」がスタートして(2016年4月~)、やっぱりすごく面白くて。

これはもう1部と2部も観ないわけにはいかないと思い、アニメを観て、そのあとマンガを1部から5部まで読みました。

――『ジョジョ』の絵柄は癖が強いと言われることもありますが、田中さんは気になりませんでしたか?

『アメトーーク!』を観た時点で、すごく癖がある作品だとわかっていたので、そのあたりは大丈夫でしたね。

それと、セリフの言い回しなんかも僕にはドンピシャで面白すぎたので、全部スッと入ってきたんです。アニメをちょうど3部から観られたのがラッキーだったのかな。1部や2部もすごくテンポよく観られて。今、5部のアニメもやっているので、引き続き楽しんで観ています。

――あの独特な“ジョジョ節”にハートをつかまれたのですね。

「○○じゃあねーか」「○○じゃあないのォ?」みたいな言い方がすごく好きで(笑)。キャラが男性だろうと女性だろうと、セリフの“漢(おとこ)らしさ”が大好き。アニメから入ったので音の印象が強くて、セリフの感覚がすごく面白いんです。そこを入り口にハマりました。

――インタビューに先駆けて、田中さんの好きなキャラやスタンドについて答えていただきました。回答は、1〜5部のキャラやエピソードからですね。

はい、『ジョジョ』は第8部となる「ジョジョリオン」が連載中ですが、僕は5部までしか読んでいません。6~8部は楽しみにとっておいて、時間が空いたときに一気に読もうと思っているんです。

ホワイト・アルバムが使えたら、どこでも練習できる!

――「好きなキャラ」では、5部のブチャラティが最初に挙がっていますね。

5部に思い入れが強いのは、最後に読んだ『ジョジョ』だから、というのがあります。とはいえ、マンガを読んでから1年以上経っていて、だいぶストーリーも忘れちゃっているので、放送中のアニメをすごく新鮮な気持ちで観られています。「あれ? この敵ってどうやって倒すんだったっけ?」とか考えながら観られるのでより楽しいです。

――それは幸せな体験ですね(笑)。

アニメはちょうどブチャラティが死んでいるのか、どうなのか?という場面に差し掛かっているので(※取材は5月後半)、今はブチャラティのことがすごく気になっていますね(笑)。このあたりは、マンガを読んでいるときも一番ハラハラドキドキしていました。

5部はたくさん人が死ぬので、悲しいストーリーではあるけれど、そのみんなが団結して立ち向かっていく姿がすごく魅力的に映ります。

――好きなスタンドに、ザ・ワールド、ホワイト・アルバム、ヘブンズ・ドアーが挙がっています。ホワイト・アルバムは5部の敵キャラで冷気を自在に操るギアッチョのスタンドで、その姿はスピードスケート選手を連想させますね。

ホワイト・アルバムは周りのものを瞬時に凍らせることができる能力。これがあれば地面を凍らせてスケート靴でどこでも移動できるし、いつでもフィギュアの練習ができるじゃん、と(笑)。一番便利な能力だなと思います。

ギアッチョがはいているのはスピードスケートの靴のように見えますが、フィギュアのスケート靴でもできそうだし、僕があのスタンドを使えたら、ぜひフィギュアに活かしたいですね。

――ストイックなお答えです(笑)。ほかのスタンドについてはいかがでしょうか?

ヘブンズ・ドアーも便利ですよね。4部に登場するマンガ家・岸辺露伴先生のスタンドで、対峙した相手を「本」に変えることで、その経験や能力などをすべて知ることができ、かつ余白に書き込めばそのとおりのことができるようになる力です。

5部は、(広瀬)康一くん(4部にも登場)がイタリアに行くシーンから始まりますが、康一くんは露伴先生に、現地の言葉がしゃべれるように書き込んでもらったんですよね。「うわ、そんな便利なことできるんだ!」って驚きました(笑)。

億泰の復活シーンは、感動しすぎてどうしようもなかった

――心に残ったシーンも、2部から5部までまんべんなく挙がっていますね。

2部「戦闘潮流」で、ジョセフとワムウが戦う回もすごく好きなんです。闘技場で戦車の戦いを繰り広げるというとシンプルそうだけど、深くもあるし、同時に「そんなバカな」と思うことも多すぎて(笑)。最後まで勝敗の読めない対決で、すごく熱かったですね。ワムウは潔いし、騎士道精神に則って正々堂々と戦う敵は珍しいようにも感じました。

それから、シーザーが死んでしまうシーンが……やばかったです。師匠であるリサリサが、悲しみを隠して耐えているシーンもたまらなくて……アニメでもマンガでも心が震えました。

――プログラムのテーマとして採用されたのは4部ですが、その魅力はどのあたりにありますか?

4部は、3部までと世界観が違うというか、日常のなかにいるスタンドがテーマです。3部は「エジプトに行ってDIOを倒す」という大きな目標があるのですが、4部は主人公の東方仗助とその仲間たちが、日常の異変に対処していくなかで物語が動いていく。だからすごく平和な回もあって、これまでとは違った『ジョジョ』の面白さが楽しめる側面もありますね。

――4部の序盤は、連作短編っぽくも読めますよね。 街の平和を脅かすシリアルキラーのスタンド使い、吉良吉影がストーリーにかかわるようになってからはドキドキ感が加わります。4部はマンガを読んでいないまっさらな状態でアニメを観ていたので、次の展開をまったく知らずに追っていくことができて、ものすごく興奮しました。

――4部のエンディングは、何度読んでも胸が熱くなります。 僕が感動しすぎてどうしようもなかったのは、誰もが吉良に殺されたと思っていた(虹村)億泰が生きていたシーンです。あそこが一番ですね。

『ジョジョ』ってあんまり生き返るキャラクターはいなくて、死んだらそこで終わるキャラが多いのですが、億泰は違いましたね。仗助の一番の親友が生きていて、しかも吉良を圧倒しているというのにグッときました。

家で観ていて、ひとりでジーンとしてましたね。

昌磨と一緒に『HUNTER×HUNTER』をずっと観てました(笑)

――マンガの6部以降は、どんなタイミングまで「お預け」にするのでしょうか。

う―ん……(しばし考え込む)。たぶん、読み出したら途中で止めることができないと思うので、ホントに時間があるときに一気に読みたいんです。だから、引退後に文庫で一気に買おうかな(笑)。

――ええっ⁉ そんなに先ですか?

ふふふ(笑)。もう、本当に楽しみにとっているので。……とか言っておいて、フライングして買っちゃうかもしれないですね。 引退はまだ先であってほしいですが、本当に楽しみにしていることが伝わりました。1〜5部は、全巻紙のマンガで持っているのですか? はい、文庫で持っています。とはいえ、そこまでモノの所有欲はなくって、基本は集めてもきりがないと思っているんですが、勢いで集めたマンガもありますね。

『新世紀エヴァンゲリオン』も『FAIRY TAIL』も全巻持っています。

――モノといえば、去年の全日本選手権の開会式で、吉良吉影のスタンド・キラークイーンのネクタイを着用していたことが話題になりました。

あのネクタイは、前にスケートの関係者の方にいただいて、「全日本の開会式で着けますね」と約束していたんです。その方も会場にいらっしゃったので、着けて開会式に臨みました。

――田中さんは感動したときに、どんなふうに人に伝えますか?

アニメを観るときもマンガを読むときも大体ひとりで、共有する人がいないので、いつもひとりで消化していますね(笑)。練習でも同じで、その日の練習がだめだったり悔しかったりというときも、ひとりで消化していることが多いです。

――TwitterやInstagramもされていますが、SNSに投稿はしないのですか?

あんまりしないようにしています。それでもたまに、誰かと共有したいと思うときはありますが。

――フィギュアスケーター仲間で、趣味のことを話せる人はいますか?

アニメ好きはけっこう多いのですが、とくに(宇野)昌磨とはよくしゃべりますね。

――宇野さんとはどんなアニメの話をするんですか?

最近では、『盾の勇者の成り上がり』ですね。僕が「すごい面白いよ」って言ったら、昌磨がマンガを全部読んでいたので、僕も勢いで全巻買っちゃって。ほかに昌磨と話していたのは、『転スラ』(『転生したらスライムだった件』)とか、『このすば』(『この素晴らしい世界に祝福を!』)かな。

『ノーゲーム・ノーライフ』とか『ソードアート・オンライン』も観ていましたね。いちばん一緒に観ていたのは『HUNTER×HUNTER』で、試合の期間中にずっと観てましたね(笑)。

――語り合えるとまた楽しいですよね。『ジョジョ』を布教したりはしないのでしょうか? していますが、なかなか思ったようには(笑)。マンガの巻数も多いので、みんな機会がないというか。アニメも放送していますけど、なかなか一から観てくれる子はいないですね。

そういえば、僕は『新世紀エヴァンゲリオン』も大好きなんですが、町田樹くんに『エヴァ』の面白さを伝えたら、全部観てくれたんですよね。「すごくよかった」って言ってくれて。あの世界観は町田くんと合いそうな気がしますね。

“クレイジー・ダイヤモンド”なプログラムができるまで

――ここからは、『ジョジョ』のプログラムの制作過程についてお聞きします。本業のフィギュアと趣味の『ジョジョ』は別世界のものであったように感じましたが、なぜそこを融合させることになったのでしょうか。

2018-19のシーズンが始まる前に、新しいエキシビション用のプログラムを作ろうと、いろいろな曲を聴いていたのですが、なかなか決まらなかったんです。

そこで、振り付けの佐藤操先生も『ジョジョ』が好きだったので、アニメの4部でここぞというときに流れる『ダイヤモンドは砕けない〜メインテーマ〜』(作曲:菅野祐悟)をダメ元でポンと送ったら、「これ!」って言われて。こうして曲が決まり、少し時間をあけて、振り付けが始まりました。

――佐藤先生も好きだったというところに運命を感じますね。

僕はこれまで、あそこまでアップテンポな曲を使ったことがなかったんですよね。でも『ジョジョ』が好きなもの同士だから、振り付けしている段階からすごく楽しくて、「この“ジョジョ立ち”入れよう」とか「こういうスタンスで作っていこう」とか、アイディアも自然とたくさん出てきました。

今までエキシビのプログラムをそこまで深く考えることはなかったんですけど、このプログラムをきっかけに、エキシビでも衣装や振りのことをいろいろと考えるようになりました。

――最初の段階から、「東方仗助の姿でいこう」と考えていたのですか?

振り付けをしていくなかで「誰を演じよう」という話になったときに、シンプルに、やっぱり主人公だろうとなりました。それに、衣装のことを考えても一番インパクトがあってわかりやすいのは仗助だと思ったので。

原作の衣装は長ラン。だけど幻の短ラン案もあった

――その段階では、ここまで忠実に髪型や衣装、メイクを再現する予定だったのでしょうか?

そんな想像はまったくしていなくて、本当は最初、長ランじゃなくて短ランにして、オリジナルの部分を出そうと思っていたくらいなんです。原作どおりの長ランだと、明らかにジャンプを跳べないだろうというのもあり。

でも、振り付けしているあいだに「長ランのほうが原作ファンは絶対喜ぶだろうな」と思い直して、こうなったら原作の世界観を忠実に再現しなきゃという方向に行きましたね(笑)。

『ジョジョ』の原作ファンは、ほかのアニメより濃い方がたくさんいると思うので、その人たちにも受け入れてもらえるように、本気で『ジョジョ』のエッセンスを出していこうと思いました。

――なるほど。ヘアメイクや衣装担当の方にはどのように要望を伝えたのでしょうか。

アニメの静止画やコスチュームの写真を衣装さんに送って、僕のイメージを伝えました。生地も一緒に見て、僕が決めました。両胸に付いている飾りは、僕が所属している倉敷芸術科学大学の方が作ってくださったんです。

――スゴい! だからあんなにクオリティが高いんですね……!

結局原作どおりの長ランにしたので、着たままだとジャンプが跳べないんです。そこで、演技の冒頭で上着を脱いで、最後にまた着るというシーンを盛り込みました。衣装さんと相談しながら脱ぎ着しやすいようにも工夫しました。

――衣装ができたときは、どんな気持ちでしたか?

いやもう、テンション上がりました! 「これだ!!!」と思って。

――最初から理想どおりのものができたのでしょうか。

そうですね、学ランの胸の開き具合も、うまく再現できたなと思っています。襟の部分、服をめくっているわけではなくて、一から作って貼っているんですよ。

仗助のリーゼント再現は、最初は全然乗り気じゃなかった

――そんなこだわりが実って、プログラムは大きな反響を呼びました。

思っていた以上でしたね。じつは、初披露したときは、髪型はそんなにいじっていなかったんですよ。東方仗助はリーゼントがトレードマークですが、さすがに自分でセットはできないし、僕自身もそこまでリーゼントに寄せようとは思っていなくて。

ところが、全日本選手権(2018年12月)のエキシビションのときに、KOSEさんがオフィシャルのメイクアップで入ってくださり、現場にいた宮本賢二先生がメイクの方に「リーゼントでいきましょう!」と提案して、やる流れになりました。でも、じつは僕は全然乗り気じゃなかったんです。

――えっ、それはなぜですか?

いや、髪の毛が傷むなと思って(笑)。それでなくても僕、全日本の時期はいつも、ストレスで頭皮が荒れるんです。そこに影響が出やすいんですよね……。

――それは辛いですね。

結局リーゼントにしたのは、全日本と世界選手権(2019年3月)の2回だけです。全日本のときは初めてのリーゼントだったので、セットするのにものすごく時間がかかりました。世界選手権のときもメイクがKOSEさんだったので、同じ方にやってもらったのですが、そのときは少し慣れてきていて、スプレーを使う量もだいぶ減りましたね(笑)。

――たしかに、大量のスプレーは髪にも頭皮にもダメージが出そうです……。

だから、全日本でも試合中はあんまりスプレーを使わず、できるだけセットしないようにしていて。「よし、試合終わったー!」と思ったら、エキシビ用にガッチガチにセット(笑)。終わって髪の毛を洗い流すのに30分くらいかかりますね。

――実際、髪の毛は傷みますか? 終わったらバッシバシです。でもリーゼントがあったからこそ、反響も大きかったのだと思います。

原作ファンに受け入れられなかったら…という不安はなかった

――振り付けでこだわったポイントを教えてください。

自分のプログラムではやらない動きやポーズを盛り込みました。たとえば中盤で、ポーズを決めて「ジョジョ立ち」を次々と披露する場面があります。普段の自分のプログラムで、氷上でバシっと動きを止めるというのは今までなくて、それをたくさん入れたのは新しかったです。

ジョジョ立ちを完全再現するのは難しいので、結果的に、それらが原作どおりになってるかというと微妙なんですが、『ジョジョ』という作品の「奇妙なポーズ」も僕の作品にしたいと思いながら作ったので、踊っていてすごく楽しかったです。

ポーズは、原作に似せて振り付けたものもありますが、オリジナルで振り付けをしているものも多くて。とにかく「奇妙な動き」をたくさん入れたつもりです。

――初めてプログラムを発表するときに、「原作のファンに受け入れられなかったらどうしよう」といった不安はなかったですか?

とくになかったですね。フィギュアなので、そもそも同じことをやる人がいないし、興味がない人は見なければいいと思っていたので。結果的に多くの人に受け入れられたのは良かったのですが、そこまで認めてもらえるとは思っていなくて、最初は自分のやりたいものをやっているだけでしたから。

「『ジョジョ』を知っている人も知らない人にも、喜んでもらえたらいいな」くらいでした。

――曲が決まってから、ある程度プログラムが形になるまで、どのくらい時間がかかりましたか?

振り付け自体は2日半くらいで終わったんですが、すごく動きの多い振りなので、足を慣れさせるまでがとにかく大変でした。

『ジョジョ』の演技中は勝手にハイになるんです

――ファンからの反響で、印象に残っていることはありますか?

シーズンが終わってからも、「『ジョジョ』の演技、良かったよ」「また見たい」と言ってくださる方が多かったです。ファンレターでも「『ジョジョ』は知らなかったけど面白かった」という声も多かったし、僕の演技を見てマンガを読み始めた方もけっこう多かったです。

――布教につながっていますね! ほかの選手からはどんな反応がありましたか?

全日本のときは、みんなリンクサイドに演技を見に来てくれて、なんだか異常な雰囲気でしたね(笑)。僕自身、あの演技をしているときは勝手にハイになるんです。そのぶん、終わったあとにすごくしんどいのですが……。

――(笑)。演技中の心情は、ほかのプログラムと違うのですか?

試合はもちろん集中力が必要で緊張感があるのですが、エキシビはまた試合とは違う緊張感のなかでやっています。最初は自分がどういうスイッチを入れて『ジョジョ』の演技をすればいいのかがぼんやりしていたのですが、いざやってみると「ノリと勢いでいけるんだ」というのがわかりました。

――ほかのプログラムでの田中さんと、顔つきやノリがまったく違うように感じます。モードの切り替えを意識的にしているのでしょうか?

『ジョジョ』ではジャンプを3つ入れていますが、いずれもあまり考えなくても跳べるジャンプにして、演技全体に集中しながら踊れるようにしています。ある種、勝手に好きなように動いているというか。ジャンプにもスピンにも特化せず、トータルパッケージで面白くしたかったので、そこはバランスがとれていると思います。

試合ではいかに高い得点を出せるか勝負をしているので、難易度高めのジャンプを入れて「次はどうやって跳ぼう」と考えながら滑っているのとは、全然違いますね。

映画公開に合わせて…『エヴァ』プログラムの野望

――『ジョジョ』プログラムの続編は期待していいのでしょうか?

僕のなかで勝手な想像はいくらでもできるのですが、まだ現役で、エキシビだけではなく試合に集中しないといけないので、第2弾が作れるタイミングがあるかはわからないですね。

でも、いい曲はたくさんありますよね。放送中の5部で、スタンドが発動するシーンなどで流れる曲(『il vento d’oro』/菅野祐悟)も好きです。みんなが「処刑用BGM」と呼んでいる曲ですね。

――個人的には、田中さんの好きなブチャラティをテーマにしたプログラムをいつか見てみたいです!

ブチャラティと、5部ではジョルノもいいですよね。ジョルノは金髪で真っピンクの衣装ですが、「金髪にするならどうしよう、スプレーでもできるかな」とか、いろんな想像はしますね。

最近、叶姉妹さんもジョルノやブチャラティ、トリッシュのコスプレをされていましたよね。再現度が高すぎるので、あれにはちょっと勝てないですね。

――今後、プログラム化したい作品はありますか?

アイディアがあれば欲しいくらいなんですが、いま一番考えているのは『エヴァ』ですね。

――すごく見たいです!

ちょうど来年、新劇場版が公開されるので、そこに合わせて作ってやろう!という野望があるんです。ただ、衣装をプラグスーツに寄せるか?と考えたときに、着た自分を想像すると気持ち悪いな、とも思って(笑)。そこが引っかかっていて、踏み切れないんですよね。

――いえいえ、お似合いになると思います!

それ以外の衣装となると、(碇)シンジの中学校の制服にすればごまかせるかなとか、もしくはオリジナルで衣装を作ってもいいし……曲も悩むし、いろいろと定まっていないですね。

――『残酷な天使のテーゼ』もいいですし、新劇場版で使われている宇多田ヒカルさんの曲もいいですよね。

そうなんですよね!まだ構想が固まらなくて、実現できるかはわかりませんが……『ジョジョ』のときくらい悩んでいます。ちなみに、エッジケースは、自分でエヴァカラーに指定して作りました。

――いつかこの目で見られるのを、心から楽しみにしています。これから、アイスショーの季節を経て来シーズンを迎えますが、来季の課題や目標を教えてください。

来シーズンでは、競技用のプログラムはショートもフリーも両方変えることになっていて、そこでは、また違う表現をしたいと思っています。毎年わりと違う曲調と異なる雰囲気で滑っているのですが、まだ曲が決まっていないので、どう変われるかが挑戦であり、楽しみでもありますね。

テーマは「攻める」。自分が攻めていけるプログラムを作りたいし、ジャンプも含めてどこまで挑戦して、それを調整した構成で戦っていけるかが大事ですね。

勝負する年でもあるし、自分がどこまで成長できるか、いろいろと試す1年になると思います。

『ジョジョ』は、気持ちを前向きに切り替えるためのスイッチ

――さて、最後にお伺いしたいのですが、田中さんにとって『ジョジョ』とは?

そうですね……僕は日々フィギュアをやっているので、「辛いこと」があるとしたら、やっぱりほとんどフィギュアの練習や試合に関することなんです。そこで日々、辛いものをためてきて、それでも自分の好きな競技に打ち込んでいる。

そんななかでアニメを観ると、なにも考えず夢中になることができるし、作品を観て「面白かった!」と思うことで、すごくいい精神状態になれるんです。ストレス発散とはちょっと違いますが、スケートと全く違ういろんな世界を描いたアニメを観て、気持ちの切り替えをできたらなという思いがあります。

そのなかでも、『ジョジョ』の放送は毎週の楽しみで、「あした『ジョジョ』だな」と思うとワクワクしながら寝られるし、朝起きて、録画を観てから家を出ることもあったので……。大げさに言うと、すごく支えられたんですよね。

いま思うと、スケートですごく苦しい思いをしていても、『ジョジョ』に夢中になることで、自分のなかでバランスをとっていたのかなと思います。

――毎日をスケートに捧げる田中さんの励みになっていたのですね。

僕はなんでもひとりで消化するタイプなので、もしスケート以外なにもしていなかったら、辛いことがあっても、なかなか乗り越えるのは難しいですよね。『ジョジョ』を観たりすることは、自分でスイッチを切り替えるポイントにもなっているのだと思います。

日々いろんな作品を観て、いろんな感情を抱いていますが、そのなかでも『ジョジョ』は、特別濃いものでした。

『ジョジョ』では、絶対勝てないだろうという強大な敵にも工夫して勝利していく。そこに感心するし、どんどん物語に引き込まれていきます。それで気持ちもリセットして、「さあ、練習行こう!」と前向きになれたんだと思います。[1]


References